異世界プロレスinオーバーロード   作:NEW WINDのN

79 / 96

第68話 青の薔薇 の続き。あれから数ヶ月以内ってところです。
第50話 王国 と同時期。


第77話 別れと再会

 

 

「ふー。ガガーランは元気にやっているかしら」

 王都に一人残った蒼の薔薇のリーダー、ラキュースは旅立って行った仲間を思う。

 メンバーの一人であるガガーランは、皇帝直々のオファーを受けて遥か遠く帝都アーウィンタールに向かい、今は帝国プロレスの一員としてリングに上がっているはずだ。

「ガガーランは、いつもダンディ様に会えるのかしら。なんだか羨ましいな……私もまたお会いしたいな……」

 ラキュースにとって忘れられない存在が、ガガーランを倒した相手であるダンディ須永だった。

 顔が好みとかではなく、須永の派手な技の数々や、魅せるためのアピール、技名を叫ぶといった行為がラキュースの好みにピッタリハマる。思考的に惹かれるものがあるという感じだろうか。ラキュースは密かに技名を考えたりするのが大好きだし、色々と妄想するのが好きなのだ。誰にも知られていない趣味だが、たまに呟いているところを仲間に目撃されており、魔剣の影響ではないかと心配されている。

 

「ダンディ様……私は……」

「ふむ……よいですな。ラキュース、なかなか素晴らしい技です。ネーミングも素晴らしい」

「そうですか? ありがとうございます」

「ですが、こうすればもっとよく……」

 須永の手とラキュースの手が触れる。

「ダンディ様……」

「ラキュース」

 二人の距離が縮まっていく。

 

 

「アルベイン様、アルベイン様!」

 妄想にふけっていたラキュースを馴染みのある嗄れた声が引き戻す。

「あらクライム。お久しぶりね」

「ご無沙汰いたしております。アルベイン様」

「ラキュースでいいわよ。で、なんの用? ラナーがお呼びかしら」

「はい。ラキュース様。ラナー様が忍び旅にでるので、護衛をお願いしたいと」

「忍び旅……なんとなく道中で襲われそうね。替え玉とか必要かもしれないわね……似た感じで隠れ旅も悪くないかも……」

 ラキュースの脳内で美人姫が襲われる絵が浮かぶ。

「あ、あのー」

「あらごめんなさい。隠れ旅の話だったわよね。護衛了解よ。いつどこに行けばよいかしら!」

「え……ああ、えっと忍び旅には今からでるのでと」

「今から? 急すぎるけど今は私一人だし行けるわよ」

「感謝します。ラキュース様」

 

 ラキュースは、ラナーの忍び旅の護衛として同行することになった。途中ラキュースの予想通りに数回の襲撃を受けるも無事に目的地であるリ・ウロヴァールへとラナーおよびクライムを送り届けることに成功する。

 

 そして……。

 

「クライムが辺境伯の後継者になった? え、ラナーがクライムと結婚……!?」

 宿のラウンジで、そのニュースを聞き、ラキュースはショックをうける。

「せめて私には教えて欲しかったな……一番最初におめでとうって言いたかったよ」

 事情はあったかもしれないが、ラキュースが誰かに話すわけがない。

「ラナーは、私のことを友人とは思ってなかったのね……」

 ラキュースは色々と親しい友人だと思っていたラナーのために力を尽くしてきた。だが、ラキュースは知ってしまった。自分が単なる便利な駒に過ぎなかったことを。

「バッカみたい。私も行けばよかったな……帝国に……」

「来るというのなら歓迎しますぞ」

 ダンディ須永の声が聞こえる。

「ダンディ様……」

 いつもの妄想だろうと目を閉じる。

「ラキュースさん。聞こえてますかな?」

 ポンと肩を叩かれ、ラキュースは驚いて目の前を見る。

「だ、ダンディ様?」

「いかにも。同じ宿とは奇遇ですな。どうですか一杯」

 ラキュースは、コクリと頷く。

 

 

 

 

 宿の近くのバーでグラスを傾けながら、二人はゆっくりと話をする。

 ラキュースは異性と二人きりでこのような場所で語らった経験がなく、ドキドキが止まらない。

 

「だ、ダンディ様はなぜ、このような場所に?」

「下見ですよ。伯から興行を開催できないかと内々に打診がありましてね」

「伯ってクライム?」

 今日発表されたばかりだからそれはないだろうと、ラキュースは言ってから気づく。

「いえ。先代ですな。まさか急にご隠居なされるとは思いませんでしたが、節目の興行ということで承ることにしました。ここも帝国領になるようですし」

 須永の言葉にラキュースは下を向いてしまう。

「どうされました?」

「いえ……ここも帝国領になってしまうのだなと」

「ふむ……裏切られた気分なのですな。ラナー様に」

「なんで……それを」

 顔を上げ須永の顔をみつめる。

「貴女はご自分が思っているよりも有名なんですよ。私などよりもね」

 須永が持ったグラスが光を反射し、キラキラと輝く。ラキュースはそれを眩しく感じていた。

「当然ラナー王女との関係も知られていますからね。あとは……まあ勘ですよ」

「私は、何も知らされていなかったんです……さっきここで、街の噂話で知った……そんなことってあります? 昨日まで一緒に旅をしてきたんですよ」

 ぎゅっと拳を握りしめる。

「これは私の予測に過ぎませんが、全ては彼女しか知らなかったのではないでしょうか。同行していたクライム殿……今は伯になりましたが、彼は何も知らずについてきただけでしょうし。彼女も悩んでいたとは思いますよ。王女と平民の護衛。わかりやすいくらいに身分違いのお二人でしたからね。クライム殿を伯に据えることで、降嫁なされるための条件を整えたかったのでしょう」

 須永は最後の一口を飲み干すと、話を続ける。

「彼女の想いを遂げるためには、降嫁条件を満たすか、国がなくなるのを待つしかなかったでしょうからな。後者より前者の方が安全ですし」

「では、私を裏切ったわけではないと?」

「貴女をというより、クライム辺境伯の帝国への恭順表明があったことを考えると……」

「王国を見捨てた……ってことですか?」

「見切りをつけたというべきかもしれませんね。私は、帝国の人間ですし、皇帝陛下の直属の部下です。その立場上言い難いのですが、王国はもはやスリーカウント寸前です。いや、実際にはもう三つカウントが入って、試合終了の鐘が鳴っているのに気づいてないだけですからな」

 須永らしい独特な表現だったが、実際に試合を見た事のあるラキュースにはよくわかった。

「そうですよね……」

「ところで、この後ラキュースさんはどうされますか?」

「この後……ですか?」

 ラキュースは須永の言葉の意味を考える。

「私のところに来ませんか、ラキュース」

 須永は色々な意味にとれる誘いの言葉を投げかけた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。