※今回の試合描写は、原作ではありえない立ち位置だからこその行動です。彼らはプロレスラーとしてリングに上がっていますので。
「あーっと、これはどーしたことだ! バルブロがエプロンに上がってきましたが、いったい何をするつもりか! また乱入するつもりでしょうか!? おーっとロープをくぐろうとしていますが……」
「レフェリーに止められましたな」
熱気を帯びる実況と冷静な須永による解説。これは実にいい組み合わせだと思う。最近は試合数が減り、解説席に座ることが多いだけに二人の息はあってきている。
「バルブロ……なにを……」
ゲスト解説に呼ばれたランポッサ。身内目線でハラハラしているのがわかる。そもそも何を解説させるつもりなのかがわからない人選だが……。
今日のメインイベントは、タイガー・ジェット・ティとダークネス・ラキュースによるタイトルマッチ。一進一退で迎えた25分過ぎ、セコンドのバルブロが突如エプロンにあがり、乱入しようとしているのが現在の状況だった。
「バルブロ、ノーだっ!」
トニー・カンレフェリーがバルブロを止めるために意識をそちらへ向けると、バルブロがニヤリとする。彼の狙いはこの瞬間だったのだ。
「"六光連斬"」
レフェリーの死角から乱入したガセフ・ブラックが切り札である6連ダブルチョップをティの背後から打ち込み、素早くリング下へ逃げる。
「BOOー!」
ブーイングが起きるがガセフは口を一文字に結び、腕組みをして耐える。本来のガゼフの気質ならやらない行為だろうが、今はバルブロ血盟軍の暗黒戦士長ガゼフ・ブラック。今リングを引っ掻き回すバルブロ血盟軍の一員なのだ。
「立て! 立つんだ! ラキュース!!
バルブロはリングに入るフリを続けながらダウンしているラキュースを叱咤する。
「いって……」
不意打ちを受けたティは、首の後ろを押さえながら立ち上がろうとするのだが……。
「させるかあっ!」
今度はルーイが乱入し、手に持っていた金属製の杖のような棒でティの後頭部をフルスイング!
「かぎげっ!」
倒れ込むティを立ち上がったラキュースがキャッチすると、背中に回りこむ。
「タイガー・ジェット・ティ、闇に帰れェェエエ工!」
絶叫とともに、ティの両手を体の前でクロスさせ、肩車で担ぎ上げた。
「あーっと、乱入攻撃で大ダメージを受けたチャンピオンを、ラキュースが担ぎあげてしまった! こ、この体勢は……」
「あの技ですな」
「前回チャンピオンを沈めたあの技がでるのでしょう……」
須永とランポッサだけでなく、観客もわかっている。
「
「出たあっ! リングに黒い竜巻! このまま決まってしまうのかっ! カウントが入るっ!」
「ああ、トニーの首振りが出てしまってますな」
トニー・カンレフェリーのスリーカウント前の首振りは返せなそうな時に出る。
「カウントスリー! 決まってしまったー。なんとチャンピオン二度目の防衛に失敗だあっ!」
大ブーイング! いやもはや罵声というべきだろうが飛び交い騒然とした空気になってしまう。やがてリングへと物が投げ込まれる大騒ぎになってしまった。その間にルーイとガゼフが本部席からベルトと認定証を奪うようにひったくると、ラキュースの元へ駆けつける。
ラキュースはブーイングや飛び込んでくる物の雨を祝福されているかのように両手を広げて受け止めていたが、ベルトと認定証を受け取ると、倒れているティを一瞥してリングを去っていく。
「まてやこらぁっ!」
ガガーランがマイクを掴む。
「ラキュースっ! お前こんな勝ち方でいいのかっ! 」
ガガーランの問いかけにラキュースは紫色の唇を少し歪めて、ニヤっとする。
「てめえ、見損なったぞっ! おい、ガゼフのオッサン! てめえもだっ!」
カザフは両手で、ヤレヤレというポーズをするのみだった。
「てめえら許さん! おい、ダンディ! 次は俺がラキュースに挑戦するぞっ!」
「おい、男オンナ。実績もねえくせになにが挑戦だこらぁっ!」
バルブロが噛み付く。
「お前がいうか、雑魚は引っ込んでろっ!」
「はん。俺様を誰だと思ってるんだ。チャンピオンを要するユニットのリーダ様だぞ。つまりチャンピオンより偉いんだよっ!」
無茶苦茶な理論だ。
「そーかよ、なら実績には十分だよなっ!」
ガガーランはエプロンサイドにいたバルブロに襲いかかり、正義のパンチを叩き込んだ。
「フギャッ!」
バルブロは場外へところげ落ちる。
「おお、バルブロ……」
なお、正義のパンチは反則だが、今は試合中ではない。
「おい、ラキュース! 貴様らのリーダーは討ち取ったぞ。タイトル挑戦させてもらうぞ。ダンディ、いいな?」
「わかりました。次回興行でラキュースとガガーランのタイトルマッチ決定します!」
ガガーランとラキュース。かつてともに戦ってきた二人が、立場をかえて一騎打ちに臨む。こんなことになるとは誰が思っていただろうか。