第83話 三番勝負~第一番~
「さあ、ライオネス・エンリが入ってきました。突如組まれたライオネス・エンリ炎の三番勝負。ミスターBOバルブロの巧みな策略……否、口車に乗せられて挑む、あとのない戦いとなります」
今日の帝都興行も満員御礼。帝国プロレス旗揚げ以来帝都ではフルハウスが続いている。
「さて、この三番勝負ですが、三試合のいずれか一つでも、エンリが勝てなければ彼女が所属する帝国華激団は解散することになっていますが、逆に三番勝負を全て勝てば、エンリはダークネス・ラキュースの持つベルトへと挑戦する権利を得ます」
どうもこの挑戦権は釣餌という印象が否めない。バルブロは、人気のヒロインユニットを解散に追い込むことが目的なのだろう。
「タイガー・ジェット・ティの妹としてデビューして以来、ティやガガーランの庇護下にあったライオネス・エンリ。初めて一人で立つメインのリングに何を思うのかっ!」
闘技場にはやたらと熱い実況が流れており、それを聞きながら場内の八割以上はエンリの勝ちを望んでいた。
「さあ、注目の試合となりました本日のメインイベント。この試合はダブル解説、ダンディ須永選手とランポッサさんにお願いしております。御二方どうぞ、よろしくお願いします」
「よろしく」
「うむ。よろしく頼む」
近頃は須永の試合が組まれないことが多くなっており、特に帝都興行では解説席に座っていることが多い。須永がリングに上がらなくても、スター選手達が試合で魅せてくれている。
一人の人気選手に依存している団体は脆いものだ。それは須永が知るプロレス団体の歴史が教えてくれている。だからこそ須永は一歩引いて後進の育成に力を注ぐべく、現場監督兼総合コーチという役割を担っている。もちろん、いつでも試合はできるようにコンディションを整えているが。
「どんな展開になるか楽しみですな」
「うむ。その通りであるな。先月から楽しみにしておった」
ランポッサは、領地には戻らず帝都に用意された屋敷に駐留し、月一度の帝都興行においては解説役を務めている。もっとも領地に戻ってもすることはあまりない。現在領地経営は元第二王子のザナックが現当主としてしっかりと行っており、ランポッサはまったく出る幕がなかった。
今は解説役として帝国プロレスに関わりながら、
ジルクニフの旧王国民に対する憎まれ役にしようという策略は、上手くいってないように見えるが、ここは帝都だ。旧王国首脳部などまったく興味はない。さすがにランポッサも旧王国領ではこのような姿は見せられないだろう。
「さて、答えにくい質問をしますが、ランポッサさん、今回のミスターBOバルブロ選手の悪巧みをどう思いますか?」
実況はいきなり切り込んだ質問を繰り出したが、これは皆が聞きたいところだろう。
「もはやバルブロは私の手からは離れ、バルブロだけが見える独自の道を進んでおる。だから私がどうこういえる問題ではないのだが……これは悪巧みではなく、バルブロはプロレス頭をフル回転させているのだろうな。頭の出来はセールスポイントではなかったはずだが、ことプロレスに限れば、よい頭をしているのではないかな? ダンディ殿」
まさかの深い返答だった。ランポッサはただの隠居爺ではないようだ。
「ランポッサ様の仰る通りですな。よく我々もプロレス頭といいますが、バルブロ選手はプロレス頭がいいんですよ。いかに自分を魅せるか、また相手との駆け引きといった部分がかなり優れていますな。だから今回の三番勝負もかなり仕掛けてくると思いますよ。なにしろ血盟軍を倒せばとかの条件ではないですからな」
そう、バルブロの用意する三番勝負というだけで、相手は明言されていない。ゆえに誰が出てくるかは全く読めない。
「なるほど。ダンディさんも高評価なんですね。バルブロ軍のメンバーについてはどう思われていますか? 特にランポッサさんはご存知の方が多いですが」
「ふむ。簡単にいえば凄いチームだな。戦士長のガゼフ……いや今は暗黒戦士長ガゼフ・ブラックか。かの者はやはり
多少贔屓が入っているにせよ、ユニットメンバーの能力は高いのは間違いない。
「赤コーナーより……超神ジーニアス・カイザー選手の入場です」
帝国華激団ファンから悲鳴があがる。三番勝負初戦の相手は、なんとタイトルマッチも経験している超実力派レスラー、超神ジーニアス・カイザーだった。