異世界プロレスinオーバーロード   作:NEW WINDのN

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第9話 ダンディ・ドラゴン

 

「ス・ナ・ガっ! ス・ナ・ガっ!」

 場内は須永の華麗な技に魅せられ。須永コール1色となっていた。

 

「それいけダンディ、いけっ! やっちまえ!」

 ……いや、ダンディコールも混ざっていたか。ちなみにこの声の主は、貴賓室にて観戦中の皇帝ジルクニフである。

「ダ・ン・ディ! ダ・ン・ディ!」

 皇帝がダンディコールをするならばと、場内もそれに倣ってダンディコール1色に変わる。

「ふふ……声援を受けると力が漲って来ますな。さて、どうしますか」

 残る5人の顔を順番に見ていく。1番手強いのはリーダーのグリンガムだろうか。

(ふむ……とりあえずセオリー通りに回復役を潰すかな。ま、回復できるとは思わないけど)

 須永はターゲットを選定すると一気に踏み込み接近戦に持ち込もうとする。

「させん!」

 意図を察したグリンガムがその前に割り込み、神官を守りながら戦斧を振るう! 

「……甘いですなっ!」

 須永はその斧を踏みつけて飛んだ。

「我を踏み台に!?」

 そのまま須永は、空中で前方回転し始める。

 

「ライダーキックか!?」

「出るかっ?」

 ジルクニフとバジウッドの声が聴こえる。

 

(いやいや、いつも同じではないよ)

 須永は心の中で苦笑する。ライダーキックはお気に入りだが、使いたい技はたくさんあるのだ。

「……テキサスコンドルキック!!」

 須永は両手を大きく広げながら、両膝……ダブル二ーを、神官の顔面へ突き刺した。

「ひげぶっ!」

 体力の低い神官に耐えられる威力ではなく、一撃で戦線離脱に追い込まれた。

 

魔法の矢(マジックアロー)

 魔法の光弾が3つ次々と須永へと向かう。試合前半でも何度か放たれ、それを全て受け止めている。

「せやっ、せいっ、トオリャッ!」

 しかし、ここはパターンを変える。1つ目を左手のチョップでたたき落とし、2つ目は右のストレート掌底で弾き飛ばす。

 そして死角となった左から襲う3つ目は、体をクルンと回転させてソバットで蹴り返した。

「うわっ!」

 自分の魔法が跳ね返り、魔法詠唱者(マジックキャスター)は慌てて回避する。

 

「あんなのありかよ……」

「ありなんですな」

 いつの間にか魔法詠唱者(マジックキャスター)の前に須永が立っており、右肩を左手でガシッと掴まれている。

「なあっ!」

「矢がお好きなようなので、これで」

 須永は右手を後ろに、弓を引くように引き絞る。

「闘魂を込めて……弓引きパンチですっ!」

 矢を放つがごとく勢いで拳を振るい、魔法詠唱者(マジックキャスター)の顔面を撃ち抜いた。

「ゲベラアッ……」

「あ、グーは反則でしたかな? まあ、5秒以内の反則ならよいですか」

 須永は拳を見つめながら呟いた。確かにその通りなのだが、それはプロレスでの話。武器すら使える闘技場では反則にすらならない。

 

「コノヤローっ!」

 残る3人のうち、戦士が上段斬りを放つ。

「やれやれですな」

 須永はレガースを履いた右足を一閃。ハイキックで剣を蹴り折った。

「な、バカな……」

「いりゃあああっ!」

 1歩バックステップして、勢いをつけると右の足裏で顎先を蹴飛ばす。

「今のがケンカキックですな」

 墓碑銘のようにフィニッシュ技を告げると須永は残る2人を見る。

 

「くそぉ……強え……」

「ほとんど一撃じゃないか……なんて威力なのだ」

 盗賊とグリンガムは喘ぐ。もはや勝ち目なんてないと理解していたが無抵抗にやられるわけにはいかない。なんとかヘビーマッシャーの存在を須永に、観客達に刻み込みたいと思っている。

 

「いい目ですな。……来いっ!」

 須永は、2人の覚悟を見て取り、やや腰を落として油断なく身構えた。

「グリンガム」

 盗賊はグリンガムの背中側に歩みよると、須永から死角になる位置で何事かを囁いた。

「ああ、我らが力を見せてやろうではないか」

 グリンガムが頷き、戦斧を持つ手に力を込める。

「我らが力、汝に刻む。行くぞっ!」

 グリンガムは斧を全力で真上から唐竹割りで振り下ろす。

「ヌンっ!」

 須永はそれを真っ向から受けることを選ぶ。

(今までで1番重い一撃だ……想いがこもったよい一撃ですよ)

 勢いに押され、僅かに須永の体が揺らぐ。

「もらったっ」

 ここで、距離を詰めていた盗賊が須永の首筋に狙いをつけて、鈍く光るダガーを振りかざす? 

「むんっ!」

 須永はここも受けることを選択。ダガーが首筋に突き立てられた。

「どうだっ?」

「……いい狙いですな。素晴らしい連携です……ぅ」

 攻撃は効いていなかったのだが、何か別の効果があったようだ。

「……な、なにを……」

「ちょっとな。これは効いたみたいだな、グリンガム行くぞ」

 盗賊とグリンガムは同時に斬り掛かる。

「ダブルラリアット」

 須永は両腕を広げて一回転。2人の武器を一気に破壊した。

 

「なっ……痺れてないのかよ」

「……がっかりですな。先程のグリンガム殿の斧は良い一撃だったのですが。汚れ仕事も請け負うワーカーだから仕方ないのかもしれませんが、もうよいでしょう。恥を知れ」

 須永の表情が硬くなると同時に纏う雰囲気が変わる。

 

「少しだけ見せて差し上げましょう。ヒールモードの片鱗を」

 盗賊の顔面を掻きむしって、怯ませると、その喉を伸ばした指先で突く。所謂地獄突きである。

「ぎゃっ、ウゲッ……」

「……」

 ギラギラした目を光らせ、コブラのように相手に忍び寄ると、首を両手で絞める。

「くっ。吾輩が……」

 盗賊を助けようと飛びかかるグリンガムの腹部に爪先をめり込ませて止める。

「ぐええっ……」

 両手で腹を抑え、グリンガムはガックリと片膝をついてしまった。

 助けがなくなった盗賊をネックバンキングツリーで持ち上げると、そのまま後頭部から地面へと、ネックハンキングツリーボムで叩きつけて終わらせた。

 

「ま、こんな感じですな。さて、終わりにしましょうか」

 いつもの雰囲気に戻った須永は、体の前で両手を組むとそれを天高く突き上げながら……「フィニッシュいきますぞ!」と告げた。

「やっちまえ、ダンディ!」

 まだ片膝をついているグリンガムの背後に廻ると、羽交い締めにする。

「うぐっ……ぐうっ……」

「ダンディ・ドラゴンスープレックス!」

 羽交い締めにしたグリンガムをグイッと持ち上げ、そこでタメを作ると右回りに旋回しながら、ブリッジで後方へと頭から突き刺し、ブリッジしたままホールド。

 

(ワン、ツー……スリー)

 須永は心の中でスリーカウントを数えると、クラッチを切り立ち上がった。

 ゆっくりとグリンガムが崩れ落ち、ここにワーカーチーム"ヘビーマッシャー" は全滅した。

 

「良いチームでしたよ。次があれば最後まで堂々と挑んできて欲しいですなぁ」

 須永は観客の声に応えながら、大きな歓声と拍手の中を引き上げていく。

 

「ただいまの試合は、23分38秒、ダンディ・ドラゴンスープレックスにより、勝者ダンディ須永」

 闘技場進行役の、勝者を告げるコールがマジックアイテムを使って場内へと響き渡り、歓声が一際大きくなった。

 

(やはり、このアナウンスはよいね)

 皇帝直属という権威を使って、須永はプロレス風のアナウンスをするように要請。その甲斐あってこのような演出を須永の試合に限って行うことになったのだった。

 

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