「さて、迎えましたメインイベントは、注目の一番です。エンリ炎の三番勝負の第二番となります。本日もダンディ須永選手、ランポッサさんに解説をお願いしております」
実況と解説二人が挨拶をしていると、マイクを片手にバルブロがリングサイドに姿を見せた。
「よう、小娘。覚悟はできているな?」
「もちろん。私はバルブロさんみたいな腰抜けでも愚物でもないから」
軽く挑発で返す。ずいぶんと逞しくなったものだ。
「ふん。口だけならなんとでも言えるだろうよ。では、三番勝負、二人目の対戦相手を紹介しよう……コイツだ。くくっ、お前らのユニットは今日解散だな!」
バルブロは強気であった。それもそのはず、出てきたのは巨大なジャンガリアンハムスター森の拳王ハムスタだったのだ。
「は、ハムスタかよっ!」
セコンドのガガーランが驚きの声をあげ、ティは一瞬目を見開く。
「呼ばれて、出てきたでござるよ。今日はエンリ殿が相手でござるか」
エンリは以前ハムスタとタッグ戦で当たった際には見事にスリーカウントをとられている。
「ハムスタさん。今日は勝ちますよっ!」
ビシッと人差し指を突きつけ、エンリは勝利宣言! 場内は大きな拍手でエンリを後押しする。やはりエンリに勝ってほしいのだろう。
「おお、言うでござるな。だが口だけならなんとでも言えるでござるよ」
「私は勝つ!」
エンリの強気な姿勢にガガーランとティは目を見合わせた。私達の知ってる娘だよね? といわんばかりに。
「いい意気込みでござるな。ではこれからスリーカウントの奪い合いをするでござるよっ!」
それがプロレスだよ! とみんなが思ったところで、試合開始のゴングが鳴った。
「さあ、始まりましたエンリ炎の三番勝負第二番。相手はなんと森の拳王ハムスタです。バルブロさすがにえげつないですね」
「人事を尽くすのは大事なこと」
解説のランポッサが口にするが、お前が言うか? という空気になったのは否めない。
「まあ、想定内ですな。エンリがどう考えていたかは知りませんが」
この調子だと三戦目は武王だろうか。その前にハムスタに勝てるかが問題だが。
「ダンディさんは拳王の可能性があると思っていましたか?」
「ええ。私ならマッチメイクする可能性がありますな。実際エンリは以前負けていますからね」
リング上ではエンリがハムスタの顎にケンカキックを叩きこんでいる。
「ということはバルブロはなかなかやると?」
「そうですな。まあ悪くはないですよ」
須永はエンリの様子を見る。顔つきを見る限り、臆すことなく勝つことを考えて戦っているのは間違いがない。
(さて、ハムスタの弱点をつくか、長所をひっくり返すのか。どうでますかなエンリは)
エンリはしっかりと教えを守っているようだ。
「でやあああっ!」
エンリは気合いを入れて組みついた。
◇◇◇
「試合時間20分経過、20分経過!」
ここまでは主にエンリが攻め、ハムスタが受ける展開が続いていたが、決定打に欠ける。ハムスタは打撃に強いし、組みついてもあの体格である。もこもこして持ちにくいし、なにより重い。おそらくエンリの六倍から八倍くらいの重さはあるはずだ。
「こちらの番でござる」
ここでハムスタが攻勢に出る。強烈なぶちかましでエンリをはねとばすと、その場飛びのボディプレス。さらにダウンしているエンリを尻尾で思いっきり殴ると、リングに背をむけてコーナーへ。
「出ますか」
「さあ、出るかハムスターダストプレス……ハムスタが飛んだっ!」
ギュルンギュルン! ドッカーン!!
「ぎょえっ!」
悲鳴を上げたのはハムスタ。エンリは直前で転がって避け、ハムスタが壮絶な自爆。勢いをつけていた分ダメージが大きい。
「ハムスタさん、ごめんなさいっ!」
エンリはハムスタの尻尾を握ると、大きく振りかぶってフルスイング!
ハムスタの硬い尻尾が、持ち主の顔面にめり込む。
「ぎょええええええええええええ!」
「エンリ!」
「いけっ!」
「はい! 決めますよ。姉様、兄様!」
エンリは、自分より遥かに重いハムスタを仰向けに担ぎあげようと試みる。
「エンリ! エンリ! エンリ!」
絶叫に近い声援がエンリを支えるべく場内にこだまする。
「ぬおおおおっ!」
ガゼフばりの気合いを入れてエンリはハムスタを担ぎあげた!
「おおおっ!」
「これで、決めます! タワーハッカーボム!」
そのままハムスタの巨体をスライドさせ、開脚式のシットダウンパワーボムで叩きつける。これはライオネス・エンリの名の元となった女子プロレスラーのオリジナルフィニッシュ・ホールドである。
「スリーカウント入ったぁ! なんとライオネス・エンリ、新必殺技で森の拳王ハムスタから見事な勝利!」
「そんな馬鹿なっ!」
バルブロが唖然とするなか、ティとガガーランがエンリに駆け寄っていた。
「さて、バルブロ君はどうでますかな。エンリ……次の試合生き延びられますかねぇ……」
リング上では喜びを分かち合う華激団にバルブロが絡み言い合いをはじめていた。