ビーストマンの軍勢を目前にし、選ばれし者達が軍議を開いている。軍議といっても七人で立ったまま輪になって意見交換をしているだけだが。
当然ビーストマン側も須永達に気づいているが、七人程度が何をしているのかと様子見をしている。全員に行き渡るほどの量にはならないというのもあるかもしれない。
「敵は約五千ですな」
援軍のリーダーとして指名された須永は、別名である軍団長ロビーとしてではなく、個人であるダンディ須永としての参戦だ。王国との戦争では、併呑後を考えてマスクを被ったロビーの姿だったが、ジルクニフには竜王国を支配するつもりがないので、今回は隠さない。
「何も好き好んで、わざわざビーストマンの国と隣り合わせになる必要はないだろう。竜王国を壁にしておけば十分だが、あまり攻められても困るから、懲らしめてやれ。……それにあの若作り婆を傍に置くなど嫌すぎるしな」
ジルクニフは竜王国には利用価値はあるが、支配する価値はないと判断しており、その意にそうように須永は動く予定だ。
「五千か……」
「一人あたり七百がノルマってことだよな」
女王に謁見したガゼフ、ブレインも同様に個人での参加だ。ブレインは須永軍の副長の立場にあるが、ガゼフはそもそも帝国の臣ですらない。帝国プロレス所属の帝国民ではあるが。二人は久々に剣が役に立つと喜び、即答で参加を志願している。
「旧王国では、ガゼフ殿は一騎当千と考えられていたそうですし、ガゼフ殿が千、私は五百ですかなー」
「ダンディ殿……冗談はよしてくれ。貴方ならむしろ一人でも十分な気がする」
なおガゼフはランポッサから譲り受けた至宝をフル装備している。
また、クレマンティーヌも副長クレアではなく個人としての参加。
「やっぱり戦士長はその
「いや、私はもはや戦士長ではないんだが……」
普通にガゼフとも会話をしている。彼女とガゼフにはリング上での因縁があるが、それはあくまでもタイガー・ジェット・ティとガゼフ・ブラックの話に過ぎない。それはお互いにプロとして理解している。
そもそもティが王座をラキュースに奪われたのは実力ではないと本人も思っているし、ラキュースがティを超えたとは誰も思っていないだろう。
「とりあえずベルトは預けただけだしー」
これは強がりではない。実際ベルトを取り返すのはいつだってできるし、負けはないと考えている。
現状は盟友ガガーランが仇討ちを宣言しているので、気楽な立場で応援することにしている。
今回クレマンティーヌが援軍に選ばれたのは、彼女の漆黒聖典としての経験と高い戦闘力は外せないと判断されたからだ。
だが、この援軍の話自体は防衛戦前から出ており、彼女はチャンピオンのまま竜王国遠征に参加するつもりでいた。
「防衛して、地方興行と帝都興行の合間に参加して、チャチャッと片付けちゃえばいいよー」などと笑っていたものだ。
実際に言葉通り挑戦者ラキュースを3カウント寸前まで追い込んでいたし、油断以外にあの状況で負ける要素は皆無だったのだが、さすがにあの乱入は想定外だった。いくら耐久力が高くても、人間来ると思っていない攻撃は耐えきれず、普段以上に効くものだ。
結果としてベルトを失ったもののタイガー・ジェット・ティの価値が下がることはない。あくまでも
武王はティに丸め込みで3つとられたが、それでティが武王より強いとはならない。ティが上手かったという印象は残るが。
プロレスはその場その場の試合、その日の興行だけじゃない。次へと繋がるものがあるから、面白い。どのような勝ち方をしたかというのも大事である。
「レイナースは大丈夫ですかな?」
「はい。ダンディ様」
「レイナースには、一人つけておきます。警備の経験が豊富なゼロをね。ゼロ、できますな?」
「任せてくれ」
ゼロは現在他のメンバーとともに須永預かりとなっているが、実力を評価されて、唯一この遠征に参加している。もちろん、彼のテストも兼ねているが。
「ぶふふー。武者震いしてくるでござるなぁ」
ハムスタは相変わらずな口調だ。
(ハムスターが武者震い……いくらこの世界が翻訳こんにゃくを食べているからって、ハムスターが武者はないんじゃないかな……)
須永は心の中で苦笑したが、すぐに気を引き締めた。
ガガーランが仇討ちのあたりで、あれ?
と思った方は、ちゃんと読んでくださっている方ですね。
実は竜王国の話は、時系列としてはガガーラン対ラキュースより前の出来事だったりします。