神代麒麟「投稿が遅くなって申し訳ありません。今後も不定期更新となりそうですが、「もう1人のめぐねえ」を何卒よろしくお願い申し上げます。」ペコリ
樅路恵「評価をしてくださった方、ありがとうございます!」
佐倉慈「前話の投稿から日をまたいでいるから、前話までを見直してからみるとわかりやすいかもしれないわね。」
恵飛須沢胡桃「いやめぐねえ、そのための前書きコーナーだと思うんだけど・・・。」
丈槍由紀「そうだよね~。りーさんもそう思うでしょ?」
若狭悠里「・・・ふふふっ。」
祠堂圭「・・・若狭先輩?」
りーさん以外「「「「「「・・・・・・。」」」」」」
樅路恵 SIDE
中央階段を駆け下り1階の昇降口にある警報ベルを鳴らした後、すぐにまた階段を駆け上がる。【奴ら】が階段を下りてくる前に2年C組の教室に避難しなくちゃならない。幸い道中【奴ら】はおらず、2年C組まですぐに戻ることが出来た。
「祠堂さん、戻ったわよ!」
教室の扉をノックするが・・・何故か反応がない!?
「あ、あれ!?祠堂さん!?」
「あっすみません!今開けます!」
一拍間が空いて扉が開いた。すぐに中に入り、鍵をかける。
「はぁ~、少し焦ったわ。どうしてすぐに開けてくれなかったの?【奴ら】が3階から降りてきているのに・・・。」
「ご、ごめんなさい樅路さん。その・・・。」
祠堂さんが申し訳なさそうに俯くと、視線を教室の中央に向ける。つられて私も視線の先を追うと、私が首をはねた【奴ら】の死体が床に転がっていた。
(そういえば祠堂さんは
仕方なく窓にかかっているカーテンを取って死体に被せる。これで友達の死体を見なくてすむでしょう。
「ありがとうございます樅路さん。これで彩香も・・・。」
「いいのよ祠堂さん。それよりもこれで顔や体を拭いて。全部は拭けなくてもマシなはずよ。」
「あ、はい。助かります。」
祠堂さんのバッグに入れておいたハンドタオルを渡す。外に2分もいなかったが、この豪雨の中を走って私も祠堂さんもびしょ濡れだ。お姉ちゃんと全く同じのお気に入りの服なのだけど、背に腹は代えられない。
「アア・・・ヴヴヴゥゥ・・・」
「オオオ・・・アア・・・アア」
(中央階段から【奴ら】の声が聞こえる・・・。計算通り下に降り始めたわね。)
雨と雷の音しか聞こえない死んだ街に、警報ベルの音がけたたましく鳴り続けている。拭き終わった祠堂さんからハンドタオルを受け取って私も気になる所を拭く。
最後に改造刀を拭きだすと、祠堂さんが質問してきた。
「改造刀も拭くんですか?」
「そうよ。チャージに手間がかかる以外にも、雨の中では使えないデメリットがあるのよ。最悪ショートしてしまうわ。」
祠堂さんが驚いて改造刀を見つめる。この改造刀は電気で熱を発しているため、雨の中で使うと感電してしまう。スイッチを押さずにそのまま使うことも出来るが、この武器はそもそも雨の中で戦うことを想定していないからだ。
ガシャンガシャンガラララン!!
「っ!?今の「静かに」ムグッ」
(大きな音が右翼側階段の3階から聞こえた。この音はおそらく・・・。)
祠堂さんのバッグの無線機を取り出す。私が持っていた無線機は恵飛須沢さんに預けてあり、警報ベルが鳴りやむまでまだ時間がかかる。2人には警報ベルを使った作戦の全容を
私は無線機のスイッチを入れた。
丈槍由紀 SIDE
突然鳴り出した警報ベルの音についてめぐねえと話し合っていると、しばらくして何かが崩れる音が向こう側の階段辺りから聞こえた。
「めぐねえ・・・。もしかして今のバリケードが崩れちゃった音じゃ・・・。」
「大丈夫よ由紀ちゃん。生徒会室は去年補強工事をしてるからびくともしないわ。だから大丈夫
「アアアアアアァァ!!」ダンダン!!
((っ!!?))
そこまで大きな声を出して話していたわけじゃないのに、廊下の
「大丈夫、大丈夫よ由紀ちゃん。悠里・・・さん?」
「りー・・・さん?」
叩かれ続ける生徒会室のドアをじっと見続けているりーさん。りーさんもやっぱり怖・・・あれ?
(
(様子がおかしいわ!何で笑って
恵飛須沢胡桃 SIDE
(右翼側階段から何かが崩れたような音が聞こえた!この音は間違いなく・・・)
最悪な状況を考えていると、机に置いていた無線機が鳴り始めた!すぐにスイッチを押して出る。
「もしもし樅路さん?」
「もしもし、私恵♪今2年C組にいるのっ♪」
「えっ、樅路さん?」
「・・・ごめんなさいね。和ませようとしたのだけど無理があるわね。」
『こんな時にふざけないでください樅路さん。』
「わかったから2人共声のトーンを落として。警報ベルが鳴り続けてるとはいえ、あまり大声は出せないからね。」
((誰のせいだよ!))
おそらく圭も心の中で突っ込んでるだろうなとか思っていると、樅路さんが「落ち着いて聞いてね。」と前置きしてきた。
「2人とも校庭を見てごらんなさい。」
「校庭?」
言われて割れた窓に近づき校庭を見る。
(う、嘘だろっ!!?なんだよこの数は!!?)
雷で一瞬光った外の景色は、校庭だけでなく校門外の大通りにも大量の【奴ら】がうごめいていた!ぱっと見えただけでも300人はいる!よく見ると【奴ら】全員が
『な、なんですかこれっ。こんなの聞いてないですよっ。』
「落ち着いてと言ったでしょう?それと恵飛須沢さん、さっき右翼側階段から何かが崩れるような音が聞こえなかったかしら?」
「あ、ああ聞こえた。あれってもしかして・・・。」
「右翼側階段のバリケードが【奴ら】に破壊された音でしょうね。外の数百匹の【奴ら】も含め全て想定内よ。」
『想定内って・・・。』
「昇降口の入り口をよく見てみなさい。【奴ら】ほとんど昇降口に入ってこないでしょう?」
樅路さんに言われて昇降口の入り口付近を目を凝らして見てみる。確かにほとんど【奴ら】が入ってこない。寧ろ出ていく【奴ら】が多くて引き返しているようにも見える。
「今【奴ら】は《避難訓練中》なのよ。入っていくのがいたとしても、1階で鳴っている警報ベルに向かうでしょう。」
「そうか、じゃあ集まってきている【奴ら】はここまでこないんだな?」
『ええ。《避難訓練中》はね。」
「《避難訓練中》は・・・?ちょっと待ってくれ。じゃあ警報ベルが鳴り終わったら外の【奴ら】はどうなるんだよ?」
『あなた達も知っているでしょうけど、ここ巡ヶ丘高校は災害時避難場所に設定されているわ。巡ヶ丘高校のOBや付近の住人も皆ここへ向かう。ただの避難訓練と考えた【奴ら】は自宅に戻るかもしれないけど、そうでない【奴ら】は中に入ってくるでしょうね。』
『そ、そんな・・・。』
百人単位の【奴ら】がこれから校舎に雪崩れ込むことも確かに怖いけど、それ以上にこの異常事態全てが想定内でどうにか出来ると断言出来る樅路さんも怖い・・・。
「今から警報ベルが鳴り終わった後の作戦の詳細を説明するわ。まずは
「由紀ちゃん!!悠里さんを取り押さえて!!」
「りーさん!!ダメだよ!!」
「えっ!?」
(生徒会室からめぐねえと由紀の大声が!いったい何があったんだ!?)
『恵飛須沢さん、どうしたの?』
「生徒会室からめぐねえと由紀の大声が聞こえた!りーさんを取り押さえてって聞こえたぞ!」
『・・・・・・は?』
『何があったのかわかりませんか!?』
「いや、もう声はほとんど聞こえなくて『お姉ちゃんを信じましょう。』・・・え?」
あたしの返事を遮り、しかしきっぱりと『お姉ちゃんを信じる』と樅路さんは言い切った。
『お姉ちゃんは教師よ。
「お、おいっ!?はぁ~、なんなんだよ・・・。何が起こってるんだよ・・・。」
物理実験室から出られない以上、めぐねえと由紀に任せるしかない。りーさんに何があったかわからないけどあの2人ならきっと・・・。
佐倉慈 SIDE
よろよろと1歩ずつこの部屋唯一の扉に向かって歩く悠里さん。彼女が何をしようとしているのか、答えを導くのに数秒かかった。
(まさか扉を開けようとしている!?嘘でしょう!?)
慌てて由紀ちゃんに指示を出す。由紀ちゃんも悠里さんが何をしようとしているのか気づいて悠里さんに抱きつく。
「!?は、離して!るーちゃんがっ、るーちゃんがそこにいるのよ!」
(もしかして扉を叩いている【奴ら】を身内と勘違いしているの!?そんなことあるわけが・・・。でもこの状況はそうとしか解釈出来ない!)
私は一息深呼吸した。
感情的になっている生徒に同じように言葉をぶつけても相手は引かない。
由紀ちゃんもずっとは堪えられない。
ここからは間違った言葉や言い回しは許されない。
取り乱している悠里さんを必ず落ち着かせるのよ。
私なら出来る。
だって私は教師なのだから!
「悠里さん、落ち着いて聞いて。」
段階を踏んで、扉を叩いているのがるーちゃんじゃないことを説明する?
いいえ、ここはまず単刀直入に言い切るわ!
「外にいるのはるーちゃんじゃないわ。」
「そんなはずありません!るーちゃんが扉の向こうにいるのよっ!」
間違えた!?いや、反応してくれたことをプラスにとらえましょう!
「いいえ悠里さん。扉の向こうにいるのはるーちゃんじゃないわ。何故なら・・・。」
次はどう答える?
単刀直入に説明する?それとも段階を踏んで説明する?
感情的になっている今は、上手く説明が出来たとしてもその前に扉を開けてしまうかもしれない!
ただし、誰でも思いつく解答を最初に持っていくだけじゃだめだわ。
取り乱している悠里さんの興味を引く意外な答え。
「何故なら悠里さんが生徒会の役員じゃないからよ。」
「えっ、どうゆうことめぐねえ?」
「・・・私が生徒会の役員じゃないことが、るーちゃんと何の関係があるんですか?」
やったわ!悠里さんが止まった!
けどすぐに思考を切り替える。少しでも冷静になってくれた今なら、多少長い説明でも聞いてくれるはず!
「るーちゃんというのは悠里さんの妹さんのことよね?」
「そうですよ。瑠璃っていう大切な妹です。その妹が今すぐそこに
「瑠璃ちゃんっていうのね。なら悠里さん、どうして扉の前にいる瑠璃ちゃんが生徒会室の扉を叩いているのかしら?」
「えっ?」
「悠里さんは3年A組の園芸部よね?なら屋上か3年A組に向かうはずよ。そのことを知っているのかどうかに関わらず、どうしてここに悠里さんがいるって瑠璃ちゃんは考えたのかしら?」
「そ、それは・・・。」
悠里さんに会話の主導権を渡さず、悠里さんに疑問を投げかける。
扉の前にいるという瑠璃ちゃんが何故生徒会室を目指したのか?
悠里さんが冷静になってきたみたい。落ち着いたからこそすぐに自分でも納得の出来る理由を説明出来ない。
生徒会室は薄暗いけど、表情からイライラしているのがわかる。
ここで畳みかけるように質問をしたり、結論を言ってはダメだわ。
あえて間を与えて自分で考えさせることで、『妹がここまで来た』という自分が強引に導き出した答えを自分自身に否定させなければならない。
逆にそれさえできれば悠里さんなら・・・
「・・・・・・るーちゃん。」
私も悠里さんも由紀ちゃんも叩かれ続ける扉を見つめる。
聞こえてくるのは警報ベルの音と時々鳴る雷の音。
ドンドンと叩かれる扉の音。そして・・・
「アアア・・・ヴァァァァ・・・」
扉を叩く【奴ら】の声・・・。
悠里さんは床に座り込んでしまった。
「そう、ですよね。こんな状況で・・・るーちゃんがここまでこれる、わけないですよね・・・。」
「りーさん・・・。」
(よかった・・・。なんとか止めることが出来たわ。)
「佐倉先生、由紀ちゃん・・・。ごめんなさい。私、どうかしていたわ。こんな時に・・・。」
「いいのよ悠里さん。みんな辛いことや悲しいことを口に出さないで耐えていたのだから。私自身もそうだったから。」
「めぐねえも?」
「ええ、由紀ちゃん。『大人だから』『教師だから』と、何もかも一人で思いつめすぎたわ。だからこれからは1人1人の悩みをみんなで一緒に共有しようと思うの。一緒に考えた方が解決することも出来るかもしれないし、一人で悩みや不安を抱え込むよりも気持ちが楽になると思うわ。今すぐにというわけじゃないけどどうかしら?」
「いいと思います。私も今回のことで凝りました。家族のことが心配なのは私だけじゃないのに・・・。」
「・・・うん。」
(由紀ちゃん?)
「とにかく大事にならなくてよかったわ。・・・ぐっ!?」
「めぐねえ!?」
「佐倉先生!?」
限界だわ・・・。気にしないようにしてたけど背中が・・・。
「由紀ちゃん、またタオルを濡らして!私はもう1度傷の手当てをし直すわ!」
「ラジャー!」
ジリリリリリリリリリリリリリィィィン・・・
鳴り響いていた警報ベルの音が聞こえなくなってきた・・・。
警報ベルが止まったからなのか、意識が遠くなってきたからかもわからない・・・。
悠里さんと由紀ちゃんの献身に感謝しながら私は目を閉じた。
祠堂圭 SIDE
「警報ベルが鳴りやみました!」
「さぁ数百人の【奴ら】が雪崩れ込んでくるわよ!覚悟はいいかしら!?」
「よくないけどいいです!というか、恵飛須沢先輩に結局かけなおさなかったけど大丈夫なんですか!?」
「しょうがないじゃない!無線機で話してる最中に廊下の【奴ら】が教室の壁叩いてきたんだから!」
正直ものすごく不安だけど、【奴ら】が昇ってくる以上行動しなければならない。もう
「さあ扉を開けるわよ!」
「はい!」
ガララッ!!←教室のドアを開ける音
「「ヴァアアアア!!」」←【奴ら】の声
「「みゃああああ!?」」←2人の悲鳴
??? SIDE
未だ降り続ける雷雨は、巡ヶ丘市のとある建物にも容赦なく降り続けていた。
その建物の一室に一人の少女がベットの上で眠っている。
机には彼女のものと思われる熊耳の帽子とランドセルが置かれていた。
眠っている彼女の腕には点滴がつけられており、口元には酸素マスクがあることから、この建物が病院であり少女は重体であることが窺える。
しかし生命活動を確認できる装置には何も映し出されていない。
点滴の袋には何も入っていない。
病室の片隅に添えられている花瓶の花は枯れ、既に散っていた・・・。
病室の外についているネームプレートには、急いで作られたのか簡易的な名札がつけられていた。
以下、補足・・・とおまけ
1.【奴ら】となった圭の友達の死体を「
前話で樅路が組織の一員ということを晒したためこのように表記。「これ」呼ばわりする一方で【奴ら】が一瞬生徒達に見える等、矛盾した反応を見せている。
2.改造刀のデメリット・・・
チート地味た武器ですが、前話までに挙げた物以外にもこのようなデメリットがある。まだまだ細かいデメリットがあるが、ここでは割愛。
3.丈槍由紀「
現実逃避をしているというよりも、精神が不安定な状態。
しかしもとより明るくて優しい性格なため「自分よりも精神が不安定な仲間がいる場合」の行動力はすごいと思う。
4.「そこにいるのね、るーちゃん。」・・・
ついに精神崩壊を迎えたりーさん。生徒会室の扉を開けようとする。
5.その数300人以上!大挙として巡ヶ丘高校に押し寄せる【奴ら】・・・
十数分間にわたって死の街に鳴り響く警報ベル。放送室から流れるような音量とは比較にならない。樅路は全て想定通りと言っているが・・・。
6.佐倉先生・・・
本作でどうしてもやりたかったことの1つ。めぐねえ生存の2次小説は多いですが、佐倉先生にしか出来ないこと。教師が生徒を戒める展開を作りたかったです。
ウォーキングデッドという作品の「リー・エヴェレット」というキャラクターと佐倉先生が重なり、ウォーキングデッドのような言動の選択をさせてみました。
佐倉先生が国語教師だったであることもこのような展開にした理由の1つです。状況に応じてどのような言葉を選び・会話をすればよいのかを佐倉慈先生に考えて生徒を導いて欲しかったのでこのような内容に。
りーさんには悪いとは思っていますが、佐倉先生が活躍する話を作れてよかったです。
7.ガララッ!!←教室のドアを開ける音
「「ヴァアアアア!!」」←【奴ら】の声
「「みゃああああ!?」」←2人の悲鳴・・・
本作ではコメディ:シリアスを50:50になるように考えておりますが、流石に数百人の【奴ら】が上がってくる状態でほのぼのな会話は入れにくいです。
それにしても、樅路と圭の関係が自分で作っていて面白いです。
8.何処かの病院にいたるーちゃん・・・
本作では漫画版の設定を採用。何故病院にいるのかは次回以降で。
生死不明
ネームプレートに血糊がついているということは病院も既に・・・。
11話では、ついに精神崩壊したりーさんをめぐねえと由紀が止める話でした。
胡桃は3階の物理実験室。
めぐねえ・由紀・悠里はその隣の生徒会室。
そして樅路と圭は2-Cを出たところです。
もう少しで合流出来ますが、3階には・・・。
細かい矛盾点等は本作設定ということでご了承ください。
誤字脱字や明らかな矛盾点等があれば、感想にてご指摘いただけると幸いです。