話がここまで出来ていたのですがいろいろとありまして・・・。
短いですがどうぞ。
SIDE 樅路恵
ようやく3階に到着した私と祠堂さんだったが、私1人先行して安全確保をしようとした判断は間違っていた。恵飛須沢さんと合流しているだろうと確信していた変異種『ヴォミター』を倒せたところまでは良かった。しかし足を痛めている祠堂さんを1人にしてしまったのは私の軽率な判断ミスだった。『300匹中2~3匹が突然変異する』と実験結果で記憶はしていたが、だからこそ「いても1匹」、「もう1匹程いたとしても銃で即座に対処可能」と考えていた。実際この通り対処出来たのだから、計算通りの過程である。何より【奴ら】のことを最もよく知っているのは私だ。私がウイルス開発最高責任者なのだから。【奴ら】の行動など手に取るようにわかる。
しかし彼女達にとっては予期せぬ想定外の事象であったはずなのだ。作戦発案時、【奴ら】が3階に残っている可能性があること、突然変異『ヴォミター』のこと、本物の銃を持っていること等までは話さなかった。敢えて話さないことで余計な混乱を与えたくなかったし、この作戦を決行して皆を助けたかった。
この考えが完全に裏目に出た。どんなに事が上手く運んでいても銃を使ったのは失敗だった。簡単に相手を殺せる武器を私なんかが持っていたら猶更だ。
さらに銃を発砲したことで、聴覚が十数秒低下したことは完全にイレギュラーだった。耳栓も無しに強力な銃を発砲したら耳鳴りを起こすのは必然。その結果、意図せず丈槍由紀と若狭さんへの指示が大声になってしまった。こんなことに気づけなかった自分に対して感情を表に出してしまった。その結果
「皆、手を動かしながら聞いて!これからバリケードの再構築の作戦を説明するわ!」
「「「「・・・・・・。」」」」
この始末である。現在私達は中央階段前のバリケードを総出で直している。崩れた机と椅子を立たせて階段前に置く。まだ持っていたガムテープをペタペタ貼って固定する。5人で行っているため、計算通りにバリケードが出来上がっていくが空気が重たい。誰1人返事をしてくれない。
「・・・だけどその前に、あなた達に正直に言わなきゃならないことがあるわ。あなた達も訝しんでいるのでしょう。「この人はパンデミックについて何か関わっているんじゃないか」って。」
ゴクリ・・・
誰かの喉が鳴る。やっぱりそうよね。ここまで怪しすぎる化学者を疑わない方がおかしい。若狭さんなんて敵意を隠そうともせず、私を睨みつけてくる。
本当はバリケードを作成し終わって、3階と屋上の安全が確保出来次第話すつもりだったが、こうなっては仕方ない。
「「えっ!?」」
「最高・・・責任者!?」
「・・・
祠堂さんと恵飛須沢さんは普通に驚き、若狭さんは最高責任者のワードに反応する。
だけど丈槍由紀・・・「めぐにゃん」って・・・嬉しいけど・・・。
「皆言いたいことや聞きたいことが沢山あるはずだけど、1つだけ信じて欲しいの。」
「いいえ、信じません。」
全員が即答した彼女を見る。若狭悠里が改造銃を私に向けていた。
「お、おい悠里!今はそんなことしてる場合じゃないだろう!」
私と恵飛須沢さんが理科室に避難する前に【奴ら】と戦った際落とした私の改造銃。それを拾っていたのね。自身が武器を持っている恐怖からなのか、銃を握る両手が震えている。それでも目にははっきり私を否定する意思を感じた。
「胡桃先輩の言う通りです!見えてないんですか!?聞こえてないんですか!?もう【奴ら】がすぐそこまで来ているんですよ!!」
「アアアァァァァ・・・」
「ヴァアウウアアァァ・・・」
「ヴヴゥゥアアアォォォ・・・」
「改造銃の中身は【奴ら】に当てるだけで倒せる専用の液体が入っているわ。正直に話すと人間にも洒落にならないダメージを与えられる。」
ちらりと後ろ、階段を見る。既に【奴ら】の先頭は階段を2階と3階の折り返し地点まで上ってきていた。
(3階到達までの残り時間を修正。【奴ら】への対応策を変更。)
脳内で瞬時に全てを計算する。漏れがないようにもう1度再計算と趣味レーションを行う。・・・オールクリア!
「今更私のことを信じてなんて言わないわ。『あなた達に1番信じてもらいたいこと』それは・・・」
一旦息を吸って吐く。そして彼女達に1番信じてもらいたいことを訴えた。
「お姉ちゃんは何も知らない!あなた達の佐倉慈先生は正真正銘世界で1番信じられる教師よ!」
お姉ちゃんの名前が出てきて4人とも緊張が緩む。本当は『緊急避難マニュアル』のことがあるから、一概に何も知らないはずはないのだが、少なくとも私達のような加害者側ではないことだけは分かって欲しかった。
「それともう1つ。これは信じなくても結構よ。信じるのではなく証明するのだから。」
「証明?」
「もうそこまで来てるぞ!」
若狭さんが疑問を口にし、恵飛須沢さんが階段を見て叫ぶ。
「そうよ。ただしこの問題は机上の計算を実技で証明するわ!あなた達4人を必ず守り抜いてみせる!そう・・・」
床に倒れ伏した顔の弾けた【奴ら】の前に立ち、改造刀の電源を入れる。
今、私はどんな顔をしているのだろう。
決まっている。この知識を初めて誰かを守るために活かせる喜びと、実験が出来る私個人の性格が出ているのだから。
熱が籠った改造刀をグサリとうつ伏せに倒れている【奴ら】に笑顔でぶっさす!
「ひっ!」
「な、何してるんですか!?」
丈槍由紀の悲鳴も祠堂さんの声も無視し、5回、6回と改造刀をぶっさす。すると死体が勢いよく発火した。
死体が燃えていることもお構いなしにそれを両手で引っ掴むと、未完成のバリケードの上から、階段をのぼってきている先頭の【奴ら】にぶん投げた。
「ヴァアアアアア・・・!」
「グァアウウゥゥ・・・!」
結果、雪崩のように階段を上ろうとしていた【奴ら】が崩れ落ちていった。おまけに、重なった【奴ら】に火が燃えうつっていく。
「全員1度しか言わないからよく聞いて頂戴。さっきも言った通り私はパンデミックを引き起こした側の人間。でもだからこそ【奴ら】のことはよく知ってる。それを踏まえてあなた達が取れる行動は3つ。」
背後の4人を見ずにバリケードを作成しながら彼女達に選択肢を与える。
「1つ目はあなた達全員お姉ちゃんのいる生徒会室に閉じこもり、私1人で3階へのバリケードを作る。2つ目は私と協力してバリケードを作る。3つ目は私を無視してあなた達だけで作戦を練ってどうにかする。30秒以内に4人で決めなさい!」
机を積み終えた私は、ガムテープで机同士を固定し始めた。
若狭悠里 SIDE
3つの作戦を立案した裏切り者は、言うだけ言ってバリケードの作成を再開しだした。
「よし、時間がないから多数決で決めるぞ!ちなみに3つめの案はなしだ!最高責任者様より良い作戦なんて思い浮かばないからな!どんな結果になっても恨みっこなしだ!」
(胡桃も思う所があるのか、皮肉めいたことを言っているわね。まあ当然だけれど・・・)
「私は当然1つ目よ。だって「圭は?あたしは2つ目だ。」っ!?」
理由を言おうとしたら胡桃に遮られたうえに、あの人と協力する案を胡桃は選んだ!?
「私も2つ目の案がいいと思います。」
「あなたまでどうして!?犯罪者と協力するつもりなの!?」
「私は樅路さんに助けてもらってなかったら【奴ら】に殺されていたからです。それに今は犯罪者の手も借りたい状況だということが若狭先輩はまだわからないんですか!?」
この圭という娘は樅路恵に助けられてここまで来れたのね。なら彼女を信頼しているのも仕方ないのかもしれないわね・・・。
「由紀は?・・・おい、由紀!?」
私も圭さんも由紀ちゃんを見る。由紀ちゃんはただ職員室の方をじっと見つめていた。
「由紀ちゃんどうしたの!?」
「まさか【奴ら】が職員室にいるのか!?」
「わかんない。でも・・・職員室から何か聞こえない?」
由紀ちゃんに言われて皆で耳をそばだてる。
雨の音・・・、雷の音・・・、ガムテープを貼るあの人の音・・・、そして・・・
「プルルルルルルル♪」
SIDE樅路恵
大急ぎでガムテープで机を固定してバリケードを完成させた。ここ中央階段が最も【奴ら】が雪崩れ込む数が多いと断定出来るため、そのことを考慮すればまだ不十分。しかし・・・
(・・・これでしばらく時間は稼げそうね。)
机と椅子のバリケードの隙間から階段下の【奴ら】を覗き見る。2階と3階の折り返し付近まで転がり落ちた【奴ら】が燃えている。窓ガラスが割れていて外から雨が吹き込んでいるため、そう長くは燃えていないでしょうけど十分な時間を稼げるだろう。
「めぐにゃん!職員室の電話が鳴ってるよ!」
「電話・・・?まさかあいつっ!丈槍由紀、このバリケードの中に柚村貴依さんの机ってある!?」
「ふえっ!?えーちゃんの机ならここのバリケードを作った時に使ったけど、何かあるの?」
「この学校のエロ狸こと校長先生はそのきーちゃんが大好きな変態でね、小型カメラや盗聴器がついているのよ!とにかく職員室に行くわよ!」
後ろで「ええ!?」とか「校長先生が・・・」とか言ってる彼女達と一緒に、職員室に向かった。
職員室につくと室内をざっと見渡して【奴ら】がいないことを確認する。簡易的ではあるが、電話が鳴り続けている状態で反応しない【奴ら】はいないだろうという判断だ。
「祠堂さんはドアの鍵をかけた後、室内を警戒して!丈槍由紀、恵飛須沢さん、若狭さんはこの2つの教員机の下にキャスターがついてるのが見えるかしら?」
「ああ、もしかしてバリケードに使うのか?けど大きすぎて職員室からは出せないぞ。」
「そうよ。だからバリケードに使うのは諦めてたんですよ。」
「あのねあなたたち・・・。いや、今はいいわ。職員室のドアは誰でも取り外せるようになっているわ。3人でロックを外して入口近くまで寄せておいて。バリケードまで運んだら3階の安全を確保して生徒会室に戻りましょう。そこで全てを話すわ!」
「・・・わかりました。樅路さんを信じます。」
職員室に限らず、部屋に出入り口より大きな物を入れたい場合、室内で部品を組み立てたりドアを取り外し出来るようにしたり等、方法は沢山ある。ちなみにキャスターを校長に指示してつけさせたのは私である。緊急避難マニュアルにドアの外し方も記載したはずなんだけど・・・?
「めぐにゃん、電話出なくてもいいの?」
「出るわよ!はぁ、あいつとはあまり話したくないのよね。」
ため息を吐きながら校庭で【奴ら】になっていた佐藤教頭の机で鳴っている電話に出る。
「もしも「さっさと出んか!このシスコン狐がぁ!!」「はぁ!?何言っちゃってくれてんのこのエロ狸!!」
久しぶりに聞く同志(私と同じ加害者側という意味で)の声。いきなりの罵声につい言い返してしまった。
「シスコン狐のことじゃ!姉のために最新のワクチンも持ってきているじゃろ!?柚しゃんがっ!柚しゃんがっ!このままだと完全に【奴ら】になってしまう!!」
「柚しゃんって・・・まだあんた以外にも生き残りがいるの!?」
「おるぞ、神山先生もな!・・・ええと、樅路さん?」
「っ!?神山先生ですか!?いつも姉がお世話に
「いいからワクチン急いで持ってきてくれ!柚しゃんがっ!柚しゃんがっ!」
「「黙れエロ狸!」」
神山先生まで電話の向こうで怒鳴った。まぁあれと10日間も地下にいたら、そりゃ精神的にもきついでしょうね・・・。
「とにかくエロ狸!こっちもあまり時間がないのよ!警報ベルを使ったことで【奴ら】の大群が押し寄せてきてる!柚村さんの手当ては神山先生にさせるから、あんたは校内の【奴ら】を少しでも引き付けて!ご自慢のショットガンは持ってる!?」
「あるぞ!手りゅう弾もな!」
それは聞いてない
「・・・まぁいいわ。シャッターを開けて音で【奴ら】を引きつけて頂戴。危なくなったらシャッターを下ろして構わないわ。2分間耐えれる?」
「もちろんじゃ!!儂の柚しゃんを任せたぞ!」
あんたのものでもない
「神山先生聞こえますか?」
「聞こえてます。・・・あなたのことは校長から聞きました。」
「!」
「でも今は何も聞きません。柚村さんを助けてください。」
(エロ狸、私のことも含めて全部話したか。でも今は好都合だわ。さすがお姉ちゃんの先輩、今の状況を一番理解している。)
「こちらこそ。必ず柚村さんを助けます。まずは柚村さんの容体を教えてください。」
こうして事態が切迫するなか、電話越しに柚村さんの処置が始まった。
以下、補足・・・とおまけ
1.神代麒麟「私達の戦いはこれからだ!」
皆 「「「「「この裏切り者~!!!!」」」」」
神代先生の次回作にご期待ください!
細かい矛盾点等は本作設定ということでご了承ください。
誤字脱字や明らかな矛盾点等があれば、感想にてご指摘いただけると幸いです。
え?「打ち切りっぽいのに感想も何もない?」・・・。
【凍結】のままということで・・・。