もしも、比企谷八幡に友人がいたら   作:一日一善

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初投稿なのでご容赦ください
男オリ主とタグ付けしましたが、基本視点は比企谷です



第1話

「なぁ、比企谷。私が授業で出した課題はなんだったかな?」

 

「……はぁ、『高校生活を振り返って』というテーマの作文でしたが」

 

「そうだな。それでなぜ君は犯行声明を書き上げてるんだ?テロリストなのか?それともバカなのか?」

 

平塚先生はため息をつきながらも、こちらを睨みつけてきた。

 

「比企谷。この舐めた作文は何だ?一応言い訳くらいは聞いてやる」

 

「い、いや、俺はちゃんと振り返ってますよ?近頃の高校生はらいたいこんな感じじゃないでしゅか!」

 

噛みまくりだった。あいつのおかげで人と話すのには多少慣れてきたが年上の女性となるとそう簡単にはいかないらしい。

 

「私はな、怒っているわけじゃないんだ」

 

昔なら面倒くせぇパターンだと思うところだが今はそうでもない。

あいつと会って人に優しくされることを覚えてしまったからだろうか

そんなことを思い出し次の言葉を聞く。

 

「君は部活やってなかったよな?」

 

「はい」

 

「……友達とかはいるか?」

 

「いますよ、一人だけですけど」

 

そう言うと平塚先生は驚いた表情を見せた。

 

「君の腐った目を見る限り友達などいないものだと思っていたよ」

 

意外にも、俺の言葉を疑うことなく信じてくれたらしい。

 

「これでも私は教師だ、それくらいわかるさ」

 

少し微笑みながら平塚先生は言った。

 

「……そうっすか」

 

自分を信じてもらえることに柄にもなく少し嬉しく思ってしまった。

 

「で、そいつはどんな奴なんだ?」

 

「別に、普通のやつですよ、強いて言うなら人の感情に割と敏感なくらいですかね」

 

「普通のやつが君の友達になれるとは到底思えないんだがな」

 

「まぁ、いろいろあったんですよ」

 

「そうか、深くは聞かないさ」

 

平塚先生は急に遠慮がちにこちらを見る。

 

「……話を戻すが、彼女とか、いるのか?」

 

話戻ってないですよ、平塚先生。

 

「今は、いないですけど」

 

「そうか…」

 

平塚先生はしばらく思案したのち、こちらを見た。

 

「よし、こうしよう。レポートは書き直せ」

 

「はい」

 

まぁ、そうなるよな。

 

これで終わりだと思っていた

 

が、そうは問屋が卸さなかった

 

「君の話を聞く限り友達もあまりおらず、彼女もいないときた、それは他人との交流が極めて少ないからだろう、なので、君には奉仕活動を命じる。」

 

思わず現実から目を背けて考える、なぜその結論に至ったのかと。

 

「……ちなみに奉仕活動って何すればいいんですか?」

 

「ついてきたまえ」

 

そう言うと間髪を入れず立ち上がる。

 

「おい、早くしろ」

 

惚けていた俺はそそくさと後を追った。

 

 

 

 

平塚先生が向かっているのはどうやら特別棟のようだ。

 

「着いたぞ」

 

俺の道中の抵抗も虚しくどうやら目的地まで来てしまったらしい。

 

その教室は机と椅子が無造作に積み上げられているだけのいたって普通の教室だった。

 

しかし、そこには一人の少女がいた。

 

「平塚先生。入るときにはノックを、とお願いしたはずですが」

 

「ノックしても君は返事をした試しがないじゃないか」

 

「返事をする間もなく、先生が入ってくるんですよ」

 

「それで、そのぬぼーっとした人は?」

 

彼女の瞳が俺を捉える。

 

俺はこの少女を知っている。

 

無論、名前と顔を知っているだけで会話をしたことはない。

 

それに、あの事故の時のことは彼女は知らないのだから。

 

だからこれが、彼女、雪ノ下雪乃との初めての出会いになるのだろう

 

 

 

 

しばらくすると平塚先生はそのままさっさと帰ってしまった。

 

「そんなところで立ってないで座ったら?」

 

「おう」

 

多少の警戒はみられるが雪ノ下はそこまで敵視はしてこなかった。

 

一方的とはいえ知っていたのが功を奏したのか、俺がきょどってしまうことはなかった。

 

正直こんなところで会うことになるとは思わなかった。あいつに自慢したら羨ましがるだろうか。

 

「何か?」

 

「いや、俺は何をしたらいいんだ?」

 

俺がそう言うと、彼女は不機嫌そうに言葉を発した。

 

「……そうね、ではゲームをしましょう」

 

「ゲーム?」

 

「そう。ここが何部か当てるゲーム。さて、ここは何部でしょう?」

 

俺は教室を見渡し、手がかりを探す。

 

「他に部員は?」

 

「いないわ」

 

ここまでで分かっていることはあまりないが、それを元に考えれば自ずと答えがでるはずだ。

 

「文芸部か」

 

「はずれ」

 

結構いい線いったと思ったんだけどな。

 

「それじゃ何部なんだよ?」

 

「では、最大のヒント。私がここでこうしていることが活動内容よ」

その後も色々考えるが

 

「降参だ。さっぱりわからん」

 

すると、不意に雪ノ下が立ち上がる。

 

「持つ者が持たざる者に慈悲の心をもってこれを与える。人はそれをボランティアと呼ぶの。途上国にはODAを、ホームレスには炊き出しを、モテない男子には女子との会話を。困っている人には救いの手を差し伸べる。それがこの部の活動よ」

 

「ようこそ、奉仕部へ。歓迎するわ」

 

あまり歓迎はされていないようなことを面と向かって言われて、ちょっと涙目になった。

 

「平塚先生曰く、優れた人間は憐れな者を救う義務がある、のだそうよ。頼まれた以上、責任は果たすわ。あなたの問題を矯正してあげる。感謝なさい」

 

雪ノ下の成績や容姿を考えると強ち大袈裟ではあるまい。

 

だが、俺が憐れむべき対象などではないことを説明してやらねばいけない。

 

「……俺はな、自分で言うのもなんだが、そこそこ優秀なんだぞ?実力テスト文系コース国語学年三位!顔だっていいほうだ!彼女がいないことと友達少ないってことを除けば基本高スペックなんだ!」

 

「……あなた友達いるのね。でも、そんなことを自信満々に言えるなんてある意味すごいわね……。変な人」

 

「うるせ、お前に言われたくねぇよ。変な女」

 

本当に変な女だ。俺が病院で小町に聞いた雪ノ下雪乃という女子のイメージとはかけ離れている。

 

「……もう少し大人しいと思ってたんだけどな」

 

「何か言ったかしら?」

 

「いや、なんでもない」

 

「そう、まずは居た堪れない立場のあなたに居場所を作ってあげましょう。知ってる?居場所があるだけで、星となって燃え尽きるような悲惨な最期を迎えずに済むのよ」

 

「『よだかの星』かよ。マニアックすぎんだろ」

 

ここに来て初めて雪ノ下は驚いて目を見開いた。

 

「……意外ね。宮沢賢治なんて普通以下の男子高校生が読むと思わなかった」

 

その後の言葉のドッチボールの末俺が懇願すると雪ノ下はようやくその舌刀を納める。

 

「さて、これで女子との会話シュミレーションは完璧ね。これで大抵の女の子と会話できるはずよ」

 

「解決法が斜め上過ぎるだろ」

 

そのあとは耳が痛くなるような静けさだけが残った。

 

 

 

 

その静寂を打ち破るように、ドアを開ける無遠慮な音が響いた。

 

「雪ノ下。邪魔するぞ」

 

「……ノックを」

 

「悪い悪い。様子を見に寄ったが、仲が良さそうでなによりだ。比企谷はこの調子で他人との交流を深めていきたまえ。ではな」

 

「ちょっと待ってくださいよ」

 

「どうした比企谷?」

 

「ここ、結局なにするんですか?」

 

「雪ノ下は説明してなかったか。端的に言えば自己変革を促し、悩みを解決することだ。」

 

「あの……別に俺自己変革とか求めてないんですけど」

 

「いや、君に求めているのは変革ではない寧ろ後者の方だ。あんな作文を提出したときはそれも考えたがな。だか、君ははっきりと言っただろう自分には友がいると、あの作文からどれだけ君がひねくれているのかくらいわかる、そんな君が誤魔化さずに言い切った、そんな友達がいるなら大丈夫だ。それに最初に言っただろ交流をしろと、ここで人の悩みを聞いて解決してみるといい、君の成長に繋がるだろう」

 

「……彼に誰かの悩みを解決できるとは到底思えないのですが」

 

雪ノ下が小さくそう言うと平塚先生はにやりと笑った

 

「それではこうしよう。これから君たちの下に悩める子羊を導く。彼らを君たちなりに救ってみたまえ」

 

「嫌です」

 

意外にも、対抗することなくそう言い放った。

 

俺としても同意見だったので頷いておく。

 

「まぁそう言うな、ならば君達にもメリットを用意しよう。より多く依頼者の悩みを解決した方がなんでも命令できる、というのはどうだ」

 

そう聞いた瞬間雪ノ下が後ずさり体を抱えていた。

 

「この男が相手だと何を言われるか分からないのでお断りします」

 

「偏見だ、高二男子が卑猥なことばかり考えてるわけじゃないぞ」

 

世界平和とか、うん、あとは特に考えてないな。

 

「どうした雪ノ下勝つ自信がないのかね?」

 

するど、雪ノ下はムッとした表情になる。

 

「……いいでしょう。受けて立ちます」

 

「決まりだな」

 

「勝負の裁定は私が下す。適切に妥当に頑張りたまえ」

 

そう言うと今度こそ先生は教室を後にした。

 

あれ、俺の意思どこ?

 

 

 

 

残された空間にいる俺たちに会話なんてあるはずもなく、

そのままま下校時間を迎えた。

 

雪ノ下は何も言わず颯爽と帰っていった。

 

あのやろう

 

「……帰るか」

 

俺は一人下駄箱へと向かった。

 

「よう、八幡」

 

そこには聞き慣れた俺の唯一とも言える友がいた。

 

「なんでいんだよ、拓也」

 

「お前が職員室に呼び出されて帰ってこないから待ってたんだよ」

 

まったく律儀な奴だ。

 

「悪かったな、色々あったんだよ」

 

「なんだ、お前にもついに青春がきたのか?」

 

「うっせー、そんなんじゃねーよ」

 

「ま、帰りながらでも聞かせてくれよ」

 

「おう」

 

こうして、友達と帰りたわいもない会話をする。

 

そんな当たり前が俺にとっては青春と呼べる大事な1ページなのかもしれない。

 

そんな柄にもないこと思いながら帰路へとついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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