誤字脱字の報告をいただきました。わざわざありがとうございます。
中間試験二週間前。善良なる高校生男子たるもの、学校帰りにファミレスによって勉強するものだ。それも友達とな!
「何一人でドヤ顔決めてんだよお前」
「ばか、お前、今まさに俺は善良な男子高校生が歩む道のりを歩いてんだから邪魔すんじゃねーよ」
本来ならば俺の家でやるはずだったが、小町のテストと被ってしまったため追い出される形でファミレスになったのだ。
範囲分の書き取りを終え、互いにドリンクを飲み干してしまったようでじゃんけんに負けた俺がカップを二つ持って立ち上がったときである。
「ゆきのん、サイゼじゃなくてごめんね。ミラノ風ドリアはまた今度だね。あ、あとディアボラ風ハンバーグがオススメだったんだけど……」
「私は別にどこでも構わないわ。やることは同じだもの。……それにしても、ハンバーグってイタリア料理だったかしら」
聞き覚えのある声がした。
「あ!」
「……あら」
「ん?」
「げ」
四人とも顔を合わせて固まる。なんだ、この四つ巴。
入り口から入ってきたのは制服姿の雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣。残念ながら俺の部活メイトである。ちなみに部活メイトとは文化系部活動の部員たちを指す言葉で、今勢いで初めて使ってみた。
「ヒッキーもたっくんも、ここで何してんの?」
「何って……なあ」
「まぁ、勉強だけど」
「おお、奇遇。やー、あたしとゆきのんも勉強をしにちょっとここまで……じゃ、じゃあ、一緒に勉強会、する?」
由比ヶ浜は俺たちの顔を見渡していった。
「俺は別にいいけど。まぁ、やることは同じだしな」
「俺もいいぞ、周りに二人増えたところで変わらんしな」
「……そうね。することに変わりはないし」
珍しく全員の意見がかぶった。俺たちの言葉に由比ヶ浜は一瞬「ん?」と小首を捻ったが、受け流すことにしたのか「じゃ、決まりー」と俺の座っていたテーブルへと駆け寄った。
「由比ヶ浜は八幡の隣でいいよな?」
「え、う、うん!」
そういうと追加のドリンクバーを追加して八幡と飲み物を取りに行った。
「じゃ、雪ノ下は俺の隣な」
「そうね、なぜあなたが仕切るのかわからないけれど、それで構わないわ」
「俺がやらないと、誰もやらんだろ、このメンツだと。それにいくら勉強に支障がないとはいえなるべくなら由比ヶ浜を近づけたくないというのが本音だ。あいつと勉強したことはないが、近くにいてもいいことはないだろうしな」
「人に言えたことではないのだけれど、……あなた、時々かなり辛辣になるわね」
「変に溜め込んでしまうよりは言いたいことは言っちまった方が楽なんだよ、もちろん人は選ぶがな」
俺たちは由比ヶ浜たちと入れ替わりで飲み物を取りに行った。すると雪ノ下がしげしげとドリンクバーを眺めている。コップを右手に、左手になぜか小銭を持っていた。
「……ねぇ、佐藤くん。お金はどこに入れるのかしら?」
「は?」
マジですか。雪ノ下さん、事実は小説よりも奇なり。初めてこの言葉を体現する人見ましたよ。いったいどんな超上流階級で育ったんですかね。
「いや、お金入らないぞ、一定額払えばここのドリンクは全て飲み放題だからな」
「……日本って豊かな国よね」
ふっとどこか陰った笑みを浮かべ、よくわからない感想を言いながら雪ノ下は俺に順番を譲った。俺がボタンを押しごーっと音を立ててメロンソーダがコップに満ちる様子をキラキラした目で見ていた。
「……やってみろよ、間違ってたら言うから、お前の場合下手に言うよりは自分でやる方がいいだろ」
「……そうね」
危なっかしい手つきながらも雪ノ下はお目当てのドリンクを手に入れ、四人揃って席に着く。いよいよ勉強会の始まりである。
「んじゃ、始めよっか」
由比ヶ浜の合図とともに、雪ノ下はヘッドホンを取り出すとすちゃっと装着する。俺と拓也はそれを横目に見ながらイヤホンを嵌めた。
それをみて、由比ヶ浜が驚愕の表情をした。
「はぁ⁉︎なんで音楽聴くのよ!」
「や、勉強のときは音楽聴くだろ」
「ある程度たつと音楽が聞こえなくなって集中していることもわかるしな」
「そうね、佐藤くんの言う通りよ、聞こえなくなるとモチベーションも高まるし」
「へー、ってそうじゃないよ!勉強会ってこうじゃないよ!」
ばんばんとテーブルを叩いて由比ヶ浜は抗議する。すると、雪ノ下は顎に手をやり、考え込む仕草をした。
「……じゃあ、どんなのが勉強会なの?」
「えっと、出題範囲確認したり、わからないとこ質問したり、……まぁ、休憩も挟んで、あとは相談したり、それから、情報交換したり。たまには……雑談もするかなぁ?」
「ただ喋ってるだけじゃねぇか……」
勉強会なのに、何一つ勉強してない。むしろ、そんな奴ら邪魔じゃないのか。
「まぁ、わかんねぇところを聞くのはいいと思うが、勉強ってのは基本は一人でやるもんだろ」
「そうよ、そもそも勉強は一人でやるようにできているのよね」
雪ノ下が何か悟ったように言った。
これには俺も同意だ。
つまり、ぼっちになると勉強できるよ!ということである。おい、これ進研ゼミのマンガに書いておけよ。
最初こそ納得のいかない表情を浮かべていた由比ヶ浜だが、俺も拓也も雪ノ下もひたすら無言で勉強していると、諦めたのかため息一つちいて勉強を始めた。
そうこうしているうちに五分経ち、十分経ちと時間は経過していく。
ふと三人の様子を見てみると、由比ヶ浜は小難しい表情のまま、手が止まっていた。一方の拓也は英語を、雪ノ下は数学の問題を解き続けている。あまりの集中力に声をかけることがためらわれたのか、由比ヶ浜は俺に視線を向けた。
「あ、あのさ……この問題なんだけど……」
俺に聞くのはプライドが許さないのか、えらく恥ずかしそうに由比ヶ浜が聞いてくる。
「『ドップラー効果』か……。俺、理系は捨ててるからよくわからん。代わりに『グラップラー刃牙』なら説明できるんだけどそれじゃダメか?」
「全然ダメだよ!プラーしか会ってないよ⁉︎」
やっぱりだめか。説明にはちょっと自信あったんだが。
由比ヶ浜は諦めたように教科書とノートを閉じると、空になったグラスを手に立ち上がろうとしたとき、あ、と何かに気づいた声を上げた。
釣られて俺もそちらを見ると、そこには野暮ったいセーラー服を着た、めちゃくちゃ可愛い、美少女がいた。
「妹だ……」
俺の妹の小町が楽しそうに笑いながらレジの前に立っている。横には学ランを着た男子。
「悪い、ちょっと」
言って俺は席を立つと、すぐさま後を追いかける。だが、店の外へ出たときには二人の姿は見えなかった。
しぶしぶ店内に戻ると、由比ヶ浜が話しかけてくる。
「あー、えっと、今の妹さん?」
「ああ。何故あいつが男子とファミレスに……」
あまりの衝撃にもう勉強どころではない。俺の妹が知らない男とファミレスにいるなどあってはならないことだ。
「デート中だったのかもねー」
「馬鹿な……、ありえない……」
「そっかなー。小町ちゃん可愛いし彼氏いても普通じゃない?」
「兄の俺に恋人がいないのに妹に恋人がいてたまるか!兄より優れた妹などいねぇ!」
「うるせぇ、シスコン」
「頭の悪いことを大声で言わないで。ヘッドホンしてても聞こえたわよ、今」
集中していた雪ノ下に睨みつけられる。これ以上騒ぐと殺されそうだった。
「いや、違うんだ。俺の妹が今、正体不明の男に……」
「小町ちゃんのこと心配なのはわかるけどあんまり詮索すると嫌われるよー。最近、うちのパパとか『彼氏いるのか』とか聞いてきてウザいもん」
「はははっ。お前の父親はまだ甘いな!うちなんて彼氏がいないと信じ込んでいるからそんなこと聞きもしないぞ。見てて正直憐れだ。……っつーか、なんでお前俺の妹の名前知ってんの?」
「あー、ほら、ヒッキーのお見舞いで家に行った時にね」
由比ヶ浜は少し申し訳なさそうにそう言った。俺としては本当にもう気にしてないんだがな。
「そういうことか。よかった。妹を愛するあまり無意識のうちに名前を口にしていたシスコン野郎になっちまったのかと思ったぜ……」
「いや、その反応は正直、シスコンだと思うけど……」
「そうだ、うるせぇ、シスコン」
由比ヶ浜が半ば引きながら言う。
「馬鹿な!俺は断じてシスコンなどではない。むしろ、妹としてではなく、一人の女性として……ああ、もちろん冗談です、やめろ、武装すんな」
雪ノ下が驚愕と恐怖の入り混じった目で俺をみて、手にナイフとフォークを持ったあたりで言葉を止めた。
「あなたが言うと冗談に聞こえないから怖いわ。……そんなに気になるなら家で聞いてみればいいじゃない」
「そうだ、うるせぇ、シスコン」
結論めいたことを言って、雪ノ下と由比ヶ浜は勉強に戻る。
さっきから機械と化していた拓也はこの会話の途中一度もこちらに視線を向けることすらなかった。慣れって怖い。
私ごとですが、ヨルシカのアルバムを買いました。基本的にグループや歌手で曲は選ばないんですが、ヨルシカだけは全てアルバムを買ってます。YouTubeにも公式であるので是非聞いたことがない方は聞いてみてください。
ついでに、まだあるかはわかんないですが、俺ガイルのMADで億万笑者というRADの曲で作られたものがすごく良いですので、俺ガイル好きの方は見てみるといいかもです。
最近あとがきが自分語りになってしまってます笑
なので、基本的には無視していただいて構いません笑