もしも、比企谷八幡に友人がいたら   作:一日一善

16 / 29
第15話

翌日、梅雨の晴れ間とも呼ぶべき晴天だった。時刻は10時ちょうどになろうかというところだ。少し早く来すぎただろうか。

 

「おいっす」

 

気だるそうな声とともに前から手を振って最初に拓也がやってくる。

 

「おう」

 

「早いな」

 

「いや、俺も今来たところだ」

 

すると今度は後ろから声をかけられた。

 

「お待たせ」

 

涼やかな一陣の風を引き連れて、雪ノ下がゆっくりと歩いてくる。

休日のスタイルなのかいつもより高い位置で括ったツインテールが風をはらんでふわりと踊っていた。

 

「来たか」

 

「ええ、では、行きましょうか」

 

雪ノ下は籐編みのバッグを持ち直しながら誰かを探すようにきょろきょろと周囲を窺った。

 

「小町なら今、コンビニ行ってるからちょっと待ってくれ」

 

「そう。……けれど、休日に付き合わせてしまってなんだか申し訳ないわね……」

 

「仕方ないだろ、俺たちとお前で由比ヶ浜の誕生日プレゼント買いに行ってもろくなもん買わないし。それに小町は喜んでたからいいんじゃねぇの」

 

「だと、いいのだけれど……」

 

と、ここでネタバラシ。

付き合ってくれというのは、単に由比ヶ浜の誕生日プレゼントを買いに行きのに付き合ってほしいと言われただけ。それも俺たちじゃなくて小町に付き合って欲しいんだと。俺たちはそのついでというわけだ。

二分ほど待っていると、手にペットボトルのお茶を握った小町が戻ってきた。

 

「およ、雪乃さんに、拓也さん!こんにちは」

 

「おいっす」

 

「ごめんなさいね。休日に付き合わせてしまって」

 

「いえいえ。小町も結衣さんの誕生日プレゼント買いたいですし、雪乃さんとお出かけたのしみですし」

 

雪ノ下に謝られて、小町はにっこり微笑む。それにしても雪ノ下はちょっとアホっぽい子に好かれるよな。拓也はちびっこに好かれるし、俺?俺はほら、あれだから。

 

「そろそろ電車来るし、行こうぜ」

 

三人を促して、俺たちは改札口へ向かう。

今日の目的地は千葉の高校生がデートスポットによく使うと噂の、みんな大好き東京BAYららぽーとである。

 

「雪乃さんはもう何買うか決めたんですか?」

 

「……いえ、いろいろ見ていたのだけれど私にはちょっとよくわからなくて」

 

雪ノ下と由比ヶ浜、センス合わなそうだなぁ……。

 

「それに私、友人から誕生日プレゼントもらったことないから……」

 

それを聞いた小町は物憂げな顔をして黙ってしまう。

 

「……ふぅ、お前はほんとあれだな。俺はちゃんともらったことあるぜ」

 

「え?嘘でしょ?」

 

「まぁ、俺があげたんだけどな」

 

「……ああ、あなたが」

 

一度は驚く雪ノ下だったが、相手を聞くと落ち着きを取り戻す。

 

「それで、何をあげたの?参考までに聞かせてくれるかしら」

 

「確か……なんだっけ?」

 

「キットカットだよ……」

 

「え?」

 

「ああそうだ、お前が誕生日って言うから家にあったお菓子あげたんだったっけか」

 

「はい?」

 

「だから、お菓子のチョコのキットカットだよ」

 

「……そんなものを?」

 

「ああ、直前まで肩たたき券か迷ったがな」

 

俺は田舎のばぁちゃんか。小遣いはやらんぞ。

 

「何を勘違いしてるかは知らないが、基本的に誕生日なんてそんなもんだろ」

 

そういう経験がない雪ノ下は興味津々に拓也の話を聞く。

 

「ありきたりだが、思いがこもってれば物なんてなんでもいいんだよ。なんなら「おめでとう」の一言でいい」

 

「そういうものなの?」

 

「いいんだよ、だちなんだから」

 

「…………」

 

それを聞くと雪ノ下は考え込むように黙ってしまった。

まぁ、実際その通りなのだ。特に俺みたいなぼっちだった人間から言わせれば、その一言は本当に嬉しいのだ。

 

「だから、物で悩むよりは、由比ヶ浜にどんな感謝を伝えるかのほうに時間をかけて悩むべきだろうさ」

 

「……そうね、そうすることにするわ」

 

雪ノ下の表情はどこか清々しさを感じた。

窓の外を眺めると、青空はどこまでも澄み渡り、夏の始まりを予感させていた。今日は暑くなりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

南船橋駅から少し歩いて歩道橋を渡り終えると、そこからショッピングモールの入り口に繋がっている。

 

「驚いた……かなり広いのね」

 

「はい、なんかですね、いくつにもゾーンが分かれてるんで目的を絞ったほうがいいですよ」

 

詳しい大きさまではわからないが、近隣でも最大級のショッピングモールだけにぶらぶらしているとそれだけで一日が終わってしまう。

 

「と、なると効率重視で回るべきだな。じゃあ、俺はこっち回るから」

 

俺は案内板の右側を指さす。すると、雪ノ下が左側を指した。

 

「ええ、では私が反対側を受け持つわ」

 

よし、これで手間は半分だ。あとは小町と拓也の配置を決めてさらに効率を求めれば完璧だ。

 

「じゃあ、俺はこの奥を……って馬鹿野郎」

 

案内板を指した俺の人差し指をはたき倒す。

 

「なんだよ……っていうか指痛ぇ……」

 

ぶつくさ文句たれる俺を見て、拓也は大きなため息を吐いて、小町と一緒にアメリカ人がするような肩を竦めるリアクションをした。おい、二人してやめろ、結構ムカつくぞ。

 

「何か問題でもあるのかしら?」

 

「お前ら本当にナチュラルに単独行動とるのやめろよ……。そもそも一人だとダメだから集まったのにまた一人になってどうする」

 

「けれど、それだと回りきれないんじゃないかしら……」

 

「そもそも、回りに来たんじゃないの、誕生日プレゼント、それも由比ヶ浜の趣味を考えれば自ずと向かう場所は絞られるだろ」

 

そう言って拓也は案内板の下にあるパンフレットを取り出し開いた。

 

「小町ちゃん、どこらへんがいい思う?」

 

「んー、そうですねー、おそらくこの辺りじゃないでしょうか」

 

そう言って小町が指した場所は一階奥の「ジャッシーン」だの「リサリサ」だのといった、波紋を教えてくれそうな名前が並んでいる。

 

「じゃあ、そこ行くか」

 

俺がそう言うと、雪ノ下も別に異存はないのかこくっと頷いた。

行きがかり上、俺が先頭を進んでいるが、普段こうした場所に来ないためどうにも道に自信がない。

それは雪ノ下も同様なのか物珍しそうに右を見たり、左を見たりと忙しなく首を動かしていた。ただその顔を見る限り退屈してはいないようだ。

一方、隣の拓也は呑気に欠伸をかましていた。場慣れしている雰囲気もありどこか頼り甲斐がありそうだった。

そうこうしているうちに、右のブロックへと進める分岐点に来た。

俺はさっきの案内板を思い出しつつ、右を指しながら小町へ振り返る。

 

「小町、こっちこのまままっすぐでいいんだよな?」

 

と振り返ってみると、小町がいない。

 

「あ、あれ?」

 

代わりに見えたのは、雪ノ下が真剣な表情で凶悪な目と研ぎ澄まされた爪、そしてぎらりと光る牙を持った変なパンダのぬいぐるみをぐにぐにしている姿だけだ。

あれは東京ディスティニーランドの人気キャラクター、パンダのパンさんだ。

 

「雪ノ下」

 

声をかけるとついさっきまでぐにっていたそいつをすっと棚に戻して、雪ノ下はクールに髪を払った。これは突っ込まない方がいい気がする。

 

「小町見なかったか?どっか行っちゃったみたいなんだけど」

 

「そういえば見かけてないわね……」

 

「電話してみたらどうだ?」

 

「そうだな」

 

さっそく小町に電話をかけてみる。電話はちゃんとかかるものの、小町が出る気配はない。俺は諦めて電話を切った。

 

「出ねぇな……」

 

俺が電話している間に雪ノ下の荷物が増えていた。それ買ったんですか……。

 

「小町さん、何か気になるものでも見つけたのかしら……。さすがにこれだけの品があるとついつい見入ってしまうものも、あるわよね」

 

「ああ、お前みたいにな」

 

拓也がバッグに視線をやると、雪ノ下は唐突に咳払いをした。

 

「っとにかく。小町さんも最終目的地はわかっているわけだし、そこで落ち合えばいいでしょう。ここでうだうだしていても仕方ないわ」

 

「まぁ、それもそうか……」

 

俺は小町に「電話しろバカ。先行く」とメールを送って先へ進むことにした。

 

「……で、これ右まっすぐでいいんだよな?」

 

確認の意味を込めて聞くと、雪ノ下がきょとんとした顔になる。

 

「左ではないの?」

 

正解は右です。

 

 

 

 

 

 

周囲の雰囲気が明らかに変わった。

パステルとビビッドが入り混じった色彩の空間にはフローラルやシャボンの香りが漂い、いかにも女の子な場所に来ていた。

 

「どうやらこの辺みたいね」

 

「で、何買うんだ?」

 

「……そうね、普段から使えてかつ長期間の使用に耐える耐久性を持ったもの、かしら」

 

「あれ、電車で俺の話聞いてた?」

 

拓也の発言云々より、そもそも若い女の子に向けてのプレゼントを選ぶ基準じゃないと思うんですけど。

 

「ええ。それでも、由比ヶ浜さんには喜んでもらいたいし……」

 

雪ノ下は穏やかな微笑みを浮かべている。たぶんその表情で大喜びだと思うけどな。

 

「じゃ、さっそく選ぶか」

 

「ちょっと待って。小町さんは?」

 

ああ、そういえば連絡ねぇな。雪ノ下がああ言っている手前、小町のアドバイスは重要だろう。そう思い携帯を見るが、小町からの連絡は入っていなかった。もう一度連絡してみるか。

 

『はいはーい』

 

「あ、お前今どこにいんだよ。もう着いたぞ。待ってるから早く来いよ」

 

『え?……あー。小町買いたいものいろいろあるからすっかり忘れてたよ』

 

「妹の頭がここまで残念になっていたとは……。お兄ちゃん、ちょっとショックだよ」

 

まさか、ここまで、記憶力が悪かったなんて。どうりで暗記科目がぼろぼろなはずだよ。

 

『……ふっ、お兄ちゃんにわかれっていうほうが無理か。まぁ、いいや。ちょっと拓也さんに代わって』

 

「はぁ?なんで」

 

『いいから!』

 

小町がそう言うので渋々拓也に携帯を渡す。

 

「もしもし、…………うん、……わかった。気をつけてね」

 

短い会話を交わした後、携帯を切って俺に返す。

 

「なんだって?」

 

「どうやら、買いたいものがあるらしいってさ」

 

それくらいならわざわざ代わらなくてもよくない?小町さんや。

 

「そう……。まぁ、わざわざ休日に付き合ってもらっていたわけだし、文句を言える義理ではないわね」

 

雪ノ下は少し残念そうに言ってから、気合いを入れ直すように言葉を継ぐ。

 

「由比ヶ浜さんの好みそうなジャンルはわかったのだし、あとは私たちでなんとかしましょう」

 

わー、すごい不安だなー。

俺の心配をよそに雪ノ下はまず手近にあった服屋へと向かった。続いて拓也も雪ノ下と真剣に検分している。

俺もこいつらに倣い、お店に入ることにした。

したのだが、これはとてもじゃないが耐えられそうにない。

まず、女性客の視線が痛い。さらに俺の動きを警戒するように店員さんが移動を始める。比企谷シフトの完成だ。

な、なぜだ……。店内には俺以外にも男がいるのに!店員さん!そこの男も危険ですって!

 

「あの、お客様……。何かお探しですか?」

 

営業スマイルの下に警戒心をのぞかせた店員さんに話しかけられた。

 

「あ、いや、その……す、すいません」

 

思わず誤ってしまった。その謝罪が誤解を招いたのか、女性店員が一人増える。まずい、仲間を呼ばれた!

すぐに逃げ出さねばと思ったらところで救いの手が差し伸べられた。

 

「比企谷くん、あなた、何をしたの?試着?そういうのは家でやってくれるかしら?」

 

「いいか、雪ノ下。こうゆう場所だから出来ることもあるんだぜ」

 

「家でもここでもやらねぇよ!てか何もしてないし……」

 

拓也と雪ノ下がやってくると店員の警戒心が薄れた。

 

「あ、お連れ様がいらっしゃったんですね。ごゆっくりどうぞ」

 

店員さんは何か一人で納得したように言い残して立ち去ろうとする。

連れがいれば納得するの?連れがいなけりゃ外に出れないの俺。

 

「はぁ……。行きましょう」

 

騒がしくなったのを嫌ったのか、めぼしいものがなかったのかはわからないが、雪ノ下はそう言うと店を後にする。俺たちもそれに続く。

 

「……俺、そんな不審かな」

 

どんよりした顔の目つきは普段の俺の百倍くらい目が腐っていたと思う。さすがの雪ノ下も俺に同情したのか、俺を責めるような真似はしなかった。

 

「しゃーない、切り替えていけ」

 

「どうやら、男性客一人というのが警戒されるようね。見た限りでは皆、カップルだったようだし」

 

なるほどな。そうなると俺がここにいてもできることは何もない。それに。もう一度果敢にチャレンジする勇気もない。

 

「……じゃあ、俺あっちほうにいるから」

 

言いながらちょっと離れたベンチを指した。さすがにベンチにいれば通報されたりはしないだろう。怪しい真似さえしなければ大丈夫だ。大丈夫だよね?ね?

 

「まぁ、待て八幡」

 

「あん?」

 

拓也に肩を掴まれ振り返る。

 

「離脱はなしだ、人数が少ないと、一人一人の意見が重要になる」

 

「そうよ、私のセンスに任せるつもり?自慢ではないけれど、私の価値基準はそんじょそこらの女子高生とは違うのよ?」

 

「自覚あったんだな……。つっても、店の中、入れないしな……」

 

そう答えると、拓也の口角が上がる。

 

「逆に考えるんだ。入らなくてもいいさと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キッチン雑貨にはフライパンや鍋といった基本的な調理器具の他、鍋つかみとかマトリョーシカを模した食器セットのようなファンシー系アイテムが取り揃えられている。

 

「なるほど、たしかにここなら追い出されないな」

 

「それに、雪ノ下の条件にも当てはまる」

 

確かに、調理器具なら耐久性もあり、長く使えるだろう。あのダークマターに耐えられるのであればの話だがな。

 

「確かに、ここなら良さそうね」

 

キッチン雑貨だというのにこれがなかなか楽しい空間だった。なんだよこの鍋の蓋。ツマミの部分が開いて調味料入れらんじゃん。超魅了されるんですけど。

ホームセンターとか100円ショップもそうだけど、こういったガジェットツールは見ているだけでもテンションが上がる。

こら!拓也くん!中華鍋を振り回すのはやめなさい!

 

「比企谷くん、佐藤くん、こっち」

 

呼ばれて、行ってみるとそこにいたのはエプロン姿の雪ノ下雪乃だった。

黒い生地で胸元に小さくあしらわれた猫の足跡。腰紐がリボン状に結ばれ、それが雪ノ下の引き締まったくびれを強調していた。

 

「どうかしら?」

 

「どうって言われてもなぁ?」

 

「ああ、すげぇよく似合ってるとしか言えないんだが」

 

他に言いようがない。俺たちは素直に褒めたのだが、雪ノ下はこちらを見ずに、姿見のほうを向いて肩口や紐、裾を気にしていた。

 

「……そう、ありがとう。けれど、私のことではなくて。由比ヶ浜さんにどうかしら、という意味よ」

 

「だとしたら似合わないだろ」

 

「あいつの場合はもっとふわふわぽわぽわした頭悪そうなもののほうが喜ぶんじゃないの」

 

「ひどい言い草だけれど、的確だから反応に困るわね……」

 

雪ノ下はそう言いながら、今しがた着ていたエプロンを脱いで丁寧に畳始めた。

 

「となると、だいたいこの辺りかしら」

 

畳んだエプロンを抱えたまま、次の獲物に目をつける。今度はポケットの数だの素材だのを確認する。なるべく石綿とか燃えないやつがいいと思うぞ。

 

最終的に雪ノ下が選んだのは薄いピンクを基調とした装飾の少なめなエプロンだった。

 

「これにするわ」

 

「ああ、いいんじゃないの」

 

両脇に小さなポケットが一つずつあり、お菓子とか入れ放題っぽくて由比ヶ浜には似合いそうだ。

 

雪ノ下はピンクのエプロンを畳み、レジへと向かう。手にあるのはピンクのエプロンと、黒のエプロン。

 

「お前、さっきのぬいぐるみといい、自分の買い物もちゃっかりしてんのな」

 

「……エプロンは買う予定になかったのだけれどね」

 

「衝動買いか。まぁ、買い物にはよくあることだな」

 

「ああ、だけど、何でもかんでも買うもんじゃないぞ」

 

全くその通りでだ。帰ってからなんで買ったんだろうなんてよくあることだ。それはそうと、手に持っている袋の中の中華鍋は衝動買いじゃないよね?

 

「…………」

 

雪ノ下は何か言いたげに口を開くが、言いかけてやめる。俺たちのほうをちらっと見てからふいっと視線を外すと、そのままレジへ行ってしまった。

 

 

 

 

 

俺はペットショップでグッズを買い、会計を済ませる。横に雪ノ下と拓也の姿はない。別に俺を置いて帰ってしまったわけではない。俺の買い物先がペットショップと知るやいなや別行動を許可されただけである。なんとも現金なやつらだ。

連絡を入れようか迷ったが、こういう場所であいつらが行くところなど限られている。俺はペットグッズコーナーを抜けて、ケージのほうへ向かう。

すると、当然のようにそこにいた。お互いそう遠くない位置にいる。雪ノ下は口元に柔らかい笑みを湛えて、膝を抱えるように座り、子猫を撫でたりもふったりしている。一方の拓也は忙しなく動き回り、動物を満遍なく愛でていた。動物を見ると顔がゆるゆるになるのはどうやらデフォルトのようだ。

なんとも幸せそうなこいつらを見ていると声をかけづらい。

どうしたものか、と思っていると、雪ノ下の撫でていた猫が耳だけ俺の方向に向ける。その動きにつられて雪ノ下も振り返った。

 

「あら、早かったのね」

 

「悪い」

 

果たしてそれは「待たせて悪い」なのか「早く来て悪い」なのかは俺にも判然としないが、とりあえず謝った。

 

「終わったか」

 

俺たちのやり取りで気づいたらしく、顔の緩みを直し、そう言いながら拓也はこっちにやってくる。

 

「で、何を買ったの?だいたい想像はつくけれど」

 

「まぁ、お前が思ってるもんだよ」

 

「そう」

 

淡白に答えたが、雪ノ下の顔は若干満足げだった。

 

「けれど、意外だったわ。あなたが由比ヶ浜さんへのプレゼントを買うなんて」

 

言われて俺は少し答えに詰まる。

 

「……別に。友達だからな」

 

「……何かいいことでもあったのか?八幡」

 

俺にだけ聞こえるようにそう言うこいつの顔はなんとも優しい表情だったが、俺としてはどこか見透かされているような気がして少し恥ずかしかった。

 

「なんでもねーよ。用事も済んだし、帰ろうぜ」

 

時間はだいたい二時といったところだ。意外と長い間過ごしてしまった。出口に向かう道すがら、家族やカップル向けのゲームコーナーがあった。俺には無縁なものだと思い、さっさと通り過ぎようとしたとき、雪ノ下が足を止めた。

 

「どした?ゲームでもしたいのか?

 

「ゲームに興味はないわ」

 

そう答えるものの、雪ノ下の視線はクレーンゲームに釘付けになっている。……いや、よく見ると違う。どいやら一台のクレーンゲームにのみ向けられている。

その台には見覚えのあるあのぬいぐるみが入っている。

 

「……やってみるか?」

 

「結構よ。別にゲームがしたいわけではないもの」

 

「やってみろよ、多分お前には無理だぞ」

 

「あら、なかなか言うじゃない。私を見くびっているのかしら?」

 

拓也の物言いにかちーんときたのか、いつもの冷気が漏れ出す。

 

「いや、こういうのは慣れないと取れないんだよ」

 

こいつの言う通りで、このタイプのクレーンゲームは初めてやって取れるものではない。小町がひたすら小銭を入れ続ける姿はなんとも憐れだった。

しかし、はいそうですかと引き下がる雪ノ下ではない。

 

「なら、慣れればいいでしょう」

 

そう言ってコイン投入口の横に百円玉を積んだ。

雪ノ下はゲームをスタートし、なかなかの位置にクレーンを持ってきた。そして、クレーンはぬいぐるみを掴み上げようとした。

 

「……もらった」

 

小さく声が聞こえた。見ると拳を握って、うしっと僅かに動かしている。

だが、クレーンはぬいぐるみを落とすと、そのままもとの位置に戻っていった。

 

「な?」

 

拓也の声など聞こえはしないのか、雪ノ下は思いっきりクレーンを睨みつけていた。

 

「……ちょっと、完全に掴んでいたでしょう?どうしたらあそこで外れるのかしら?」

 

そう言うと雪ノ下は罪のないクレーンちゃんに詰め寄る。怖いです。

諦めがつかないのか、ムキになっているのかはわからないが、雪ノ下は手元のコインを迅速に投入していく。おいおい、まだやんのかよ……。

 

「……お前、へったくそだな」

 

「なっ……。そこまで言うなら、あなたは相当うまいのでしょうね?」

 

「ま、お前よりはな。ちょっとどいてみ」

 

拓也がそう言うと、雪ノ下は疑り深い目ながらも渋々場所を空ける。

 

「お前は馬鹿正直に取りすぎなんだよ」

 

その言葉とともに拓也の手が動かされる。先程から雪ノ下が描いていた軌道から大きくそれ、独自のルートを開拓していく。

雪ノ下が使うことがなかった第3のボタン回転を使い、ぬいぐるみの頭部にクレーンを持っていく。そのまま振り下ろされた鉄の腕はぬいぐるみを確実に捉え、穴へと落下させた。

長々と語ったが、要はアームで押して取ったのだ。

 

「ほら、やるよ」

 

取り出し口から取り出されたパンさんを雪ノ下へと渡す。

 

「……これを手に入れたのはあなたよ、それはあなたが貰うべきだわ」

 

こんな些細なことでも雪ノ下は筋を通そうとする。なんとも真面目というか、頑固と言うか、いや、この場合は偏屈か。

 

「いや、俺、これいらないし。そもそも対価を払ったのはお前だ。それでも受け取らないなら置いていくしかないな」

 

「……その言い方はずるいんじゃないかしら」

 

「素直に受け取らないお前が悪いっての」

 

今度こそ拓也からぬいぐるみを受け取ると、再び拓也をちらっと見た。

 

「……。返さないわよ」

 

「いや、いらんって」

 

そんな凶悪なぬいぐるみ誰が欲しがるっつーんだよ。

それに、そんな大事そうに抱きかかえられちまったら返せなんてこいつも言えないだろうよ。

俺が微笑み混じりで見ていたのに気づいたんだろう。顔を背ける雪ノ下の顔はわずかに朱に染まっている。

 

「……似合わないかしら。こういうのは由比ヶ浜さんや戸塚くんのほうがイメージに合うものね」

 

「前者はともかく後者は同意だ」

 

戸塚にぬいぐるみなんて、あんぱんと牛乳ぐらいのベストマッチじゃねぇか。

 

「別に、似合わないとかねぇだろ、趣味なんて人それぞれだ」

 

……やっぱいいもんだよ、どんな話題を振ろうが否定から入んないこいつといるのは。

 

「八幡の女装趣味だって、立派なもんだろ、普通、店内で堂々と出来るもんじゃない」

 

前言撤回だ、どうやってぶち殺してやろうかこいつ。

 

「誰が女装趣味だ。取り消せよ、今の言葉!」

 

「断じて取り消すつもりはない」

 

今回は敗北者ムーブをしてしまった俺の負けだろう。このままいけば胸を穿たれて精神的に死んでしまう。

 

「……ふふ」

 

俺たちの会話を聞いていた雪ノ下が小さく笑った。

 

「……やっぱり、変わってるわ、あなたたち」

 

続けて囁くように呟いた。

 

「……昔、誕生日プレゼントで貰ったのよ。パンさん。そのせいで一層愛着があるのかもしれないわ……だ、だから、その」

 

突然の雪ノ下の独白に困惑する俺だったが、その気持ちはわかる。最近どっかの誰かさんもしたらしいしな。

そのどっかの誰かさんのように何かさっきの会話にきっかけがあったのだろうさ。

 

「その……取ってもらえて、」

 

眼差しを拓也へと向けた雪ノ下が何かを言おうとした直後だった。

 

 

 

「あれー?雪乃ちゃん? あ、やっぱり雪乃ちゃんだ!」

 

 

 

無遠慮な声が雪ノ下の言葉を遮った。

なんだか聞き覚えのあるような、誰かによく似た声の主を見つけ出して俺は絶句した。目の前にいるのはとんでもない美人だった。その美人は友達と遊びに来ていたのだろうか、後ろにわらわらといた男女数名に「ごめん、先行って」と拝んで謝るような仕草を送る。

 

「姉さん……」

 

さっきまでの無防備な表情とは打って変わって慄然とした様子の雪ノ下の声に振り向くと、雪ノ下はぬいぐるみをぎゅっと強く抱きしめ、肩を強ばらせていた。

 

「は? 姉さん? は?」

 

俺は目の前の女性と雪ノ下を見比べる。

確かに雪ノ下と似ている。雪ノ下がソリッドな美しさだとすれば、目の前の女性はリキッドな魅力に溢れていた。

 

「こんなところでどうしたの?ーー二人も男の子連れちゃって!このこのっ!」

 

「………」

 

雪ノ下姉はうりうり〜と雪ノ下を肘でつついて、からかい始めた。が、雪ノ下は冷めきった表情で鬱陶しそうにしているだけだ、

どうやら似ているのは見た目だけで、性格はだいぶ違うらしい。

 

「ねぇねぇ、どっちが雪乃ちゃんの彼氏?彼氏?」

 

「……違うわ、二人とも同級生よ」

 

「まったまたぁ!別に照れなくてもいいのにっ!」

 

「………」

 

雪ノ下が姉を超睨みつける、にもかかわらず姉のほうはニヤニヤ笑って受け流しているし。

 

「雪乃ちゃんの姉、陽乃です。雪乃ちゃんと仲良くしてあげてね」

 

「はぁ。比企谷です」

 

名乗られたので名乗り返す。どうやら姉の名は雪ノ下陽乃という名前らしい。ちぃ覚えた。

 

「比企谷……。へぇ……」

 

陽乃さんは一瞬考えるような間を取り、俺の爪先からてっぺんまでざっと流し見た。その刹那ぞっとするほどの寒気が襲ってくる。

 

「比企谷くんね。うん、よろしくね♪」

 

が、にっこりと微笑むとそれも解ける。なんだ、……今の。

 

「君は?」

 

「どうも、佐藤と言います」

 

そう自己紹介するが、そこにいたのは俺の知る佐藤拓也ではなかった。拓也を知る俺だからこそわかる、外面を完璧にした気持ちの悪い笑顔だった。

 

「………へぇ、君、面白いね」

 

陽乃さんは俺と話した時と雰囲気ががらりとかわる。何?いきなり戦争でも起きるの?

 

「うん、佐藤くんね、よろしくね♪」

 

先に切ったのは陽乃さんの方だった。同時に重たい空気がなくなる。

俺たちは訝しげな視線を陽乃さんに向けていると、陽乃さんはその視線を雪ノ下へと戻した。

 

「あ、それ。パンダのパンさんじゃない?」

 

弾んだ声と一緒に、陽乃さんの手がぬいぐるみへと伸びた。

 

「わたし、これ好きなんだよねー!いいなーふわっふわだなぁ雪乃ちゃん羨まし」

 

「触らないで」

 

ぴりっと耳の奥が痺れるような強い声だった。その声からは込められた拒絶の意思がありありと伝わった。

 

「……。わ、わぁびっくりした。ご、ごめんね雪乃ちゃん、そ、そっか彼氏さんからのプレゼントだったのかな、お姉ちゃんちょっと無神経だった」

 

「いや、俺たちただの同級生なんですけど」

 

「お、ムキになっちゃってぇ。雪乃ちゃん泣かせたらお姉ちゃん許さないぞっ」

 

陽乃さんは俺をたしなめるように人差し指を立てると、それを俺の頰に押し付ける。ちょっ、痛ぇっつーの、近い、近い近い!

 

「姉さん。もういいかしら。特に用がないなら私たちはもう行くけれど」

 

そう雪ノ下が言っても陽乃さんは聞く耳持たず、俺にうりうりし続ける。

 

「ほれほれ言っちゃえよー!どっちが付き合ってるんですかー?」

 

「ちょ、マジやめて

 

「いやー、申し訳ないんですけど、そいつ離してもらってもいいですか?どうにも嫌がってるみたいなので」

 

相変わらず気持ちの悪い笑顔でそう問いかける。瞬間、陽乃さんの表情が崩れる。その時、どこか違和感を覚えた。

 

「そうよ、姉さん、いい加減にしてちょうだい」

 

続けて雪ノ下も苛立ちを隠そうともせず、すっと髪を搔き上げると、陽乃さんに侮蔑の視線を突き立てた。

 

「あ……ごめんね、ちょっと調子に乗りすぎた、かも」

 

申し訳なさそうに、力なく笑う。そして、陽乃さんはこそっと俺に耳打ちをする。だから、近いって。

 

「ごめんね? 雪乃ちゃん、繊細な性格の子だから。……だから、比企谷くん、ちゃんと気をつけてあげてね」

 

このとき、決定的な違和感に襲われた。俺は思わず、その場で仰け反ってしまう。すると、陽乃さんにはそれが意外な行動だったのか、上半身ごと右に傾け、目を瞑ってうーん?と考える。

 

「わたし、今嫌がらるようなことしちゃったかな?だったら、ごめんね」

 

ちろっと舌を出して陽乃さんが謝る。その庇護欲をそそる姿に急速に罪悪感が襲ってくる。何か、何かいい訳を!

 

「あ、いや別にそんなんじゃ、ほら、その、俺耳弱いんで」

 

「比企谷くん、初対面の女性に性癖を晒すのはやめなさい、訴えられても文句言えないわよ」

 

雪ノ下は頭痛でもするのか、そっと額を抑えている。

 

「あは♪ 比企谷くんもおもしろーい!」

 

何がツボにはまったのか知らないが、陽乃さんは爆笑して俺の背中を叩いてくる。だから近いって。

 

「あ、そうだ、二人とも良かったらお茶しない?お姉ちゃんとしては雪乃ちゃんの彼氏にふさわしいのがどっちか、よく知っておかないといけないのです」

 

そうは言うが、向いている目線は俺ではなく拓也だった。

 

「お気持ちは嬉しいですけど、今回は遠慮させていただきます」

 

笑顔を崩すことなくそう切り返す。

 

「……ふぅん、そっかそっか」

 

まただ、ほんの一瞬だが、表情が崩れた。

 

「……しつこい。同級生だと言っているでしょう」

 

そこに再び放たれる雪ノ下の絶対の拒絶。だが、今度のそれはにやっと笑って跳ね除けてみせた。

 

「だって、雪乃ちゃんが誰かとお出かけするのなんて初めて見たんだもん。そしたら彼氏だって思うじゃない?それが嬉しくて」

 

くすくす、と陽乃さんはおかしそうに笑った。

 

「せっかくの青春、楽しまなきゃね!あ、でもハメ外しちゃだめだぞ?」

 

陽乃さんは冗談めかすように、右手の人差し指を立てて注意した。そのまま雪ノ下の耳元に顔を近づけると、小さく囁く。

 

「一人暮らしのことだって、お母さんまだ怒ってるんだから」

 

その「お母さん」という単語が出た瞬間、雪ノ下の身体が強張った。

一瞬の間を置き、雪ノ下は確かめるようにぬいぐるみを抱く。

 

「……別に、姉さんには関係のないことよ」

 

正面を向けず、地面に向かって話すように雪ノ下はしゃべる。いつだって真っ向から立ち向かってきた雪ノ下雪乃が。誰にも屈せず下を向いたことなどない雪ノ下雪乃が。

ふっと、口元だけで陽乃さんが笑う。

 

「そっか、そうだね。お姉ちゃんには関係ないね」

 

そう言うと、陽乃さんはその場を飛び退くようにして離れた。

 

「雪乃ちゃんがちゃんと考えてるならそれでいいんだ。余計なお世話だったかな。ごめんごめん」

 

へへっと誤魔化すような笑みを浮かべてから陽乃さんは俺たちに向き直る。

 

「比企谷くん、佐藤くん。どっちかが雪乃ちゃんの彼氏になったら改めてお茶、行こうね。じゃ、またね!」

 

最後にぱあっと華やぐような笑顔を浮かべて、てとてとと去っていった。彼女の輝きは本物なのか、目を逸らすことができず、結局俺は陽乃さんが完全に見えなくなるまで見送ってしまった。

そして、俺たちもそれに合わせて歩き始めた。

 

「お前の姉ちゃん、すげぇな……」

 

思わずそう漏らすと、雪ノ下が頷く。

 

「姉に会った人は皆そう言うわね」

 

「だろうな、わかるわ」

 

拓也の表情はいつのまにか戻っていた。

 

「ええ。容姿端麗、成績最高、文武両道、多芸多才、そのうえ温厚篤実……およそ人間としてあれほど完璧な存在もいないでしょう。誰もがあの人を褒めそやす……」

 

「はぁ?そんなのお前も大して変わらんだろ。遠回しな自慢か」

 

俺がそう言うと、雪ノ下はぽかんとした顔で俺をふり仰ぐ。

 

「そうだな、そうじゃなくて、あの外装だよ。ガンダムで言えばモビルアーマーとでも言っておこうか」

 

お前本当ガンダム好きな。

 

「お前の姉ちゃんの行動、モテない男子の理想みたいな女だよな。気軽に話ができて、人当たりよくて、だからこそどこか嘘くさい」

 

「……あなたたちの言う通り、あれは姉の外面よ。私の家のこと、知ってるでしょ?仕事柄、長女である姉は挨拶回りやパーティーにつれ回されていたのよ。その結果できたのがあの仮面……。よくわかったわね」

 

「ああ、親父に教えられてるんだ。初対面の相手に対してやけに距離が近い相手には警戒しろってな。それに、お前のあの気持ち悪い笑顔も割と決定的だった」

 

「…………ま、気をつけろって警告だよ」

 

そうは言うが、どこか言葉に詰まった様子だった。

 

「はぁ……。佐藤くんはまだしも、姉もまさかあなたに気づかれたなんて思ってもいないでしょうね」

 

馬鹿とはなんだ馬鹿とは立派な先人の知恵と言ってもらいたい。

 

「……帰りましょうか」

 

雪ノ下が小さな声で言い、俺たちは頷く。

それから俺たちは、一言も交わさずに家路へ着いた。

降りる駅に着き、改札を抜けた先で、雪ノ下が一瞬立ち止まった。

 

「私、こっちだから」

 

そう言って南口を指さす。

 

「俺もだ」

 

「そうか。じゃあ」

 

そう答えて俺も北口へ向かおうとした。その背中に小さく声をかけられる。

 

「今日は楽しかったわ。それじゃ」

 

思わず自分の耳を疑ってしまった。急いで振り返ると、雪ノ下はもう歩き出していた。こちらを振り返る素振りも見せなかった。

……あ、小町。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡と改札で別れ、俺は雪ノ下と帰路に着いた。

 

「なんだよ、楽しかったのか?」

 

「……ええ、そうね、こういうのは初めてだったから」

 

これは恐らく紛れも無い本心だろう。ここで虚偽を言う雪ノ下雪乃ではない。

 

「ところで、あなた、あの笑顔はなんだったの?」

 

「あん?……ほら、八幡への注意としてだな」

 

「その割にはやけに姉さんの方ばかり見ていたような気がしていたのだけれど」

 

ジト目で雪ノ下に睨まれる。ちくしょう、バレてらぁ。

 

「……まあ、なんだ、ちょっとした嫌がらせだよ」

 

「嫌がらせ?」

 

そんな回答が返ってくるとは思ってなかったのか、心底不思議そうな顔をする。

 

「ああ、お前が嫌そうにしてたから、意趣返しとしてお前の姉ちゃんとおんなじ外面で接してみたんだよ」

 

「……そんな理由で姉さんを挑発した人は初めてよ」

 

「大丈夫だろ、どうせもう会わないだろうしな」

 

あんな人とぽんぽんあってたらこっちがもたねぇわ。あんだけ挑発しちゃったし。会わないよね?

 

「……でも」

 

そう言うと雪ノ下は足を止めてこちらを見据える。その姿は沈みゆく太陽と相まって、見事な絵になっていた。

 

 

 

「ありがとう」

 

 

 

……別にお礼を言われたいから挑発したわけではない。なんならあの外装を壊してみたいという好奇心も多少あった。それでも、笑顔の雪ノ下を見ると、この笑顔を見るために動いたのではないかと錯覚してしまう。

 

「別に、普通だろ、友達だしな」

 

「……友達なのかしら?」

 

そこは肯定してくれないのね。

なんとも締まらないが、俺たちらしくていいんじゃないだろうか。

……あ、小町ちゃん。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。