もしも、比企谷八幡に友人がいたら   作:一日一善

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アンケートありがとうございます。
結果としては比企谷とオリ主の半々+場面によって原作のキャラ視点
が一番多いようでしたので、読んでも読まなくても本編には関係ない話で試し書きをしてみました。
恐らくこんな感じになると思います。

そんな前置きをしておきながら案外重要な回かもしれません。


第19.5話

雪ノ下を見送った俺たちは改めてそれぞれ我が家に向かった。

雪ノ下は一人行ってしまったが、予定通り俺と小町と拓也で帰り道を歩く。

 

「あ、そうだ、今日お前の家泊まっててもいいか?」

 

突然拓也がそんなことを言いだす。

 

「なんだよ、いきなり」

 

「いや、普通に課題を終わらせたいから」

 

「一人でやれよ一人で」

 

テスト勉強ならともかく、課題なんてただ答え写すのがほとんどだろ。

 

「いいじゃん、ちょうどいいし、小町ちゃんの方も見るからさ」

 

「本当ですか!そういうことなら是非いらしてください!」

 

小町を味方につけるのはやめい。それに小町よ、お前、残りの課題めんどくさいのばかりだったけど、まさか押し付けようとしてるんじゃあるまいな。

 

「じゃ、荷物取りに一旦帰るわ」

 

「あ、おい」

 

俺の制止も虚しく、拓也は真夏のアスファルトを駆け抜けていった。

 

「……小町よ」

 

「何?お兄ちゃん」

 

「今日はうちの両親いるぞ」

 

「………てへ☆」

 

強く生きろよ拓也。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー!」

 

「たでーま」

 

外泊で家を空けるなんてここ最近なかったせいか、数日開けただけなのにやけに久しぶりな感じだ。

 

「おかえりなさい」

 

「おかえり」

 

リビングに向かうと親父と母ちゃんがいた。いつもはどんな時間帯であっても休みの日は必ず寝ているはずなのに、なぜか今日に限って起きていた。

 

「どうだったの?合宿ってやつは」

 

「うん、楽しかったよー!小学生の子も可愛くってさー」

 

小町は早速、合宿の感想を母ちゃんに話していた。

かく言う俺も、親父に引きずられるようにしてソファーに座らされる。

 

「八幡、小町に変な虫はつかなかっただろうな?」

 

「いや、相手は小学生だぞ親父」

 

「バカ言え、小学生だろうが、小町の可愛さに引っかかるやつはいるんだよ。あの純粋無垢な笑顔を見せられて落ちない奴はいない」

 

小町は天使なのか?親父。いや、天使か。

 

 

 

 

「あ、それでさー、お母さん、今日拓也さんが泊まりに来るんだけど大丈夫?」

 

 

 

 

びきっ。

小町がそう言うと同時に俺の隣で変な音がする。

恐る恐る見てみると、そこにいたのは般若のような顔をした親父だった。

 

「あら、そう。いいんじゃない?あの子いい子だし」

 

「やったー!お母さん大好き」

 

和やかな雰囲気を前に、とんでもない怒気を横にした俺は動けずにいた。

 

「なぁ、八幡、小町のあの喜びよう。なんかおかしいよなぁ」

 

「ハイソウデスネ」

 

「今日、来るんだってな、拓也くんは」

 

「ハイソウデス」

 

「ちょっと、俺たちと話し合いが必要だよなぁ、八幡」

 

「オッシャルトオリデス」

 

「お前は、こっちの味方だよな」

 

「ハイ、モチロンデス」

 

ごめんな、拓也。親父には勝てなかったよぉ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おじゃましまーす」

 

そう時間もたたないうちに呼び鈴の音とともに大きな声が聞こえる。

 

「いらっしゃい、拓也くん」

 

そう言っていの一番に拓也を出迎えたのは親父だった。

 

「さ、あがっていきたまえ」

 

その言動はいつも親父らしくない、余裕が見えた。

 

「およ、拓也さん、いらっしゃいです!さぁさぁ、上がってってください」

 

「お、小町ちゃん、さっきぶり、お父さんもお邪魔しますね」

 

そういうと、慣れた様子で俺の部屋まで荷物を持っていった。

 

「なぁ、八幡、あいつ今、お義父さんと言ったか?」

 

はい、お父さんと言いました。

 

「しかも、邪魔をするって言わなかったか」

 

はい、お邪魔しますと礼儀正しく言って行きました。

 

「間違いない、あいつ!俺の小町をとうとう奪いにきやがった!」

 

おい、さっきの余裕はどうした。

 

「このままじゃ、小町が危ない!そうなる前に俺が」

 

「いい加減にしろ」

 

「ごはっ!」

 

今まさに俺の部屋に向かおうとした親父を母ちゃんの鉄拳が襲う。

 

「ほら、あんたも突っ立ってないで、部屋に行ってきな。大事な友達でしょ」

 

俺は床に倒れこむ親父を尻目に部屋に向かった。

悪いな親父、俺は強い奴の味方なんだ。弱い親父なんていらない!

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらず、お前の家は面白いよな」

 

俺が部屋に入るなり、開口一番にそう言う。

拓也が相変わらずと言うように、実はこのやり取りは一度や二度ではない。こいつがうちに来るときに親がいると毎回こうなのだ。

 

「そうでもないぞ、こんなんになるものお前が来るときくらいだ」

 

母ちゃんは言わずもがなだが、案外親父も親父でこいつのことを気に入ってるんじゃないだろうか。

 

「そうか、じゃ、また夕飯でも作ろうかね」

 

「本当ですか!拓也さん!」

 

拓也としては冗談まじりのつもりだったのだろうが、運悪く小町に聞こえてしまった。

 

「じゃあ、おかあさんにもそう言っときますね!」

 

「あ、いや、小町ちゃん待っ」

 

拓也の声も虚しく空へと消えていく。

 

「ま、頑張れよ」

 

「……せめて、お前は自分の父ちゃんを押さえとけよ」

 

任せろ、今の親父など恐るるに足らん。

 

 

 

 

 

 

 

 

昼過ぎから夕方ごろまで俺たちはそれぞれ課題をを終わらせていた。

部屋には一度小町が今晩の夕食について聞きにきただけで、何だかんだ親父は来なかった。

……にしても本気で作らせる気なのね。我が家族ながら恐ろしい。

 

「……よし、じゃあ作ってくるわ」

 

それを平然と受け入れているこいつもなかなかだな。

 

「早くねぇか?」

 

「料理に一番時間がかかるのは下ごしらえなんだよ」

 

家でなにを作る気なんですかね。……まさか、小町の胃袋を掴む気か?親父に要相談だな。

 

「時間かかるし、早いけど風呂でも入ってこいよ」

 

「おう」

 

確かに多少のベタ付きを感じる。リビングに向かう拓也とは逆に俺は風呂場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺がリビングへと向かうと、ソファーに座る八幡の親父とキッチンで忙しなく動いている小町ちゃんとお母さんの姿があった。

 

「あ、拓也さん。具材置いときましたよ!」

 

こちらに気づいた小町ちゃんが俺の前に具材を用意してくれる。

 

「ありがとね、佐藤くん。本当助かるわ」

 

「いえいえ、好きでやってますから。小町ちゃんもありがと」

 

八幡曰く、ご両親とも多忙だそうな。たまの休みくらいゆっくりしてもらいたいものだ。そう思い俺はせっせと下ごしらえをすすめる。

 

「にしても、あの子にこんないい友達ができるなんてね〜」

 

ふと、お母さんの方がそう呟く。

 

「本当にねー、小町なんか最初は金づるにされてるんじゃないかと思ったよ」

 

最初に金づるとは、あいつの人生もなかなかなもんだな。

 

「なんで、うちの子とそんなに仲良くなったの?」

 

「あ、小町も気になります!」

 

「…………」

 

興味、期待、疑問。三者三様の視線が俺に集まる。ああだこうだ言いながらも比企谷八幡という男は家族に愛されているのだろう。

 

「そんなたいそうな事じゃないですよ」

 

下ごしらえの手を止めることなく、俺はあいつと出会った時のことを思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

高校一年の春。色々あった俺だったが、なんとか周りの友達にも慣れてそこそこ順調な生活を送っていた。

その数ヶ月後、奴はやってきた。

通学中に犬を助けて入院していると、このクラスになったときに担任から聞かされた。

俺はそんな奴に少なからず淡い憧れを持っていた。よく言うだろ、もし俺がそこにいたら、もし俺がこいつだったら、とか。

そんなものは所詮妄想であり、実際にその場面に居たとしても、そんなことをぬかすやつほど一番動けない。

だからこそ、咄嗟に動ける奴がいることに、そんなヒーローみたいなやつが来ることに、憧れと、ほんの少しの期待があった。

 

「……ひ、比企谷、八幡です……よろしく」

 

今だから言えるが、俺は一人失望したんだろう。俺が思い描いたヒーローのような正義感、滲み出るような爽快感はそこになく、あったのは少し濁った目だけだった。

 

「……よろしく」

 

「……おう」

 

思えば酷い事したもんだ。隣の席になった高校1年の途中の時期に入ってくるやつにしていい対応じゃなかった。

悪いのは勝手に「比企谷八幡」というヒーローに勝手に憧れて、勝手に失望した俺だってのに。

 

「……なぁ、よかったら」

 

「わりぃ、友達待たせてるんだ」

 

それから俺は多少あいつと距離を置いた。一度は憧れた人だったからか、なんとなく普通に接することがいやだった。くだらない意地だ。やっぱり、世の中にヒーローなんて都合のいいものは存在しないと、そう思い始めた時だった。

 

「おい、誰だよ〜、こいつの携帯壊したの」

 

昼休み、クラスの中心にいた奴がそう声をあげた。

 

「まぢ最悪なんですけど〜、落とした奴弁償してよね〜」

 

どうやら同じグループのやつの携帯が壊れていたらしい。

 

「絶対教室にいる奴だろ、早く名乗り出ろよ」

 

男の方がそう言うが、クラスの他の奴らはこいつが携帯を落として割ったの知っていた。だが、やはり怖いのか俺含め誰一人名乗り出るものはいなかった。

 

「おい、さっきから黙ってるし、お前だろ」

 

「……え、わ、私知らないよ」

 

目をつけられたのはおとなしそうな女の子だった。

割ったのはお前だろ、人になすりつけるな。

 

「いいから、弁償してよ、弁償」

 

「ほ、本当に何にも知らないから」

 

その子の目は周りに助けを求めていた。

いい加減にしろよ。嫌がってるだろ。

 

出かかった誰かを救える言葉は、いつも喉元で消え失せた。

何故助けないと周りを嫌悪する。でも、それ以上に動けない自分に憎悪していた。

 

「……はぁ、だっせ」

 

声のする方に振り返ると、そこにいたのはあいつだった。

 

「……あ?」

 

「違うって言ってんじゃん、お前、言葉わかんねぇの」

 

「……んだと?」

 

「それに、そこのお前も、なんでこいつが言ってることが正しいって言えるんだよ」

 

「そ、それは」

 

「そもそも、そんなところに置きっぱなしにしてるのもどうなんだよ。そんなとこ置いてんなら壊されたって文句ねぇだろ」

 

「で、でも」

 

「でもじゃないだろ、だいたい」

 

「も、もういいから!」

 

止めたのは先程追い詰められていた女の子だった。

見ると、あいつに言いくるめられていた女の子の方は泣き崩れていた。

クラスの奴らも先ほどの流れも忘れ、泣いている女の子に同情を向ける。

 

「悪い、割ったの俺なんだ、適当な所で笑い話にしようって思って」

 

元々中心人物なだけあって、男のその声でクラスの同情は完全に傾いた。

結果的に事態を解決させた、比企谷八幡の行為を讃える人間はいなくなった。

寧ろ、果敢に悪に立ち向かった男に向けられたのは辛辣なものだった。

ひそひそと声が聞こえる。「ノリもわからないのか」「ああいうのまじで冷めるわ」「説教とかしちゃって、何様だよ」そんな本人に聞こえるような声が教室中にこだまする。そう言っているのは全て俺と同じ傍観者達だった。

だが、聞こえているはずの比企谷はいつもと同じだった。さもそれが当たり前かのように。

 

 

俺はこのとき、こいつから勇気を貰った。一声出すだけで、たしかに人が助けられることを知った。

そしてなにより、「ヒーロー」が傷ついていることを知った。

 

「……よ、八幡。かっこいいじゃん」

 

「あ?……お、おう。つかなんでいきなり下の名前なの?」

 

「細かいことは気にするな。あ、今日放課後とか空いてる?実はいいゲーセンがあってな」

 

だから、俺はその日、そんな傷だらけの「ヒーロー」が幸せを掴めるように、いつか救われますようにとそんな思いを密かに抱き、友達になった。

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、要するにあいつは俺にとってはヒーローであり、支えが必要な大馬鹿者で、何より大事な友達なんです」

 

長々と話していたつもりだったが、時計を見ると、10分も経っていなかった。

 

「それに、あいつ意外と家族思いなんですよ、小町ちゃんは言わずもがな、親父さんの方はいらない知識を教えてくれるんだってちょっと嬉しそうに話しますし、お母さんの方もいつもなんだかんだいって気にかけてくれてるって。かわいいのがあいつ、家族旅行に連れてって貰えないのを拗ねてるんですよ」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

もしかしたら、触れない方がいい話しだったのかもしれない。なにやら神妙な面持ちで家族全員黙ってしまった。

 

「あー、ちょっと仕上げに必要なもんが足りないんでコンビニ行ってきますね」

 

梅肉ネギソースに欠かせない梅が足りないのだ。

なんか居づらいのもあるけど。そんな思いも持ちながら俺はそそくさと玄関を出た。

 

 

 

 

 

 

 

「……本当、いい子と出会ったのね」

 

「……うん」

 

「……今度、家族旅行行くか」

 

ちなみに彼らのあずかり知らぬところで評価爆上げである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にしても何だよあのチキンソテー美味すぎだろ」

 

「だろ?あの梅肉ソースが夏バテ予防になって食欲も刺激するんだよ」

 

あの後、風呂から出た俺がリビングに向かうと、何故か生暖かい視線を家族から感じた。もしかしたら社会の窓でも空いてたのかもしれない。

ちょうど拓也も仕上げにはいったようで、そのまま飯を食って今に至る。

 

「じゃ、そろそろ寝るか」

 

「おう」

 

「明日も、勉強したら遊ぼうぜ」

 

「ああ」

 

しかし、こんな充実した夏休みを過ごすなんて誰が思っただろうか。林間学校ではクラスの奴らと川で遊んで、帰ってからは家に友達が泊まりに来る。どれもこれも俺が嫌っていた青春の一幕だ。

そんな今があるのもこいつのおかげなんだろう。あの日、あの声の中、俺に声をかけることがどれほど勇気のいる行為だったのか俺には計り知れない。

あれがなければ、俺はもっと腐れきった人間になっていったと思う。

だから、面と向かっては言えないが、いつか、あのとき、お前は俺にとって「ヒーロー」だったとそう言ってやりたい。

 

 

 

 

 




なんか、たまに300人とか見てる時間帯があって驚いてるんですけどあれなんですかね?
見られる時間帯とかがあるんでしょうか。
今回は完全に独自設定です。
賛否いろいろあると思いますが、暖かい感想をお待ちしております。
元々前回の千葉村辺りから頭に描いていたのでここからは本当に原作の流れの中にありつつも違う展開になると思います。おそらく。多分。
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