その間も感想、誤字脱字報告ありがとうございました。
期間が空いてしまい、前回の内容も流し読み程度でしか見ていないので、食い違いがあるかもしれませんのでご了承下さい。
あれから数週間が経った。
が、依然として俺は一色に振り回される日々を送っている。
と言っても無理難題を押しつけられるわけでもなく、パシリにされるようなこともない、こう言ってはなんだが、めんどくさいことを覚悟した俺としては些か拍子抜けな日々だ。
と、同時に、最近薄々感づいてはいたが、一色の狙いはどうやら葉山ではなさそうだ。
最初こそ、俺の言葉通り、俺を使って葉山と繋がろうとしていたのかと思ったがそんなことはなかった。
というのも、この奇妙な関係が始まってから、俺といるときの一色は葉山の話を殆ど出さなかった。
次点で奉仕部に何かしらの用があるのかとも思ったが、あいつらに聞いても一色なる人物は知らないとのこと。
用があるなら俺以外にも接触しているはずだ。
罰ゲーム的なノリだとしても、一年との接点は全くといっていい程ないし、二年でもそんな馬鹿は俺の周りにいない。
そうなると本格的に俺に用があると見て間違いない、と思いたいが、俺自身に身に覚えが一切ない。
……ま、自分で答えを出せない問いかけほど意味のないものはないし、ここはいい加減、本人に聞いてみるのが一番だろう。
そう思い、いつもと違い、待つのではなく、俺は一色のいる教室に向かった。
遠目から見たクラスの中での一色はいつもとは違っていた。
「……なんか、大人しくないか?」
俺といる時の一色はうざいくらいにあざとくて、可愛さを前面にアピールしてくるのだが、どうやらクラスでは違うらしい。
見た感じ、雪ノ下と由比ヶ浜を足して2で割ったあとに、さらにちょっと由比ヶ浜を抜いたくらいだ。
…まぁ、要するに見た感じ普通の女の子だ。
クラスの男子に愛想でも振りまいていると思ったが、どうやらそうでもないらしい。
「……わかんねぇなぁ」
クラスで孤立しているわけでもないとなると、俺に固執する理由がいよいよ本当に尽きてきた。
そう考え込んでいると、一色と目が合った。
向こうは俺がいるとは思っていなかったからか、大層驚いているようだ。
しかし、すぐに対抗するようにあざとくウインクをかましてくる。
が、辺りにクラスメイトが来てしまいそちらに意識を向けていった。
その様子は変わらず、至って普通といった感じだ。
あのあざとさは俺だけにしか見せないとでも言うのだろうか。俺目線ではそう思ってしまう。
悔しいが、そうだったら嬉しいと思う自分がいる。
……男ってのは本当に馬鹿で単純だな。
廊下で一人、恥ずかしさに苛まれた俺は、結局いつもの場所で待つことにした。
「もー、先輩来るなら来るって言ってくださいよー!」
そして、あの後合流した俺は一色に怒られている。
「悪かったな、気の迷いだ、気にすんな」
「私が気にするんですー!」
「何をそんな怒ってんだよ」
理由を話せ、理由を。
「色々あるんですー!」
理由になってないぞ、それ。
「悪かったって、今日は奢ってやるからそれで勘弁してくれ」
考えるに、理由は知らんが、一色にとっては、クラスでの姿を見られたくはなかったんだろう。
そうなると、待てと言われて待てなかった俺に非がある。
俺はハチ公以下なのかもしれない。
「言いましたね!やったー!」
返せよ、俺の自虐。
こいつ、だんだん遠慮忘れてきてるんだけど、そのうち弱み握られて警察に突き出されそうなんだが。
「で、今日で最後だろ、どこ行くんだよ」
そう、長々と続いた謎の関係も実は今日で終わりだ。
結局、俺は一色の目的も、俺を連れ回した理由も何一つ分かっていない。なんなら、逆に俺の中では煮え切らないなにかが生まれたくらいだ。
「……そうですねー、じゃあ、歩きましょう!」
「……は?、それでいいのか?」
奢ると宣言した手前、気を使ったのかと思ったが、そんな奴ではないのは短くはあったがこの期間で知っている。
こんな感じで、一色といる時は不意に裏を突かれるような感覚になる。
なんなら少し、見透かされているのではないかと思う時すらある。
だが、悪い気はしない。
何故だろうな。
奢るといった手前、何もしないのは嫌だったので、適当に自販機でジュースを買う。
「ほらよ」
当たり障りのないように水を買って渡す。
「……先輩、女の子に渡すのが水ってどうなんですかぁ」
何故か、一色に引かれている。
「いいだろ、水、安いし量多いし」
そう言って俺は当然の如くマッカンを選ぶ。
「げ、先輩それ飲むんですか」
最初はそう思うんだよ、俺もそうだった。
あいつに促されて飲んでいくうちに抜け出せなくなったんだよ。
へへ、キマるぜ。
「なんなら交換するか?」
「いいです、私から水を取らないでください」
そこまでか、まぁ、そこまでだな。
「で、歩くっていったってどこ行くんだよ」
気を取り直して、一色と二人、見知った道を歩き出す。
「ヒミツですよ、ヒ・ミ・ツ!」
あいも変わらず甘ったるいほどあざといが、それも慣れてきた。
甘ったるいものを食べすぎると胃もたれするとは言うが、一色に関してはそうでもないらしい。
俺がおかしいのだろうか。
「ま、任せるわ」
反応が薄いことに隣でぶーぶー文句を垂れているが、お構いなしにスルーする。
だか、その実、内心はそうでもなかったりする。
いくら言動には慣れても心まではそうはいかないらしい。
人体の不思議というやつだ。
……そういうことにしておこう。
「……着きましたよ」
だらだらと喋りながら、電車まで使ってたどり着いた場所は美浜大橋だった。
「……誰か他に人が来るのか?」
空いたスペースに立ち止まる一色に尋ねる。
「いえ、誰も来ませんよ」
そう言って一色は橋に寄りかかる。
「じゃあ、何しにここに?」
一緒に死にましょうとか言われたらどうしようと思いながら、言葉を待つ。
「……話があるんです、先輩に」
……少しよそよそしい態度、落ち着かない様子、そして声色。
ああ
そりゃ、俺が辿り着けないわけだ。
何故ならそれは、俺が一番最初に捨てた理由なのだから。
「……なんだ?」
まだ、そうだと決まったわけではないが、どちらにしろ真面目な話に違いはない。
ここはどんと構えて
「先輩、好きです、付き合ってください」
……予想通り、一色の話は俺への告白だった。
だったが、覚悟をしていても、俺の鼓動は大きく鳴り響いている。
「……ちなみに、いつからか聞いていいか?」
これは純粋な疑問だ。
俺が一番にこの線を消した理由でもある。
俺と一色の接点はあの場で出会ったのが最初のはずだ。
「先輩、葉山先輩を呼びに来た時ありましたよね、あれが最初です」
「そうか、そういやお前、マネージャーだったな」
だか、余計に俺を好きになる理由がわからなくなった。
「それがきっかけですねー、先輩は気付いてるから分かんないですけど、その時の葉山先輩、とっても楽しそうにしてたんですよ、マネージャーしてる私が見たこともないくらい」
手がかりが少ない俺は頷き、一色に次の言葉を促す。
「その時の私は、私で、周りに合わせたり、流されたりしてたんで、なんか、その様子を見た時、いいなって思ったんです」
吹っ切れたのか、次第に一色の言葉が流暢になってくる。
「結局、葉山先輩が本当に楽しそうだったのは先輩といるときだけでした。なので、そのことを葉山先輩に聞いたら、先輩のところに連れて行ってくれました。本格的に意識したのはこの辺りですねー」
連れて行った?
……まさか
「あん時、葉山と一緒にいたのは……」
「はい、私です」
あの話、聞かれたのか。
「それで、葉山先輩にセッティングして貰ったってわけです」
なるほど、葉山にしては不可解だと思ったが、そういうことか。
「じゃあ、俺はお前らの手の上で踊ってたのか」
「まぁ、そうなりますねー」
まさか、葉山に出し抜かれる日がくるとはな、あいつが他人のために自分の評価を下げてまで俺を騙したことへの違和感が半端ない。
「なるほどな、経緯はわかった、じゃあ、もう一つ、どこが好きなんだ?」
自分で聞いてて恥ずかしいが、聞いた限り、俺を好きになる要素はない。葉山との話を聞いた辺りらしいが、俺はただ、言いたいことを言って説教じみたことをしただけ。
なんなら人によっては不快なものだ。
「……さっきも言いましたけど、私、人に合わせたり、流されたりしてたんですよ、だからなんて言うか、あの時の先輩たちのやりとりを見てて、本気でぶつかってるのが素敵に見えたんです」
裏表のないやりとり、図らずしもそれは、俺が大切にしているものでもあった。
「先輩は男子ですから、わかんないと思うんですけど、女子はなかなかそううまくいかないんですよ」
悪いな、一色、そういうやつを知ってるから多少はわかるんだよ、女子の人間関係の大変さってのは。
だからこそ、お前の言わんとすることも分かる。
「で、実際に喋ってみたのが最後の一押しでした。先輩からしたら初対面の私にも取り繕わずに喋ってくれました。その時、あ、やっぱり私この人のこと好きなんだなーって」
一色の話を聞きながら、その時のことを思い出す。俺の鼓動は未だに収まらない。
「私のあの理不尽な頼みも引き受けてくれて、嬉しかったんですよ」
あのやたらと高かったテンションはそれか。
「……なるほどな、まさか自分の預かり知らぬところで好意を持たれるなんて夢にも思わなかったぞ」
パズルのように所々不可解だった場所が埋まった。
ただ、一色には申し訳ないが、正直、そんな理由で?ってのが本音だ。どっかの馬鹿みたいに身を挺して何かを守ったわけでもないし、爽やかイケメン野郎ほどカッコよくもないし、優しくもない。
それでも、そんな俺の思いに反して、俺の中身を好きになってくれたってのが堪らなく嬉しいのはなんでだろうな。
「……先輩は、先輩はどうなんですか?私のこと」
弱々しい声で一色に問われる。
さて、俺は、佐藤拓也は一色いろはのことをどう思っているのだろうか。
曖昧な答えではなく、今この場ではっきりと伝えるのが一色に対する敬意であり、男ってもんだろう。
あのあざとい仕草が嫌いだっただろうか。
否、未だに心臓に悪い。
くだらないやりとりは嫌だっただか。
否、いつの間にか、俺の日常の当たり前に変わっていた。
俺にとってこの数週間は苦痛だっただろうか。
否、これから先、忘れられない青春だろうさ。
では最後に、堪らなく嬉しかったのは何故だろうか。
……ああ、なんだ、わかってんじゃねーか。
「…その前に一色、俺も言っておきたいことがある」
「な、なんですか?」
けじめって訳じゃないが、これだけは言わなきゃだめだ。
「俺は、一色、お前のことが好きだ」
「……え?」
気づかないふりなんてらしくない真似だったな、俺は何処かで一色に惹かれていることに気づいていたんだ。
それでも、その感情を見て見ぬ振りをして、一色といることに正当な理由を見つけようとしていた。
一色の行動の理由も目的も、最後の最後まで聞かなかったのはそういうことだ。
「何度でも言ってやるよ、俺は一色いろはが大好きだ」
でも、今は違う。
後出しでみっともねえが、一色の告白で先に進めた。
「……ずるいです、先輩は」
「……悪いな、みっともない先ぱ」
「もっと好きになっちゃうじゃないですか」
俺の言葉を遮って、こちらに笑顔を向ける。
……あれ、こいつ、こんな可愛かったっけ。
「じゃあ、晴れて両思いですね!先輩!」
「………ああ」
沈みゆく夕日も相まって、俺は一色に見惚れてしまった。
きちんと向き合った瞬間これか、…我ながら、単純で馬鹿だと思う。
今まで見てきた一色の笑顔が偽物とは言わない、けれど、感情に鋭い俺だからこそ、この笑顔こそが、心からのものだとわかる。
最高の化粧は笑顔というが、間違いではないのかもしれない。
今の一色は、今まで見たどんな女の子より可愛く見える。
「ほら、行きますよ!せんぱい!」
「行くってどこに?」
出来ることなら早く家に帰って落ち着きたい所だが、そうはいかないらしい。
「えー、忘れたんですかぁ、今日は先輩の奢り、ですよね?」
おい、まさか
「さぁ!記念すべき初デートですよ、せーんぱい!」
そう言って笑顔のまま歩き出す一色。
全く、よくもまあ恥ずかしげもなく堂々とそんなことを言えるもんだ。
だが、主導権を渡してやるつもりは微塵もない。
一色に追いつき、一言
「ったく、今日だけだぞ、いろは」
「……やっぱりずるいです」
「俺を出し抜こうなんて1年はえーよ」
そんなことを言いつつも、内心はとんでもなく騒がしかったりする。
それもしょうがねぇだろ、他人に鋭くても、自分に対しては人並みなんだから。
後ろの夕焼けは俺たちを見届けたかのように、完全に沈んでいった。
翌日
「よう、葉山」
珍しく一人でいる葉山に声をかける。
「珍しいね、佐藤から声をかけるなんて」
こっちの苦労も知らずにいる涼しそうな顔が今日はいつになく腹が立つ。
「なに、よくもやってくれたと思ってな」
「……そうか、一色から聞いたのか」
事の顛末を葉山にはまだ報告しないよう、いろはには頼んでいる。
「それで、どうだったかな?」
「……お前の思惑通りだよ、悔しいがな」
「…そうか」
そう言うとやけに嬉しそうな顔をする。
「何笑ってんだよ」
「いや、ただ、俺もまだまだ捨てたもんじゃないだろ?」
……こいつ、言うようになったな。
「まぁな、今日は素直に礼を言いに来ただけだ、……ありがとな」
「じゃあ、これであの時の事はおあいこって事でいいかな?」
こいつ、本当に葉山か?
「なんか、変わったな」
「まだ、君の前でだけだけどね、それに、…君のおかげだ」
「気持ち悪いこといってんじゃねーよ」
俺の前だけとかおぞましいことを言うなよ。
けど、
「今のお前、俺は嫌いじゃないけどな」
「……君の口からその言葉を聞けただけで今は十分さ」
……いよいよ本当に葉山を嫌いになれないかもしれないな。
「なぁ、八幡よ」
「んだよ」
「最近奉仕部に依頼来てないよな」
「まぁな」
昼休み、俺は八幡と飯を喰らいながら話をしている。
「そういや、結局最近休んでお前何してたんだよ」
「色々とな」
「理由になってねーよ、それ」
……デジャブか?
「おかげさまで雪ノ下から集中砲火がえげつないんだよ、何あいつ、人を罵倒してないと死ぬのか?」
「平和で結構」
「おい、知ってるか、的は2つある方が被害少ないんだぜ」
八幡らしい心配の仕方である。
要約すると、心配だから顔出せってことだろう。
珍しいことに、目は本気で訴えているように見えるが気のせいだ。
「まぁ、とりあえず、彼女が出来たわ」
「……は?」
「一年生の」
「……は?」
こいつ、壊れやがったな。
「……マジで?」
「まじで」
意外と治りが早かった。
「……おめでとさん」
「ありがとな」
素直に祝福されると嬉しいもんだな。
八幡は腐っても根がいいからこういう時に人を不快にさせない。
流石だせ、親友。
タイミングよく、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。
「余計なお世話かもしれんが、何も言わずに後悔するよりは、言って後悔した方が断然マシってことだ」
「……なんだよ、急に」
俺は立ち上がって一つ助言を入れる。
「体験して思ったことだよ、どれだけ頭で考えようが、そんなもん、その場の言葉一つで崩れ落ちる」
「……」
思い当たる節があるのか八幡は黙ったままだった。
「後悔はするなよ」
「……ああ」
八幡自身、気付いているかは微妙だが、そう遠くない未来、俺と同じような目に合う時が来る。
その時は是非、俺に祝福させてくれ。
「遅いですよー、先輩!」
「いや、お前が早すぎんだよ」
あんな盛大な告白をしあったにも関わらず、俺たちは翌日には平常運転に戻っていた。
と、言うより、お互いに平常運転が一番いいという結論が出た。
変わったことと言えば、お互いに名前で呼ぶようになったくらいか。
いろはは二人の時にしか呼んでくれないが、それがまたいい。
「さて、先輩、今日はどこに連れて行ってくれるんですか?」
そう言って前屈みになってこちらを見つめる。
「……そうだな、望む場所ならどこにでも連れて行ってやるよ」
もう一つ、変わったことはあざとい後輩からなんとも可愛い彼女になったことだ。
……こんな青春もありかもしれない。
実質葉山ルートみたいになってますね笑
けど、一色を絡めるとなるとそこと関連付けるしかなかったもので…
ちなみにですが、この世界戦では雪ノ下からオリ主への好意はないです。あくまで友達ですね。
ここからはまた本編のほうに戻りますが、別の小説の方も書こうと思っているので、また遅れるかもしれません。申し訳ないです。
実は、アニメ開始までの繋ぎとしてこれを書いていたのですが、上手くいかずにここまで長引いてます笑
アニメの方もコロナで延期になってしまいましたし……
読んでいただいている皆様の多少の暇つぶしになるよう自粛期間は出来る限りで頑張りたいと思います。
以下、私情ですので興味ある方はどうぞ。
一応、投稿が遅れた理由は書いてあります。
私ごとですが、実はこの間、大学受験に挑戦してまして、センター利用で無事合格いたしました。
コロナで大変ですが、春から大学生になりました。
実質一浪です笑
高校卒業後は派遣をしてまして、その間も少しずつ勉強してなんとかって感じです。
センターが終わるということで、半分本気、半分記念受験だったのですが、思いの外出来がよく、国語に至っては、勉強していない現代以降の文章で100点中92点とかなり高い点を取れたのぱちょっとした自慢です笑
最後に、コロナにはお気をつけてください。