もしも、比企谷八幡に友人がいたら   作:一日一善

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嬉しい感想をいただいたので即興で書き上げました。
完全オリジナルストーリーです。
本編には関係ないので読まなくても結構です。
隙間の時間に書いたのでクオリティはお察しください。


第8.5話

ゴールデンウィーク。

 

日本では四月末から五月始めにかけて連休の多い期間のことを言う。

何とも響きのいい呼び方だと思う。だが、考えてみてほしい、その楽しい休日の裏では馬車馬のように働いている人間が沢山いることを。中でもサービス業なんかは見てられないもんだ。ソースは俺の親父。

やはり、専業主夫こそ正義だな。

 

「おい、何考えてんだよ。目がより腐り始めてるぞ……」

 

「ふっ、なに、専業主夫こそ、やはり俺の目指すべき就職先だと改めて思ったまでよ」

 

「毎回言ってるけど、なんもかっこよくないからな?それ」

 

「うるせぇ」

 

そんな俺たちはゴールデンウィークの初日、だんだんと暖かさが増してきた中、公園でキャッチボールをしていた。

事の顛末を話そう。

それは、ゴールデンウィークの前日のことだった。

 

 

 

 

「八幡、ゴールデンウィーク暇か?」

 

「……俺くらいになると暇とは何かを考える。そうすると必然的に暇というのは無くなってだな」

 

「お、全部空いてんのか、そりゃいいな」

 

もう、こいつ嫌い。

 

「実は今年のゴールデンウィークは特に予定がなくてな、後半の方にはちょくちょくバイトはあるけど」

 

「……それで?俺が暇であることとお前に予定がないことに何の関係があるんだ?」

 

「いやー、そういやお前の家最近行ってねーなと思ってよ。そっちがよければ泊まりにでも行こうかと思い立ったわけよ」

 

「泊まり?」

 

「何不思議そうな顔してんだよ、ダチの家に泊まるくらい普通だろ?」

 

こいつは俺が基本ぼっちなのを分かっていて、俺に普通を説いているのか?それとも気づいてないただの無意識か。

あの顔は前者だな。

 

「冗談はさておき、どうよ?」

 

「……俺の一存じゃ決められねぇよ、それこそ親父や母さんに聞いてみないとな。今まで俺が誰かを泊まらせるなんてなかったからそこら辺もわかんねぇし」

 

「ああ、そこは大丈夫、小町ちゃんに聞いたら大丈夫って言ってたから。ご両親仕事が忙しいらしくてゴールデンウィークの半分は出勤だって言ってたぞ」

 

「何で家の長男である俺すら知り得ない情報を他人のお前が知ってんだよ。怖えーよ、普通に」

 

「まぁ、そこは小町ちゃんだからな」

 

「そうか、小町ならしょうがない、とはならんぞ流石に」

 

「これ言っとけば大丈夫って言われたんだけどなぁ」

 

小町よ、お兄ちゃんを何だと思ってるんだい?

 

「話を戻すが、もう、あとはお前だけなわけ。どうよ?嫌なら全然拒否してもらって構わないぞ、楽しくなきゃ俺も嫌だし」

 

「……そういうことならいいぞ、来いよ家」

 

無意識に顔を背けてしまう。変に顔がにやけてしまうのを押さえられなかったからだろうか。それくらい、テンションが上がってしまったようだ。

 

「うわぁ、お前もうちょい人に見せれる笑顔になれよ、顔はいいのにそういうとこ本当残念だよな」

 

やっぱこいつ嫌い。家の鍵閉めて外に放置してやろうか。

そんなことを思いながらも、俺は久しぶりに休日を待ちどうしいと思った。

 

予定通り来たあいつをキャッチボールに誘った。そして冒頭に戻るわけだ。

 

 

 

 

「にしても、キャッチボールなんてな、野球好きだったのお前?」

 

胸元に丁度いいボールが返ってくる。

 

「ったりまえよ、生粋の千葉県民だからな、地元の球団の試合を見てるとおのずと好きになるんだよ」

 

「そんなもんかねー?」

 

ふっ、そんな事を言ってられるのも今のうちだ、今日はたっぷりと野球の魅力を教えてやろう。キャッチボールしかしないけど。

 

 

 

「あれ?ヒッキーとたっくんじゃん。何やってんのー?」

 

 

 

聞き覚えのある間延びしたアホっぽい声が聞こえた。

 

「ん?由比ヶ浜か?何ってキャッチボールだろ」

 

「へー、ヒッキーもそういうのやるんだ、意外かも」

 

「おい、お前ら話してないでこの犬どうにかしろよ!」

 

呑気に話してる間、俺は一人由比ヶ浜が連れていた犬に押し倒されて舐めまわされていた。何?俺なんかした?

 

「その子ね、ヒッキーが助けてくれたうちの犬だよ!サブレって言うんだ!」

 

「お前、今度はちゃんとリード握っとけよ。今回のだって下手したら死んでたんだし」

 

「……うん、あの事故からもっと早起きして散歩するようにしてる。

ヒッキーが助けてくれなかったら、あたしも元気でいられたかわかんない。サブレは家族の一員だからさ、だからヒッキー、改めてありがとう!」

 

「ワンッ!」

 

由比ヶ浜の言葉に合わせるようにサブレが鳴く。どことなく笑っているようにも見えなくはない。

俺自身の行動で誰かを助けられたなら本望だ。まぁ、お礼が言われたくて助けたわけじゃないが、それでも、こうやって面と向かって言われると嬉しいものだ。入院した甲斐があるってもんよ。

それはわかった。だから、笑ってないで早く助けてくれ。

 

 

 

 

由比ヶ浜と公園で鉢合わせた後、しばらくしてようやく俺はよだれ地獄から解放された。

由比ヶ浜のほうも三浦たちと予定があるらしく帰っていった。嬉々として話すその顔は以前よりも数段楽しそうだった。

 

「いい時間だしどっかで昼飯食っていこうぜ」

 

「……サイゼならいいぞ」

 

「お前、前もサイゼだっただろ。たまには別のとこ行くぞ」

 

「別んとこってどこ行くんだよ。あんま高い店は嫌だぞ俺」

 

「まぁ、任せとけって。ほら早く道具しまって行くぞ」

 

何とも嫌な予感がするが、たまにはいいか。

 

 

 

 

「ほら、着いたぞ。ここだ」

 

着いてみるとそこは今時の若者が立ち寄りそうもない少ししゃれたお店だった。

 

「ここ、基本的には喫茶店なんだけど、昼時になるとランチも出してるんだよ。値段もサイゼよりは多少高いが、味の保証はするぞ」

 

何度か来たことがあるのか、手慣れた手つきでドアを開ける。

 

「いらっしゃいませ」

 

歓迎してくれたのは人の良さそうな初老の男性だった。

 

「こちらの席へどうぞ」

 

店はさほど混んでいないようで、すぐに案内された。店の雰囲気は落ちついていて俺には居心地が良かった。

 

「ご注文が決まりましたらお呼びください」

 

そう言って男性はメニュー表を差し出した。

 

「オススメとかあんの?」

 

「基本的にはどれもいけるが、個人的にはオムライスだな。半熟の卵の上にかかるデミグラスソースが絶品なんだ、それと、喫茶店だから食後に飲むコーヒーもコクがあってうまい」

 

話を聞くだけでもなんとも食欲をそそられるものだ。俺の中ではそのオムライス一択となっていた。

 

「じゃあ、俺はそのオムライスで」

 

「お、そうか、俺も今日はそのつもりだったんだよな」

 

そう言うと拓也は大きな声で先ほどの店員さんを呼ぶ。呼び出しボタンがない店に来たのはいつぶりだろうか。

少しお客さんが増え始めたのか、少し遅れて注文を取りに来た。

 

「あと、食後にコーヒーを2つお願いします」

 

「かしこまりました」

 

そう言って店の奥に下がっていった。

 

「どうだ?悪くないだろ」

 

「まあな、雰囲気は俺好みだ。欲を言えばもう少し客は少ない方がいいが」

 

「安心しろ、この時間だけだ、昼を過ぎれば客も減っていくんだ。喫茶店としてよりもランチの方が知られてるからな」

 

「へー、そうなのか」

 

俺のベストポジションに入れることを検討するとしよう。

 

俺たちが雑談に花を咲かせている間に料理ができたらしく運びこまれる。

 

「お待たせ致しました」

 

俺たちの目の前に注文したオムライスが並べられる。デミグラスソースの香りは芳醇でいつまでも嗅いでいられる気がした。

 

「「いただきます」」

 

スプーンを使って一口目を口に運ぶ。デミグラスと卵とバターライスがマッチして今まで味わったことのない濃厚な味の爆弾が炸裂した。

 

「……うめぇ」

 

「だろ?」

 

無意識に言葉が漏れてしまったらしい。しかし、この美味しさでは仕方ない。本当に美味しいのだ。

そこからは互いに話すこともなく黙々と食べ進んでいった。

気付いた時にはもう互いに食べ終えていた。

 

「すいません、食後のコーヒーをお願いします」

 

「かしこまりました」

 

見渡すと、店内は既に満席だった。

 

「悪くないだろ、たまには」

 

「正直予想よりはるかに良かった」

 

「そうだろ、お前も周りに目を向けてみろよ、普段興味のないもんでもいざやってみるとハマるなんてのはざらにあるんだから」

 

「たしかに、そうかもな……」

 

少し視野を広げてみるか、そう思っていると申し訳なさそうに店員さんが近づいてきた。

 

「申し訳ありません、ただ今店内混雑しておりまして、よろしければ相席でもよろしいですか?」

 

「俺はいいが、大丈夫か?八幡」

 

「ああ、大丈夫だ。俺たちもあとコーヒーだけだしな」

 

「ありがとうございます」

 

そう言って店員が案内する客に見覚えがあった。

 

「相席、ありがどうごさいま……って、貴方達だったのね」

 

「って、雪ノ下じゃねーか」

 

「なんとも奇妙なこともあるもんだな、ま、とりあえず座れよ」

 

四人座りだったので、拓也が俺の隣にきて、対面に雪ノ下が座った。

 

「驚いたわね、貴方達がこんなところに来るなんて」

 

「拓也が誘ってきたんだよ、いいところがあるってな」

 

「そう、わかってるじゃない」

 

まるで自分の事かのように自慢げに言う。別にお前を褒めたわけじゃないからな?

 

「ご注文はお決まりですか?」

 

「オムライスを1つ」

 

雪ノ下は俺たちと同じオムライスを頼んだ。それと同時に俺たちのコーヒーも出てきた。

 

「お前もよくここに来るのか?」

 

「ええ、たまにだけれど、 あまり人が入らない時間に来てるわ」

 

「?それが何でこの時間に?」

 

「以前来た時に、ここのオムライスが絶品という話を耳に挟んだのよ。まさか、ここまで人気だとは思わなかったのだけれど」

 

「あー、わかる、最初は俺も思った。ギャップがすごいよな、客がいる時といない時で」

 

やはりこの二人は馬が合うのか、料理が届くまでの間、俺を置き去りにして話し続けていた。

 

「っと、話し込んじまったな、雪ノ下の料理もついたことだし、俺たちは先に出るか」

 

「だな」

 

「そう、ではまた部室で会いましょう。楽しかったわ」

 

「おー、またな」

 

「……じゃあな」

 

俺たちは、会計を割り勘で済まし店を出た。

……こいつは気づいてるのだろうか、あの雪ノ下が自然と楽しかったと言ったことに。大した奴だよやっぱり。

俺の感心をよそに、お腹いっぱいになってご機嫌なのか鼻歌を歌いながら歩く姿を見ると、やっぱり過大評価かもしれないと思った。

 

 

 

 

「たでーま」

 

「おかえり!拓也さん!…あ、お兄ちゃんも」

 

家に帰ると小町がお出迎えしてくれた。主に拓也を。あなたのお兄ちゃんは大変傷ついてますよ。小町さん。

 

「小町ちゃん帰ってたんだ」

 

「午前中はまだ、部活がありまして……」

 

「そっか、まだ引退は先だったよなぁ、受験勉強もあると思うけど、頑張れよ。うち意外と偏差値高いからさ」

 

そう笑いながら小町の頭をポンと叩く。

 

「ありがとございます!いやー、本当なんで拓也さんみたいな人がお兄ちゃんと仲良くしてくれるのか本当不思議ですよー」

 

「そうか?寧ろこいつの良さを理解できない周りがよくわからん。そんな奴らに限って噂を鵜呑みにするようなバカな連中なんだろうけどな。俺はこいつの良さは十分わかってるからこそ、友達やってるんだよ小町ちゃん」

 

少しまじめに話したかと思えば、最後は戯けた様子で小町に語りかける。

 

「……よかった」

 

「?小町ちゃん?」

 

「いえいえ!何でもないですよ、それより、今の小町的にポイント高いですよ拓也さん!」

 

「ポイント貯まると俺の妹にでもなるのか?」

 

「残念ながら小町のお兄ちゃんはお兄ちゃんだけでして」

 

「そうか、それは残念」

 

俺にはよくわからないやり取りがあったのか、終始二人は笑ってた。ただ、最後のは八幡的にポイント高いぞ小町。

 

 

 

 

家に帰ってからは、ゲームやテレビを見て時間を過ごしていた。そして、気づけばもう夕食の時間になっていた。

 

「夕食どうするよ」

 

「親父たちは帰ってこないらしいから、外食か、作るか、買ってくるかだな」

 

「せっかくだし作らねぇか?昼外食したしよ」

 

「作るっつったって俺は本格的に料理なんて出来んぞ」

 

「俺に任せろ、泊めてもらうんだし料理くらいは振る舞うさ」

 

「……お前、料理できんの?」

 

「言ってなかったか?割と得意だぞ俺」

 

そう言うとおもむろに立ち上がる。

 

「ちょっと足りない材料買ってくるから、待っとけ」

 

「なら、金持ってけよ」

 

俺が財布から金を取り出そうとするのを拓也は手で静止する。

 

「気にすんなって、大した額じゃねぇし、宿泊料だと思っとけ」

 

そう言うと財布とスマホを持って出かけていった。

 

「あれ?拓也さんどっか行ったの?」

 

玄関の音で気づいたのか小町がひょこっと顔を出す。

 

「喜べ小町、今日の夕飯、拓也が作ってくれるってよ」

 

「ほんと⁉︎やったー!やっぱり、ゴミいちゃんとは大違いだね!」

 

「うるせぇ、俺だって頑張ればお茶漬けくらいなら作れるんだよ」

 

「はぁ、そんなんだからゴミいちゃんなんだよ?」

 

はい、善処します。

 

 

 

 

しばらくして拓也が帰ってきた。

 

「悪い、ちょっと遅くなった」

 

「別にいいけど、何作るんだ?」

 

「カレー作ろうと思ってな、多く作っても保存がきくし、最悪明日の朝にでも食べればいいしな」

 

「なんか手伝うか?」

 

「そうだな、流石に食器や調理器具の場所がわからんから、そこらへんのことを頼む」

 

そう言うと早速調理を始めた。どうやら得意なのは嘘じゃないらしく、手際よく作業を進める。

 

「小町も手伝いますね!」

 

さっきまで勉強していた小町が匂いにつられたのかリビングにやってきた。

 

「じゃあ、小町ちゃんお皿並べてくれる?」

 

「はい!ほらほら、お兄ちゃんも手伝う」

 

「わかってるっつーの」

 

皿を並べ終わった俺たちは料理を拓也に任せてくつろぐことにした。

小町が手伝おうとしたが、休んどけと言われてからは大人しくそれに従っている。

ぼーっとテレビを見ていると、いつのまにか、カレーのいい匂いが家中に広がっていた。

 

「出来たぞ」

 

そう言って机に盛り付けられたカレーが並べられる。

 

「わーっ!すごいいい匂いですね!」

 

「ああ、うまそうだな」

 

「先に食べてくれ、先に少し洗い物するから」

 

お言葉に甘えて、俺たちはそれぞれ席についた。

 

「「いただきます」」

 

一口でいつもと違うカレーだと気づいた。しっかりとした辛さがあるが、インドカレーのようなスパイシーな辛さとは違い、コクの中にジワリと効いている辛さだ。家庭的な野菜たっぷりというよりもどちらかと言うとビーフカレーに近い。店の料理と言われて出されても分からないだろう。それくらい美味しいのだ。

 

「んー!美味しいです!」

 

「……お前、店でもやってけるんじゃね」

 

「お気に召したのなら何よりだ」

 

その後も黙々と食べ続けた俺たちは、結局完食した。

 

 

 

 

「さて、そろそろ寝るか」

 

ご飯を食べ終わってからも、だらだらと過ごしていると時計はもう深夜0時を指していた。

 

「だな」

 

俺たちはそれぞれ寝床についた。

 

「わりと濃い一日だったな」

 

「たしかにな」

 

「たまにはこんな休日もいいもんだろ、家にばっかいないで外に出るのを進めるぞ」

 

「ばか、たまにだからこそいいんだよ、俺は基本室内がいいの」

 

「……たしかに、一理あるか」

 

そんなくだらないやり取りをしているうちにお互い眠っていた。

 

 

 

 

次の日は一日家中で遊んだ。

やけに拓也はうちの猫を構っていた。どうやら犬派ではなく猫派らしい。カマクラもどうやら懐いているようだった。

日が暮れる頃になると拓也が帰り支度を始めた。

 

「じゃあな、楽しかったぞ」

 

「そうか、俺も案外楽しかった」

 

「また遊びに来てくださいね拓也さん!」

 

「おう、またな小町ちゃん、八幡もまた学校でな」

 

小町は拓也が見えなくなるまで、手を振っていた。

 

「何でお前がそんな見送ってんだよ……」

 

「……お兄ちゃん、拓也さんは多分お兄ちゃんの理解者だよ。だから、お兄ちゃんも、大切にね?あんないい人そうそういないよ」

 

そんなの言われるまでもない。もう俺はあいつを信じてるんだから。

 

「ったりまえよ、お兄ちゃんなめんな」

 

「……ふふっ。でも、まだ小町の方がお兄ちゃんのことよく分かってるもんねー!あ、今の小町的にポイント高いかも」

 

「最後ので台無しだよ」

 

こうして、なんとも濃い俺のゴールデンウィークの2日間は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




投稿間隔が空くはずが、感想読んで頑張ろうと思って書きました。
ですが、基本はやっぱり空くと思います。ごめんなさい。
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