ビルドダイバーズの世界、電脳空間GBNにて繰り広げられる、とある戦いの模様となりました。
モフモフのタヌキとジャージ男のコンビで出陣します!
ブリザードが凍て付く雪原と氷の大地、南極。
そこに一匹の軍服を着た、二足歩行の愛らしいタヌキと、煙草を咥えるジャージ姿の青年が立っていた。
「ねえねえ、タヌッさんタヌッさん」
「何ー?」
「俺この間さ、『AVALON』のファンイベント行ってきたのよ」
「ああ、何か行くって言ってたねえ。どうだった?」
「エミリアさんめっちゃ美人だった。仲良くなりたい」
「うん、いつわんは女好きだからね、知ってた」
吹き荒ぶブリザードを気にせず、二人は会話する。
モフモフの尻尾と、フカフカの毛並みがチャーミングな二足歩行のタヌキが『タヌベロス』。
ブリザードの中煙草を吹かし続ける、茶混じりの黒髪のジャージ男が『イツワ』。
彼らの背後には、赤と白のモビルスーツがそびえ立つ。
「さて、それじゃあ」
「そろそろ行こうかな」
煙草の火は踏み消され、ポリゴンとなって消えていく。
そのままそれぞれのモビルスーツに乗り込む、二人の目線の先にあるものは――――――
「「出撃の時間だ」」
――――――資源採掘基地『バークレー基地』。
MISSON
RANK:D
『南極鉱山』
【ミッション地】
南極大陸、バークレー基地
【ミッション内容】
資源採掘基地「バークレー基地」が、敵性MSに占拠されてしまった。
このままでは資源を奪われてしまう。
「バークレー基地」から適性MSを排除し、鉱山資源を確保せよ。
【適性MS】
リーオーNPD(ドラムマシンガン)×10
リーオーNPD(ビームライフル)×4
リーオーNPD(ドーバーガン、榴弾装填)×2
高機動型リーオーNPD×1
【勝利条件】
敵機の全滅
【敗北条件】
味方の全滅
「『アイアストライクガンダム』、イツワ!」
「『アストレイ・ツインフレーム』、タヌベロス。フォース『BLDTroiaS』!出撃!!」
ストライクガンダムをベースに、2つの大型シールドをバックパックに携えた『アイアストライクガンダム』。
グレイズフレームが移植され、両肩に大型のバインダーを装備する『アストレイ・ツインフレーム』。
雪原を一気に駆け抜け基地直前まで接近すると、途端にコックピット内に「ALERT」の表示が躍り出る。
見ればドラムマシンガンを持ったリーオーが6機、基地正門前で待ち構えていた。
「いつわん、予定通りに」
「了解っと!」
アイアストライクガンダムのシールドが、サブアームによって展開される。正面にではなく、側面に。
そのシールドには、バインダーライフルが取り付けられており、それぞれ2門ずつ、計4門の砲口がリーオーたちを狙う。
「まずは2機!」
バインダーライフルから撃ち出される、4条のビームが2機のリーオーを撃ち抜く。
そのまま今度はシールドを前面に展開し、弾丸を食らいながらも速度を緩めることなく、固まっていた4機の内1機のリーオーへと突撃する。リーオーたちも突進してくる敵目がけマシンガンを連射するが、分厚い盾には効果がなく弾かれる。
そして重厚な金属塊に、高速で衝突させられたリーオーは、トラックと事故を起こした軽自動車の様にひしゃげ――――――
「これで道は開いた!」
――――――その盾の後ろに身を隠していた、赤い機影の侵略を許してしまった。
アストレイ・ツインフレームが両手に持つ、二振りのカレトヴルッフ。そのサーベルが閃き、瞬く間に3機のリーオーを斬り伏せる。
爆散の後、ポリゴンとなって消えていくリーオーたち。
これにより、正面ゲートを阻む者はいなくなった。
「えーと?残りはドラムマシンガン持ちが4と、他が丸々ぅ……?ひーふー……残り11機ねぇ……。タヌっさん、この後も予定通りかな?」
「うん、そのつもり。ここから侵入して、迎え討って来た奴から倒しちゃおう。さっきの要領のまま、基本は盾持ちのいつわんが前で受けて、チャージして崩して切り込んでいこう。高速機の相手はー……まあ、オレがするよ」
「頼んまーす」
愛すべきモフモフと、ヤニ臭い男が今後の動きを確認する。
それが終われば、後はやるべき事は一つ。
「よし!行くよ!」
「おっけ!」
2機のブースターが起動し、基地の敷地内へと侵入していく。
MSの運用前提の構造なのか、18mの人型ロボットが走っても、悠々進める広さが快適。
そしてそれ故に、進路が絞られやすい。
「ッ!?レーダーに熱源反応!」
突如アストレイ・ツインフレームのレーダーに、反応が現れる。
「はぁ!?俺のレーダーには……クッソ!しまった!!」
「はあぁ!!」
気が付いた時には、もう遅い。
アイアストライク・ガンダムの足元が赤熱化し、ビームが地下から放たれる。
咄嗟にアストレイ・ツインフレームが押し出す事で直撃は免れたが、シールドを支えるサブアームの片方が溶断されてしまう。
アイアストライク・ガンダムのレーダーには敵影が映らず、アストレイ・ツインフレームのレーダーには映った理由。それがこれ。
自機の真下にいる存在は、レーダーは映す事はできない。
「いつからだ!?」
「たぶん、ずっといたんだ!この通路の真下に!ただし、電源を落とした状態で!」
「俺たちが通るタイミングで起動させたのかッ!!NPCの癖にやりやがる!!」
レーダーはそれまで、地下にある熱源を探知できなかった。
何故なら、熱源が起動していなかったから。頭上を通る敵を攻撃するために起動したから、初めて反応したのだ。
「だけどこれで場所は分かった!」
アストレイ・ツインフレームに搭載されたエイハブ・リアクターが唸りを上げ、エネルギーを生み出す。
半永久機関から供給されるエネルギーを喰らい、特有の膂力をもってして自身の肉体を支持する。そして肩部ビームガンが直下に向け何度も放たれ――――――
「……わお」
――――――後に残るのは、ドロドロに溶解し一部ガラス化した地面と、敵機撃破のポリゴンの残響。
そして、繰り返し放たれたビームの威力にドン引きした、仲間の声だった。
「……いや、まさか自分でもこんな威力になるとは」
「ビームってこういうやつだっけ……?」
「さあ……?」
2人は首を傾げ、その後気を取り直して再び走る。落ちたシールドから、バインダーライフルを回収することも忘れずに済ませてから。
だが、この時2人は気づいていなかった。気付くべきだったのだ。
遥か空に刻まれた、僅かな罅割れに。
「あっれー……?おかしいな?」
最初にその違和感に気が付いたのは、タヌベロスだった。
あれからしばらく基地内の捜索をしていたが、地下からの奇襲以後敵機は見受けられておらず、10分は経っているのにまだ探して回っていたのだ。
「どうしたよ?」
「いや、事前情報だと、そろそろ他の敵とかも出てくるはずなんだけど……。掲示板に載ってた、先に攻略したプレイヤーたちの話なんだけどね?」
「ガセだったのかいな?」
「そのはずはないんだけど……」
訝し気に首を傾げるタヌベロスとは対照的に、楽観的と言うか深く考えていない様子のイツワ。
それぞれの性格が出てくる一面だろう。
そして今回は、タヌベロスが正解だった。
「ッッ!!?何だありゃぁ!?」
突然基地の最奥から、爆発と粉塵が起こる。
急いで向かうと、そこにはあってはならない光景が広がっていた。
「嘘……」
機械と機械、金属を金属で絞殺す様な音。
ギチギチと軋みながら、お互いに縊る様に、それぞれを混ぜ合わせるそれら。
それは、標的だった残ったリーオーたち。それらが高機動型を中心として吸収されていく。
一瞬の、静寂。
「■■■■ッッ■■■■■■■■ーーーーーーーーーーーーーァァッッ!!!!!!!!」
顔面の装甲が罅割れ、リーオーには本来存在しない口に当たるパーツが発生。
そこから放たれるのは、
背面装甲からはいくつものブースターが生え、高機動型という名称すら当てはまらない異形と化していく。
その手に握られていた突撃槍も、奇妙に捻じれ枝分かれした、奇怪な武器へと変貌している。
「クッソ!最近よくあるバグってやつか!?」
「たぶんそう!いや、そうであって欲しい!」
一気に二人の体から汗が吹き出し、背筋が凍り焦りが溢れる。
確かに最近、GBNではおかしなバグが発生する事が多いとは聞いていた。
だがしかし、これほどまでとは思ってはいなかった。
「(どうする……!?流石にこれは想定外を通り越して、明らかに不味い!ここはミッション失敗にして撤退を……!)」
この時タヌベロスは、フォースの隊長としての決断を迫られていた。
バグによる異常など、百害しかない。ここで無理をせず、よりリスクの少ない方を取るのが、隊長としての当然の選択だ。
「……いつわん、ここは撤退を「……なあ、タヌッさん」え?」
だが、ここにいるもう一人は、こういう状況こそを。
「楽しくなってきたじゃねえかッッ!!!」
最高に美味しいと思うバカなのだった。
優男のアバターには、似ても似つかない凶暴な笑み。
一気にブースターから噴出させ、シールドをやや斜めにずらして正面に展開しながら突撃する。
「……まったく、もう。いつわん、チンピラ出ちゃってるよ!落ち着いて、2人で同時にかかろう!」
「あいよ了解!!」
バカに引っ張られ、タヌベロスもスロットルを全開にする。
撤退のためではなく、攻撃のために。
「■■■■ッッ■■■■■■■■ーーーーーーーーーーーーーァァッッ!!!!!!!!」
そんな二人の突撃と剣劇を、捻じれた槍でもって防ぎ、時に異常増殖したブースターの推進力で弾く変異型リーオー。
確かにそれは、システムの枠を超えた強さを誇り、単騎相手に2機でかかっているのに、致命傷を受けない様に立ち回るのがやっと。
気が付けばアストレイ・ツインフレームの左腕部は抉り飛ばされ、頭部のセンサーもノイズがところどころ走り不明瞭。アイアストライク・ガンダムも残ったシールドは吹き飛び、バインダーライフルも3本が折れ最後の一振り。
「あっぶね!?メインカメラやられるところだった!ハハハハハハハハハッッ!!!!」
「うひゃ!?コックピットにかすったんだけど!?……あははは!!!」
それでも、二人は笑っていた。
それはもう、楽し気に笑っていた。
「いつわん!こっちはもう推進剤切れそう!そっちは!?」
「シールドが落ちたおかげか燃費良くなってな!そっちよりはマシ程度!まあでも、頭部バルカンもバインダーライフルも弾切れで、刃もそろそろ鈍らになるな!」
だが、時間切れはすぐそばまで迫っていた。
燃料が、武器が、たった2機ではそろそろ尽きる頃合いだった。
それに対し、相手はシステム外の化生。そんな時間切れなど、存在しない。
「と、なるとー……。いつわん!一瞬だけ隙作って!」
「お、そういうの得意だな。任せろ!」
瞬間、突如リーオーの目の前に、視界を遮る障害物が出現する。それは、落とされていたアイアストライク・ガンダムの盾。蹴り上げられた邪魔なそれを、槍で叩き落そうとするが、
「オラァッ!!!」
「■■■■ッッ■■■■■■■■ーーー■■ッ???!!!!」
気合一発。盾を後ろから殴りつけて、リーオーが盾を叩き落すよりも前に、その機体にブチ当てる。
衝撃でたたらを踏むリーオーだが、それも一瞬の事。
すぐにブースターが展開し、姿勢を整え突撃を開始しようとする。
その一瞬こそが、致命なのだが。
「オオオオオオオオオオオオォォォォォォォアアアアアアアアァァァァァァァッッ!!!!!」
アストレイ・ツインフレームの右腕に構えられたカレトヴルッフが、リーオーの肩から腰部にかけてを袈裟斬りにする。
ほんの数瞬だけ、リーオーもその腕を動かそうとするも、もう手遅れ。
爆散し、ポリゴンへと還っていく。
そして、直後に表示される、「YOU WIN!」の文字。
2人はシステム外の悪魔に、勝利したのだ。
「…………はー、何とか勝てた」
「いやー、楽しかった楽しかった。二度は御免だけどな」
フォースネストに帰還し、ソファでぐだぐだモードに入る2人。
モフモフボディのタヌベロスのお腹を枕に、リラックスモードのイツワ。
先ほどまでバグを相手に、ギリギリの攻防戦を繰り広げたとは思えない姿だが、それが本来の姿なのだろう。
「そういやあ、運営には報告したのか?」
「うん。でもしたんだけど、データ上は異常が発見されなかったんだって」
「ほー、訳が分からねえ事もあるもんだなぁ」
「ねー」
それっきり、2人とも黙って目を閉じる。
仮想空間とはいえ、疲れた2人には休息が必要だった。
俗に言う寝落ちを決め込み、休み始める。
明日は、いったいどんなミッションをしようか。
それとも、どこかのフォースと演習でもしようか。
そんな楽しい事を、考えながら。
というわけで、『BLDTroiaS』より逸環がお送りしました、GBNのとある一日。
使用した機体はそれぞれ、GUNSTA様で見る事が可能です。
マナーを守って楽しくガンプラバトルを!