ガンダムビルドトロイアス   作:逸環

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今回登場するのは!
ジャージ男、モフモフタヌキ、核バカ、モフモフキャットの4名!


BLDTroiaS MISSON2 GUFU C-3

バグの影響を受けたミッションから数日後。BLDTroiaSのフォースネストである、洋風の邸宅。そのリビングで(イツワ)は、ソファでモフモフなリーダーのお腹を枕に一冊の漫画を読んでいた。

その表紙に描かれているのは、一機の黒いMS。

 

「いやぁ……『黒衣の狩人』は良い……。ヅダがロマン溢れる、素晴らしい機体だと再認識できる……」

 

しみじみと呟く彼に、少し離れた椅子で本を読んでいた、和服を着た黒髪ロングの少女がやや高めの成人男性の声で告げる。

 

「いや、ヅダはクソやろ」

 

少女のアバターを使う成人男性こと、『エイキ』が戦争の始まりを告げる開戦の合図(ゴング)を鳴らした。

 

「何か言ったか?変態核バカ」

「おお?言うたぞ。ヅダに乗って自爆してどうぞってな」

「はーん?ヅダの自爆はロマンってのが分からないんですかぁ?」

「いや、あんなもんただの欠陥やんけぇ!」

 

これがチャット上であれば、確実に言葉の最後に草が生え散らかしている見た目少女の言葉。

その表情は全力で煽り散らかしており、それを聞く男の額にはビキビキと青筋が立ちまくる。

 

「全くロマンが分からないなんて……これだからレイシスト極まる連邦のワンちゃんには困ったもんですなぁ!」

「こっれだからジオニストは……やっぱ宇宙の猿は滅ぼさんといかんなぁ……!」

 

お互いに立ち上がり、話しながらと言うか罵り合いながらじりじりと近付いていく。

アバターが成人男性と少女というギャップはあるが、中身は同年代の同性。

つまり、戦いは同じレベルのものでしか発生しないという理屈は、まさにこの状況そのもの。

双方共に首や手首、指の関節をゴキゴキとならしながら近寄り――――――

 

「フンッ」

「グヌォ!?」

 

――――――イツワの頭突きで幕を開け、そして幕を閉じた。

 

「……痛っったい…………!気がする……ッ!」

「勝ったな」

 

痛い頭突きをする方法は、簡単であり地味なものだ。

相手の頭部を手で押さえ、僅かな首の振りでもって叩き込む。

派手な音はしない。しかし、ゴド……ッという重たい音がすると成功だ。

人体における、頭部の体重比はおよそ10%ほど。成人男性であれば、およそ6~7kgほどになるだろう。

つまり、余計な派手な動作などしなくても、重たい鈍器としての役割を頭部は充分に果たすのだ。

本来は痛みを感じないGBNだが、これを食らうと痛い気がしてしまう。

だから、エイキは頭を抱えて蹲るのだ。

なお、イツワの方はコロンビアのポーズでドヤ顔をしているのだが、だいぶ見苦しい絵面に仕上がっている。

 

「よし、俺はヅダでちょっとミッションでも行ってくるわ」

「いってらー」

 

二人の諍いを見守るでもなく、いつものこと過ぎるので放置していたタヌベロスが、そのモフモフキューティーな尻尾を振って見送る。

そして頭を抱えて蹲るエイキが復活してのは、それから数分してからだった。

 

 

 

「さてさて、ミッション何にするかなー」

「お、いつわどのー。ミッション行くんー?」

「アキさんか、そうそう」

 

フォースネストの外に設置してある、MSハンガーに向かい歩くイツワに、渋い男性の声がかけられる。

声の主は、茶色と白の二色模様で二足歩行する猫こと、『アキシアル』。

リーダーであるタヌべロス同様、モフモフキュート。だが、声は渋く格好良い。

 

「アキさん今日もボイチェン決まってるね」

「でしょでしょー。ロンメル大佐っぽいでしょ」

「だねぇ。あれ?そういえばアキさん、今機体作ってるんじゃなかったっけ?」

「そうそう。休憩で来たの」

「はーん、なるほど」

 

いえーい、とハイタッチしながら会話をする二人。

何のいえーいなのかは分からないが、とにかくいえーいなのだ。

 

「あ、そうだ。じゃあ休憩ついでに、俺のミッション付いてくる?何やるかまだ決めてないんだけど」

「行く行くー。……あ、じゃあ一つ良さそうなのがあったんだった」

「お、それにすっかぁ」

 

二人はMSハンガーに格納されていたヅダに乗り込み、ミッションを受けに向かう。

 

「そんじゃ。イツワ、行っきまーす!」

「ゴーゴー!」

 

ブースターを吹かし、空へと舞うヅダ。

今回の装備は、ザクマシンガンとヒートホークという、比較的軽装備。

出足は極めて良好に飛んでいく。

 

 

 

 

「ねえ、途中で空中分解しないよね?」

「叩き落とすぞテメエ」

 

 

 

MISSON

RANK:D

『コロニーの落ちた土』

【ミッション地】

オーストラリア・コロニー落下地点

【ミッション内容】

コロニー落下地点の、土壌のサンプルを採取して欲しい。

汚染状況の調査と、コロニー落下という超現象の影響を確かめるためだ。

付近を見回るジオン公国軍もいるため、研究所の職員では難しい案件であるため、依頼させてもらう。採取キットは貸与するので、それを使用して欲しい。

よろしく頼んだ。

 

※このミッションは何度でも受けられます。

※初回クリア時のみ、車両データが獲得されます。

 

【敵性MS】

ザクⅠ(ザクマシンガン)×2

ザクⅡ(ザクマシンガン)×2

ザクⅡ(ザクバズーカ)

 

【勝利条件】

指定されたポイントの土壌サンプル入手

【敗北条件】

自機の撃破

 

 

 

「なるほどね。これなら、わざわざザクの相手をしなくても、ヅダの速度で突っ切って行きゃあ良いってわけか」

「そうそう」

 

ミッション内容を改めて確認しつつ、ミッションエリアまで向かう二人。

ヅダに特有な、危険な速度にはならない様注意しつつ、それでもかなりの速度で空を駆ける。

宇宙用に開発されたヅダであり、原作においては大気圏で運用されるなどなかったヅダだが、ここはGBN。

さしたる問題もなく飛んでくれている。

 

「いつわどのー、重力の影響とかどうなの?」

「意外とそんなにないな。ザクなんかが宇宙用と地上用で分かれてるから心配してたが、まあリアルじゃなくてGBNだしな。……っと、クレーターが見えてきたな」

「あ、ホントだ」

 

向かう先に徐々に見えて来た、大地に穿たれた巨大な窪み。

かつてこの地にコロニーが落とされた際に生まれた、巨大なクレーターだ。

同時に見える、ミッションエリアを示す青いドーム。

その中に入れば、

 

「お、早速出たな。ヅダの因縁の敵(ザクⅠ)め」

「いや、うん。おいらは何も言わない」

 

ポリゴンと共に敵が出現し、ミッション開始となる。

 

「まあ、今回はお前たちに用はない」

 

が、それを無視してアクセルを踏んで加速し、横を突っ切って行く。

その後をザクたちが追いかけて来るが、速度差により追い付けない。

ザクマシンガンやバズーカで狙い撃たれるも、上下左右に機体をズラすことでそれを回避する。

そして進んでいくと、見えて来た採取ポイントを示すマーカー。

到達し機体から降りて、アイテム欄の採取キットの使用を選択すると、すぐに「MISSON Complete!」の表示が出現する。同時に追いかけてきていたザクたちも、ポリゴンとなって消えていく。

 

「お、よしよし。これで一丁上がりっと」

「おつかれー」

 

確認すると、ミッション達成報酬として車両データが手に入っていた。

詳細を見るに、『コロニーの落ちた地で』に登場した、簡易移動指揮ホバートラック・ブラッドハウンドと同型の車両の様子。音紋索敵能力もあるため、様々な局面で使えるだろうが、基本的にはMSでの移動がメインのGBNではオマケみたいなものだろう。

 

さてさて、目的は達成したし帰るかと、2人が準備している最中、それは近付いていた。

 

「あれ?いつわどのー、あれって……?!」

「ん?……んん!?うっそだろ!?」

 

先に気が付いたのは、偶々そちらの方向を見ていたアキシアルだった。

彼が指差す先を見れば、つい二度見してしまう物がそこにあった。

 

「ピンクのグフ重装型ぁ!?俺のヅダよりヤベーやつじゃねーか!?」

「いや……五十歩百歩……。って言うか、いつわどのがフィンガーバルカン嫌いなだけでは……」

「アキさん、俺はフィンガーバルカンが嫌いなわけじゃない。あの運用方法が嫌いなんだ」

「アッハイ」

 

両手のマニピュレーターを85mm口径のフィンガーバルカンに換装し、装甲を厚く、肩をザクⅡのスパイクアーマーに変え、アンテナを変更した機体。つまりグフ重装型が、砂埃をあげて2人に近づいてきていた。

 

「アキさん。まかり間違っても、この近辺には……」

「ない。グフ重装型、ましてやピンクのが出るミッションなんて、ない」

「だよなぁ」

 

だとすれば、他のプレイヤーだろう。

近付いてくるピンクの機影を、ぐだぐだ話しながら見守る事数十秒。

グフはヅダのすぐ横に機体を付け、そのコックピットが開かれる。

 

「ハァイ、このヅダはアンタたちの?」

 

出てきた人物は、金髪をシュシュでポニーテールにした、褐色肌の女性。有体に言えば、黒ギャルだった。

そしてその瞬間、アキシアルは察した。あ、これ悪い癖が出るな、と。

 

「ああ、そうだよ。僕はイツワ。そいつのパイロットだ。よろしくね、美人さん」

「いつわどの、いつわどの。悪い癖が出てる出てる。あ、おいら……んんっ!私はアキシアルだ。よろしく」

「ウチは『リカ』。よろしくね」

 

コックピットから降りたリカに、先ほどまでとはガッツリキャラを変えて対応する2人。

なお、イツワの方は女好きの悪い癖が出ているからであり、アキシアルの方は尊敬するロンメル大佐っぽいロールプレイをしているという理由なので、後者の方がだいぶマシである。

 

「コロニーのクレーター見に来たら、ヅダなんて中々見ない機体見つけたから、つい来ちゃった」

「いやいや、グフ重装型だって見る事が少ない……と言うか、GBNでは初めて見たよ。好きなのかい?」

「モチ!」

 

親指を立てて、笑顔で答えるリカ。

 

「しかし、グフ重装型か……。以前から気になっていたのだが、武装は両腕のフィンガーバルカンのみだろう?MS戦……特に近接戦はどうするんだ?」

「お、気になるー?」

 

グフ重装型は、本来対歩兵部隊や、対障害物として設計された機体だ。

その厚くなった装甲は、歩兵兵器のロケット砲などには有効。両腕のフィンガーバルカンも、85mm口径と人間相手なら過剰な威力。連邦軍が使用していた61式戦車が155mm口径であり、それよりも約半分程度の口径だが、18mの人型兵器という高所からの攻撃は相当な脅威となりうる。

 

あくまでも、対人間という話に限ってだが。

これがMS戦となると、一気に話は変わる。

高さという優位性は失われ、MSの近接兵器には厚くした装甲も無意味に割かれる。

近接戦が花形であり、基本であるMS戦においては、両腕のフィンガーバルカンも色々と役者が不足する……と、一般的には言われている。

 

「じゃ、バトルっしょ!」

「よっしゃ。俺もそいつとは一度カチ合ってみたかった」

「ヘヘ!じゃあ、フリーバトルモードに設定してっと……」

 

設定欄を操作し、フリーバトルモードに変更。

瞬間、三人はコックピットに移動していた。

 

「よっしゃ!イツワ行くぜ!」

「いつわどの、いつわどの。チンピラ出てる出てる」

「おっと、モテなくなっちゃうね」

 

バトルが始まり、即座にヅダが距離を取る。

速度差を利用し、まずは様子見する形だ。

近距離戦こそヅダの本領ではあるが、初めて立ち会う相手なので慎重にかかる。

グフ重装型はヅダに向けフィンガーバルカンを構えているが、まだ撃っては来ない。

 

「撃ってこないね……?」

「そもそも、フィンガーバルカンってのは格闘戦の最中に挟める射撃目的だからね……。砲身も短いし、この距離だと効果薄いんだろうなー」

「なるほど」

 

イツワの疑問に、アキシアルが答える。

ならば、と試しにザクマシンガンを撃ってみるが、どうにも利きが悪い様子。

やはり増加した装甲は、伊達ではないのだろう。もう少し近づけば話は変わるが、そうなるとフィンガーバルカンの間合いになってしまう。

 

「……対艦ライフルも持ってくりゃ良かったな」

「それはMS相手には過剰だと思うよ?」

 

思わず呟いた言葉を、バッサリと切り捨てられる。

それに苦笑いしつつ、煙草のフィルターを噛み潰しながら腹を括る。

 

「よっしゃ、アキさんしっかり捕まってろよ?ちと荒くなるからさ」

「いつものことでしょ。自爆しなけりゃオーケー」

「しばくぞ貴様」

 

ブースターを吹かし、一気に加速。

クルクルと旋回し、左右に軌道をブラすことで襲い来るフィンガーバルカンの弾雨をかいくぐる。

なるほど、なるほど。と、小さく頷く。思っていたよりも、だいぶやりづらい。

理由は、フィンガーバルカンが五連装だということ。通常の火器を相手にする際、自身に向かってくる射撃は点や線になるため、比較的回避がしやすい。

だが、フィンガーバルカンは話が変わる。五連装故に攻撃時の幅が広く、疑似的な面攻撃になる。

そのため、回避動作を大きくとらなくてはいけないから、それがやり辛さにつながる。

 

だが、そこはヅダ。

加速、最大速度、旋回能力。その全てが秀でたヅダであるならば、問題はない。

強いて言うならば比較的初期の機体であるため、装甲がやや弱いという問題があるが、被弾しなければ良いだけの話。

エンジンパワーに機体が負ける程の力を持つ、土星エンジンは伊達ではない。

 

「もらった!」

 

弾雨を掻い潜り、グフ重装型へと肉薄し、そしてヒートホークが閃き――――――

 

「ッ!?あっぶね!?」

 

――――――切りかかる事はできず、即座に距離を取った。

理由は一目見れば分かるだろう。ヅダが先ほどまでヒートホークを握っていた右腕が、消失しているのだ。

 

「……なるほど、格闘戦中に差し込む射撃兵装か……」

 

原因は簡単。グフ重装型のフィンガーバルカンに、近付いた刹那に撃たれたから。

本来ならばヅダの腹部、つまりはコックピット付近が穿たれるところだったが、その運動性能により回避できた。それでも、右腕は犠牲になってしまったが。

 

「映画のガン=カタに似てるね」

「ああ、それか。なるほどな、まさにそれだわ」

 

懐に入るとこまではいけた。

しかし、懐に入ってからが問題だ。

刺し違える事は簡単だが、それでは勝ったとは言い難い。

一番楽だったのは、それこそ対艦ライフルでも使う事だったのだろうが、あいにく今日は持ってきていない。

ザクマシンガンでは距離を離すと効果が薄い。ヒートホークは右腕と一緒に取り落としている。

さてさて、残った武装で効果がありそうなものは。

 

「よし、思いついた。もう一度行くぜ」

「お、ゴーゴー!」

 

再び左右に機体をブラしながら、先ほどの焼き増しの様に迫りくる弾と弾の間を潜り抜ける。

そして懐に入り込み、左肩の盾に設置されたピックで突き刺しにかかる。

グフ重装型もそれに合わせヅダを接射しようとし――――――

 

「そこだオラァッ!!!」

 

――――――瞬間、急制動がかかりヅダが停止。タイミングを合わせて狙っていたフィンガーバルカンの猛威は空振り。そしてヅダの盾の裏に仕込まれていたそれが、シュツルム・ファウストが火を噴いた。

 

 

 

 

 

 

弾頭が着弾する直前。

スローモーションになる世界の中で、彼女は思った。

嫌だ、と。負けたくないと。

負けたらまた、大好きな機体(グフ重装型)が馬鹿にされてしまうと。

それならば、いっそ。

 

「………アアアアアアアァァァァァッッ!!!」

 

弾着の瞬間、ピンクの機体の各所から噴出する、黒と紫のオーラ。

天が罅割れ、雷鳴が残響する。

濛々たる爆炎をかき分け、それはまだ健在。

 

「……こいつは!?」

 

咄嗟に後方へ退却し、距離を取るヅダ。

コックピットの二人に、冷たい汗が伝う。

 

「……最近、GBNで噂になっている違法パーツがあったよな?」

「うん……たぶんあれは……」

 

「「ブレイクデカール」」

 

現在、GBNで広まっている違法パーツがある。

その名も、『ブレイクデカール』。使用するとシステムの枠を超えた力を、ガンプラに与えるという夢の様なパーツ。しかも、ログには残らないという嬉しいオマケ付き。

しかし、あまり知られてはいないがこのブレイクデカールには、大きな問題がある。

使用していくごとに、GBNの世界そのものにバグが発生していくのだ。

 

煙草を唇でピコピコと上下に動かし、思案する。

 

「おっとぉ!」

 

が、それもすぐに弾丸によって阻まれる。

放たれた弾丸をブースターを吹かして回避するが、問題はその後だった。

 

「ちょっ!?いつわどの!?何あれ!?」

「俺も分からないって!さっきまでただのフィンガーバルカンだったろ!?」

「ブレイクデカールって、あんな風になっちゃうの!?」

「そうみたい!!」

 

回避した弾の着弾点が、ミサイルでも落ちたかのようにゴッソリ抉れている。

先ほどまでの弾とは、段違いの威力だ。

幸い、弾速そのものは変わっていない様なので回避はまだできるが、それでも一発でも掠ってしまうだけで致命傷になる威力なのは大問題。

加えて、シュツルム・ファウストが効かない程の装甲になってしまったことも、更なる大大問題。

残った武器がピックのみであるため、実質的な詰み状態になってしまっている。

 

「どうするの!?推進剤もその内切れちゃうでしょ!?」

「どうするもこうするも……!クソッ、対艦ライフルがこれほど恋しかったことはねえ!!」

 

必死で襲い来る弾丸を回避し続けるが、地形がどんどん変化し穴だらけとなっていく事。加えて着弾時に上がる爆墳の衝撃も見捨てられない影響となる。推進剤の減少も合わせ、不利な条件は時間と共に積みあがっていく。

それなのに、グフ重装型は弾切れの兆候すら見られず、腰につけていたマガジンは完全に飾りになっている様子。

 

残された手段はもう、なかった。

 

「……アキさん、すまん」

「え?」

 

たった一つを除いては。

再び加速し、前へと向かうヅダ。

今までとは違い、極力最小限の回避動作で突撃を掛ける。

 

「……ねえ、いつわどの?おいら一緒に乗ってるよね?」

 

そしてアキシアルは察した。

これ、絶対にあれをやるな、と。

それに対しての返答は、極めてシンプルだった。

 

「マジめんご」

「いつわどのぉ!!?」

 

回避と同じように最小限の謝罪を済ませ、グフ重装型に肉薄するヅダ。

このままピックで攻撃する?否。

素手で殴りかかる?否。

落としたヒートホークを拾って切りかかる?断じて否。

 

ヅダにはヅダの、その最大の特徴がまだ残っている。

 

「オラァッ!!!」

 

気合を込めて体当たりをし、そのままグフ重装型を地面に押し付けながら、クレーターを抉って駆け抜ける。

直接回戦で再びコールが繋がる。

 

「ちょっ!?負けを認めろし!悪あがきしても、ウチのグフは負けないし!」

「負けを認めるだぁ?ふざけんなボケアマ。まだ手はあんだよこっちは!ヅダ嘗めんな!!」

「さっきと全然喋り方違うし!?」

「あ、この人こっちが素です」

 

話している間にも、グフ重装型というブレーキがあるもののヅダの速度メーターは振り切っていく。

そう、ヅダの速度メーターが(・・・・・・・・・・)振り切っていくのだ。

 

「お、そろそろだな」

「そろそろ……? あ!?アンタまさか!?」

「ブレイクデカールなんぞに、勝ち逃げされてたまるか。こちとら真剣に遊んでんだよ(・・・・・・・・・)

 

イツワがコンソールを叩き、通信回線を閉じる。

計器類がアラートを示し、警報が鳴り響く。

そうだ、これを彼は待っていたのだ。

 

 

 

 

 

芸術(様式美)は!爆発だァァッッ!!!」

「じ、自爆オチってサイテーェェェッッ!!!??」

 

 

 

 

 

オーストラリア、コロニー落下地点。

この日、悲劇が起きた土地に再び、閃光と爆音が轟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、大変だったわー。アキさん巻き込んじゃってごめんね?」

「うん、本当にね」

「今度、ヒッチハイクさせてくれた人に、お礼しないとなー」

 

フォースネスト(洋館)に戻ったイツワとアキシアルは、ベッドに横になってぐったりしていた。

自爆したヅダはしばらく修復期間があるため使えず、現地から中央エリアまで徒歩で戻ってくる羽目になったので、非情に疲れたのだ。

途中でMSをヒッチハイクできたから良かったものの、そうでなければ三人とも帰宅できる時間はもっと遅くなっていただろう。

 

そう、三人とも、だ。

勝負はグフ重装型を巻き込んだヅダの自爆により、ドローとなった。

コロニー落下地点にMSもなく放り出されてしまった三人は、気まずいながらも仕方がないので共に歩き、そして優しいプレイヤーをヒッチハイクして戻ってきたのだ。

歩いている間、三人は話した。

これまでの事。これからの事。

ヅダも、グフ重装型も、どちらも評価は極めて低い。

ネットではボロクソに言われ、完全にネタ枠として扱われている。

 

それでも、それでもだ。

それでも、その機体が好きなのだ。

ブレイクデカールなどという、しょうもないものに手を出して、その好きを汚してしまった事を、リカは悔やんだ。

そして、二度とブレイクデカールは使わないと誓った。

 

「まあ、結果的にだけど美人とフレンド登録できたし、良いかなぁ」

「いつわどの、いつわどの。悪い癖が凄い出てる」

「そう言うアキさんも、フレンド登録したじゃねえか」

「お、おいらはそういうのじゃないから!」

「はいはい」

 

慌てた様に言うアキシアルに、手を振りながら返すイツワ。

そのもう一方の手には、『黒衣の狩人』がある。

 

今日も爆発したが、厳然とヅダはそこにあったのだ。

 

「よし、じゃあ後でタヌッさんやえいきっきも誘って、新車でドライブと行く?」

「おー、良いですなぁ。まあ、新車って言ってもあれでしょ?今日データを手に入れた奴」

「おう、中央エリアに戻ったついでに、使えるようにしておいたからね」

 

2人は部屋を出て、リビングへと向かう。

いつもと同じように、今日もまた。

 

 

 

 

 

「いやあ、しかしあの乗せてくれたプレイヤー、良い人だったねえ」

「なぁ。あの面白い、ペンギンみたいなカプルの子なー」

 

 

 

 

 




登場人物プロフィール

・タヌベロス(モフモフタヌキ)
好きなラーメンは特に特徴の無い、どこでも食べられるありふれたラーメン。

・イツワ(ジャージ男)
好きなラーメンは夜勤明けに食べる、命を削ってる感を感じるラーメン。

・エイキ(核バカ)
好きなラーメンは某フードコートのチャンポン。

・アキシアル(モフモフキャット)
好きなラーメンはバリやわとんこつの一味唐辛子入り。
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