その傲慢な言葉は、押さえつけるような圧力を伴っていた。
故に、反発するのは自然の摂理だ。
「おうおう、偉そうにしてんじゃねぇか金ピカ。テメェが、英雄王ギルガメッシュだって?この間の茶番は笑わせてもらったぜ、道化の王に改名したら良いんじゃねぇか?」
「痴れ者が!仰ぎ見るべきこの我を、道化だと!忌々しい神の血を引く犬風情が!」
「今、なんつった!この俺を犬と言ったな貴様ァ!」
開幕五秒で戦闘が開始する。
背後に展開された黄金の波紋、十数の武器が空中に現れる。
背後に展開された原初のルーン、十数の記号が空中に現れる。
放たれたのは同時だった。
「ほぉ、始めおった!」
「わぁぁぁ!ライダーぁぁぁぁ!」
小規模ながら、魔力を孕んだ武具が高速で射出される。
それは炎や雷、氷や風など様々な魔術とぶつかりあり、反応して爆発する。
お互いの武具と魔術による弾幕が、空中でぶつかり合う。
だが、英雄王の慧眼は魔術による攻撃を見るや否や、魔術を打ち払う効果のある宝具のみを限定して射出し始めた。
「チッ、貴様のような弓兵がいるかアーチャー!」
「フハハハ、そこらの有象無象と一緒にするとは片腹痛いぞ。さぁ、踊り狂って死ぬが良い」
「抜かせ、マスター!やっちまうぜ」
「あぁ、分かった。戦え、キャスター!」
キャスターが獰猛な笑みを浮かべながら、距離を取る。
魔術をぶつけて迎撃したところで貫通して武器が狙ってくるからだ。
跳んで、それを追うように武器が来る。
「ハッ!遅すぎて欠伸が出らぁ」
「戯言を、無様に逃げるか雑種、どこまで続くか試してやろう」
「悪いが、昔から飛び道具とは縁がなくてな!」
「矢避け、流れ矢の加護か。だが、それを見抜けぬ我だと思うなよ!」
看破し、すぐにアーチャーが対応する。
加護によって飛び道具は当たらない、ならばそんな道理は無理に押し通るのみ。
王の裁定が当たるというなら当たるのだ。
そう、武具が避けるように軌道を変えるなら、変えられない程に埋め尽くすだけのことだ。
「加護に頼りきりだとでも、そら避けてみろ!」
「チッ、忌々しい真似を!」
「ルーンに詠唱なんざいらねぇんだよ、能無しが!」
無防備を晒した空中で、襲い来る武器にキャスターは敢えて飛び込んだ。
飛び込み、武器と武器の間を跳ねる。
埋め尽くされた宝具の雨、しかし密集しているが故に一度に乱れれば伝播する。
武具同士がぶつかり合い、隙間を増やし、そして逃げる場所を生み出してしまう失策。
そう、キャスターは自らに迫る宝具を足場に、宝具の雨の中を駆け抜け回避したのだ。
そして、お返しとばかりにルーンを放つ。
これには流石の英雄王も、対応をせざるを得なく宝具を展開するのを中断して背後に飛び退いた。
「貴様ァ!その汚い足で、我が宝物を踏み台にするか!その上、天に仰ぎ見るべきこの我を同じ大地に立たせるか!」
「テメェが悪いんだろ金ピカ、そんなに大事なら飾ってろ。武器は使ってこそだぜ」
「油断したな、雑種!さぁ死ぬが良い!」
逃げ遂せたと思いきや、キャスターの眼前に金色の波紋が広がる。
直感に従い、首を曲げ身体を捻るキャスター、しかし避けきれず肩を宝具が斬り裂く。
そう、逃げた先にアーチャーの宝具が展開されたのだ。
「いつから一箇所だけしか撃ち出せないと錯覚していた」
「なん……だと……」
「我が宝物庫にあるのはどれもが一級品。武器なんぞ担い手で無かろうと十分な性能よ」
態勢を崩したキャスターに向かって幾つもの宝具が放たれる、それは上下に展開され逃げることは難しい。
そして、宝具同士の魔力が飽和し、小規模な爆発が起きる。
キャスターの安否はその瞬間、確認できなくなり思わず声を上げる。
「キャスター!」
「フッ……」
「慢心したな金ピカ、森の賢者を舐めるんじゃねぇ!」
どの方向から聞こえたのか分からない声が、倉庫街に響いた。
それは魔術によって隠蔽されたキャスターの声。
爆煙が風に吹き飛ばされるように一気に晴れた。
晴れて、宝具に貫かれた哀れなキャスターの姿が目に入った。
それは、茶色く荒い木目の人形、よく見れば木で出来た人形だ。
そして煙が晴れた事で注視されていたそれが罠だと誰もが理解したと同時に、光り輝き爆発する。
「くっ、小癪な真似を」
「焼き尽くせ木々の巨人!」
「まさか!?」
「灼き尽くす炎の檻、ウィッカーマン!」
目を覆ったアーチャーの前に、巨大な手が迫った。
それは、樹木で出来た手だ。
それが地面から生え、炎を纏いながら掴みに来たのだ。
「邪魔だ!……ッ、大きく出たな時臣!臣下の分際で、王の裁定を邪魔しおって!」
「どうした、まさか逃げるのか?逃げるんだな、アーチャー」
「フン、雑種の尺度で物を考えるでない。だが、貴様は我が自ら殺してやろう」
「俺を殺すだぁ、テメェが死ね!」
更にもう一つの手がアーチャーを襲う。
二つの手を、アーチャーは宝物庫から放つ宝具で防いでいる。
だが、今度は巨大な胴体が地面から生えてくる。
生えて、そして倒れてくるのだ。
「フン、真に見える者は一人でいい。せいぜい、足掻くのだな雑種共」
倒れてる巨体を前にして、なお不遜に英雄王は立ち振舞った。
もはやどうでもいいものとして、背中を向ける豪胆さがそこにはある。
それもそのはずだ、ウィッカーマンの腹部を巨人族ですら持てるか分からないほどの巨大な剣が貫いたからだ。
「おい、待て!待てよ、金ピカ!ここから面白くなってくるんだろうが、戻れ!戻って、首置いてけ!」
「キャスター」
「チッ、分かってるよ。はぁ、で、どいつが今度は相手だ?」
「その必要はない、時間切れだ」
熱くなりすぎだと男の声に、キャスターが不服そうにしていた。
マスターと呼ばれている男は、セイバーとアインツベルンのマスターに向けて無遠慮に一瞥した。
その姿が、一瞬で粒子となって消える。
そして、いつの間にかキャスター陣営は嵐のようにやってきて戦場を荒らすだけ荒らして消え去ったのだ。
教会の門に二人の人影があった。
先程まで、大立ち回りを繰り広げていたキャスターのマスター。
そして、その横に侍るのは不定形の黒い靄に跨る幼女。
間桐雁夜と間桐桜が、教会の前にいた。
そんな彼らの近くに、光る粒子が弾けるように集まり、そして雁夜と同じ顔の男が現れる。
「フッフッフッ、それで首尾はどうだったのですかバーサーカー」
「桜ちゃん、笑い方が臓硯に似てるんだけど」
「えっ……」
おじさんの引き気味の発言にちょっぴりショックを受ける。
私がゾォルケンと一緒だとぉ、なんて酷いことを言うんだプンプン。
「おえー、我ながら何という内心。恥ずかしくて死にたくなる」
「雁夜、二つほど手に入れました」
雁夜おじさんに武器を持った雁夜おじさんが話し掛ける。
武器を持った雁夜おじさんの顔は、黒い霧に一瞬包まれそこから鬱陶しい長髪の陰気そうな男が現れた。
「よくやったバーサーカー、槍と長剣か」
「えぇ、意外とバレないものですね」
「まぁ、狂戦士が喋ったり変装したりする訳無いだろうと考えるわな」
雑談に華を咲かせたい所だが、悠長な暇がない私達は話を打ち切る。
「教会の門はいつだって開かれてはいるが、こんな夜更けに何用かなお嬢さん。そして、間桐のマスターよ」
「こんばんは、神父様。一つ質問したいのですけど、『覆われているもので現されないものはなく、隠されているもので知られずに済むものはないからである』どういう意味ですか?」
「マタイによる福音書かい?隠し事をしていても神様は見ているというような意味だよ」
どうしてそんな事を聞くのか、一瞬顔を顰めたが神父は、言峰璃正は答える。
その答えに私は満足げに笑みを浮かべて再度問うた。
「流石は神父様ね、博識。じゃあ……何で、隠し事をしていてバレないと思ったの?」
私の言葉に、柔和な笑みを浮かべた神父の顔が歪んだ物になる。
あぁ、気付いたか言峰璃正。
「君は、そうか、そういうことか!」
璃正が気付いた瞬間、四方から私に対して黒塗りの刃が飛んでくる。
教会を警戒していたアサシンの集団が、ナイフを投げたからだ。
そして、ダメ押しとしてその身にナイフを持って私達の命を奪いに飛び掛かって来る。
「やれ、バーサーカー」
「レディに刃を向けるとは、恥を知るべきでしょ」
一言、おじさんの言葉にバーサーカーが一瞬で消えた。
バーサーカーの立っていた場所は、石が飛び跳ねるだけの亀裂の入った地面がある風景に変わる。
気付けば、四方向から迫っていたアサシンが教会に向かって吹っ飛んでいた。
そして、遅れてやってくる鎧とナイフの当たる音。
バーサーカーがいつの間にか私を抱えていたのだ。
「くっ、ハァァァァ!」
「その意気はよし、だが甘い」
気でも狂ったか言峰璃正が此方に向かってくる。
流石にそれは予想出来なかったか、考えてみればマジカル八極拳の師匠であった。
一瞬で間合いを詰める神父、その動きはすごいが、それは人としてだ。
英霊としてはデフォルト程度の動き、バーサーカーはその八極拳の猛攻を片手をブンブン動かすことで防いでいく。
流れるように腕を忙しなく動かして殴りまくる神父と早すぎて見えないバーサーカーのブレる片手。
気付けば、神父が空中で一回転して地面に叩きつけられた。
はえー、すっごい、何してるかヤムチャ視点だわ。
まぁ、そんなことはどうでもいいのだ。
「アーチャーは湾岸地区、言峰綺礼は衛宮切嗣を追って。さて神父様、私ってばバーサーカーを呼ぶために令呪を使ってしまったの」
「くっ、令呪が狙いか……」
「えぇ、えぇ、だから貰いますね、その令呪ごと。祈らせてあげる、それしか出来ないですからね」
私の影が、まるで餓狼のように型取った。
それを見て諦めた神父が哀れにも聖句でも唱えようとしたのだろう。
居もしない神に縋るなんて、不愉快だ。
助けなんて来るわけないのに、早く楽にしてあげよう。
「主よ、私を――」
「……馬鹿な人、縋ったところで神様はいないのに」
言葉を紡ぐ間もなく、影に飲み込まれる神父を見て私は思わず呟いた。
ルート分岐
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ケイネス、あぁ勝手に死ぬからほっとくか
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ランサーの宝具、死ぬより前に取らなきゃ
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お前も父親の元に送ってやんよ