ガンダムビルドトロイアス SIDEMISSONs 作:タヌベロス
イツワとアキシアルがブレイクデカールを使用したガンプラと戦闘したと報告を受けた数日後。
タヌベロスはメールフォームを見て悩んでいた。
送信者は【
現在GBNを取り巻くバグなどの状況連絡の中心にいる人物だ。
メールの内容は聞き取り調査と事後経過の観察の依頼。
「これは忙しくなるなぁ……」
ため息をつきながらGBNからログアウトする──
ヘッドセットを外し、ダイバーギアにセットしていたガンプラをディスプレイスペースに戻す。
ここは
GBNがゲームである以上誰にでも
ここはBLDTroiaSのリーダー、タヌベロスの家。
彼は家庭用コンソールからGBNにログインして活動をしている。
「ピンクの重グフ……そういえば、通いの模型店にそんな展示があった気がする。ちょっと確かめてみるかな」
これも調査だよ調査。そう言い聞かせながら着替えて家を出る。
あ、次はどんなガンプラを作ろうか。
真っ赤な自転車を駆り15分の場所にある模型店へ向かう。
そこは学校の真横にある年季の入った古い店で、店舗は大きくないがツウ好みの品揃えだとその界隈ではそれなりに知られた店だ。
だが客入りはさほど多くない。
自動ドアをくぐって中に入るが、昼時を少し過ぎたくらいだというのに今日も客は自分ひとりだ。
店が通りを1本入ったところにあるというのもあるだろうが、最大の原因は……
「いらっしゃいませー!ジーク・ジオン!!」
コレだろう。
声の主は店のレジ番兼ガンプラ調達員の女性。
一見おとなしそうな黒ロングに地味眼鏡という風合いで男子ウケがよさそうに見えるが、開口一番がジーク・ジオンだ。
このノリについていける
「お姉さん、それまだ続けてたんですか?」
「好きだから続けるのよ!」
「いやいや、お客さんドン引きですって」
「初めて来たときに『ジーク・ジオン!』で返してきたアンタに言われたくないわよ!」
「あれはジオニストの条件反射でしょ!」
「じゃぁいいじゃない私だって
「ハイハイソウデスネー」
適当に挨拶を受け流して、店の奥のディスプレイスペースへ向かう。
綺麗に整理された荒野のジオラマに、10体のグフ編隊が展示してある。
すべて彼女の作ったガンプラなのだが、その中に記憶の通り確かにあった。
ピンク色の、グフ重装型のガンプラ。
何度もその場所から動かしているのか、足元はジオラマに馴染んでおらず見る人が見れば明らかに浮いている。
一つのガンプラをせわしなく動かすなんて言えば、ガンプラ好きならその理由はだいたい決まっている。
「お姉さんも、GBNやってるんですか?」
さも自然に、ガンプラの箱を眺めながら呟く。
「そうだよ、よく分かったね!」
「いやー、そのテンションならどこかでジーク・ジオンしてるんじゃないかと思って」
「そこまでじゃないけれど遊んでるよ。それなりに楽しいし、好きが許される場所だから」
「グフ重装型ですか?」
「そうそう。あそこじゃ
「あー、なるほど」
「この間はヅダも見られたし、やっぱり探せば物好きって居るものね」
「その節はウチの仲間がご迷惑をおかけしました」
「仲間?」
適当に選んだガンプラをレジへ持っていく。
次に作るガンプラは……まだ決まっていない。
「たぶんそのヅダ、ウチのフォースメンバーなんですよ」
「えーと、フレンド登録したから見たかも。
「そうそれ。一応リーダーなんで一言くらい誤っておいたほうがいいかなって思ったんで」
「え、えーと。私だってわかって店に来たの?」
「ピンクのグフなんて印象に残りまくりですからね」
「そこそこお店に来てくれてるもんね……そっか。そうか」
5842円です。
6000円からで。
これレシートとお釣りになります。
「それじゃ、ちょっと照れ臭かったから伝言頼んでいい?」
「いいですよ」
「じゃぁ伝えておいて。『次はウチのグフは負けないし!』って」
「わかりました。でもリベンジマッチは照れ臭くないでしょ絶対」
「……『ありがとう』」
「そっちが本音ですね。伝えておきますね」
「よろしくね」
「それじゃ、GBNにログインするんでまた」
「また来てね~」
あ、ガンプラ買いすぎた。
自転車で持って帰るのは結構大変なんだよなぁ……
──GBN──
ログインしてメールフォームを開き、イツワとアキシアルに受け取った伝言をメールする。
それから、新着メールの確認をする。
運営のお知らせ、イベントの告知、ダイバーたちの交流会。
【初心者講習引率側メンバー求】というメールを開く。
どうやら増えてきた新規ダイバーへのGBNのHOWTO講座に参加してくれる既存ダイバーの招待のメールだ。
「初心者狩りから初心者を守るための索敵班と撃退班の募集みたいだけど、なんでウチに募集が?」
主催はマギーというダイバーだ。
この人も有名人であり、かなり上位の実力を持ったダイバーで初心者支援を積極的に行っていることで知られている。
が、彼(彼女なのか?)が声をかけるならもっといいダイバーが集まるはずだ。
「なぜウチのような初心者フォースなんですか……っと」
問い合わせのメールを送って数分、早々に返事が返ってきた。
『アナタのフォースのように、楽しんでいる脱初心者くらいの子達も見てもらいたいからよ』
ということらしい。
確かに
ガンプラの出来を評価するGradeも4~6と高くもなく低くもない。
正真正銘ガンプラ制作技術においては初心者の集まりだからこそ、新規のダイバー達にその楽しみぶりを見せてほしいということなのだろう。
これはいい機会だし、トップダイバーと交流が持てるのはいい経験になる。
「謹んでお受けします。参加メンバーは後日連絡します……っと」
自分も何度か初心者狩りに会っている。
あの恐怖を無駄に増やさないように、楔になれたら。
Profile:タヌベロス
性別:♂
アバター:モフモフのタヌキ
年齢:20代
ダイバーランク:C
必殺技:【軌道拡張】
好きなガンプラ:自分で作ったら全部好き