人は生まれながらにして平等ではない、しかしそれはあくまでスタートラインまでの話だ。その後は個人の生き方によって如何様にも変えられる。何も変えられないと悲観し下を向くのはただの愚者である。
これは私の前世からの持論だ。幼い頃に少年兵として誘拐され、人を騙し痛めつけ殺める術を拷問とともに体に叩き込まれた時も。祖国の依頼で敵国からの約3000の旅団を全員首切りにした後、敵国の主要軍事基地、政府、各行政機関を爆破したことを咎められ、祖国に裏切られ処刑された時も。実験体として部下ともども艦娘にされ犯された時も。復讐の末、『兄』を斬り殺した瞬間に本来の名前を取られた時も。
その人生の最後にはどんな人間よりも幸せだったと自負している。怪物だった私が多くの縁を結んで愛を知り、心を得て、一人の人間として成長した。人生をかけた目標も達成し、復讐鬼と化したもう一人の俺とも和解し、そしてまだ見ぬ泰平の世界を未来の英雄の卵に託して逝けた。千年余りの時を生きてようやく安らかに眠れると、そう思っていた……
パチパチと炎の燃える音が聞こえ、焦がすよう臭いが鼻を満たす。全身から激しい痛みが走る、おそらく何かに吹き飛ばされて全身を打ったのだろう。痛みに耐えながら瞼を開くと星一つ見えぬ空を赤く染めるように炎が一面を舐めていた。それらを背景にして今私の目の前にいるのは、光を失った瞳をこちらに向けている女性だった。彼女の背中を燃え落ちた角材が刺さり息絶えているのは明白だった。彼女との面識はないはずだが、私の意識の底でこの人をお母さんだと呼んでいる。
――また私は……守れなかった……
覚醒しきていない意識の中で、私は無力な自分を悔いた。
ザッ…ザッ…ザッ……
燃え続ける炎の音の中にやけに響く足音が響き、それはこちらに向かってくる。
「突然目が覚めたかと思えば、なんとも懐かしい顔があるな…」
――ゾクッ!!――
背筋が凍る。脳の危険信号がけたたましく鳴り響く。一刻もこの場から逃げなければならないのに体は硬直したままその声の主を見上げる。
「…っあ!…」
「ふむ、そうしていると訓練生時代のお前を思い出すな…あの頃は憎しみをもって己を殺そうと躍起に襲い掛かってきたものだ。
まぁ、そのたびに返り討ちにしその体の隅の隅まで犯したがな…」
「…お…まえは…っあのときっ!……ぅっ、たしかに!」
「ん?あぁ確かに己はあの時お前らに心臓を破壊され、亜空間の果てに吸い込まれた。まったく、自分の技を逆手に倒されるなど笑い話にもならん。
しかし、たとえ別の空間に飛ばされようとも必ず脱出する方法はある。それはお前がよく知っているだろう」
笑っていた。不気味なまでに、人の不幸せがとてつもなく面白いといわんばかりに笑っていた。あぁ…そうだ。なんでこの可能性に気付かなかったのか。心のどこかで慢心していたのだろう。終わりだ、巨悪な闇を殺し切ったと。これで安心して未来に託して逝けると、そう思い込んでいた。
「っ桔梗……
「おぉ、憎いか……この己が憎いか!そうだろ!お前は己が作り上げた
今この生を今世とするなら。目の前にいるのは前世における最も倒すべき敵、好奇心の人類悪、少数派の正義、好奇心から全人類を駆逐し、負の感情と呪詛をもって作り上げた泥をまき散らし世界の終焉をだた見たかっただけの純粋無垢な悪、二度相打ちになるまで殺しあった宿敵。
それが今目の前に、記憶よりもずいぶんと幼い姿でそこに遭った。
「奇しくも再会したのにもかかわらず、お互い未熟な幼子に生まれ変わってしまった。このまま殺し合いをしても面白くないが……
この先私の邪魔にならぬように今ここで殺そうか……」
――っ!?――
まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい
今からここから逃げろ!!痛む体を起こせ!!全力でこの場から離れろ!!!今の私では太刀打ちできない!!!
人理はお母さんだったものから燃える柱を抜き、こっちに向かってくる。一歩一歩近づいてくるたび自分の心音が跳ね上がり、脳の警鐘は割れんばかりに響く。
そして人理は私の目の前まで迫り、未だ燃える柱を高く振り上げこちらを見る。その顔は惨めに這いつくばる私を殺せる事に悦を感じ、狂気混じりの笑顔を浮かべていた。
「そこに誰かいるのか!!」
人理の腕が振り下ろされる寸前、そこに第三者の叫び声が響き渡り人理の意識がそちらに向く。その一瞬、生存本能を刺激するこの状況は何時の間にか私の体のリミッターを解除し、人間としては驚くべき力でその場から逃げ出した。
「…計画の為には今ここで殺さなければならなかったが、再び高みに登ったあいつと死合いを望む好奇心はやはり何物にも変えがたいな……」
「君!大丈夫か‼︎怪我はないか‼︎」
オールマイトとしてプロヒーロー活動を送ってきた中で印象に残っている事件はたくさんある。それは多くの人を救えた喜びだけではなく、救えなかった悔しさもある。私はその喜びを、悔しさをバネにして今日まで平和の象徴として第一線に立ち続けた。
しかし私にも、もしもあの時こうしていたらなど”たられば”をせずにいられないものが二つある。一つ目はオール・フォー・ワンの件だ。…私は何故あの時彼を刑務所にぶち込まなかったのか。私はどこか慢心していたのだろう、”あの状態では生きてはいない、悪の闇は潰えた”…そう安心してしまった。その代償に師匠(せんせい)の子供を悪の芽として成長させられ、君に重荷を背負わせる結果となってしまったっ!……もう一つ目は今でも鮮明に思い出せる。あれはオール・フォー・ワンとの数ヶ月前に起こった火炎系個性のテロ組織による大型モール爆破事件。前科持ちのヴィランによるヒーローへの報復として、連休中の人々で溢れ返すモールのガス管に炎を着け、自らとともにモールを全壊にした事件。多くの死傷者を出したこの最悪の事件にも私はもちろん多くの人の救出にあたっていた。燃え盛る業火の中、私はある一人の少年と出会った。少年は深く傷づいた体に不釣り合いな程大きく、鋭い丸太と言える物を片手に携え立っていた。
『……はい、少し頭を打ったみたいで記憶が混乱していますが大丈夫ですよ』
振り返った瞬間、少年と呼ぶにはあまりにも悔しさと愉悦の織り交ざった、いやに大人びた顔をしていた。すぐさま少年は相応の顔になってみせたがその口から出た言葉はやはり年齢に不相応に大人だった。年端もいかぬ子どもが体中に傷や汚れを付けながらも、やせ我慢してる様子もなく淡々と自分の状態を説明している様はひどくちぐはぐでとても気味が悪かった。
『っ!?あぁそうか!だが安心するといい、私が来た。怪我をしているね、急いでここから出て手当てをしてもらおう』
私は少年の返答も聞かずに彼を抱きかかえ、その場から立ち去った。もしかしたら私はあの時彼とあまり関わりたくなかったのだろう。しかしあの時しっかりと彼を見ていれば気づけただろうか。AFOに匹敵、いやあいつより巨大な闇を抱えた彼を止めれただろうか……
私は目の前の光景を見てそう思わずに入られなかった。
「…っ!はぁ……はぁ……はぁ……」
どれほど逃げただろうか、来た道を振り返るとさっきまでいた地獄がまるで焚火のように小さく見えた。その光景を見た途端、身体中の力が一気に抜け、膝から崩れ落ちた。当たり前だ、火事場の馬鹿力とは言え、幼すぎるこの体で傷を負いながら何キロも走れば体が悲鳴を上げる。それでもここまで来れたのは極度の緊張による脳の誤認によるものだろう。そして私は襲い掛かる疲労に抵抗できずに地面に倒れ、泥のように眠ってしまった。
「……何故こんなところに傷だらけの子供が……このままでは怪我が悪化してしまう。早く手当てをせねば……」
『彼は残念ながら”無個性”です。個性の発現は難しいでしょう』
―きっかけは医者からの言葉だった。
『ふん、やはり出来損ないのガキはやはり出来損ないか……』これはお父さんのお爺さんの言葉
『おまえ”むこせい”なんだろ!ザコじゃん!いきるかちなんかないじゃん!さっさとしんだほうがいいじゃん!』これは今まで仲良くしてた親友の ���墢�Ꭳ���鲫くんの言葉
『……ったく面倒くせぇ…だいたいいじめってのはいじめられる方に問題があるんだよ。”無個性”なんて空気読めない奴なんか無くなれば丸く収まるんだから…』これは保育園の……谿コ縺励※繧?k先生?のことば
『もう耐えきれない!なんで私が責められなければならないのよ!……原因はあんたよ。あんたなんか生まれなければあんたなんか生まれて来なければ!私は彼と幸せに生きれたのよ!?”ヲ。ー(B”の役に立たない”道具”は死んでしまえ…さっさと死んじまえよ!!』これは……���줵�����ä�����?…戀鹵4堆遣の言葉
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいなんで?ごめんなさいなんで?ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいなんで?ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいなんで?ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいなん���������墬���������������墬���������������墬���������������谿コ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k豁サ縺ュ豁サ縺ュ谿コ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k豁サ縺ュ豁サ縺ュ�������������Ꭺ�������Ꭺ���墩�������������Ꭺ���������������墬谿コ※繧?k谿コ縺励※繧?k豁サ縺ュ豁サ縺ュ���������������墬����墬谿コ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k豁サ縺ュ豁サ縺ュ谿コ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k豁サ縺ュ豁サ縺ュュ谿コ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k豁サ縺ュ豁サ縺ュ�����������墬���������������墬����������������谿コ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k豁サ縺ュ豁サ縺ュ谿コ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k豁サ縺ュ豁サ縺ュ�������������墬���������������墬���������������墬���������������墬���������������墬���������������墬谿コ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k豁サ縺ュ豁サ縺ュ谿コ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k豁サ縺ュ豁サ縺ュュ谿コ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k豁サ縺ュ豁サ縺ュ��������������墬���������������墬�������Ꭺ���谿コ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k豁サ縺ュ豁サ縺ュ谿コ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k豁サ縺ュ豁サ縺ュ�������������墬���������������墬谿コ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k豁サ縺ュ豁サ縺ュ谿コ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k豁サ縺ュ豁サ縺ュュ谿コ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k豁サ縺ュ豁サ縺ュ���������������墬���������������墬���������������墬谿コ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k豁サ縺ュ豁サ縺ュ谿コ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k豁サ縺ュ豁サ縺ュ
――今目の前に映し出されている映像は一体誰の記憶か。さっきからずっと聞こえる謝罪と自問自答から察するに、この体の本来の持ち主だろう。目を覚ましてみればそこはひどく寂れた映画館の椅子にぽつんと腰かけていた。ゆっくりと立ち上がり周りを見渡すと、最前列の中央に独り子供が両膝を抱えながら椅子に座っていた。未だ画面に映し出される罵詈雑言に意識を向ければ、第三の壁を無視してその子供に投げつけられていた。そう理解した瞬間、私の中で怒りが爆発した。小さい子供に向けられる言葉や眼差しはとても醜い。これが本当に”心ある人間”のすることか?否、彼らは人間ではない。人間の真似が上手いだけの名誉と言う何の役にも立たない餌に貪りつく醜悪な化け物だ。私は年甲斐もなく感情のままにその画面を叩き割った。そして子供の前で膝をつき、彼を抱きしめ頭を撫でる。身体に触れる瞬間、彼はその身を震わせていた。幾人にもその存在価値を否定され、本来あるはずの性格を意味する”個性”を蔑ろにされ続けた少年の気持ちを私は知らない。しかし、本来その気持ちをこの幼子に背負わせるべきではないのはわかる。愛を知らないであろう少年に血濡れた過去を持つ私でも愛の温かさを少しでも分けてあげれる様に彼を優しくしかし力強く抱きしめ続けた。
しばらくして少年の全身の震えが収まってきたが、代わりに肩が震え、膝の間からすすり泣く声が漏れ出す。
「…なんで私がここにいるのかわからないし、君が誰でどんな過去を送ってきたかは知らないけど、でも私は君が泣き止むまでこうしてあげるよ」
そう言うと少年の泣き声が大きくなる。これは収まるまでしばらくかかりそうだな……
私、
ハーメルンでは初投稿ですのでいろいろと至らない箇所もありますが、ご容赦お願いします。
※2019年8月25日、本文修正、追記。
……久しぶりに読め返したら、主人公の名前を途中で切れたまま投稿したことに気が付きました。とても恥ずかしいです。