突然現れたヴィランの大群はその禍々しい悪意と殺気を私たちに向ける。私はすかさず身体強化をしよとするが、それを相澤に止められる。
「機関…。」
「やめろ三笠!」
「相澤先生!」
「お前も生徒だ!ここでおとなしくしてくれ。13号!生徒たちを守れ!」
「何だありゃ?二人みたくヴィラン役の奴らか?」
「あれは本物のヴィランだ!!絶対に動くなよおまえ達!」
「ふん…。おかしいですね。頂いた資料からはオールマイトもいるはずですが…。」
「こんだけ引き連れて、平和の象徴がいないんじゃ格好つかねぇな…。まぁいいや。とりあえずそこにいる子供たちを殺せば出てくるだろう。そんときにオールマイトを殺せばいい。」
とてつもない悪意が漂う。しかも、ヴィランの目的はオールマイトの殺害…。13号と相澤の会話からオールマイトは今休んでいるはずだ。
相澤は13号と生徒に指示を飛ばす。あの量の大群を一人で引き受けるらしいが、私は相澤にとてつもない気配の持ち主を伝える。
「相澤先生!大群と言っても寄せ集めの小物だらけですが何人か強いのもいます。特にあの脳が露出した大男は尋常じゃない気配がします。注意してください!」
「あぁ、わかった!」
相澤はそういうとヴィラン達の何か突っ込む。雄英の教師であるがその前に一介のヒーロー。戦闘経験は十分にある。相澤は能力を駆使しつつヴィランを倒していくが、流石にすべては捌けない。
「皆!急いで避難しますよ!」
「させませんよ」
「っ!?」
相澤の一瞬の隙をついて、黒い霧が広場まで移動してくる。どうやら彼が移動の要らしい。
「初めまして、我々は”ヴィラン連合”。僭越ながら雄英高校に入れせて頂いたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして…。」
どうやら余裕があるのか、敵は悠々に口上を述べる。先ほども聞こえたがオールマイトを殺すと目的をはっきりと話す。普通の思考ならトップヒーローを殺そうと思っても行動はしない。こいつらはオールマイトが弱体化していると知っているのか。または殺せる算段があるのか。どちらにしても何かしらのカードがあるのだろう。
悠々と話す敵に向かって勝己と赤髪の子が攻撃を仕掛ける。スピードは申し分ないが残念なことに攻撃は当たらなかったらしい。
「危ない危ない…。生徒と言えどヒーローの卵。」
「駄目だ!どきなさい二人とも!!」
「こうなれば 散らして! 嬲り!! 殺す!!!」
敵は黒い霧を私たちに向ける。私は急いで身体強化をするが、一歩間に合わず霧に飲まれてしまう。
霧が晴れると、そこは山岳の地面。そして大勢のヴィラン達。どうやら事前にヴィランを各所に配置していたらしい。元から私たちを殺すつもりか。私のほかに金髪の男の子、ポニーテールの女の子、ショートの女の子も私と同じところに飛ばされたらしい。
「上鳴さん!耳郎さん!三笠さんを囲んで守ってください!」
「あんたも運が悪いわね。せっかくのヒーロー科の授業がこんなことになって。」
「安心しろ!俺たちが何とかしてやるから!」
広場でノーマルと伝えたことが仇になったのか。三人は私の囲むように陣を組む。ノーマルの私を守る為だろうが、はっきり言ってこの程度のヴィランなら中学から戦ってきているので問題はない。しかし、これはチャンスだ。私は素早くヴィランの数を確認する。ここは山岳。チョークは持っていないが指で直接地面に書き込むことはできる。数を確認し終えた私はしゃがみ込み、急いで錬成陣を書き上げる。
「大丈夫ですわ!私たちがちゃんと守ります!」
「ちょっと!あんた何をして…。」
どうやら恐怖でしゃがみこんだと思われたらしい。しかし、錬成陣は完成した。一気に複数の錬成をするのは時間がかかるが守ってもらえているので問題はない。私はタイミングを見計らって錬成をする。
「今だ!『錬金』!!」
両手を合わせ、地面に手を付ける。完成した錬成陣は青く光り、反応する。三人は突然の出来事に驚いて固まるが、突然一人のヴィランの足元から巨大な石の拳が生えてくる。それはヴィランの顎を目掛けて伸びていき、強烈なアッパーを一面のヴィラン達に食らわす。視界の外からの攻撃になす術もなくヴィラン達は一掃される。
「っ!?かっ!!」
「何だ!?ぐえっ!」
「地面から腕が!?」
「次々にやられていくぞ!?」
…錬成反応が止まる。私は地面から手を離すと、石の腕はボロボロと崩れていく。見渡せば、一面倒れたヴィランの姿ばかりだ。私はもう一度錬成陣を書き上げ、倒れこんだヴィラン達を拘束していく。これで目を覚ましても身動きは取れないだろう。
「…す…すげぇ……一瞬であの数のヴィランを倒しちまったぞあいつ。」
「何故このような力を持ちながら無個性と呼ばれているのでしょう。」
「今はそんなことより早く戻ろうよ。相澤先生が心配。」
私の錬金術を見た三人はその力に疑問を抱きながらも、今は緊急事態。それぞれの無事を確認して、広場まで戻ろうとするが…。
「おぉっと、動くなよ!動けばこの”女”の命は無いぞ!」
「っ!?ヴィラン!?いったいどこにいましたの!」
「念の為に隠れていたのが運がよかったぜ…。こんな強えぇ奴がいるなんてよ。お前ら、手を挙げろ。個性を使うなよ。」
「くっ!やられた!完全に油断した。」
「三笠!すぐに俺たちがどうにかする!落ち着いていろ!!」
「くくく…。美しいな、友情か。そんな不確かなもの信じてどうする。」
黒い霧に包まれた後、目を覚ませばそこは岩肌が向き出た山岳地帯。そして多くのヴィラン達。圧倒的危機に私は咄嗟に状況を確認する。私と一緒に飛ばされたのは耳郎さんと上鳴さんと普通科で無個性の三笠 冬扇さん。非常にまずい状況。耳郎さんと上鳴さんならまだしも、三笠さんはいくら相澤先生から戦えると言われても無個性。この状況では何もできないはず。どうにかして守らなければ…。
そう思っていると三笠さんは突然、地面にしゃがみ込み、何かを書いていった。初めは恐怖からそうしていたのだと思っていましたが、彼は両手を合わせると、そのまま地面に手を付けた。すると地面に書いた何かが青く光りました。次の瞬間、地面から石の腕が伸びていき、そのまま大量のヴィラン達を倒していきました。
すごい…。素直にそう思させるほどでした。彼はどうしてこのような力を持ちながら無個性なんでしょうか。そんなことを思っていると、突然後ろから物音が聞こえました。振り向けば打ち漏らしたのか、一人のヴィランが三笠さんの首を掴んでいました。ヴィランは三笠さんを人質にとり、私たちを脅してきました。何とかしなければ、三笠さんの命が危ない!
「電気系!轟さんが言っていた通信妨害している奴ね。」
「ふん、そうだ。まぁわかったところでどうもできないんだがな。今からそっちに行く。動くんじゃねえぞ。」
「情けないな。子供相手に人質を取らなければ勝てないなんてよ。」
私たちが手をこまねいていると、人質になっている三笠さんがヴィランに向かって話しかけ、あまつさえ挑発をしだした。。か、彼は何を!?ヴィランがその気になれば殺されてしまう!?
「お前、自分がどういう立場かわかっているのか。」
「お前こそわかっているのか?この作戦が成功したとして、お前はこのままあのトップの下についていけるのか。ああいう手合いは容赦なくお前みたいな小物を切り捨てるぞ。」
「てめぇ…。俺が小物って言いてぇのか!」
「子供相手に人質取ってる時点でお前はそこら辺のチンピラと何も変わらないんだよ!」
「殺す!!」
「っ!?待ちなさい!!!」
―Clap!―
私の制止もむなしく、ヴィランは三笠さんの頭に電撃を流す。攻撃がやむと、そこには無残にも頭から煙を上げ、だらんと体から力が抜けている状態の三笠さんが…。そんな!彼は死んでしまったのでしょうか!その後ヴィランは三笠さんを後方へ投げ捨てる。まるでゴミのように捨てられる三笠さん。早く安否を確認しなければ!しかし、ヴィランは今度はこちらに向かって来る。
「チッ!仕方ねぇ…。次はお前たちだ!」
「っ!やらせはしませんよ!」
「掛かってきなさい!返り討ちにしてやる!」
「3対1だ!お前に勝ち目はないぞ!」
「…ふっ、そういうのはビビりながらいうもんじゃないぜ!」
ヴィランはそういって、私たちに向けて電撃を放つ。先ほどの三笠さんの惨状を目の当たりにした私たちは、慌てて避ける。今だ脳裏には三笠さんの死が映り込んで、恐怖を感じる。見知った人が目の前で亡くなるのはこんなにもつらいものなのでしょうか!
ヴィランの攻撃に防戦一方になる私たち。ヴィランの動きは帯電による早く、私に創造する時間を与えてくれません。耳郎さんはイヤホンジャックで攻撃するも躱されてしまい。上鳴さんは同じ個性の為、ダメージはそこまでありません。攻撃できないまま消耗する私たち。このままではやられてしまう!そう思った時…。
「お前、残心って言葉知らないのか。」
「な!?お前は!」
「『第二戦速 ヒュンケ・ファウスト』!!!」
―BOOOOOM!!!!!―
ヴィランを倒したのは、倒れていたはずの三笠さんでした。彼は多少ボロボロでしたが傷は無く、体に電気を帯びている状態でした。ヴィランは彼の声に気付き、咄嗟にガードしましたが、その破壊力はそのガードごと、ヴィランを地面の叩きつけました。す、すごい!彼はこんなにも強かったのですね!
錬成陣を書き上げている中、ヴィランの一人が隠れて居るのが見えた私はあえてそのヴィランを逃がすことにした。ヴィランの体に電気が帯電しているのを見て、奴は電気系の能力だと確信した私は奴の力を利用することにした。
この数年間、体術や魔術の鍛錬をしている中で私はその能力を一段階上げることができないか考えていた。ルフィのギアやソルのドラゴンインストールのように、基礎能力を一段階上げることで技全体の性能を上げることができる。そこで私が考えたのは帯電による身体能力の向上だ。前世での私は艦娘の能力の一つ、自家発電を戦法に組み込んでいた。なので電気の扱いはできたのだが、いかんせんこの体は改造していないため、帯電させるのは難しい。そこで私は魔術を利用し、信陽の体とのシンクロ率を上げ、前世の状態に近づけて、帯電させることに成功した。しかし初めは帯電どころか、魔術によるシンクロ時間の短さがネックだった。なのでここ数年の課題は魔術の行使時間及び帯電時間を延ばすことを念頭に置いていた。その結果、短期戦でなら十分通用する時間まで帯電できるようになった。
私はこの山岳地帯を抜けることを考慮して、電気による能力を向上させ、早く広場まで戻ることを考えていた。そのためにはそのヴィランから電撃を浴びなければならない。そのため、わざと見逃し、人質になり、相手を激昂させて攻撃を食らう作戦を立てた。しかしまぁ…。こうも予想通りにいくとは思えなかったなぁ。
ヴィランを倒した私は三人に振り向く。突然のことに三人は今だにぽかんとしていた。しかし、時間が惜しい。私は八百万にある提案をする。
「大丈夫だったかい君たち?」
「………はっ!いやそれうちらのセリフだから!あんた攻撃食らって倒れていたんじゃないの!?」
「ん?あぁ、小さい頃から電撃に対する訓練を受けていてね。能力による電撃くらいなら多少耐えられるし、逆に自分の力のできる。今回はその力目的で攻撃をあえて食らったんだよ。」
「それでしたら上鳴さんからもらうこともできたんではないでしょうか?」
「いや、君たちの能力をまだ把握できていなかったからね。能力が割れている相手からもらうのが一番だと思ったよ。それよりも相澤先生が心配だ。早く広場に戻ろう。八百万さんちょっといいかな。」
「はい、何でしょう?」
「ハーネスを4つほど創造してほしいんだ。できるかい?」
「それでしたら問題はありません。………………はい、これでよろしいでしょうか。」
「ありがとう。この中で私が一番速いと思うから、三人まとめて運ぼうと思う。」
「三人も運ぶのか!?」
「大丈夫、君たちを運ぶくらい訳ないさ。」
そういって私はハーネスをつけて、三人と結ぶ。女子二人は両腕に男子には背中に捕まってもらい、走り出す。
「それじゃあいいかい?『剃』!」
「「「っ!?」」」
私は三人を乗せていると思えないほどの速度で走り出す。そのまま一直線に広場に向けて走っていると、後ろから絶叫が聞こえる。
「あ、あんた!前、崖になってる!このままじゃ落ちる!!」
「ははは、心配しないでいいよ。」
「いや心配しないってどうやって………キャー!!」
「『月歩』!!」
あわや崖底に転落するかと思いきや、私は空中を走っていた。その様子に三人は絶句する。
「(((彼・こいつに関してもう驚かない…。)))」
―セントラル広場―
初戦闘にして初勝利!これが勘違いの元だった。
「13号…災害救助で活躍するヒーロー。やはり戦闘能力は一般よりも劣る。」
「先生ー!!!」
僕らはまだ何も見えていなかった。
「対平和の象徴怪人。”脳無”」
―バキッ!―
「くっ!」
「個性を消せるっていうのは素敵だけど、圧倒的な力の前では
水難エリアから脱出した僕らは真っ先に相澤先生のいる広場まで戻った。指は犠牲になったけども、これならいける!そう思っていたが、現実は甘くはなかった。僕らが広場で見たのは、大男に腕を折られ、ボロボロになっている相澤先生の姿たっだ。プロのヒーローが手も足も出ない。そんな状況で僕たちに何ができるのだろうか。
「死柄木 弔」
「黒霧か、13号はやったか?」
「行動不能にはしましたが、散し損ねた生徒1名に逃げられました。」
「は?………はぁー………お前の能力がなかったら、粉々にしていたぞ。さすがに何十人ものプロヒーローに囲まれたら敵わない。今回はゲームオーバーだ。」
ゲームオーバー!?こいつらゲーム感覚でこんなことしたのか!
「まぁでもその前に……
平和の象徴としての矜持をへし折ってやろう。」
あんなに遠くに離れていたヴィランがいつの間にか目の前に来ていた。そして梅雨ちゃんの顔に手を添える。こいつの個性は確か………。
―ゾッ!!―
駄目だ!こいつは手で触れたものを粉々に破壊する!このままじゃ梅雨ちゃんが!
「本っ当、かっこいいぜ。イレイザーヘッド。」
間一髪、相澤先生の個性でヴィランの個性は発動しなかった。
「叩き潰せ、脳無。」
「悪いがそうはさせないよ。」
広場にヒーローの声が響く。彼は相澤先生を叩き潰そうとしていた大男を吹っ飛ばし、広場に降り立った。彼はいつもピンチのときに来てくれる!
「三笠君!!」
「大丈夫かい皆。安心してくれ、私がいる。」
私は三人を背負いながら空中を走っていると、遠くで相澤先生がやられているのが見えた。大見得切っていたのはいいが、結果私の警告は無駄になったようだ。このままでは皆が危ない。私はさらに速度を上げ、大男目掛け、蹴りを側頭部に当てる。今まで走っていた分と四人分の重量で破壊力は相当なものだったが、帰ってきた感触にはあまり手ごたえがなかった。広場に着いた私は三人を降ろし、ハーネスを脱ぐ。
「上鳴君、私に電流を流してくれないかな。」
「え、なんで…。」
「まだ敵がいる。少しでも強化しておきたい。」
「……わかった。」
私は上鳴から電気を受け取り、ギアを上げる。ふと大男が飛んだ方向を見るとそいつは全くのノーダメージで立っていた。その様子に手首のマスクをつけたヴィランは高笑いをする。
「………かっこいいねぇ。オールマイトの真似かい?でも無駄だ。こいつにそんなのは効かないよ。」
「そう、なら本気になるしかないね。」
私はポケットからマスクを取り出し、付ける。あの一撃を受けてもダメージのない奴だ。本気で戦わないと厳しいだろう。
「なにそれ。そんなのでヒーロー気取りかよ。殺れ!脳無!!」
ヴィランは大男に命令を下すと、大男は高速でこちらに向かってきた。
「確かに速いが…。まだまだだね。」
大男の攻撃を私は八極拳の要領で相手の攻撃を受け流す。見た目以上の破壊力を持っていようと当たらなければ意味がない。考えなしの真っ直ぐだけの攻撃ほど捌きやすいものはない。こいつはいうなれば機械と同じだろう。攻撃が真っ直ぐすぎる。故に隙が見つけやすい。
「はあ!!」
渾身の一発が大男のボディに入るが、やはり手ごたえがない。
「ハハハ!いくらやっても無駄だ!そいつは“ショック吸収”の個性を持っている。たとえオールマイトの力で殴られてもビクともしない!」
「ショック吸収か…それはよかった。なら、倒せる。」
「なにを…。」
ショック吸収。確かにインファイター殺しではあるが、それはあくまでも拳で殴るならの話。私にはそれ以外の攻撃方法を知っている。
「『ショック』!」
「っ!?」
「まだまだ、『ショック』!『ショック』!」
私は拳で殴る外部破壊ではなく、ツボや急所の内側に届く局部破壊に攻撃を変える。更に突くごとに電気を流し、神経系を混乱させる。次々に急所を攻撃された大男はだんだんと動きが鈍くなり、先ほど見せた速さは見る影もなかった。こうなってしまえばまな板の上の鯉。私は腹部を狙う拳をを放つと大男は腕をクロスさせてガードをする。かかった!私はそのガードを無理やりこじ開ける。麻痺した状態じゃ簡単にガードを崩せるため、大男は無様にも両腕を広げた状態をさらす。
私は大男の鳩尾と腹部に渾身の掌底を叩き込む。内側から響く衝撃は拳で殴るよりもはるかに大きい。叩き込まれた大男はカクンッと体を硬直させる。そして私は大男の頭を両手で挟むと思いっきり電撃を流す。
「『ノッキング』!!」
体の帯電させた電気を両手に集め、一気に通電させる。手の間にある大男の頭に電流が流れる。結果、大男は両手を広げた格好で”停止”した。
私はそれを確認すると、指一本で大男の眉間を押す。するとまるで人形のようにそのままの格好で大男は地面に倒れる。
「はぁ?……嘘だろ…おい脳無!動け!命令だ!動け!さっさとこいつらを叩きつぶせ!」
「無駄だ、こいつの四肢を麻痺させ、脳をノッキング…締め落とした。あと24時間は解除しない限り動かない。」
「っ!?…なんだよ……なんなんだよ………なんなんだよお前は!!!」
「君にわかりやすく言えば、無個性の無課金プレーヤーだよ。」
その一言に激昂するヴィラン。この大男はこいつにとって絶対的勝利だったのだろう。しかしそれをただのノーマルによっていとも簡単に止められた。その事実はヴィランの自尊心を打ち砕くには十分だった。
「あぁ…ごめんなさい…。ごめんなさい、先生…。」
「まずい!死柄木!ここは退散しますよ。」
「逃がすか!オラ!!」
―BOOM!―
「くっ!」
「平和の象徴を殺すとか言っといてこのざまかよ。情けねぇな。」
「黙りなさい!こんなはっ…!」
黒い霧のヴィランが撤退しようとした時、散り散りに飛ばされた生徒たちが続々と広場へ戻ってきた。勝己は黒い霧のヴィランを押さえ、人使が洗脳を掛ける。全滅。この光景はヴィラン連合にとってまさにそれだった。
「うわあああぁぁぁぁぁぁ!!!」
子供のような癇癪を起したヴィランは私に向かって右手を伸ばして走ってくる。しかしそんな攻撃は私には通用せず、右手を払い、腹部に拳を叩き込む。そして地面に大の字で転がった。
終わった。見渡す限りヴィランはいない。私は主犯格であるヴィランを拘束するため近づく。
「悪いが少年。今彼に退場されるのはあの方のシナリオに無いんでね。『ティーズ』」
突然、目の前に灰色の肌の男が現れ、悍ましい生物で私に攻撃を仕掛けてきた。突然の新たな敵の出現に全員が驚く。何とか寸でのところで攻撃をかわしたが、反撃の瞬間、体が痛みが走る。どうやらここで第二船速の副作用が発症した。当然と言えば当然だがこの体はあくまでも普通の人間のもの、いくら魔術で体を強化していても、帯電するのは非常に危険な行為である。いくらか体の自由が利かず、全身に痛みが走る。しかし最悪な状況はまだ続く。
「っ!?爆豪!避けろ!」
「あぁ!?」
「戦イタクナイ…ダケド、アノ方ノ命令ダカラ。」
黒い霧のヴィランを押さえていた勝己に向かって真っ白い巨人が拳を叩き込む。意識外からの攻撃に勝己は反応できず、その攻撃を食らってしまう。
「(ティキ・ミックに港湾棲姫!?一体何故!?)っ…待て!!」
そう、突然現れたヴィランは前世で戦った深海棲艦の港湾棲姫に私が読んでいた少年漫画の登場人物、拒絶の能力を持つティキ・ミックの二人だった。
「そう焦るなよ少年。君とはまたどこかで改めて出会う予定だから。まぁ、置き土産に殺されずに済んだらの話だがね。」
ーパン!ー
大男がいた方から乾いた音が響く。振り向けば、何者かが大男の前で手を合わしていた。あの動作はまさか錬金術!?その動作に気付いた私の脳裏に最悪の場面が浮かび上がる。
「大男が動くぞ!!!」
「はぁ…『錬金』」
瞬間、大男の周りが青く光る。おそらくあれば治療のための錬金術。大男のノッキングを解き、再び戦わせるものだった。ゆっくりと大男は起き上がる。その間に術師はティキ・ミック、港湾棲姫と共にノアの箱舟に乗り、ヴィラン達と消えてしまった。
「三笠君!?あぶない!」
大男はさっきの命令通りの動いているのならば、目標は私だ。しかし私は今だ副作用でうまく動けない。そこになんと出久が飛び込んできた。出久は大男に向かって拳を思いっきり振るう。インパクトの瞬間、物凄い風が起き、私は後ろへ飛ばされる。しかし、ショック吸収の能力を持つ大男に対してそれは悪手だった。オールマイトから授かった力を全力で殴ったのだろう。出久の右手は内出血と骨折を起こしていたが、大男はピンピンしている。ただのテレフォンパンチでは全く効かない。うずくまる出久と私に大男が襲い掛かるが、間一髪、突然後ろから引っ張られ、攻撃を躱す。
A組の生徒たちが次々に攻撃するが、どうやら再生能力もあるらしく、半身が砕ても、瞬く間に再生する。第二戦速での攻撃では到底倒せない。こうなったら更にギアを上げるしかないか…。
「上鳴、まだ電気はあるかい。」
「三笠、お前そんなボロボロでまだやるつもりなのかよ!」
「体が動かないのは副作用のせいだ。もう一回電気を取り込んで、今度は全力であいつに吸収しきれないほどの拳を叩き込む。協力してくれ!」
「………わかった。気張って来いよ!」
―Clap!―
私はもう一度上鳴から電気を受け取り、ギアを上げる。体が悲鳴を上げるかそれどころじゃない。私は次のギアを上げるため心臓を強化する。今からすることはルフィのギア2と全く一緒の原理だ。ただし、私は彼もみたく体がゴムではない。長時間の使用は間違いなく死に至る。一瞬、一瞬で方をつける。
「氷の人!そいつを氷漬けにしてくれ!」
「…すぐに出てまうぞ!」
「それでもいい!一瞬の隙が作れれば!」
「わかった!」
そういうと、紅白の髪色の子は大男を氷漬けにする。
「『剃』!!」
剃という技は地面を何回も蹴り、瞬間的に移動する技。私はその特性を利用して、いつもより多く蹴り、血液の循環を早める。
「(くっ…!かなりきつい!しかし、耐えるしかない!)」
常人の体では第三戦速の副作用に耐えれない。魔術、電気、血液の循環が私の体をボロボロにしていく。それでも敵を倒さなければならない。大男が氷から出てくると同時に私は大男の目の前に飛び出す。これで倒れろ!!
「行くぞ!!!『第三戦速 ヒュンケ・ファウスト』!!!!!」
大男よりも速いスピードで拳をボディに叩きこむ。氷から出たばかりで動きが鈍い大男はなすすべもなく拳を食らう。しばらく拮抗するが、出久よりも巨大な力の前では虚しく、場外へ飛ばされるしかなかった。
「ハァ…!ハァ…!ハァ…!ハァ…!」
「か……勝った………勝ったぞ!!」
誰の鬨の声か、私は朦朧とする意識の中で強化を止める。ほんの一瞬しか発動していないが、それでもあの事件並みに体力を持っていかれた。その後、扉の方から誰かが入ってくる音がして私の意識はそこで途絶えた。
「先生、これはどういうことだ。」
「何、君がヴィラン連合と言い出した時はその見通しがどんだけ甘いか。わからなかったようだから、保険の為に、助っ人を呼んでおいたんだよ。結果的には保険をかけてよかったと思っているよ。しかし、オールマイトが現れる前に倒されるとは思ってもみなかったがね。」
「そうだあのガキ!無個性のくせになんであんなに強いんだよ!」
「あいつはあの方の最高傑作だからな、逆にあんな木偶の坊にボロボロになる方がおかしいくらいだ。」
「死柄木、あれはそういう存在だと思いなさい。そいつの対処は彼らがする、君はあの緑色の少年の方を探りなさい。」
「どうしてだ先生。」
「私の推測が正しければ、あの子は君と同じだからだよ…。
緑谷 出久。彼はワン・フォー・オールの後継者かもしれない。」
連続で錬金しているシーンは『PS2 鋼の錬金術師 赤きエリクシルの悪魔』のエドの必殺技を参考にしています。