夜明けを歩むノーマルヒーロー   作:双星シグ

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今回はいつもの半分ほどの文字数しかありません。あしからず。


駆け抜ける勇者

観客の興奮が冷めやらぬうちにミッドナイトは第一種目の発表を行う。

モニターに映し出された種目は障害物競走。3ブロックに分かれた4kmのコースをルール無用で走り抜けるシンプルな競技を11クラス計200名以上の生徒が参加する。開始前にやる気がなかった生徒も私が焚き付けたおかけでスタート前から臨戦態勢に入っている。私は出口近くで陣取っているとそこにA組の轟がやって来た。

 

「お前、無個性なんだってな。」

 

「私はノーマルって呼んでいるけどね。」

 

「…お前はどうしてそこまでしてヒーローになりたい?」

 

「それは…」

 

「さぁ!位置について!」

 

轟の問いに答えようとした瞬間、ミッドナイトの声が遮る。二人は会話を中断して競技に集中する。

 

「スターーーーーーーーーーーート!!!!!」

 

ー Beeeeeeeep!!!!! ー

 

「『機関始動(エンジン・オン)』」

 

― Vroooom! ―

 

私は合図と同時に強化し、スタートダッシュを決める。

 

「そう簡単に行かせるか。」

 

「!?」

 

私が走り出した瞬間、轟は辺り一面を氷漬けにする。私は驚いたが、反射神経も強化しているため瞬時に飛び上がり、氷を避ける。ゲートの狭さと轟の妨害によりかなりの数が出鼻を挫かれた。しかしそんな中でもA組は全員妨害をものともせず、追いかける。

 

「クラスの奴らは当然として思ったより避けられたな。」

 

「ルール無用とは言ったがスタート同時に妨害とは案外性格が悪いなぁ。」

 

「お前が全員の士気を上げなければこんな事はしない。っ!?」

 

「『ターゲット捕捉!排除する!』」

 

「『さぁいきなりの障害物、第一関門!ロボ・インフェルノ!!』」

 

スタートから少しして、入試で出てきた巨大ロボットの一団による妨害が始まった。実況によればこれが第一関門らしい。轟は瞬時にロボットを凍らせ、その間を抜ける。

 

「(ここは通り抜けるのが定石だが…。)私も妨害に走るかな!『嵐脚(らんきゃく)』!」

 

「『あーと!轟に続き、主席の三笠もロボを何体か切断していく!!ありゃぁ何だ!?』」

 

「『あれは高速で足を振ることで、斬撃を飛ばす体術だ。三笠いわく訓練さえすれば誰でも使えるらしい。』」

 

「『流石主席!ノーマルっていうハンデも感じさせない軽快な身のこなしで一位を追走する!!』」

 

横一線に放たれた嵐脚は何体かのロボットをまとめて斬り倒し、その間を瞬時に抜けていく。斬られたロボットはその場に崩れ落ち、後続をせき止める。

 

轟を追いかける中、私は第二関門にたどり着いた。

 

「『第一関門はぬるかったてか!!じゃあこれならどうだ!落ちたら即アウト!ザ・フォール!!』」

 

第二関門は底の見えない谷に足場となる小さな島同士を一本の綱でつなげているコースだった。先頭の轟は綱を氷で覆い、それを足場にして進む。そして後続を進ませないために氷を落とす。周りの視線からノーマルである私には厳しいのではないかという視線が向けられるが…。

 

「『月歩』!!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「『へいへいへいへい!!?一体誰が予想できたか!C組三笠!今度は空を飛んでコースを真っ直ぐ突っきていく!!!』」

 

「『あれは空中を走る技術だ。もちろんあれも練習次第では誰でもできるらしい。まぁそれ相応の覚悟はいるがな。』」

 

「『really!?あいつどんな覚悟で覚えたんだ!!』」

 

「規格外だとは思っていたがここまでとは…。」

 

またもや会場は騒然とする。ノーマルである私が空を走る。これは観客のみならず、生徒たちの度肝を抜いた。その結果、私は轟を抜き、トップに躍り出た。

 

「男女!なんだその力は!!」

 

「ん?やっと調子が出てきたか爆豪。これは俺が血反吐吐きながら覚えた技だよ。」

 

私と轟が第二関門を走り終えた頃、後ろから勝己が追い上げてきた。先頭争いは激化し、私、轟、勝己の順で次の障害物に入る。

 

「『早くも最終関門!その名も、怒りのアフガン!一面地雷原だ!!』」

 

次は地雷原の中を走るものだ。私は先ほどと同じように月歩で飛ぼうとするが、爆豪に上から、轟から下からの妨害に合い、地雷原を走るしかない。しかし…。

 

「クソ!なんで地雷を踏まねぇんだよ!」

 

「はは!なんでだろうな!」

 

轟と爆豪が何回か地雷を踏む中、私はスピードを落とすことなくコースを中を走る。強化した私の視覚と嗅覚は的確に地雷の位置を見つけ、そこを避けるルートを構築しているため、私は地雷を踏まない。

 

 

 

― BOMB!!! ―

 

三人がトップ争いをする中、後ろの方から大きな爆音が響き渡る。振り向くとそこには出久が地雷を一か所にかき集めてロボットの外装を盾にして爆風とともにものすごいスピードで先頭まで飛んできた。

 

「『後方で大爆発!?故意か偶然か!A組緑谷!爆風で猛追!!』」

 

「(相変わらず君はわからないやつだな!出久!)」

 

先頭まで追いついた出久だが、そのまま失速する。このままではまた私達に追い抜かれる。出久はそのまま一回転し、盾を地面に叩きつける。そこには何個か地雷が!?

 

― BOMB!!! ―

 

 

「『緑谷間髪入れずにもう一度大爆発!!後続を妨害し、地雷原エリアを即クリア!!』」

 

「(やった!このままいけば!)」

 

「『後は直進!障害物は無し!!このまま緑谷が一位か!?』」

 

 

 

「緑谷もう一つアドバイスだ。”勝って兜の緒を締めよ”、完全に勝つまで気を抜かないことだ。」

 

「っ!?」

 

出久の妨害は確かに三人を退けたが、あの死闘を経験した私にとってあれぐらいの爆発では恐怖しない。私は爆発の瞬間、咄嗟に一歩体を引き、爆風から逃れる。そして轟と勝己のマークが外れた瞬間、月歩で地雷原を抜けて出久に追き、出久の肩を掴み、後ろへ倒す。

 

「『あーと!!なんと三笠、緑谷の肩を掴んだ!!何という執念!宣誓での発言は伊達ではなかった!!』」

 

「(ここで倒れたらオールマイトとの約束が!?…倒れちゃダメだ!使うしかない!足に…いや全身に!)っ!行かせるかー!!!」

 

― BOOM!! ―

 

倒れる瞬間、出久は受け継いだ力を全身に巡らせ、右脚で踏ん張り、そして地面を蹴る。その速度は私を抜き去り、ゴール手前へ。

 

「っ!?私も負けられない!『剃』!」

 

私は出久に抜かれてすぐに加速して追いかける。そのまま互いにデッドヒートしながらゴールへ駆ける。

 

「『ふ、二人ともほぼ同時にゴールしたー!!!一体どっちが一位か、後ほどビデオ判定だ!!』」

 

私と出久は同時にゴールを切った。その差は目視では判別がつかないほどだった。ひとまず選手たちがゴールし、規定の42名に達したところでミッドナイトが終了の声を上げる。先生たちは大至急、モニターに先程のゴールシーンを映し出す。モニターには両者とも腕を伸ばし、少しでも先頭に立とうとする光景が映し出されていた。そしてコマ送りで再生されていき先にゴールしたのは…。

 

 

 

「や、やったー!!!」

 

鬨の声を上げたのは出久の方だった。出久は感情のままに感動の声を上げる。まあ嬉しいだろうな、爆豪や轟、私に勝ったのだから。

 

会場のヒーローたちは第一試合を振り返る。今回一位を獲得したのは緑谷だが彼は運がよかった。トータル的に見ればこのレースを支配していたのはエンデヴァーの息子の轟焦凍とノーマルの私。特に私は各障害物を難なくクリアしていた。この事実に会場は困惑する。今だ無個性に対して評価が低い。しかし、今回の結果はその評価を大きくひっくり返すものだった。

 

上位42名発表後ミッドナイトが第二種目を発表する。

 

「次からはいよいよ本番よ!気張りなさい!」

 

ミッドナイトがそう言うとモニターに次の種目が映し出される。

 

『騎馬戦』

 

「二人から四人のチームを組んで騎馬を作ってもらうわ。そして普通の騎馬戦と違うのは先ほどの順位によってポイントが振り分けられる。最下位から5ポイントずつ増えていき、一位には与えられるポイントは1000万!!!一発逆転ができる下克上サバイバルよ!」

 

一位の出久にとんでもない重圧が襲いかかった。どうやら二位になったのは幸運だったかもしれないな。

 

 

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