遅れた理由としましては大半が仕事、それとプロットの作成です。
元々仕事に余裕があるときに浮かんだ妄想をふわっとまとめたものでしっかりとした下地があるわけではなかったのですが、この話を投稿するにあたってあまりにもバックボーンがなくて話が浮かばなかったのでこの際に一度プロットを組み立てることにしました。
一応、原作11巻AFO戦終了までは出来ていますのでこれからは流石に1ヶ月以内の投稿を目指していきたいと思っています。
体感時間で一時間程たっただろうか、膝を抱えたままの少年の泣き声を次第に小さくなっていった。そこで私は一度彼から離れ、飲料水と少し冷たい濡れタオルを取り出す。ここはおそらく少年の精神世界だろう。故に私たち二人の実体はないし、欲しいものを想像すれば”再現”出来る……気休め程度だがないよりはましだろう。それに身体から離れた際彼はわずかに震えた。やはりあの映像の通り、少年は本来与えられるはずの愛情を碌にもらえずに、そして代わりにならない代わりに暴力で身体を、言葉のナイフで心に傷をつけられたのだろう。彼を救う為にもまずはこちらから歩み寄り、傷ついた心を少しずつ修復しながら心を開いてもらい、状況を話してもらう必要がある。
「落ち着いた?疲れたよね、お水飲んだらこれで目を冷やしてね。」
そうして少年の前に先ほど取り出した二つを差し出す。少年は未だ膝を抱えたままだが、笑顔を彼に向けながら差し出す。しばらくしてゆっくりと少年は顔を上げる。その顔は一時間泣き続けたせいか、それとも今までの彼の人生の結果なのかはわからないが、その顔はひどく傷付いていた。目は赤く濃い隈があり、肌は荒れ、頬は痩せこけ、唇は乾燥し所々切れて血が滲んでいた。ここは精神世界、そこにいるものはその者の心理を表す。故に私は前世での最期の姿、桔梗人理との戦闘後の傷だらけの姿でここに居る。目の前にいる少年のこの姿は彼の”心の傷”を表している。あの映像よりも彼の姿のほうがより先程よりも静かで、それでいてどす黒い怒りがわいてくる。この世界の事はまだわからないが、小さい少年にここまで傷付けていい理由はどの世界にもない!
「辛かったね…痛かったね…けど大丈夫、私がここにいる!」
私は空いている手で少年の頭を撫でながら、彼の目を真っ直ぐ見つめ、そう宣言する。そうするとまた彼の目から涙が溢れる。私はすかさず彼の目にタオルを当てて涙を拭い、目の腫れを冷やす。そうすると彼の唇が微かに震え、空気が漏れ出す。疲れ切ったのだろう、声すら出ない様子だ。私は彼の唇の動きを読み取る。
『あ…り…が…と…う…』
『うれ…し…かった……』
『あたたか…った…』
『ここ…ろを…すくわ…れた……けど』
『わかる……んだ…もうすぐ……きえ…てしまう』
『からだが…うごか……ないんだ』
『あぁ…もっと…い…きた…かった…』
『もっと……せかいを…みたかっ…た…』
『……
『つかれ……た』
『しに…たく…な…い』
『もう…たてな…い…』
『だがらあげる…ぼくのからだ……おねえさんがつかって…』
『おねえさんのかこをみた……ぜんぶじゃないけど』
『かなしくて……いたくて……さびしいかこ……』
『おねえさんも……すくわれるべきだ』
『だからおねがい…ぼくのそんざいしょうめいを……”
なぜこんなにも純粋無垢な子がこの様な目に遭わなければならないのか。なぜ彼の内面を見ようともしないのか。相も変わらず人の世とは自覚無き悪意と多数派主義によって成り立っている。裕福にあるにも関わらずに自らを不幸と称し、ほんとに不幸を被っているものには目もくれない。稀に目を向ければ、自らの階級が上にあるかのように憐れみ、彼らを助ける者には偽善と批判し、本心に潜む汚い欲望を邪推する。権利を貪り、肥え太った恥知らずの豚もどきめ、まだヤーナムの下水道に住む豚の方が……いや、あれもあれで醜かったな。
「……まさか、君を救おうとした私が救われるなんてね。君はどこまでも純粋で、どこまでも真っ直ぐで誰よりも優しい子だ……ごめんね、君を救えなくて。ごめんね、君の傷を癒せなくて。ごめんね、そしてありがとう。君の事は決して忘れない。そして約束しよう、君みたいに悲しんでる人たちの”
「……ぁぁ…あ…りが…とう」
「最後に君の名前をおしえてくれるかな?もう知ってると思うけど、私は
「ぼくは…はつうめ……はつうめ…しんよう」
「っ!?」
おもわず息を飲む。私はその名前を知っている、その名前の人物を知っている。
あぁ……何故なのか。何故彼なのか。目の前にいる信陽は彼ではない、そうわかっているのに。彼と同じく自分が傷ついているのにも関わらず、私を救おうとしている……あぁ駄目だ、この黒い感情が抑えきれない。今すぐにでもここから出て、彼を傷つけた者にこの憤怒を突きつけたい!
…落ち着け私、これでは人理と何も変わらぬ。理性のない獣に成り果てるな。私は
「たとえ君が見えなくなっても、君の名は決して忘れない。ずっとこの胸に、この魂に刻み続けるよ」
私は消え始めた彼の体を再び抱きしめる。もう彼の声は聞こえない。それでも終わりの際まで彼のその体温を、その存在を、その魂をこの身に、この魂に刻み付ける。
「……うぅ……
「あぁ…やっと目を覚ましたか。」
「っ!?誰だ!」
「……そう警戒するな、僕は道端にボロボロになったお前を
眼を覚ました私は全身を走る痛いにまどろむ意識を覚醒させられる。すぐさま状況を確認しようとするが、隣から声が掛かる。視線を向けると隣の部屋から白衣を着た猫背の痩せた男性が入ってきた。私は倒れる前、人理から逃げていたことを思い出し、咄嗟に男性に殺気を飛ばし警戒する。男性は一瞬硬直したのち、手を上げて首を横に振り、危害を加える意思がないことを示す。私は男性の言葉と周囲の状況を確認したのち、殺気を鎮める。
「僕はここで医師を務めてる
「私は……」
男性、透田レントンは私の容態を確認しながら話しかける。そうして名前を聞かれたところで私は言葉が詰まってしまう。今この体を所有しているのは私だが元々は信陽の体。その現状を正直に答えてもまともに受け取ってもらえないだろう。ふいに言葉を失った私を見つめるレントン。このまま黙っていても逃がしてはくれないだろう。私は信陽の言葉を思い出す。
『ぼくのからだ……おねえさんがつかって…』
信陽は私の為にこの体を譲ってくれた。この体で彼の名を借りるのは彼の意志に反するだろう。私は素直に自分の名前を告げる。
「私は三笠 冬扇。無個性です。」
私が無個性と告げた瞬間、レントンは眉をわずかに上げ驚いだ表情を浮かべ、私を見つめる。その瞳から読み取れた中には嘲笑や蔑みといったものはなかった。
「…そうか、体にやけどや擦り傷の他に骨折や打撲の跡があるわけが分かった。君は倒れた日から3日は寝ていたが、どこが違和感や動かしずらいところはあるか?」
「3日ですか、特に痛みはありませんが体と感覚にズレを感じます。」
「まぁ、目覚めたばかりだからな。痛みがないのなら僥倖だ。他に聞きたいことはないか?」
「聞きたいこと………で教えてください。この世界の個性とヒーローについて!」
それから私はレントンからこの世界の”個性”と呼ばれるもの、”ヒーロー”と呼ばれる存在についてのあらましを聞いた。原因不明の異能の出現、それに伴うヴィランの出現、確かにヒーローの登場は一般人にとっては希望に見えるかもしれないが、その一方で初梅の様に持たざる者や危険な能力を持つ者がヴィランの如く差別され、排他される。
私はそれが許せなかった。本来の意味の個性があるのにも関わらずに”無個性”と形容し、見下す人間愚かさが。力なき者を悪とし力で退ける思考が。
『……
「透田さん、私はヒーローになります。超常の力を持たない普遍的…個性”ノーマル”ヒーローに!」
「それは…無理だ。ヒーローとはなろうと思ってなれるものではない。個性持ちですらその夢を追いかけて、届かずに夢を諦める者も多くいる中で、無個性の君がなれるわけがない。何より前例がない。」
「ではこのまま”ノーマル”は差別されたまま生きろというのですが?私は嫌です。この現状を打破できる手段があるにも拘らず指をくわえているのは。」
「ヒーローとは時に強大な、そして理不尽にも立ち向かわなければならない。真のヒーローになれるのは一握りしかいない。」
「…真のヒーローと言いましたね。透田さんは真のヒーローとは”強大で理不尽な敵や災害に対抗できる者”と考えておられるようですが、私は違うと思います。」
私はそう言うと改めてレントンの目を見る。自分の意志を伝える為に、相手に届く様に。
「ヒーローとは自称するものではなく他称されるもの。たとえ全世界の人間が否定してもたった一人、その一人に”ヒーロー”と認めてもらえればそれは力があるなし関係なくヒーローになれるのです。」
脳裏に映るのは光になってゆく初梅の姿。私は彼に”ヒーロー”になると誓った。そしてそれはこの体を譲り受け残された私の宿命だろう。
レントンの目を見据えたまま、私は自分の考えを主張する。彼の目に私がどう映っているかはわからないが、気圧され動揺し混乱する様から、私がただの子供ではなく化け物に見えるだろう。
齢5歳もの子供がこんな達観した大人の様な事を発言するのは酷くチグハグで違和感を感じ、言い知れぬ恐怖を感じているだろう。
もしかしたらこの発言で不審に思い、私のDNAから身元を調べられあの家へ帰されるかもしれない。しかし、私はそれでも言わなければならない。初梅との誓いの為に、前人未到の【ノーマルヒーロー】として一歩を歩まなければならない。
そうして互いに相手の目を見据えたまま時間が流れる。10秒に満たない時間が私には10分以上にも感じられる。そしてこの沈黙を破ったのはレントンのため息だった。彼は冷静に思考を落ち着かせると、私が梃子でも動かないことを悟ったのか観念するように口を開いた。
「その考えは素晴らしいものだが実際問題、力がなければどうしようもない。そうだな…僕の知り合いにサポート会社に勤めている奴がいる。そいつ曰くなんでも試作品の対テロ用警備ロボットのテストプレイを行うんだが、肝心の人がいないらしい。そこでだ、君にこの警備ロボのテストプレイを頼みたい。日時はおよそ一年後。それまでに身体のコンディションを整え、挑んでもらいたい。
当然僕は、真っ当な大人として医者として、挑戦自体やめるべきだが…君はこうでもしないと諦めてくれそうにないんでね。そして何より、こんな困難を乗り越えなければヒーローになんてなれない。ヒーローはどんな困難も乗り越え、人々を救う。
レントンは全く頭が痛いと小言を吐きながら、呆れた顔で首を横に振る。レントンの出した条件は小さな子供にとってはあまりにも無謀なものだが、おおかた私を怖気づかしてヒーローへの道を諦めさせる為だろう。Plus Ultra…いい言葉だ。前世ではもっと大きな逆境に幾度となく立ち向かってきた。この体でどこまで出来るかわからないが、ヒーローになる為、どんな壁も超えてみせる!
「……熱くなるのは結構だが、君はまだ病人。今は回復するまで安静にしてなさい!」
と、逸る気持ちに釘を刺すかのようにレントンの冷たい声が刺さる。まるでかの婦長や医神に似た威圧感を感じる。彼の言葉に前世では、軍医も務めていた事がある私は素直に従った。
三笠 冬扇 Mikasa Tosen
性別:女性
年齢:不明(500を超えたあたりから数えるのはやめたby三笠)
誕生日:4月1日
身体:175cm,60kg 髪型は『刀剣乱舞』五虎退風カットの白髪に前髪の一房が紫 目は紫色の猫目
個性:『ノーマル(無個性)』
好きなもの:努力を惜しまない人
嫌いなもの:桔梗人理、吐き気を催す邪悪
備考:このデータはあくまでも前世の姿。現在の姿は憑依先である初梅信陽に依存するが…?
初梅 信陽 Hatsume Shinyo
性別:男性
年齢:5歳
誕生日:8月15日
身体:100cm,15kg イメージモデル『TOSR』エミル
個性:『ノーマル(無個性)』
好きなもの:ヒーロー、お父さん
嫌いなもの:周りの人間
備考:本来の魂は消えてしまった為、三笠が憑依し事なきを得るが…?
透田 レントン Suketa Renton
性別:男性
年齢:40代
身体:170cm イメージモデル『ソウルイーター』フランケン・シュタイン
個性:『人体投影』
ヒーロー名:『スチールトン』
備考:元プロヒーロ。現在は住宅街に診療所を構える。
桔梗 人理 Kikyou Jinri
性別:男性
年齢:不明(蘇りを繰り返しているので不明by桔梗)
誕生日:不明
身体:185cm,68kg 髪型は『ヨルムンガンド』ギャスパー風の緑髪 目は銀色の蛇目で半開き
個性:不明
備考:人類悪ビーストⅣL 少数派至上主義を掲げる人格破綻者。
この作品ではイメージしやすくするため、登場人物や必殺技に他作品の名前を多く使用します。不快な方はすみませんが、ブラウザバックをお勧めします。