夜明けを歩むノーマルヒーロー   作:双星シグ

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今年最後の投稿となります。皆さん、メリークリスマス&良いお年を


下剋上

「『上を行く者には更なる受難を。』雄英に在籍する以上何度でも聞かされるよ。これぞ”Plus Ultra”!」

 

第一種目の一位、つまり出久に与えられた1000万ポイントというとてつもない点数に選手全員の視線が出久に向く。小心者の出久には些かキツイものだと思った私は出久の顔を確認するが、彼の表情からは緊張は見られるが気圧されてはいない。

 

「大丈夫そうだな…。」

 

「自分より人の心配かよ。そんな調子じゃあ足元すくわれて俺が優勝をかっさらうぞ。」

 

背後から声を掛けられ、後ろを振り向く。そこにはニヤニヤと笑みを浮かべた人使がいた。私は()()()()()()()()()返事をする。

 

「彼とは幼馴染なんだ。昔から気が弱くってね、ちょっと心配していただけさ。けど大丈夫、彼は数か月見ないうちに強くなったみたようだ。」

 

「チッ!やっぱり洗脳できねぇな。仕方ねぇ、ほかの奴当たるか。」

 

「待て心操。」

 

私は踵を返し立ち去ろうとする人使に声を掛けた。彼は少し止まってゆっくりとこっちを向く。

 

「宣誓で私が発破をかけたのにもかかわらず、ここにいるほとんどがヒーロー科だ。さっきの種目、お前結構本気で走ってたのにも関らず中途半端な順位だったな。」

 

「っ!なんだよ…。文句でもあんのか。」

 

「いや、私も結局はあんな大口叩いて結局2位さ。サポート科の彼女を除いて普通科は私とお前しかいない。なぁ心操。B組の奴らはA組しか見ていないし、そのほかの奴らは1000万ポイントに集中している。」

 

私は人使に話しかけながら近づいていく。そして彼の耳元でささやいた。

 

「……ヒーロー科のどでっ腹に風穴開けたくはないか?」

 

「お前…!」

 

「私と二人で組まないか心操。ほかの奴ら同様同じクラスで固まった方が連携が取りやすし、戦略も立てやすい。そこらへんで拾ったやつよりは戦えると思うぞ。」

 

「……前から思っていたがお前やっぱり腹黒いな。」

 

「うるさい。」

 

「でも、その案面白そうだ。乗った。」

 

私の立案に人使が乗って、二人で参戦することになった。しかし腹黒いは余計だ。

私はミッドナイトに試合前の能力の使用の許可を取る。こっちは二人、しかも普通科。ミッドナイトはしばらく考えた後、自身の騎馬を強化するためならと許可してくれた。私はフィールドの端っこで錬金する。出来上がったのは心操を肩車する際に安定させるための背もたれだった。

チーム分けも終了し、私は出来上がったそれをしょい込み、心操を乗せる。

 

「『血で血を洗う雄英の合戦が今!狼煙を上げる!!

START!!』」

 

「『機関始動(エンジン・オン)』」

 

― Vroooom! ―

 

いよいよ試合開始。体を強化した私はまず戦況を観察する。すると目の前に何騎かが立ちふさがる。

 

「お前は2位の奴!悪いけどB組の勝利のために犠牲になれ!」

 

「悪いがそうはいかないよ。心操!気張れよ!『剃』!」

 

私たちの周りに立ちふさがるA組やB組の猛攻を潜り抜ける。起動面ではA組にも引けを取らない私のスピードに誰一人反応できていない。そら私を見失っていると…。

 

「悪いが逆に取らせてもらうぜ。」

 

― Clap! ―

 

人使は自信の洗脳や私が教えたクラップスタナーで相手をかく乱し、その間に鉢巻を奪取する。襲ってきた相手をカウンターで倒していき、着実に順位を上げる。

 

 

 

― Swip! ―

 

そんなことをしていると、どこからともなく何かが伸びてくる。私は体を捻り、それを躱す。目を向けると、そこにはA組の障子、梅雨、峰田の騎馬がこちらに向かってきていた。

 

「三笠ちゃん、心操ちゃん。その2位のハチマキ、取らせてもらうわ。」

 

「梅雨ちゃん、なかなかにいやらしい騎馬だね。誰の発案?」

 

「ケロケロ、峰田ちゃんの発案よ。なかなか理にかなっていると思うわ。」

 

「騎手を覆い隠し、隙間から足止めと捕獲の二人が攻撃する。本当いやらしいぜ。」

 

「………それを言ったらお前たちの騎馬もなかなか個性的だな。だが、攻撃手段が乏しいんじゃないか?」

 

「本当にそう思うか!」

 

私は峰田のモギモギを避けながら、騎馬に近づく。騎手が覆われているならその殻を破ればいい。

 

「おいおいおい!あいつら猛スピードで来たぞ!閉じろ障子!」

 

「…っ!ああ!」

 

「息を合わせろ心操!『クラップ』!!」

 

「障子!こっちを見ろ!!」

 

― Clap!! ―

 

騎馬の目の前まで近づき、人使の掛け声の後に手を鳴らす。ノーモーションから繰り出されるクラップスタナーは障子の意識を刈り取る。

 

「っ!?…な!にを…。」

 

「………殻を開いて止まれ障子!」

 

クラップで意識が飛びかけた障子は人使の言葉に反応してしまう。これで障子は人使の支配下だ。彼は人使の言葉通りに覆っていた殻を開ける。

 

「なっ!?マジかよ!そんなのありか!!」

 

「ありさ…。っ!?」

 

「ケロ!三笠ちゃんが峰田ちゃんのモギモギに捕まったわ!今のうちに!」

 

殻を解いたのもつかの間、私は峰田のモギモギに足を取られてしまった。そのチャンスを逃さんばかりに、梅雨は舌を伸ばし、ハチマキを奪い取るが…。

 

「っ!?すり抜けたわ!?」

 

「どういうことだ!?」

 

「残念!それは幻覚だ!『クラップ』!!」

 

― Clap! ―

 

モギモギに引っかかったのは私が作り出した有幻覚の分身。梅雨と峰田はそれにまんまとかかり、攻撃する。私はその間に裏に回り、クラップスタナーで二人の意識を刈り取り、人使がハチマキを奪取する。

 

 

 

「人使、次はどっちに行く?」

 

「………1位だ。」

 

「オーケー!『(ソル)』!」

 

私は人使の要望を聞き、緑谷と轟の入り方へ駆け出す。上位争いは混迷を極め、一位は轟のチームになっていた。私は氷壁を飛び越え、一位の轟へ向かう。

 

「漁夫の利だ!緑谷!轟!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「『ここで普通科ペアの心操チームが氷の壁を超えて襲いかかってきた!!』」

 

「三笠君に心操君!?」

 

「上鳴!電撃だ!」

 

「駄目だ!三笠に電撃は逆効果だ!」

 

「くっ!」

 

「行くぞ!『デビルバットゴースト』!!」

 

「っ!?」

 

「『うおお!?三笠!まるで幽霊のように姿を消した!!』」

 

「『あれはアメリカンフットボールのとある走法の一つと聞いている。三笠は強くなるためならどんな技術だって吸収する。その成果があれだ。』」

 

「『Hard Worker!!なんてやつだ三笠 冬扇!!こいつは生粋の努力家だ!!』」

 

私は轟目掛け、猛スピードのまま突っ込む。轟は氷を飛ばして妨害するが、私は前世で見たアメフト漫画の技を繰り出す。一瞬、氷が私を貫通したように会場が錯覚するが、それはただの残像で、私は氷を躱し、肉薄する。

 

「取れ!心操!!!」

 

「おおおおおぉぉぉ!!!!!」

 

人使がハチマキを取ったのを確認した私はそのまま、月歩で逃げ去る。ハチマキのポイントを確認するとそこには1000万の数字が。

 

「『TIME UP!』」

 

「『混戦を極めた騎馬戦が終了した!そんじゃあ上位4チームを発表するぜ!

4位!土壇場で持ち直した緑谷チーム!

 

3位!その爆発力で点数を取り返した爆豪チーム!

 

2位!序盤はよかったが、終盤に点を取られちまった轟チーム!

 

そして1位は!ここにきて大どんでん返し!!ダークホース!普通科ペアの心操チームだ!!!』」

 

「「「「「うおおおおおおおおお!!!!!」」」」」

 

普通科の下克上に会場は一斉に湧き上がる。宣言通りヒーロー科のどでっ腹に風穴を開けて1位になった。

午前の競技はここまで。お昼を挟んで私たちは3回戦に上がる。久しぶりに出久と食事でもと思った私は出久を探す。

 

 

 

「クソ親父の個性なんざなくたって…いや、使わずに”一番になる”ことで奴を完全否定する。」

 

ふと入場口にいる出久と轟を見つける。何やら話し込んでいるようだったので、私は幻覚で姿を消し、そっと聞き耳を立てる。その内容は轟の過去の話だった。確かに彼の過去は重いだろう。だが言ってしまえば彼のそれは強者のわがままである。私にとって、信陽の境遇よりは悲観的ではない。そっちがその気ならこっちはその誓いを後悔させてやる。

 

 

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