夜明けを歩むノーマルヒーロー   作:双星シグ

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遅ればせながらあけましておめでとうございます。投稿が遅れてすいませんでした。
年始から鬱がひどくなったり、それに重なるように親族の訃報などで投稿できる状態ではありませんでした。重ねて申し上げます、投稿が遅れてすいませんでした。

話は変わりまして、今回からいくつかの変更点と報告がございます。
まず投稿日時ですが毎回金曜の0時に投稿していましたが、今度から日曜の0時に投稿させていただけます。休業していた時は良かったのですが流石に仕事がある平日に投稿は少しきついものがありましたので変更しました。

次に文章内の地の文を読みやすいように間隔をあけることにしました。私の作品の特徴として地の文が長くなることがありますが、結構な分量だと目が滑りなすので他の方を参考に間隔を開けることにしました。

それから報告としましては連載を体育祭編までを一区切りとし、一旦投稿をお休みにします。鬱がひどくなってからは執筆活動にも支障が出るほどで、書き溜めができておりません。なので一旦書き終わっている体育祭編までを投稿して、精神的にも作品的にも余裕を持った投稿にするために少しお休みいたします。楽しみにしていた方には申し訳ございませんがご理解の程をよろしくお願いいたします。



人に恵まれた者たち

私は結局昼休みは一人で過ごし、食事と休養を取った。轟のふざけた宣言を盗み聞いたせいで私の中に黒い感情が渦巻く。

 

他人の不幸を比較するわけではないが、彼のあれは流石に度が過ぎている。この大会で自分の夢を叶えるために必死になって努力している者たちへの侮辱になる。

 

そんな事考えていたらいつの間にか昼休みが終わろうとしていた。私は大慌てで弁当を片付け、午後の準備をする。

 

昼休みも終わり、ぞろぞろと生徒たちが会場に集ってくる。ふと思ったがこういう時は整列してきっちりと入場するのが普通なのではないのか。まばらにだらっと入ってくる生徒の姿はあまり見ていて気持ちよくない。

 

私が元海軍なのも相まってなのかそういうところは人一倍気になる。まぁ今言っても仕方ないので後日、校長にでも直談判でもするか。

 

 

 

「…何だあれ?」

 

ステージ上にまで足を運ぶと、そこにはA組女子全員がチアリーダー姿で整列していた。私は気になって八百万に話を聞く。

 

「八百万さん、どうしてそんな格好しているんだい?」

 

「…峰田さんと上鳴さんから相澤先生の伝言でこの格好で応援をしなければならないとおっしゃったので、態々私が服を創造して着替えたのですが…。」

 

「うん、相澤先生なら事前にそういうことは伝えるだろうし、チア服がない時点で気がつくべきだったね。…で、こいつらどうする?」

 

どうやら昼休みにチアリーダーを見た峰田と上鳴が女子にそういう格好させようと思いついたらしく、くだらないことを考えていた二人に呆れながら、私は興奮している二人にアイアンクローを決める。もちろん峰田のモギモギに触れないように手を横にしている。

 

「「いたたたたたたたた!!!」」

 

「馬鹿なこと考えてないで大会に集中しろ。」

 

「三笠君、もうちょっと続けてくれない?」

 

「了解。じゃあさっきより強めに行くぞ。」

 

「「いだだだだだだだだ!!!?」」

 

結果、A組女子からの総意で二人はミッドナイトが来るまでそのままアイアンクローを掛け続けられた。

 

ミッドナイトが到着し、この後の競技の説明を行うが、女子たちはチア服のまま説明を聞くことに。本人たちがいいならいいんだが。

 

話を戻して、最終種目はタイマン形式の格闘戦トーナメント。まずはじめに対戦カードを決めて、それからトーナメント出場者以外の生徒でレクリエーションを行う。この体育祭はプロのヒーローからのアピールも目的にしているので、皆が平等にアピールできるようにこのような救済処置を設けている。

 

そのレクリエーションが終了した後、最終種目のトーナメントが始める。しかし、ここで少し問題が。私と人使が一位で上がったため対戦人数が14名と中途半端な結果になってしまった。

 

そこで5位のチームの中から二名を選出することになったが、拳藤チームは順位ではなく、戦略結果から優れていた鉄哲チームから選出を提案し、ミッドナイトがそれを承認した。話し合いの結果、鉄哲と塩崎の二名が選出された。これによりトーナメントの組み合わせが決まる。

 

 

 

「私の初戦の相手は……彼か…。」

 

順位の結果はこうだ。

 

第1試合 出久 対 人使

 

第2試合  轟 対 瀬呂

 

第3試合 三笠 対 上鳴

 

第4試合 飯田 対 発目

 

第5試合 芦戸 対 塩崎

 

第6試合 鉄哲 対 切島

 

第7試合 常闇 対 八百万

 

第8試合 麗日 対 勝己

 

私は3試合目で上鳴とあたることになった。それにしても初戦から出久と人使というとてもおもしろい対戦カードになったなぁ。

 

私はまだ試合まで時間があるにも関わらず、興奮してウズウズしだす。オールマイトの力を継承した出久と私とともに鍛えた人使。鍛えた期間で言えば人使のほうが不利だが私は人使が劣っているとは思わない。出久は人使の能力を警戒するだろうが、あいつの武器はそれだけじゃない。私が教えた体術がある。必ずいい勝負になるだろう。

 

「始まってもいないのにもう臨戦態勢でいるのか、三笠。」

 

「いや、ただ一回戦目から面白くなりそうだなと思ってさ。」

 

「…緑谷 出久。たしかお前の幼馴染だったよな。あいつはどういうやつだ。」

 

「緑谷。あいつは本当にわからないやつだ。未だ能力の制御ができていないと思ったら、それ以外の方法で解決したり。かと思えば急に能力でこっちを圧倒する。気をつけろよ心操。あいつは土壇場でとんでもないことを仕出すぞ。」

 

「………お前がそこまで言うくらいだ。油断できないってことか。」

 

「あぁそうだ。心操、頑張れよ。」

 

私がモニター前で笑みを浮かべているとまたしても後ろから人使に声を掛けられる。いつものように嫌味を続けるかと思っていたがどうやら自分の対戦相手の出久のことが知りたかったらしい。

 

私は正直に出久の印象を伝える。私の評価に人使は真剣な表情を浮かべる。どうやら覚悟を決めたらしい。実践で戦ったと言っても人使は襲撃事件での一戦のみ、日々の訓練で戦闘を重ねているが本人は自分はヒーロー科より劣っている自覚があるようだ。

 

だがな人使、お前はあの襲撃事件を自分の力で切り抜けたんだ。お前の実力はヒーロー科にも劣っていないよ。私は人使に激励の言葉を告げて、自分の事に集中する。

 

タイマンの格闘戦。ならば本気でやらなければ失礼に当たるだろう。私は主審であるミッドナイトにとある提案をするため、足を運ぶ。

 

「ミッドナイト先生、質問があるのですがよろしいでしょうか?」

 

「もちろんいいわよ。何かしら?」

 

「最終種目でこのマスクを着用したいのですが、よろしいでしょうか?」

 

「マスク?基本的にサポート科以外ではそうゆう補助アイテムは事前に申請しなければ使えないわよ。」

 

「いえ、これはただの低酸素マスクです。これが証明書です。」

 

そう言って私が渡したのは俊英が作成した低酸素効果のみのいつものドクロマスクに似せたものと、その証明書を渡す。

 

私は確かに事前に申請していないが、事戦闘となれば本気でやるためには身につけたい。他の選手を見て思ったが、能力を補佐するものでなければ身につけても大丈夫らしい。麗日とかリストバンド付けていたしな。

 

「たしかにこのマスクは行動を優位にするものじゃないから使っても問題ないけど、あなたすでにチョークの申請しているじゃない。これはなんのためにつけるの?」

 

「それは私が本気で戦うためです。」

 

「…本気?」

 

「はい。恥ずかしい話、私はマスクを付けて深呼吸するのが戦う際のルーティーンの一つで、戦闘前はいつもそうしているのです。この種目は格闘戦ということで真剣勝負、本気で戦おうとしている他の選手に答えるために、私も本気で戦いたいんです。そのために申請しに来たのです。

 

「本気でね…。いいわ。あなたは能力がないっていうハンデを背負いながらもここまで来たのもね。戦闘に本気でぶつかって行きたいという気持ちはとても青春らしいので許可します!」

 

判断の基準がちょっとおかしかったが、これでマスクの使用は認められ、本気で戦える。私はミッドナイトにお礼をし、会場外の林の中でマスクを付けて、時間が来るまで座禅を組んで黙想する。

 

 

 

携帯のアラームが鳴る。私は意識を浮上させて、会場の観客席に向かう。会場にはセメントス特性リングが出来上がっていた。これから第1試合が始まる。

 

私はC組の空いている席に座り、試合開始を待つ。しばらくすると出久と人使が互いのゲートから出てくる。二人共いい具合に緊張している。

 

「『一回戦!第一種目一位!ヒーロー科、緑谷 出久!!

 

VERSUS!

 

第二種目一位!普通科、心操 人使!!種目一位同士の対決だ!!』」

 

「『ルールを紹介するぜ!相手を場外に落とすか行動不能にする。または相手を降伏させても勝利になる!

怪我上等のガチンコ勝負!

ただし命に関わるような行為はアウトだ!いいか!ヒーローはヴィランを捕まえるために拳を振るう!その心忘れるなよ!!

それではレディ…START!!』」

 

「緑谷出久。お前、三笠の幼馴染だってな。三笠から聞いたよ、お前少し前まで個性が出なかったんだて?能力が出てすぐに試験を受けて合格なんて恵まれているよな。今どんな気持ちだ?無個性の三笠を差し置いて、ヒーローにお誂え向きの個性が出て!ひたむきに頑張っていた三笠をあざ笑うように強力な個性を持った気分は!!嬉しいよな!自分だけヒーローを夢見れる力を持てて!!なぁ答えろよ!チート野郎!!!」

 

「そんなわけないじゃないか!!!!」

 

「『おいおいどうした!?緑谷、開始早々完全停止!!!』」

 

人使の罠に出久はまんまと引っかかり、体が硬直する。これで何もなければそのまま人使の勝利が決まる。

 

それにしても私を引き合いに出すとは…。正義感の強い出久のことだ。絶対に反論する。ほんと、人の嫌なとこを突くのがうまいな。

 

人使はそのまま出久に場外へ出るように指示する。洗脳された出久はそのまま反対を向き、場外へ歩き進める。

 

まぁたしかに、これからの戦闘を考えるとそこまで苦労をかけないで勝利するのは合理的だ。あくまでうまく行けばの話だが。

 

 

 

― BOOOM!! ―

 

「『緑谷とどまった!!!』」

 

あわやあと一歩で場外に出ようとした瞬間、出久は指二本と引き換えに洗脳を解いた。無茶苦茶な力技だがこれでもう出久は洗脳にかからない。

 

やっぱり土壇場で状況をひっくり返す力を持っているよ出久は。さて人使、得意の洗脳は封じられた。このままでは出久のゴリ押しで決まってしまうぞ。ここからどうする。

 

 

 

 

 

俺は今、三笠の言っていた言葉の意味を理解した。確かにこいつはとんでもない奴だ!どうやったかはわからないが、体の自由が効かないはずなのに強引に洗脳を解いた。やつの左手の指を見ると、赤黒く変色していた。おそらく、全力で能力を使ったのだろう。あの様子じゃもう洗脳は効かない。ならばここから戦うしかない!

 

奴はそのまま無言でこっちに突っ込んでくる。完全に能力の対策を取られたな…。だが俺の武器は”洗脳”だけではない。

 

「本当に羨ましいな!指を振るだけでそんな力がだせるのか!」

 

演技しろ!

 

「俺はこんな個性しかないからみんなよりも出遅れているんだ!!」

 

自分の能力を破られてもう一度ハメるために捲し立てているふりをしろ!

 

「俺はお前みたいに恵まれていないんだよ!!!」

 

騙せ!もう一つのナイフの存在を悟らせるな!

 

「なんか言えよ!!」

 

来た!

 

― Clap! ―

 

 

 

緑谷は俺の言葉に耳を傾けずにただひたすらに突っ込んでくる。そうして目の前まで近づいたところで俺はノーモーションでクラップスタナーを放つ。

 

クラップの瞬間、緑谷だけではなく、会場までもが静まり返る。隙は作った。次は強烈な一撃を叩き込む!

 

「『双銃拳』!!!」

 

― BOOM!! ―

 

固まった緑谷の胸部目掛けて両拳を叩き込む。怒涛の攻撃に緑谷はなすすべもなく技を食らい、そのまま後ろへ倒れる。頼む!そのまま倒れてくれ!

 

 

 

「『………立った。緑谷 出久!あの強力な一撃を食らって立ち上がった!!!』」

 

「くそっ!」

 

俺はフラフラになりながらも立ち上がる緑谷を見て駆け出し、緑谷を殴り続ける。

 

「倒れろ!!!」

 

「…っ!うおおおぉぉぉぉぉ!!!!」

 

何発も拳で殴るが、緑谷は一向にひるまない。こいつの目はまだ死んでいない!ムキになった俺はつい大ぶりの拳を繰り出すと、緑谷はその腕を取り、俺をそのまま背負い投げる。

 

「心操くん場外!!緑谷くん第二回戦進出!!!」

 

白む視界の中で俺の耳に届いた宣言はひどく残酷なものだった。

 

 

 

 

 

試合内容を精査すれば、出久が洗脳にかかった時点で人使の勝ちだったはずだ。しかし出久は今回も土壇場で無理やり洗脳を解き、人使に向かっていった。

 

これだけでも奇跡なのだが、人使はもう一つの武器、クラップスタナーからの双銃拳の畳み掛けで出久に強烈な一撃を入れるも、出久は気合で立ち上がった。2つの武器を破られた人使は無作為に出久へ突っ込む。しかしそれは計算されたものではない。すぐにボロを出し、出久に隙を与えた。

 

そして止めの背負い投げ。誰かに習ったか、はたまた雄英の資料を呼んで習得したのか、あの状況から無理やり自分の型にはめた。勝敗を分けたのは純粋な運だった。こればかりは実際に戦わないとわからない要素だ。

 

しかし実戦なら出久が洗脳された時点で人使の勝利だった。実戦なら洗脳した後拘束すればいい。たしかに人使の能力は戦闘向きだはないが、周りに被害を出さずにヴィランを拘束できるという点ではヒーローとしては優秀だ。

 

しかし今回はルールがある戦いだ。ふたりともそれにしたがって戦い、出久が勝利し、人使が敗北した。

 

浮かない顔でゲートへ戻る人使にC組の皆から励ましの声が掛ける。その様子を見て思うところがあったのか、人使は再び前を向いた。これなら私からは何も言わなくても大丈夫だろう。私はひとりそう思っていると人使から声を掛けられた。

 

「三笠!俺はここで終わった!!だけど!お前は必ず優勝しろよ!!」

 

人使はそう言って私に向かって拳を突き出す。私はそれに答えるように同じように拳を突き出し、返事をする。

 

「ああ、必ず取ってくる。」

 

 

 

人使はこの後、念の為に怪我の具合を見てもらったが、何も異常もなかったため、私の隣で第2試合を観戦することになった。

 

第2試合は肘からセロテープを出す能力の瀬呂と氷と炎、2つの能力を持つ轟の対戦だ。単純に考えれば幼い頃から能力の訓練によって周りより頭ひとつ抜けている轟のほうが有利だ。しかし轟は氷しか使わない。ならテープが燃やされて届かない可能性はゼロだ。

 

「…ん?轟の顔…。」

 

向かい合う二人。瀬呂は勝てないながらもなんとかしようとする気概を見せるが対する轟の表情は怒りを孕んでいた。試合前に何かあったのかと思うもつかの間、試合が始まる。

 

「『優秀!優秀なのに拭いきれぬその地味さは何だ!ヒーロー科、瀬呂 範太!!

 

VERSUS!

 

3位、2位と上位をキープし続ける実力派!同じくヒーロー科、轟 焦凍!!

START!!』」

 

開始早々、瀬呂は棒立ちの轟に向けてテープを巻き付かせ、そのまま場外へ投げ飛ばす。このまま行けば早期決着で幕を閉じるが…。

 

「悪ぃな」

 

 

 

確かに早期決着になった。轟の勝利という形で。轟は一瞬にして会場の屋根を越えるほどの氷壁を作り出し、瀬呂を凍りつかせた。体の半分以上が氷の埋まった瀬呂は身動きが取れず、そのまま行動不能となる。

 

会場からは圧倒的な実力差を見せられ、瀬呂へのどんまいコールが響き渡る。確かに彼は惜しかったがそのコールは彼を余計傷つけるだけではないか。会場の空気に呆れながらも私は轟を見る。表情に浮かんでいた怒りは消え去り、炎を使っているせいなのか、その顔はどこか悲しげだった。

 

確かに彼の全力の氷塊は会場の天井を越え、私の鼻先ギリギリまで伸びるほどの実力だったが、これはまだ全力ではない。炎を使うことを嫌悪している。それは彼の弱さでもあった。

 

ならば私はそこを突く。彼の言い出したことだ、自分の心の弱さを実感するがいい。未だ鳴り止まぬコールの中、私は静かにそう決意した。

 

 

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