夜明けを歩むノーマルヒーロー   作:双星シグ

22 / 25
正直言ってこのキャラにここまでフォーカスが当たると思ってはいませんでした。これがキャラが勝手に動くというものなのでしょうか?


スパーリングキリングボーイ

俺は昔から頭は良くなかったが、それでも自分の個性には自信があった。この個性ならどこまでも通用するっと思っていた。だって皆が良い個性だと褒めてくれたから。嬉しくて調子に乗った俺は自分の個性にあぐらをかいていた。

 

実際に雄英の試験では何体ものロボットを倒して、ヒーロー科に入った。これからの学校生活でもトップまでは行かなくてもそこそこの成績で行けると思っていた。でも…

 

「16位かよ…。」

 

俺は自分の置かれた現状を気付かされた。入学初日に行われた個性を使った体力テスト。そこで俺はビリに近い順位を取った。ここでようやく俺は気づいた。俺の個性の使い方は”ただ放電する”ものだと。

 

飯田や障子のような体の機能を特化させる個性の奴らなまだしも切島や口田のような運動に特化していない個性や俺と同じような個性の爆豪や轟は自分のできることをしっかりと理解し、使いこなしてた。俺はそんな奴らの努力を才能と言った。

 

でも実際は違う。彼らに才能があるのではなく、俺が努力をしていなかったのだ。確かに雄英に入るためにできることはしたが、そんなのは皆している。俺は自分がなにかできるのかわからなかった。

 

そんな現実に蓋をして、俺は学校生活を居送っていたある日、事件が起こった。信じられないことに学校にヴィランが侵入してきた。初めて見る本物の敵に、俺は心の奥底で恐怖していた。

 

でも俺はヒーロー科に入った。なら立ち向かわなければならない。黒い霧に包まれ、はれたらそこには大量のヴィランと八百万と耳郎の女子二人に無個性のあいつ。瞬時に察した。先駆けは俺だと。苦戦しながらもこの数日間で学んだ技でヴィランと戦い、数を減らすも、敵はまだ多い。

 

「『錬金』」

 

今でも覚えている。そいつが一人で全てのヴィランを倒した光景を。地面から何本もの石の腕が生え、ヴィランをぶっ飛ばす。こんな技は俺はもちろん、八百万や耳郎にはできない。

 

なら誰がやった?答えは残った一人。うずくまり、何かをしていた無個性。あいつがやった。そうわかった時、俺は驚いた。無個性でも戦えるやつはいるんだなと。

 

でもあいつの実力はそれだけではなかった。全てをヴィランを倒し終えたと思っていたら、地面から俺と同じような個性のヴィランが現れ、あいつを人質に取った。俺たちはなんとかしようとするもそのヴィランはさっきとは違って目敏かった。

 

緊張が走る中、あいつはいきなりヴィランを挑発しだした。そんな自殺行為を仕出したあいつに俺たちは驚いて大慌てで止めるも、あいつの体に電撃が走った。ボロボロになったその姿に俺は死んだと思った。

 

人質を失ったヴィランは俺たちに向かってくるが、死を目の前で目撃した俺達は恐怖で足が震え、それをヴィランに見抜かれる。3対1の状況で勝てるヴィジョンが見えない。実際に防戦一方になる俺たち。何か打開策はないかと思ったそんな時。

 

「お前、残心って言葉知らないのか。」

 

俺たちをもう一度助けたのは、電気を纏い、ヴィランを地面に沈めたあいつだった。あいつはヴィランの攻撃を自分の力にして倒した。あいつは電気も扱えるのかよ!?無意識に下だと思っていたやつは自分と同じ位の強さだった。その後も俺たち三人を担いでものすごいスピードで駆け抜け、終いには空まで走った。とてもただの無個性なんて思えない。

 

空を駆け抜けて、広場に着くと、そこには相澤先生がボロボロの姿でヴィランに押さえられていた。あいつは押さえていたヴィランを蹴っ飛ばすと俺に力をくれと言ってきた。正直言ってさっき戦ったヴィランよりも対峙している三人のヴィランのほうが何倍も怖い。俺はすぐにでも逃げ出したかったが、あいつはヴィランと戦うため、俺の力をもらい、立ち向かっていった。

 

…お前はどうしてそんなことができるんだ。お前は怖くないのか。そんなことばかりが頭に募る。

 

しばらくの格闘の末、あいつの圧勝で幕を閉じた。あいつはものすごい速さで攻撃するヴィランの拳を、全て捌き、カウンターを決め、相手を追い詰めていった。電気を使った攻撃は俺よりもうまくて、的確に相手の急所を突いていく。

 

「『ノッキング』!!」

 

そしてあいつは自分の体をスタンガンに見立て、ヴィランを沈めた。そんな光景にヴィランだけではなく、俺たちまでもが驚いた。これで勝利。俺と互角?冗談じゃないあれは完全に格上だ!!

そう思うも束の間、ヴィランの増援が来て、再び巨体のヴィランが立ち上がった。集まった皆で攻撃するも、ヴィランは全くのノーダメージで俺たちは圧倒されていった。

 

「(あいつはこんなやつを1人で相手にして勝ったのか!?)」

 

あと一歩届かず、徐々に追い詰められていると、再びそいつから力を貸してほしいと頼まれた。俺はボロボロのそいつに無茶だと言ったが、そいつは俺の目を見て真剣に頼み込んだ。今のままでは負ける。そう思った俺はそいつに電気を分けた。そして…。

 

「『第三戦速 ヒュンケ・ファウスト』!!!!!」

 

あいつはついにヴィランを完全に倒した。ものすごい風を巻き起こしながら放った拳はヴィランを彼方までふっ飛ばした。本当に、本当にあいつはすごいやつだと思った。それと同時にどこか少し俺よりも俺の力を使いこなすあいつに嫉妬した。

 

事件後、皆でそいつに助けたお礼をしようとお見舞いに向かい、にこやかに自己紹介をしていく中、俺は自分の嫉妬を隠しながらそいつと握手をした。

 

それから俺はなんとなくこのままではいけないと思い、力の使い方を改めた。最初はそいつと同じように全身に纏ったがこれがものすごい激痛だった。生まれてはじめての”感電”に俺は意識を失った。それからも次々にいろんな使い方をしていくが感じるのはそいつとの圧倒的なまでの距離。ここで初めてわかった。そいつは無個性ながらも覚悟を決めて、強くなった。俺みたく、ただ自分の能力を過信するのではなく。いろんな使い方を試して、それを使いこなす。とんでもないやつだった。

 

 

 

「『普通科規格外の怪物!無個性ながらも実力は未知数!三笠 冬扇!!

 

対!スパーリングキリングボーイ!上鳴 電気!!

』」

 

そしてあいつは今、目の前にいる!

 

正直に言えば勝てるヴィジョンは全く見えない。あいつはあのマスクを付けて本気で望んでいる。考えなしに電気をぶっ放しても、吸収して終わりだ。俺にできることは個性を無作為に撃たない格闘戦だ!

 

「最初から本気で行く!『機関始動(エンジン・オン)』!」

 

― Vroooom! ―

 

「俺だって!」

 

あいつは体に線を走らせ、こちらに向かって掛けてくる。速い!クラスの連中と比べても格段に速い!だけど俺だって!

 

俺は体に電気を纏って、速度を上げる。まだ長い時間は維持できないが、一瞬一瞬で流せば体への負担は少ない。

 

「『Hey!2試合目は高速と高速による超乱打戦だ!!』」

 

「『三笠はこれまでの試合で遺憾なくその速度を発揮していたが、上鳴の奴、自分の力の新しい使い方を学んだか。』」

 

あいつと拳をぶつけ合う乱打戦。拳を振り抜く瞬間、攻撃を見極めて防御する瞬間、その都度に電気を纏い、反応速度を上げる。

 

だけど、そうまでして速度を上げてもあいつに攻撃が当たらないし、俺の隙を突かれて攻撃を入れられる。時間をかければ掛けるほど俺のほうが傷つく。くそ、このままじゃジリ貧だ!

 

「『神速』!!」

 

「っ!?」

 

俺は瞬間的に流していた電気を常時纏うことで超高速の領域に入る。その速度は瞬間的にあいつの速度を上回り、周りの風景が止まったように見える。

 

俺は一瞬で近づき、痛む体を無視して、数十発の拳をあいつの体に叩き込む。最後の一発を入れてあいつをふっ飛ばした瞬間、俺はたまらず膝を付き、電気を解除する。

 

「『っ!?なんだなんだ!!今の上鳴の攻撃、全く見えなかったぞ!!』」

 

「『あいつ、速度を上げたか。だがその分体への負担が掛かるようだな。』」

 

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…どうだ!」

 

 

 

「すごいな…もしかして私よりも速いんじゃないか?」

 

「『なっ!?三笠、上鳴の攻撃にまったくこたえてなーい!!』」

 

「『咄嗟に腕を十字に組み、顔や腹などの急所への攻撃を防いだ。咄嗟にしては出来すぎだ。』」

 

あいつは平然と立っていた。腕を十字に組み、俺の攻撃をすべて受けきった。嘘だろ!あんなに食らってちっとも応えていないのかよ!

 

これも効かないんじゃもうあれしかない!この技はまだ安定しない未完成の必殺技だが、この二週間ではなんとか形までにはした。俺はもう一度電気を纏う。今度はさっきよりも多く、最大値まで!そしてその殆どを右手に!

 

「うおおおぉぉぉぉ!!!」

 

全身から激痛が絶え間なく走る。特に電気を集中させている右手は感覚がないほどで、薄れゆく意識の中でもあいつの姿を捕らえる。足に力を溜める。限界まで溜めて一気に走り抜ける。

 

― BOOM!! ―

 

地面を蹴った瞬間、コンクリートが割れる。さっきよりも速い速度で走り抜け、あいつ目掛けて右拳を振り抜く。

 

「『パイルバンカー』!!!!」

 

― BOOOOOOOM!!! ―

 

「『Wow!?上鳴!その名の通りに一筋の雷となって三笠に攻撃を浴びせる!!!』」

 

 

拳が当たった瞬間、ありったけの電気を一点に流す。それは昔見たなにかのアニメの武器のようにただ一点を破壊する。頼む!これで倒れてくれ!

 

 

 

「良い技だが、当たらなければ意味がない。」

 

「っ!?なぜだ!!」

 

「君は顔や腹などの部分への攻撃に集中していた。なら、予めそこに手をやれば見えなくても受け止められる。」

 

拳が当たったのは奴の体ではなく、右掌だった。奴はたった一本で俺の全力を受け止めた。

 

「お返しにこっちも必殺技で返そう。」

 

電気を全部使ったことで頭の働きが極端に悪くなる。だめだ、考えがまとまらない。あいつは俺からもらった電気を纏って、空へ飛ぶ。そしてそのまま体を横にして回転し、右脚を天高く上げると、そのまま脚を振り下ろす。

 

「『第二戦速 雷神脚』!!!」

 

最後に見た光景は俺に向かって落ちてくる雷の光だった。

 

 

 

「はっ!?…ここは?」

 

「おや、目が覚めたかい?ここは保健室だよ。」

 

「保健室…ってことは…。」

 

「残念ながら君は負けたよ。」

 

「そう…ですか…。」

 

「治療は済んだよ。もう戻ってもいいよ。」

 

「…ありがとうございます。」

 

目が覚めた俺は、敗北を実感し、保健室を後にする。

 

負けた。やっぱりあいつは俺よりたかいところにいる!握り込む右手を見つめながら俺は席に戻る。でも心はいつまでも晴れないまま、沈み込んでいる。階段を上がり席に向かうと、声を掛けられる。

 

「上鳴!!あんたいつの間にあんな技作ったん!?」

 

「耳郎?あぁあれか。いや、三笠を見てな。あいつ俺よりも電気の扱いが上手いんだなって思って。それで自分でもなにかできねぇかいろいろ考えて、結局、ほとんど三笠のパクリだけどな。」

 

「…あんた…えい。」

 

― ドックン ―

 

「あああああああああ!!!???」

 

「なにすんだよ耳郎!?」

 

「あんたは馬鹿なんだから明るくしてればいいの。そんなしょぼくれるなよ。」

 

「…へへそうだな。ありがと、耳郎。」

 

「…別に。ってあんた攻撃されてお礼言うなんて、ドM?」

 

「ちっげーよ!なんでそうなるんだよ!?」

 

「ふふ、そうしている方があんたらしいよ。ほら次の試合始まるよさっさと座りな。」

 

「たく…誰のせいでこんなことになったか。………ありがとよ」

 

「ん?なんか言った?」

 

「いや、何も言ってねぇよ。」

 

なんでだろうな、こいつの笑っている顔見てるとさっきまで沈んでいた気持ちも晴れるんだよなぁ。

 

 

 

 

 

「上鳴くん行動不能!三笠君第二回戦進出!!」

 

歓声に沸く会場、ミッドナイトが告げたのは私の勝利だった。

 

しかしまあ、彼は襲撃事件からわずかの期間の間でとてつもなく成長していたな。はじめは能力の使い道すら一つしかなかったなに、この試合でいくつもの使い道を編み出した。特に最後の攻撃は並のヴィランなら一撃で倒せるほどの威力だった。

 

まったく、受け止めた右手は使い物にならないから脚で攻撃したがもしモロに食らっていたら場外へ飛ばされていたかもな。さて、リカバリーガールのところに行って診てもらうかな。

 

 

 

リカバリーガールに右手を直してもらい。席に戻ると、人使が座っていた。私は彼に声を掛けて隣に座る。

 

「心操、隣いい?」

 

「あ?あぁ三笠か。いいぞ。」

 

「どうも。」

 

「お前、さっきの試合本気でやってないだろ。お前くらいならあの電気野郎が技を打った瞬間、カウンターで沈められるはずだからな。いい加減その師匠気質どうにかしろよ。」

 

「手厳しいな。確かに上鳴くんとの試合は彼の成長が楽しみだったのもあるけど、決して手を抜いてはいないよ。真剣にやったからこそカウンターが打てなかったんだ。彼、強くなるよ。」

 

「…ふん。」

 

しばらく人使と談笑していると、次の試合が始まった。確か対戦カードは…。

 

「A組とサポート科か…。」

 

「どうなると思う?」

 

「…サポート科が真面目に戦う可能性はないね。十中八九、宣伝でもするんじゃない?」

 

ステージに視線を向けると、なんとヒーロー科の飯田がサポートアイテムを付けていた。そのことについてステージで揉めている。

 

「スポーツマンシップ。ねぇ。」

 

「ふっ。ねぇわそんなもん。どう見ても宣伝目的じゃねぇか。」

 

そして試合が始まると予想通り。彼女はスピーカーをジャックして自分の作品の宣伝をし始めた。それに翻弄される飯田。この試合?は完全に彼女の独壇場だった。

 

結局、彼女は10分間もデモンストレーションを行い。最終的には自分から場外へ出た。彼女の顔はとても満足げだった。

 

「結局彼女の独壇場だったな。」

 

「ここまで来ると飯田のやつ、不憫だな。」

 

「まぁこれで私の次の対戦相手が決まったが、またしてもスピード対決になりそうだな。」

 

「今度もしっかりやれよ。」

 

「わかってるよ。」

 

最終種目はまだ始まったばかり、これからの試合は混戦を極めるだろう。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。