「こちらデルタ03、敵の防衛線に穴を開けた!」
「よしイージス、行ってこい!ここは俺たちA.T社に任せろ」
「済まないな」
「何、俺たちは以前剣部隊に世話になったからな。これで貸し借り無しだ」
S-10地区鉄血総司令部付近
「…あれは代理人か」
「もう機能を停止してますね…」
「だな…あれは」
代理人の残骸の隣にもう1人の人形がいた。
「89式…おい、大丈夫か!」
「イージス…久しぶりですね」
89式のコアの近くにはレーザーソードが突き刺さっていた。
「AR15、あの二人の関係は?」
M4がAR15に尋ねる
「89式は彼の相棒よ…」
「そう…」
「89式、待ってろ!今すぐ応急処置を…」
「私のことは良いので…早くエリザを…彼女を…今止めないと」
「…指揮官、気持ちは分かりますが彼女の言う通りです。今はエリザの破壊を優先しましょう」
ROが言う。…その通りだな。
「分かった。89式、待ってろ。さっさとエリザを倒してお前を助けるからな」
「…待ってます」
こうして俺たちは鉄血総司令部に向かった。
「あれが総司令部か…よし、グングニル。あの建物を全壊させてやれ」
室内戦では退路が無くなるからな。野戦に持ち込ませてもらうぜ、エリザ。
「了解、戦略レーザー発射!」
グングニルが戦略レーザーが発射し、総司令部の建物は跡形もなく消えた。これでグングニルのエネルギーは使い切った。
「グングニルは撤退せよ」
「…了解。一足先に戻ります」
しかし、エリザの姿が見えない…ステルス迷彩でも付けているのかな
「こちらM14、狙撃ポイントに到着しましたが…敵影が見えません」
人形でも見えないか…
「逃げたんじゃない?」
グリズリーが言う。なるほどその可能性もあるが
「…エリザは必ずここにいる」
「お前もそう思うか、Dominator。俺もそう思う」
…見つけたぞエリザ
「お前は…そこに居るんだろ!」
そう言って俺はとある場所に4連装ロケットランチャー[Mars]の全弾を撃ち込む。すると…
「流石だね、グリフィンの英雄」
エリザが姿を見た。
「悪いが俺は英雄でもないし、英雄だと思ったこともない」
「ここまで来れた時点で君には英雄を名乗る資格がある」
「そいつは光栄なことだ」
エリザは無傷か…奴の武装は見たところ大量の小型ミサイルを積んでいるミサイルポッドが見える…ふむ、遠距離戦は無しだな。近接戦あるのみだ。そう考えらると
「全人形へ、後方支援に徹しろ。具体的に言うと奴のミサイルの射程圏外で狙撃してくれ。奴のミサイルの予測射程は戦術マップに反映してある」
「それは指揮官を見捨てろってこと?」
「私も指揮官の役に…」
「私も元から狙撃…」
「僕もだね」
「文句はあとで聞くからさっさと下がれ!死ぬぞ!」
「「了解」」
「逃すと思う?」
エリザは30発ほどのミサイルを後退中の人形に向かって発射する。
「ミサイル如き俺が叩き落とす」
俺は89式改でミサイルを迎撃する。
「どうしたエリザ、この程度か」
「…隙が出来てるよ」
エリザが急速に接近してきた。
「危なっ!」
エリザが片手剣を取り出し、俺に対して切りかかる。
俺は89式改を盾にしてそれを回避。
「遠距離武器はあとベレッタだけですが…大丈夫ですか」
「…ベレッタだけじゃないぜ。全人形隊、撃ち方始め!」
ていうかなんで俺の武装を完璧に把握してるんだよと心の中で突っ込むがまぁいいだろう。
後方に下がった人形達が一斉に射撃を開始する。
流石人形、命中率はそこそこだが…エリザの装甲は頭がおかしいくらい高いのでほとんどの弾は貫通していない。貫通していても余り効果の無いところだ。
「お返しだ!」
弾を回避中のエリザにベレッタで牽制射撃をしつつ接近し、無防備なエリザの身体にシリウスを叩きつけるが
「…あまい!」
エリザも片手剣で俺のシリウスを受け止める。
「なぁシリウス、この剣は同化出来ないか?」
(この剣は私と同じ匂いがします…無理です。地球上のもの全てを同化する方がマシな気がします)
「地球上…それだ」
(いや、マシだと言っただけで…)
「俺の全てを使って…俺の仲間を救ってくれないか?」
(…それは貴方の願いか?)
「あぁ…何も持って無い俺の…たった一つの願いだ」
(…貴方がどうなっても知りませんよ)
「構わん、仲間が救われるなら」
俺はエリザとの距離をとる。
「何か策でも思いついたのかな?ま、私に小細工なんて通じないけど」
「そうだな、エリザ。お前は小細工程度じゃ殺しきれない」
イージスはシリウスを天に向けて持ち上げた。
「だが…これならどうだ!」
その時、シリウスの刀身が青白く発光していたのがエメラルドグリーンに変わった。
「ちょっとイージス、何をする気!」
「最後くらい…派手にやっても良いだろ?AR15」
そして地球上全てを緑色の結晶が覆った。
「まさか…おい、止めろ!」
「もう遅いぜ、エリザ」
エリザとのイージスも結晶に覆われた。
S-10地区第3防衛線
「こちら衛生兵、怪我人が謎の結晶に覆われた!」
「こちらの怪我人もだ…結晶が砕けたぞ!」
怪我をした兵士達の結晶が割れた時、もう怪我人は居なかった。
「全兵士の怪我が治った…なんたる奇跡だ」
「神は我々を見捨てなかった…」
「おい、鉄血兵も結晶に覆われてるぞ!」
「おい、神さまは平等とは言うが」
しかし、鉄血兵を覆っていた結晶が砕けた時、そこに鉄血兵の姿はなかった。
「鉄血が…消えた?」
「我々が勝ったのか…」
S-11地区難民収容施設
「…綺麗」
「そうね、千代紙
先程、イージス達が救出した民間人の親子は地上を覆っている結晶を眺めていた。
「イージス…」
「イージス?」
「私達を救助してくれた人、私もあの人みたいに…誰かを救える人になりたい。」
「…君にはまだ早いかな。どこのPMCも高校生からしか取らないからな。あと5年くらい経てば折紙でもきっと彼のみたいになれるぞ」
両親は少し悲しい顔をしていた。
G&K 本部
「クルーガーさん!」
「どうしたんだそんなに慌てて」
「今、地球上を覆っている結晶ですが…」
「…あの結晶が世界中の崩壊液を吸収したと?」
「こちらを見てください」
「…世界中の地面、大気、海、水中、地下から崩壊液の反応が消えてるな。あの結晶は誰が…」
「人形たちの報告によると…イージスと呼ばれる指揮官だそうです」
「やはり彼か…」
S-10地区鉄血総司令部前
「傷が…治ってる」
89式が目覚めたら辺り一面が結晶で覆われていて自分の傷が治っていた。
「イージスを助けに行かないと…」
S-10地区鉄血総司令部
S-11地区の戦闘部隊はかつてイージスがいた場所にいた。しかし、そこには人1人くらいのサイズの結晶が2つあるだけだった。
「イージス、貴方が…貴方が犠牲になったら…いくらエリザを倒したところで」
「落ち着いてAR15、彼は返ってくる。絶対に」
「9A91…ありがとう」
その時、一つの結晶が砕け散った。
「エリザ…貴方まだ」
エリザの両手は無くなっていた。おそらく同化されたのだろう。
「こんなところで…人間ごときに…この私が…負ける訳には!」
エリザはミサイルを乱射し始めた。
「…ここは」
俺は…よく分からない、暗い空間で目が覚めた。
「イージス、聞いて」
誰かの声が聞こえる…この声は確か
「なんだシリウス、もう死んだ俺に何か用か?」
「貴方はまだ死んだ訳じゃない」
「へぇ…」
「貴方には2つの選択肢がある
1つは私に完全に同化されて地球の抑止力の一員になるか…もう1つは…
まだ歩み続けるか」
「抑止力の一員ねぇ、良い響きだ…だが、俺は仲間を見捨てるわけにはいかない。俺はまだ…まだここにいるぞ!」
「それには1つだけ条件がある…それはこの鉄血との戦争が終わったあとに隣界からやってくる異生物…精霊との対話及び保護を行うこと。それが約束出来るなら…貴方を祝福する」
「精霊との対話ね…よく分からんが良いだろう」
「おめでとう、貴方はこの世界に祝福された」
「イージス、あいつさえ居なければ貴方達を倒すなんて簡単だよハハハ」
S-11地区の戦闘部隊はエリザが放っている大量の小型ミサイルによって追い詰められていた。
「クッ、私達は両手の無い人形にすら勝てないのか」
その時、エリザの後ろの結晶が割れて中から少年が出てきた。
「イージスが居なければ?残念、俺はまだここにいるぞ!」
イージスはエリザのコアに向かってシリウスを突き刺した。
「そんな…私が…人間に…」
「地獄に落ちろ、エリザ」
俺は破壊されたエリザの中からコアを取り出しそのコアにはめられていた紫色の結晶を手に取りDominatorに手渡した。
「これが欲しかったんだろう、全鉄血人形を統治する権利が」
「その通りだよ。ありがとう」
Dominatorは紫色の結晶を受け取ると自分のコアを取り出し、そのコアのくぼみに結晶をはめた。
「…イージス、亡命を受け入れた恩は忘れないよ」
「人類との和解は頼んだぞ」
「任せて」
そう言うとDominatorとその配下の強襲・強化型イェーガーは去っていった。
「…ところで君達はなんで固まってるのさ?」
俺はさっきから固まっているS-11地区の全人形に尋ねた。
「「だって…ねぇ」」
「ん?わけわからん」
「イージス、無事ですか?」
「おー、89式。俺は無事だぞ」
「…その姿は…一体」
「お前も固まるのか」
「こちらアルファ、これより君達を回収する」
「よろしくー、アルファ」
「…お前、イージスだよな」
「そうだよ?」
「声高くない?」
「…そう?」
「まぁいい、着陸する」
「お疲れ、イージス…ってその姿は」
「なんでペルシカさんまで固まるのさ」
「…とりあえず16LABで身体検査を意地でも受けてもらう」
「えー、大規模作戦のあとくらい…休ませてよ」
「「検査を受けてください!」」
「…まぁそこまで言うなら行くけどさ。お前らは無人ヘリで先に帰ってな」
「いえ、私達も行かせていただきます」
「だってー、私達だけ休むって言うのもねぇ」
「なら良いけど…アルファ、16LABまで頼む」
「了解した。にしても、お前の声が異様に高いのに納得した」
「もう何なの…」
16LABにて
「…これは」
今俺は16LABの鏡で自分の姿を見て冷静さをかこうとしている。
「なんじゃこりゃー!!」
「私達が驚いていた理由が分かりましたか?」
ROが言う。
「でもこの姿のイージスは可愛い気も…」
89式が言う。
「驚いた意味は分かったけどさぁ…可愛いってなんだよ」
自分の姿はなんと小学生くらいになっていた。
「安心してください。その姿で不便な事があれば私が」
「ちょっと待って9A91、部屋には絶対に入れないからな」
「そんな…私の計画がぁ…」
「おい、シリウス。なんでこんな事に…確かに俺は精霊とやらと対話するのは約束したが…」
(必要な事です…貴方は彼の代わりにならなければならない)
「…彼?」
(こことは違う世界…平行世界で精霊との対話に成功した…五河士道という少年の代わりに貴方はならなければならないのです)
「はぁ、よく分からんが…まぁこの身体で不便なことなんて身長くらいだから良いかな」
(まぁその他の能力の代償だと思えば安いもんでしょう)
「そこは認める。同化を無効化する体質に、精霊の霊力を封印する能力とやらか…」
(貴方を食べられないのは残念ですが…精霊との対話のための致し方ない犠牲だと)
「誰がお前に食べられるかっての」
「イージス、ちょっと良いかな」
「何ですか、ペルシカさん?」
「君の身体の検査結果が出た」
「それで結果は?」
「率直言わせてもらうと…君はもはや人間の域を超えている。君の身体の一部がシリウスに使われている金属と同じ性質に変わっている」
「…それによって私の体はどうなるのですか?」
「君自身に同化耐性が付与された」
「それはコイツから聞きました」
「…喋る剣…か。そんな風に設計した覚えは無いはずなんだがね」
(私は剣としての役割としては果たしてるはずです。そもそも、貴方達が未知の金属と呼んでるものは人類に対して抑止力が異生物との対話のために与えたものです。貴方達が扱えるものでは無い)
「抑止力か…なるほどね。まぁそれは置いといて…イージス、君の特異体質はもう一つある…それは…」
「…なるほど、不死とはね。それは有り難いような…迷惑なような…」
「あと、君達の言う精霊のことだが…ちょうど君達が奇跡を起こした時に…」
DEM社
「ようやくですね、アイク」
「あぁ、ようやく原始の精霊が現れた。私の願いが叶う…ようやく。この願いを叶うために長かった…」
この日、ユーラシア大空災が起きた。
[DEM社(デウス・エクス・マキナ・インダストリー)]
イギリスに本社を置く世界的大企業。リアライザ(魔法を科学の力で
再現する禁断の技術)のシェアは世界一。
[ユーラシア大空災]
ユーラシア大陸の中心で起きた大規模な空間震。その被害はユーラシア大陸の中心が1夜にして更地になるほど。しかし、ユーラシア大空災が起きた土地は崩壊液の被害が大きかったので既に人は居らず人的被害は無かった。
[空間震]
名前の通り空間の地震。本震が起きる前に余震がある。発生原因は隣界にいる精霊が現界する際に発生する空間の揺らぎによって大爆発する際に起きる。