ループできるゲームなんてヌルすぎる   作:泥人形

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先に言っておくが今話はマジでループしないです、許してくれ……


ヌルゲー:2

 朝型人間と夜型人間というのがある。

 違いを一言で述べるのであればそれは"早起きが得意であるかどうか"であろうか。

 所謂朝型人間と呼ばれる人間は午前中から活発に、十全に活動することの出来る人間を指すものだし、またその逆で夜型人間というのは日が沈んでから活発に、能率良く動ける人間のことを指すからだ。

 そして、それに当てはめて考えるのであれば、僕は圧倒的な夜型人間であった。

 毎朝幾つもの大音量アラームを仕掛けてようやっと目を覚ませるかどうか、という実にだらしなく映る夜型人間である。

 近頃はその朝型夜型というのは遺伝子によって決められているもので努力でどうこうできるものではない、なんて話も小耳に挟んだが、だからといって世間様はそれを理由に「じゃあ起きられないのは仕方ないね、遅刻しようが何しようが全然オッケーだよ」なんて言ってくれるほど甘くはない。

 なので僕は毎朝毎朝力の入らない四肢に力を込め、ギリギリのラインで意識を保ちながら朝をやり過ごしていたわけだが、この日はちょっと訳が違った。

 パッと目を覚ましたその瞬間から、意識が覚醒する。

 二度寝しようと思う間もなく寝ることが日常ですらあったこの僕が、もう一度寝ようと欠片も思わないほどに、僕の意識はスッキリ爽快に目を覚ましていた。

 おかしい、あまりにも変だと思って、身体を起こす。

 ふわふわとした真っ白い毛布を除けて、ぼんやりと前を見た。

 特に深い意味もなくそうすれば当然目に入ってくるのは十数年過ごした僕の部屋────ではなく。

 建てられてからそれなりの年月を経ているであろう、少し痛んだ木の部屋が、そこにあった。

 そこまできて、ようやっと思い出す。

 あぁ、そりゃそうか、と納得する。

 ここは限りなく現実に近くて、それでも現実ではないのだ。

 あくまでここは仮想世界だ、今、僕等にとって現実であるこの世界は、それでもやはり本物ではないのだと、たったこれだけのことで僕はそう思ったのだった。

 

 クエストは大した時間を必要とすること無く、恙無く終了した。

 まあ持ってきたアイテムを渡すだけなのだから当然といえば当然なのではあるが。

 何はともあれ、僕の背中には今、年季の入ってそうな赤い鞘にしまわれた簡素な黒い直剣がぶら下がっていた。

 昨夜砕けたスモールソードとは段違いの性能、存在感である。

 これならリトルネペントなんて最早敵ではない、レベルも3になったことだし尚更だ。

 いや、まあこの先リトルネペントを狩ることはまず無いとは思うが。

 兎にも角にも、僕は順調に進んでいるのであった。

 この村唯一の食事処で全くもって味気のないパンに舌鼓を打ちながら次はどこに行こうか、とぼんやり考える。

 ぶっちゃけ一層についてとかもうあんまり覚えていないのだ。

 なんてったって2ヶ月も前の話なのである。

 β時代は、所謂廃人と呼ばれる人達ほどやり込んでいた訳ではないが、それでも僕だってそこそこプレイしていた方で、なるべく上へ上へと次々進むタイプだった。

 故に三日四日程度で後にした一層について、僕はあまり詳しくなかった。

 アニールブレードを覚えていたのは長らくお世話になったからという理由で、それ以外については全くのノー情報である。

 モッサモッサと美味しく無さそうにパンを噛みちぎっていれば不意に、後ろから声がかかる。

 中性的な顔立ちのした、恐らく僕よりは年下であろう黒髪の少年剣士。

 もっと簡潔に言うのであればそれはキリトだった。

 昨日の戦いでズタボロになっていた装備も綺麗に整っている。

 そのまま流れるように対面に座った彼と僕は、何とはなしに下らない会話を始めた。

 本当、この世界の飯は美味しくない、という話題から僕等は本気でこの先に関わらないようなどうでも良いような話をし始めたのであった。

 ───それはきっと、ある種の逃避だった。

 現実を直視したくなくて、自分の命の重みをちゃんと感じれなくて、未だどうすれば正解なのかが分からなくて。

 それから逃げるように、僕等は目先のものや一ミリも本質に関わってこないようなテキトーな雑談に興じていた。

 それももう、終わりではあるが。

 何時まで経ってもこうしてはいられない、何故かと言われれば答えに悩むところだったが、それでも僕は何とか前に進まなければと思っていた。

 そんな僕に、キリトが問うてくる。

 次の行き先は決まっているのか? と。

 勿論決まっていない、決まっている訳が無いだろう。

 ドヤ顔でそう言えばあからさまに呆れられたのは言うまでもなかった。

 

 

 こうして僕等はそのまま解散───とはならずに、一時的なパーティを組んでいた。

 まあ僕としては一人味方がいるだけで心強いし、それは同時にキリトもそうだったのだろう。

 どうせなら一緒に行動しても損はないだろう、そんな理由で僕等はパーティ、というよりかはコンビを組んだのであった。

 本当はコペルもいれば良かったが、まあ現実はそうもいかない。

 許されたとはいえコペルがそれで負い目も罪悪感も忘れられるのかと言えばそんなことはまずありえないからだ。

 許した側も許した側で、完璧に心を許せるなんて、出来ようはずもなく。

 一応誘いはしたが遠慮のメッセージが来た時点で僕等もしつこく誘うことはなかった。

 適当にポーションの類を買い込み、キリトの助言を受けながら装備を揃える。

 結果的に似たり寄ったりな装備になった僕等は互いに苦笑して、やっと村を出たのだった。

 

 

 それからというもの、僕等は暫くの間コンビを組んでいたと思う。

 あの日村を出てから既に一月近くが経過していた。

 今の最前線は───変わること無く、第一層。

 βテスト時代に比べるとあまりにも遅いペースで、しかしその間に出た死者は優に1000を超えていた。

 1000である、この世界に来た人数の、十分の一。

 たかだか4週間程度で、これだけの人数が帰らぬ人となっていて、その数はドンドンと増えていた。

 それも、仕方のないことだと思う。

 この世界にはそれこそ老若男女、様々な人間が来ていて、その中には当然ネトゲに慣れていない人や深く考えることのなかった人、あまりの混乱におかしくなってしまった人だっていた。

 そしてそれらが纏めて、消しゴムで消すみたいにしてこの世界、延いては現実からも退場していったのだった。

 情報屋に聞けばその数は直に2000を超えると言っていた。

 その数は何だか大きすぎて、実感は伴われることは無かったが、やはりこの世界において死は絶対的なもので生き返るだなんてことはありえないのが普通であるという確認ができた。

 そして、キリトという有識者と出会えたことは非常にラッキーであるということにも気付く。

 何故かと言えばキリトはとんでもない人物だったからだ。

 いや、この言い方では誤解を招きかねないな。

 キリトはとんでもない()()()()を兼ね備えた人物だった。

 彼は十代前半みたいな顔をしておいて、所謂ネトゲ廃人というやつだったのだ。

 一層のことですら、事細かく覚えているのである。

 βテスト時とは少し違うところがあれど、大体同じであるという彼についていけば危険な目に遭うということがまず無かったし、誰よりも早く動いていることが幸いして経験値の美味しい狩場を次々と一人占めならず二人占めできた。

 何だか少しズルしているような気分もしたが、そんなことより強くなる事のほうが優先順位の高かった僕等は積極的に経験値を貪った。

 お陰で僕等のレベルは他の進んでいるプレイヤーと比べて少しは上であろうという自覚があったし、余裕もあった。

 具体的に言うのであれば他のプレイヤーがレベリングをしている間に攻略に全く関係ないクエストばかり受注し始めたのである。

 特段経験値が良い訳でもなく、単なる報酬目当てだった。

 勿論、その内容も大したものではない。

 いや、付け加えさせて貰うのであれば、それは当然僕等にとっては大したものではあったし、何なら何日も潰すくらいには夢中にさせられるものだった。

 こと攻略や戦闘等には一切掠りすらしないほど関係がなかったというだけで。

 その内容は雑多だった、一言で纏めるのであれば嗜好品、または娯楽である。

 詳しく言ってしまえば、パンに塗るクリームだったり、ちゃんと味のする飲み物であったり、全くステータスに効果のないサングラスだったり、伊達メガネだったり、アクセサリーだったり。

 そういったこのゲームの所謂遊び要素の部分を僕等は空気も読まず楽しんでいたのである。

 かといって攻略に全く関わっていないのかと言われればそんなことはなく。

 僕等は適度に迷宮区を探索し、程々に遊んでいた。

 まぁ、最近は遊びの比率が高いような気もするが、それはそれ。

 今日も今日とて探索していた迷宮区から引き上げようと、完全無味のパンにクリームを塗りたくったのを頬張りながら歩いていたときだった。

 暗く淀んでいる迷宮に、流星がたなびく。

 

 それは確かに星でも何でも無くて、嫌な言い方をすればただのソードスキルのライトエフェクトだった。

 細剣カテゴリの初期スキル《リニアー》による薄緑色の鋭く、速く、美しい一撃。

 流星を幻視するほど流麗だったそれを放つのは、僕より少し背の低い少年、または少女だった。

 何故判別つかないのかと言えば、その人物は深くフードを被っていたからである。

 ステップや戦闘の運び方は何だか僕にも似たような雰囲気を感じるが、こと攻撃に置いてはキリトすら上回るのではないかと思うくらい卓越した剣士。

 凄い人がいたもんだな、なんて思ってキリトに話しかければ返事が返って来ない。

 え? 無視されるとちょっと傷ついちゃうよ? と横を向けば彼はそこにはいなかった。

 ……神隠し?

 何それ怖いんですけど……と思えば彼はいつの間にか細剣使いに話しかけていた。

 前から思っていたのだが、彼、自分をコミュ障だと言う割にはコミュニケーション能力が高すぎる。

 対人能力に関しては並程度だと自負している僕が何だかコミュ障なのではないかと錯覚してしまうほどだ。

 いや「今のはオーバーキルだよ」とかドヤ顔で指摘するところからスタートなのは何だかオタクっぽい気はするが……

 それでも物怖じしない、という辺りで彼はやはり頭一つ抜けているように思えた。

 声音的に細剣使いは女性だということがわかったが、しかし僕は二人の会話に入る隙を見出だせず後ろの方でぼけらぁっと眺めていれば細剣使いが激怒したようにキリトを睨めつける。

 さてはキリト、地雷を踏み抜いたな、とこの一ヶ月で大体彼の性格を理解していた僕はやれやれと彼女を宥めようと間に入るべく歩を進めたその次の瞬間だった。

 彼女はまるでシャットダウンでもされたかのように、突然その場に倒れ伏した。

 困ったように振り向いたキリトと、不意に目が合う。

 ……いやまぁ、捨て置くことはできない、よね。

 

 フラフラフラフラと、僕等は二人がかりであるにもかかわらず、やっとの思いで一人の、それこそ歳下にすら感じられる少女を迷宮区から運びきった。

 これが、現実の世界であれば僕一人でも余裕……とは言わないが、それでもここまで疲弊することも、時間をかけることもなかったであろう。

 この世界には、重量制限というものがある。

 一人あたりどれだけの重さを運べるか、レベルで決まっているのだ。

 僕等のレベルがもっと、それこそ何倍も上だったら人一人くらい訳ないが、今はその限りではなかった。

 ぶっちゃければ二人で担ぐことすら不可能である。

 ここに放置する訳にもいかないが、相手は女性、不用意に触るというのもあまり好ましくない。

 揃って頭をひねった結果、僕等は考えることを放棄し彼女を寝袋にぶち込んだ。

 後はもう、二人で無理やり引きずればオールオッケーである。

 敵が出たらその都度どちらかが守り、どちらかが戦うという方針を取り庇いあった結果、普通に出る時に比べ数倍も時間をかけ、迷宮区を出たのであった。

 直ぐそこに聳え立つ木の根元に、寝袋から放り出した彼女を寝かせ、後はただ待つ。

 今更になって運んでいる所誰にも見られなくて良かったな……とキリトと無駄話をすること数時間。

 太陽が顔を出してきて、そろそろ昼飯にしようと、とあるクエストの報酬であるサンドイッチを頬張る。

 無駄に時間がかかるだけあってしっかりと美味しいそれをむしゃむしゃと平らげていけば不意に、声がした。

 お、やっと目を覚ましたな、食う? なんて言ってサンドイッチを手渡せば未だ思考がボヤケているのか無言で受け取り彼女はモサモサと食べだした。

 目を丸くして驚いている辺り、なぜだか僕が嬉しい。

 ふふん、と気を良くすれば彼女はようやく意識をはっきりとさせたようで、若干顔を赤くしながら余計なことを……! とキレだした。

 えぇ……情緒不安定過ぎない?

 余計なお世話とか言わないでくれよぅ何て思えばキリトが任せろと言わんばかりに「助けたのは、あんたのためじゃない」とか言い出した。

 なんか急に格好つけ始めたなこいつ……と思ったがその一言で彼女は納得したように迷宮区のマップ情報を投げ渡した。

 そのままじゃあなと去ろうとする彼女にキリトはやはり声をかけた。

 折角なら攻略会議にでも出ないか? と。

 

 攻略会議───もっと詳細に言うのであれば、第一層ボス攻略会議。

 この一ヶ月で力を溜めてきた、いうなればトッププレイヤーとでも言うべきプレイヤーたちの一部が開くとあちこちの村や街で宣伝し、そして今日この日に行われる予定のもの。

 トールバーナという迷宮区に最も近い街で開かれるそれに、僕等は三人揃って参加していた。

 周りを見渡せば、ざっと四十人程度はいるだろうか。

 それが多いのか少ないのかは判別つかなかったが、考えてもみれば命がかかっているのである。

 であればやはり多いのだろう。

 既に8000人前後しか残っていないプレイヤーの中でも活動的なのはほんの一握りなはずで、その更に一部だけだと考えれば、一つの教室に収まりそうなこの人数もやはり多いと思えた。

 徐々に喧騒が増していく、開催の時間はもうすぐだった。

 まだかまだかと期待と不安が織り交ぜられたような心境でいれば、不意に一人の青年が、集められた広場の中心に降り立った。

 この世界では珍しい、青色の髪が目立つ。

 堂々と、余裕を見せながら話し始めたその青年は、言わば好青年というやつで、付け加えるのであればイケメンだった。

 世間一般で言うフツメンというやつである僕とは比べ物にならない。

 綺羅びやかな鎧や剣が良く似合う、嫌悪感を与えない爽やかな印象で、並べる言葉は理路整然としていて、わかりやすい。

 まあ要約すればみんなで頑張ってボス倒していこうぜ! ではあるのだが。

 まあそんな感じで結構順調に進むもんだな、と思っていたら関西風な口調の静止の声が、群衆の中から飛び込んだ。

 そうしてドカドカと偉そうに広場に出てきたのは、髪の毛をトゲトゲ───例えるのであれば、モヤットボールのようにした青年だった。

 何故だか青筋を立てていたキバオウと名乗った彼は真ん中までやってきた後に、叫ぶように己の怒りを吐露した。

 βテスターの奴らが、初心者を置いていったからこんなにたくさんの人が死んだのだと。

 この中にもいるであろう、お前らのせいでこんなにも攻略が遅れているのだと。

 βテスターは全員アイテムと装備放り出して土下座しろと、彼は言ったのだ。

 何て理不尽なことを言うのだろうか、と思うと同時に、あながち間違ってもいない、とも思った。

 少なくとも僕があの日一人で抜け出さずに、あの街で助け合いでもしていればもしかしたら一人か二人くらいは、死なずに済んだかもしれないことは確かであったからだ。

 まあ、それでも僕に助けられたのはきっとその程度であっただろうし、そもそも最大でも1000人しかいないβテスターが9000人全員を助けられたかと言われればそれは有り得ないことだ。

 彼の怒りは分かる、けれども放つ言葉はあまりにも感情的すぎた。

 彼の語ることは、あまりにも理想論に過ぎないからだ。

 誰だって全員助かって、全員幸せになれば良いって思う、だけどそれは飽くまで理想に過ぎない。

 全員を死なせないだなんて、土台無理な話なのだ。

 手の届く範囲の人間を助けるだけでもやっとのことで、いっぱいいっぱいなことを僕はこの世界に来てひしひしと実感していた。

 僕よりずっと歳上だろうに、それを知らないのか、はたまたこの状況を"誰かのせいにしたいのか"は分からないが、このままずっとあの演説が続くのもちょっとな、と立ち上がれば視線がグンッと僕へと向いた。

 四十の視線は、中々重い。

 文句でもあるのかと吠え立てる彼にちょっと落ち着けよ、と手を上げる。

 キリトが申し訳なさそうに僕を見る。

 まあ任せておけよ、と僕は中央へと降りていった。

 

 かねてから言うように、僕はβテスターだ。

 といっても、正直に言えば僕の戦闘スキルとでも言うべきものは、初心者の人達と大して変わらない。

 そもそもキリトくらいやり込んでいる人でなければ、身体に染み付くなんてことは無いからだ。

 そして彼くらいやり込んでいたのも、一部の人に過ぎない。

 何故かって言えばそりゃあ、このβテスターというのはランダムな抽選で当たるものだからだ。

 当たった誰もがゲーマーという訳じゃないのだ。

 その中には僕等みたいな学生や、時間のあまり取れない社会人、ゲームにほとんど触ったことのない人だっていたし、何ならまだ小学生程度の子供だって居た。

 その上で全員が全員攻略しようとした訳ではないし、大半は戦う、というよりはこの幻想的な世界を体験してみた、といった程度に過ぎない。

 だから一部を除けば、βテスターと初心者は、あまり大差がなかった。

 むしろ攻略していたβテスターは死んでも生き返る、という経験を少なからずしているはずで、どこか危機感を覚えずに戦い死んだ人がいてもおかしくない。

 というか、キリトとかそんな感じで見ていて少し危ういところがある。

 そういったこともあり、βテスターだって皆が皆強いって訳じゃないんだよ、というのとそもそもあの状況じゃ自分を第一に考えてしまうのは仕方のないことだったと僕は思う、と懇懇と説いてみる。

 確かに協力し合えればベストだったけど、そう上手くはいかないもんだ。

 けどまあ、気持ちはわかる。

 だから、烏滸がましいようだが、βテスター代表として僕が謝ろう。

 誠心誠意謝ろう、だから、どうか和解してやってくれないか、と僕は頭を下げた。

 集まったプレイヤーはしんとしながら僕等を見つめ、キバオウは動揺したように声を漏らす。

 暫くそうしていれば、彼は観念したように、少しだけ申し訳なさそうに頭を上げてくれと言った。

 自分も少し熱くなりすぎた、すまない、と手を差し伸べる。

 内心心臓をバクバクと言わせていた僕は、そのことに大いに安堵しながら、その手を取った。

 

 そんなこんなでこの話は思いの外丸く収まり、攻略内容へと話はシフトチェンジしていた。

 とある情報屋より提供されたボス情報を元に、明日ボス攻略を行うと彼らは言い、それに伴い六人パーティを作ってねと言われた僕等は酷く動揺した。

 何せ周りがドンドンと作っていく中僕等だけあぶれているのである。

 パッと見た感じ僕等以外は六人なようで、あぶれたのは完全に僕等だけのようだ。

 さらっとコペルとかいたりしないかな、と見てみたが彼の姿は無かった。

 少し残念だと思うが、まあ彼も元気にやっていることだろう。

 取り敢えず細剣使いとキリトと組んでおく。

 自分のHPバーの下にkiritoとasunaという名前とHPが並んで表示された。

 なにげに細剣使いの名前今初めて知ったな、と思いながら肩身狭そうに好青年───ディアベルの元へと向かう。

 たった三人ぽっちの僕等を見て、ディアベルは苦笑したがそれでもちゃんとボス専用パーティ……レイドパーティというやつへは入れてくれた。

 いや入れてくれなかったら抗議していたのだが。

 与えられた役目はボスの取り巻きのモブ……を相手にするパーティが取りこぼしたモブの相手である。

 人数が少ないのだから仕方のないことではあるが、少しばかり不満を覚えたのは言うまでもなく、アスナに限っては直ぐにでも掴みかかりそうな勢いだった。

 パーティリーダーのキリトがそんなアスナを必死に宥めながら承諾し、会議は終了したのだった。

 

 その日の夜、僕等はキリトの泊まっている部屋へと集合していた。

 何故かって言えば、原因はアスナである。

 解散時に今日も風呂借りていい? なんてことをキリトと話していたら掴みかかってきて入らせろと言ってきたのだ。

 まあ、彼女にはスイッチやPOTローテといったパーティ戦闘では重要なアクションになることを知らなかったし、説明するにはちょうどいいと彼は了承した。

 キリトがマジで知らないのか、と若干冷や汗をかいていたのは記憶に新しいが。

 まあそんなこんなで僕等は彼の部屋で、彼の講義を受けていたのであった。

 途中、アスナが風呂に入っている間に懇意にしている情報屋が来て一騒ぎあったらしいがそれはそれ。

 入れ替わるようにやってきた僕にはあまり関係のないことである。

 ついついゲーム用語を使ってしまう彼の翻訳をしながら、僕等の夜は更けていったのであった。

 

 

 

 

 




次話からが本番(真顔)

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