―故郷への帰りを望んだ龍がいた。
―その龍が何を思って、帰ろうとしたのか、
―それが分からない。私には、分からない。
………恋しかっただけなら、ああはならなかったのかもしれない………
※
冬木市のある城……その城の中には、白髪の少女がいた。
「……またこの夢亅
その夢を見たのは、これが最初で無かった。
故郷へ帰り、生きることを望んだ、龍の夢。
天を廻り、かつての地へ舞い戻った龍の喜びと、
狩人に殺された、龍の怨み。
どれも、悲惨なものであった。
「……イリヤ様、お顔の表情の方が悪い気がするのですが……大丈夫ですか?亅
「……大丈夫よ、セラ、問題は無いわ亅
セラと呼ばれたメイドには、大丈夫と伝えるイリヤ。
「……始めるわ、“召喚の儀式”を……亅
召喚の儀式―それは、“聖杯戦争”と呼ばれる戦争の駒……“過去の英雄”を召喚するための儀式である。
聖杯を求め、英霊たちを使い魔とし、戦う。
これが冬木で、何度も行われていた。
イリヤは、右手を前に出す。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師シュバインオーグ。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ
みたせ みたせ みたせ みたせ みたせ
閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する
セット
―――――Anfang
――――――告げる
――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
光が覆う――それも黄金の光が
(違う! これは……何?)
イリヤは、バーサーカーと呼ばれるクラスを召喚しようとした。だが、まるで違う何かが、その場に出ようとしていた。
そして、光は消えた――――――
「……亅
そこに立っていたのは、金髪の、民族風の服を着た若い青年だった。
唯一人間らしくないところがあるならば、二本の角が生えていることだろう。
「……あなたは……誰?」
恐る恐る、イリヤは質問をした。
どこかで見たことがある……いや、あった。
イリヤは、それを知っていた。
「……私の名前は、シャガルマガラ亅
「……クラスは、一応“バーサーカー”って言うのかな…亅
天を廻り、その龍は、もう一度降りたったのだった。