天を廻りて、戻りきよ   作:411ayumi

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第一話 古き記憶

 

 

「君が……マスターか」

「……」

 

 思わずイリヤは黙り込んでしまった。気迫……いや、その圧倒的な存在感に。

 

 リーゼリットとセラ……イリヤもまた反射的に身構えてしまう程であった。

 

「そう身構えないで……私は怖くないよ」

 

 シャガルマガラ……彼は笑顔で言葉を紡ぎ出した。

 

「リーゼリット……セラ……」

「ここから一旦出てちょうだい……二人で話がしたいの」

 

 イリヤは、重い口調で二人に告げた。

 

「……分かりました。行くわよ、リーゼリット」

「うん……」

 

 二人は、近くの門から出ていった。

 

 

「……バーサーカー…いや、シャガル、あなたは……」

「?」

 

 途中で言葉が詰まる。喋れなくなるくらいに感情が昂ぶりを見せているのだろうか?

 

 対するシャガルは顔に?であった。

 

「……それより聖杯戦争のルールは分かってるの?」

「まあ、一応」

 

 ニカッとした笑顔で返事するシャガル。

 

「……」

「でも」

「何?」

 

 突然言葉を掛けられ、困惑するイリヤ。

 

 そしてシャガルは、口を開いた。

 

 

「命は奪いたくない……」

「私は故郷へ帰りたいだけだ」

「!!」

 

 ……イリヤは、何かを感じ取った。既視感とか、そんな感じの何かだ。

 

「私は戦いたくない」

「戦えばきっと、また幾人もの人々が死んでいく」

「そんなのはゴメンだ」

 

 キッパリとした表情でシャガルは戦いを拒否した。

 

「……嘘よ、あなたは戦ってばかりだったじゃない」

「故郷へ帰るために、ずっと戦ってきたじゃない!」

 

 イリヤの怒号がその場に飛び交う。だが、それはどこか悲痛な声だった。

 

「……」

「どうして……君が」

 

 シャガルマガラは、何故知っているのか? そのことが疑問なのか、表情に現れていた。

 

「……でも、あなたは死なせない」

 

 それは、イリヤ自身にも分からなかったのだろう。

 

「あなただけは……絶対に」

「私が死なさせない。何があっても、絶対に」

 

 

 何故、こんな言葉を口にしたのかを……

 

 

 

 

 

 

          ※

 

 

 冬木市の、とある山。そこに、一人の青年がいた。

 

「……」

 

 街を見下ろす彼は、どこか不機嫌だった。

 

「“天廻龍”を皮切りに……“古龍”共や、それに匹敵する存在は必ずこの世界に現れる」

 

「……この世界の意思一つで、”煉黒龍“か、“祖龍”と言った災厄が現れるのも間違いは無いだろう」

 

「その前に私も住処を作らなければな」

 

 

 その場に突如、暴風が吹いた……その上、”その場だけに雨まで降り出した。“

 

 

「……それにしても本当に不便だ。私のような”古龍“は……だが」

 

「“嵐龍”……それが私の役目であり、存在意義……しょうがないか」

 


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