「君が……マスターか」
「……」
思わずイリヤは黙り込んでしまった。気迫……いや、その圧倒的な存在感に。
リーゼリットとセラ……イリヤもまた反射的に身構えてしまう程であった。
「そう身構えないで……私は怖くないよ」
シャガルマガラ……彼は笑顔で言葉を紡ぎ出した。
「リーゼリット……セラ……」
「ここから一旦出てちょうだい……二人で話がしたいの」
イリヤは、重い口調で二人に告げた。
「……分かりました。行くわよ、リーゼリット」
「うん……」
二人は、近くの門から出ていった。
「……バーサーカー…いや、シャガル、あなたは……」
「?」
途中で言葉が詰まる。喋れなくなるくらいに感情が昂ぶりを見せているのだろうか?
対するシャガルは顔に?であった。
「……それより聖杯戦争のルールは分かってるの?」
「まあ、一応」
ニカッとした笑顔で返事するシャガル。
「……」
「でも」
「何?」
突然言葉を掛けられ、困惑するイリヤ。
そしてシャガルは、口を開いた。
「命は奪いたくない……」
「私は故郷へ帰りたいだけだ」
「!!」
……イリヤは、何かを感じ取った。既視感とか、そんな感じの何かだ。
「私は戦いたくない」
「戦えばきっと、また幾人もの人々が死んでいく」
「そんなのはゴメンだ」
キッパリとした表情でシャガルは戦いを拒否した。
「……嘘よ、あなたは戦ってばかりだったじゃない」
「故郷へ帰るために、ずっと戦ってきたじゃない!」
イリヤの怒号がその場に飛び交う。だが、それはどこか悲痛な声だった。
「……」
「どうして……君が」
シャガルマガラは、何故知っているのか? そのことが疑問なのか、表情に現れていた。
「……でも、あなたは死なせない」
それは、イリヤ自身にも分からなかったのだろう。
「あなただけは……絶対に」
「私が死なさせない。何があっても、絶対に」
何故、こんな言葉を口にしたのかを……
※
冬木市の、とある山。そこに、一人の青年がいた。
「……」
街を見下ろす彼は、どこか不機嫌だった。
「“天廻龍”を皮切りに……“古龍”共や、それに匹敵する存在は必ずこの世界に現れる」
「……この世界の意思一つで、”煉黒龍“か、“祖龍”と言った災厄が現れるのも間違いは無いだろう」
「その前に私も住処を作らなければな」
その場に突如、暴風が吹いた……その上、”その場だけに雨まで降り出した。“
「……それにしても本当に不便だ。私のような”古龍“は……だが」
「“嵐龍”……それが私の役目であり、存在意義……しょうがないか」