インフィニット・ストラトス ―Last Ravens―   作:白林

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はじめまして。白林と申します。
ISのSSを読んでいるうちに、私のフロム脳が暴走し始めまして、拙作を書かせていただきました。

拙い部分も多数あるとは思いますが、楽しんでいただければ幸いです。

では、『インフィニット・ストラトス ーーLast Ravensーー』 始まります。


第0話 全ての終わりと新たな始まり

「私はただひたすらに強くあろうとした…。」

 

既に機能を停止した兵器プラントで、二つの機体が向き合っていた。双方共に装甲は傷つき、各所からは火花が散っている。その一方、濃い紫色を基調とした機体のパイロットは、静かに呟いた。

 

「そこに私が生きる理由があると信じていた…。」

 

彼女の愛機はとっくに駆動限界を超え、相手を前に跪いていた。コックピットに表示される画面は数々の損傷を訴える表示で真っ赤に染まっている。右腕部は吹き飛ばされ、脚部は駆動機関が完全に破損してしまっており、恐らく、二度と動けはしないだろう。誰が見ても、勝負は決していた。

思えば、この機体にも随分無理をさせたと思う。バーテックスが世界に対して宣戦布告してからの24時間、ほぼ休むことなく戦場を駆け、整備でも回復させきれない疲労が蓄積していたことに加え、最後となる依頼を前に機体にかけられた全リミッターを解除したのであるから、仮に目の前の相手に勝ったとしても限界を迎えていたかもしれない。

 

(ファシネイター、私によくついてきてくれた。お前を誇りに思う。)

 

自分にここまで生き残る力をくれた相棒に対する感謝が今更になるとはな、とコックピットの中の彼女は小さく微笑む。負けた。それも、この上ないほどの形で。目の前の機体は、自分と比べて遥かにダメージが少なく、まだ十分動けるだろう。しかし、彼女の胸中に怒りや恨みなどといった負の感情は一切ありはしない。むしろ正反対の、心からの賞賛のみが彼女を満たしていた。

 

「やっと追い続けたものに、手が届いたような気がする…。」

 

唯一生きている通信機を通して、顔も見たことが無い相手に向けて語りかける。返事は無い、がそれでいい。今はこちらが一方的に言いたいことを言っているだけなのだから。

目の前の《彼》は、自分がずっと求め続けた答えをこの戦いを通して見せてくれた。これ以上の答えなど、決して望めはしないだろう。敗北など、答えを得たことに比べればなんと小さなことか。

 

『機体維持限界突破。ただちに機体より離脱してください。』

 

無機質な機械音声が愛機(ファシネイター)の現状を伝えてくる。いよいよ、限界が近いらしい。

もう自分に残された時間はほとんどありはしないだろう。いつまで通信機が持つかもわからない。だから、その前に言わなくては。戦いの中で答えをくれた相手に対する、最大の賛辞を。

 

「レイヴン。その称号は、お前にこそふさわしい。」

 

そう言い切り、自分の道を駆け抜けたレイヴン―――ジナイーダは目を閉じた。

そこで、彼女の意識は途切れたのだった。

 

 

 

 

 

『レイヴン。その称号は、お前にこそふさわしい。』

 

今まさに目の前で爆散していく機体から、少々ノイズが混ざりながらもはっきりと告げられた言葉。それは、今の今まで戦い続けてきた自分にとって何より意味のある一言であった。

長い歴史の中で最も濃密な24時間を、必死に生き延びようと戦ってきた。どうやら、俺の戦いは断じて無意味ではなかったようだ。彼女の言葉はそれを証明してくれた。

 

「さようならだ、ジナイーダ。」

 

自然にそう呟くと、俺は狭いコックピットで大きく息をついた。これで、全て終わった。ある男が一握りの人間にのみ伝えた、戦いの裏にあった真相。世界を敵に回してでも成そうとした目的を、やっと叶えることが出来た。

 

「ミッション完了。……しかし、だいぶ背負う物が増えちまったもんだ。」

 

本格的な戦いが勃発してから現在、つまり終結を迎えるまでにかかった時間は約24時間。傍目から見れば、早期に闘争が終わったことは幸運ではないか、と言う人も居るかもしれない。だが、その24時間の間には幸運と形容するにはあまりにも多くの血が流れ過ぎた。

 

何人もの腕の立つレイヴンが、戦場の露と消えた。

拠点防衛の為に、必死でMTを駆ったパイロットがいた。

少しでも時間を稼ごうと、かなわないと分かっていながら出撃した戦闘機乗りがいた。

自らの信念を貫こうと、生身でACに立ち向かった歩兵がいた。

その他にも、後世に語られることの無い名も無き戦士たちが、確かに存在した。

思想も、性別も、目的も全てがそれぞれ異なっていたが、一つだけ全員に共通していることがあった。

“誰もが、生きる為に戦っていた。”

 

無数の命が、ほんの一日で散っていった。ならば、散っていった彼らを記憶し生きていくこと。それこそが、生き残った俺にのみ許された権利であり、義務であると思えてならない。

 

『お疲れ様、レイヴン。これで、やっと全部終わったわね。』

そんな物思いに耽っている俺を、オペレータであるシーラ・コードウェルからの通信が現実へと引き戻した。

「ああ、そうだな。これでようやくゆっくりできそうだ。」

『お互い生き残ったことを記念して、貴方が戻ってきたら軽く宴会でもしましょうか。いいお酒を用意しておくから。』

「悪くないアイディアだ。エドにも連絡しておいてくれ。」

『もちろんよ。じゃあ、とりあえず帰ってk………!? そんなっ!?』

「おい、どうした!」

『未確認の熱源反応がそちらに接近中!注意して!!』

 

最後のミッションは、まだ終了していなかった。

 

 

 

 

 

『何で、あれがここにいるのよ……?』

 

姿を現した未確認の相手を確認し、思わずシーラは言葉を失ったようだ。

いや、未確認と言うのは正しくないだろう。何故なら、俺たちは目の前の相手を見るには初めてではない。姿かたちこそ今まで見たことのあるタイプとは違うが、間違いなく同一の存在であると言い切れる。問題は、二度と現れるはずのない相手(・・・・・・・・・・・・・)であるという一点に尽きる。

統括機構であるインターネサインを完全に破壊したことにより、再生するのは不可能であるはずの機動兵器―――パルヴァライザーは、全身を青く染め上げ、現実に存在している。

 

『貴方がインターネサインを破壊し、その後ジナイーダがパルヴァライザーを倒す。そうすれば全部終わるはずじゃなかったの!?』

「俺だって分からねーよ!まさか、完全に機能を停止する前にこいつを生み出しやがったのか?俺を抹殺するだけの為に!!」

『そんなのって…。いや、でもそうとしか……。』

「考察は後だ!奴さん待ってくれるきは一切無いらしい。仕方ない、迎撃する!!」

『無理よ!もう貴方の機体はボロボロなのよ!今すぐそこから離脱して!!』

 

シーラの言うことはもっともだ。インターネサイン中枢まで潜入する際に特攻兵器から受けたダメージに加え、先程のジナイーダとの戦闘で蓄積したダメージで、機体のAP(耐久値)は既に半分を切っている。武装の残弾数も、断じて余裕があるとは言えない。正直、戦闘を行うのは無謀と言って差支えないのは、自分でもよくわかっている。しかし、ここで退くわけにはいかないのだ。

 

「そんなのは十分分かってる!でも、今のこいつじゃアレからは逃げ切れない!!それに、ここでアイツを野放しにしたら、今までの戦いで死んでいった奴らに申し訳が立たないんだよぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

俺が叫ぶと同時にパルヴァライザーが動きを見せた。今までのタイプをさらに上回る、苛烈なレーザーの連射が機体を襲う。咄嗟にフットペダルを踏み込み、ブースターを全開にして回避を行いながら、冷静に照準を合わせようとする。が、パルヴァライザーは空中を不規則に動き回り、なかなかロックが定まらない。

 

「ちょこまかとウザったい奴だな本当によぉ!!」

 

思わず声が漏れるが、機体の操作に影響は出さない。コンデンサのエネルギー残量を確認し、コアパーツ《C01-GAEA》に搭載されたEO(自動射撃装置)を起動した。先のジナイーダ戦で一部システムが損傷したが、まだ実用には足るだけの性能は残っている。EOによる射撃を行いつつ、どうにか相手をロックオンサイトに捕捉することに成功した。落ち着いて右腕部兵装《CR-WH05BP(バズーカ)》のトリガーを引く。残弾が心許ないことを考えると、一発たりとも無駄弾を出すわけにはいかない。接近してきた相手のレーザーブレードによる攻撃を避けるように、一定の距離を保ちつつ一発一発、時に左腕部のハンドガンによる牽制を交えながら確実に当てていけば、どうにかなるだろう。そんな目論見はしかし、パルヴァライザーの行動により崩れ去ることとなる。

こちらが放った数発目のバズーカ弾が着弾する直前、パルヴァライザーをエネルギーの膜のようなものが包み込み、こちらの攻撃を防いだのだ。

(攻撃を完全に遮断するエネルギーフィールドだと!?反則にもほどがあるだろう!!)

確実に当たると思っていた一撃が防がれたことにより、俺は一瞬動きを止めてしまった。その一瞬が、大きな隙となった。

 

『対象より高エネルギーを感知!避けて!!』

 

シーラの通信と同時に、高火力の砲撃が機体に突き刺さった。ブースターを吹かすことで二発目以降の砲撃を回避することは出来たが、大きくAPを削り取られてしまう。

 

(不覚!戦闘の最中に動きを止めるのは自殺行為だと、この24時間で嫌って程実感したはずだろ!)

 

焦りかけた頭を無理やり冷やし、再び両腕の兵装を突きつける。

機体各部のダメージ表示を確認、幸いにもまだ戦闘に大きな影響を与える程度の損傷部位は見受けられない。

最も、それは裏を返せば機体全体にダメージが分散しているということでもあるのだが、動けるならば十分過ぎる状況と言ってもいい。

 

「来いよパルヴァライザー。此処まで生き残った鴉を、墜とせると思うならなぁ!!」

 

 

 

 

 

戦いが始まってから、果たしてどれほどの時間が経ったことだろう。

1時間か、半日か、それともまだ数分しか経っていないのか。戦局は、そろそろ終わりを迎える気配を見せていた。

パルヴァライザーの表面からはスパークが散り、動きも当初に比べ目に見えて遅くなっている。あと一押しで仕留めることが出来るはずだ。

しかしながら、追い込むために俺が支払った代償は甚大なものだった。

コアに装備されたEOは、相手の放ったホーミングレーザーにより破壊されてしまっている。次いで、機体各部のダメージを示す表示を確認すると

 

頭部:損傷、レーダー・センサー類が全損

コア:損傷、EOを損失

右腕部:損傷、射撃精度低下

左腕部:破損、兵装運用不可

脚部:損傷、駆動部が一部破損。機体安定・旋回性低下

 

……AP残り10%

 

戦闘を続行するには、あまりに絶望的な状況であった。コックピット内は数々のメッセージで真っ赤に染まり、アラートが常に鳴り響いている。だがそんなことよりも現在における最大の問題と比べれば、些末なものであった。

 

(くそ、もう弾が無い。あと一押しって時に!)

 

そう。

EOが破壊され、左腕部が消し飛んだ現状で使える兵装は右腕部のバズーカのみ。それも、今までの戦いで消費し続けたことで残弾数は三発のみ。全部叩き込んでも削りきれるか微妙な数だ。

今になって、背部兵装のロケットをパージしたのが悔やまれる。ジナイーダ戦において高起動の相手を捉えようと軽量化のためパージしたのだが、よもやここで影響が出るとは思いもしなかった。

何にせよ、今俺が出来るのは全弾を目の前の奴に叩き込むことしかない。覚悟を固め、機体を動かす。全ては奴を墜とす為に。

 

ホーミングレーザーを避け、動きを止めた一瞬を狙いトリガーを引く。

命中。相手の装甲が一部剥がれ落ちる。

あと二発。

 

レーザーによる弾幕を張られる。回避し切れず一部被弾。脚部破損。機動力が更に低下。反撃にバズーカを撃つも、直撃せず掠めるにとどまる。

あと一発…!

 

接近してきた相手がブレードを振りかぶったを見、全力で後退し回避、ブレードを降り終わった隙を突き最後の一発を放つ。

敵頭部に命中。少し姿勢が揺らぐも、まだ動いている。

残弾、0っ……!

 

 

(俺もここまで、なのか…?)

 

もはやデッドウェイトにしかならないバズーカをパージし、目の前の相手を睨む。

もう使える兵装は無い。かと言って、機体がこの状態では逃げ切れはしないのは明白だった。

こちらが死に体なのを相手も分かっているのだろうか、この上ないほどゆっくりと、まるで死刑宣告かのように俺の目と鼻の先まで近づいてきた。

そして、右腕のレーザーブレードを振り上げる。狙いは、俺の機体のコア中心。コックピットだ。

絶体絶命。形を持った死が、目の前に迫っている。

 

(死ぬって、こんな呆気ないのかよ。済まない、エド、シーラ……。)

 

振り下ろされたブレードの先端が迫ってくるのが、凄まじく遅く見えた。死を覚悟し、目を閉じようとした正にその時。

 

 

『レイヴン。その称号は、お前にこそふさわしい。』

 

 

気づけば、フットペダルを限界まで踏み込んでいた。

振り下ろされたブレードがコアを掠めるが、貫かれてはいない。危ねぇ!!

 

(そうだよ!あんなことまで言われて、ここで死ぬわけにはいかないだろうが!!)

(どんなに見苦しくとも生にしがみつく。それが俺だろう。しぶとく生き残ってこその(レイヴン)だろ!!)

 

全くもって笑えてくる。

ほんのちょっと絶望的な状況に叩き落とされた程度で、俺が俺である以上絶対譲れない部分まで見失いかけるとはな。

そうだ、諦めるにはまだ早過ぎる。まだ、命を捨ててやれるほど足掻いちゃいない。

確かに機体はボロボロだ。が、まだ動く。それだけでも、足掻く理由としては十分だ。

 

折れかけた心に、再び一本の芯が通る。

己の心に従った結果、史上初最も過酷な24時間を最後まで生き残ったレイヴンがそこにはいた。

 

 

 

「……足掻くとは決めたものの、対抗する手段が無いのは変わらねーんだよなあ…。」

 

現実問題、パルヴァライザーを倒さない限り生還するのは不可能だろう。しかし、幾らあと一歩まで追い込んでいるとはいえ、トドメを刺すための手段が無くてはどうしようもない。

一か八か体当たりでも仕掛けてやろうか、なんて所まで思考が飛んだ時、機体のメインカメラがあるものを捉えた。目の前のパルヴァライザーに気を取られ、今まで気づくことのなかったそれは、

 

「あれは、ファシネイターの……!」

 

ジナイーダと戦い、バズーカで右腕を吹き飛ばした際、偶然破損することのなかった彼女の右腕部兵装《YWH16HR-PYTHON(ハンドレールガン)》。

分の悪い賭けに違いはないが、少なくとも体当たりよりは可能性がある。

扱えるかどうか、試してみて損は無い。

パルヴァライザーはこちらの意図に気づく様子も無く、ひたすらレーザーを撃ちかけてくる。

チャンスは一瞬。俺は今一度ブースターを最大まで吹かし、ハンドレールガンの回収に向かった。

 

出来る限り弾幕を躱しながらハンドレールガンの元へと近づく。

あと100m。まだ距離がある。

70m。大丈夫、相手はまだこちらの真意に気付いていない。

50m。ACのブースターなら数秒もかからない距離が、やけに遠く感じられる。

20m。相手の動きが変わり、急いでいるかのようにこちらへと向かってくる。やばい、感づかれたか!?

あと10、9、8、7、6…………。

 

(今しかない!!)

 

すれ違いざまに、マニュアル操作で必死に右腕を伸ばす。

避け切れなかったレーザーが装甲を焼き、更にAPが削がれるがそれどころではない。

機体の指先が地面を掠め、そして………届いた!!

 

『不明なユニットが接続されました。FCSとの緊急リンク開始。認識まであと30秒。』

 

どうやら使用に問題はなさそうだ。しかし、30秒か…。凌ぎ切れるか?

ここに来て、パルヴァライザーは最後の力を振り絞るかのように、攻撃の苛烈さを増し始めた。

縦横無尽に動き回り、レーザーによる弾幕、近寄ればブレード、離れればホーミングレーザーと様々な種類の波状攻撃を繰り出し、こちらに狙いをつける隙を全く見せる気配が無い。

そもそも、脚部が破損し駆動部に深刻なダメージを負っている今の機体では、相手の動きを捕捉し切れずにいた。

だから、今はじっとチャンスが来るまで耐え忍ぶ。

 

『FCSとのリンク完了。《YWH16HR-PYTHON》使用可能です。』

 

回避に徹しているうちに、兵装の認識が終わる。

だが、これも残弾は少ない。それに、右腕部の損傷により正確な射撃はほぼ不可能となっている。

故に、トリガーを引くのは確実に当たるタイミングではなければならない。

ここまでの戦いの中で見えた相手の行動パターンにおいて、そんなタイミングは一つのみ。

 

(…来たっ!)

 

パルヴァライザーの周囲を、球状のエネルギーフィールドが覆う。

この後に来るのは、高エネルギーを収束して放つ連続砲撃。

砲撃が放たれるまでの時間を利用して、体勢を整える。

現状を打開出来る機会があるとすれば、この後の一度のみ。

操縦桿を握る手に汗がにじむ。

一秒たりとも機動を遅らせまいと、極限まで神経を研ぎ澄ます。

 

エネルギーが収束され、砲撃がこちらを撃ち抜かんと放たれる。

まずは一発。機体を横に動かし、最小限の動作でもって回避。

間髪入れずに向かいくる二発目、三発目は上下動を用いて躱す。まだだ、まだ動くべき時じゃない。

四発目はブースターを短く吹かし、左へ移動することで避ける。

五発目を相手が放った瞬間、

 

「今だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ブースターを全開。その推力で機体を先程と逆へと強引に動かし、砲撃を掠めるように前進。

戦いの中で、砲撃は必ず五発であり、それ以上も以下も無いことに俺は気づいた。

そして、砲撃を終えエネルギーフィールドを解除した直後の数瞬は、一切無防備になることにも――!!

しかしながら、その隙を突いても現状当たるかどうか確証は無い。

そうであるなら話は簡単なことだ。

普通に撃って当たらないなら、絶対に当たるような撃ち方をすればいい(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

無防備なパルヴァライザーに向け突撃をかけ、眼前にまで肉薄。

そのままブースターを止めることなく、機体重量と速度を乗せて右腕を相手へと突き出し――――

 

――――ハンドレールガンのレールが、パルヴァライザーの装甲へと食い込んだ。

 

そのままトリガーを引く。

レールにエネルギーがチャージされ始め、眩しい程の輝きを放ちだす。

一秒。二秒。ジナイーダが戦闘で使用していた程度の時間が経っても、まだチャージは止まらない。

 

<高出力砲撃モード>

 

試験兵装である《YWH16HR-PYTHON》に搭載された、もう一つの射撃モード。

通常射撃モード以上にエネルギーをチャージした上、更に通常時ならば他の兵装やブースターに回されるエネルギーを上乗せすることで、一撃で敵部隊を壊滅させることを目的とした狂気の産物。

今度こそ二度と再生できないよう、跡形も無く消し飛ばす為に、俺はこいつの使用を決心した。

 

 

ACより一回り大きいパルヴァライザーにのしかかるようにして、チャージ完了までの時間を稼ぐ。

コンデンサ内に蓄えられたエネルギーが、どんどん右腕の銃に食い潰されていく。

輝きは、既にパルヴァライザーと自分を呑み込まんばかりにまでなっていた。

その時、今まで動きを止めていたパルヴァライザーが右腕を振り上げた。

 

(破壊される前に俺を殺すつもりか!)

 

ブレードが振り下ろされる直前、コンソールにチャージ完了を知らせる表示が出現する。

それを見、躊躇うことなくトリガーを引いた。

そして、限界まで溜め込まれたエネルギーによる爆風が、俺の意識を刈り取った。

 

 

 

 

 

『……r…iヴン!返事をして、レイヴン!!』

 

何だ…?どこからか声が聞こえる。

聞き覚えのあるこの声は………………!

ノイズ混じりの通信を聞いた瞬間、朦朧としていた俺の意識は一気に覚醒した。

ここは…見慣れた愛機のコックピットだ。

生きてる。

それを実感した途端、体からどっと力が抜けた。

 

『目標は完全に沈黙……というより、消滅。今度こそ、全部終わったわ。』

 

通信を受けて、ヒビの入った画面に目をやると、そこにはパルヴァライザーの痕跡と思われるようなものは全く見受けられなかった。

どうやら、思惑を無事達することは出来たようだ。

……しかし、使っておいてなんだがあの兵装の開発者は頭がおかしいとしか思えない。

背部兵装ならいざ知らず、何故手持ちの兵装であんな威力を出そうと思ったのか。

 

『でも、何て無茶なことをしたの!?巻き添えになって死んでもおかしくなかったのよ!!?』

「ゴメン、シーラ。二度と再生しないようにするには、あれしか思いつかなくてな…。」

『全く貴方って人は…。生きていたから良かったものの……。』

 

実際、先の爆風から生き残れたのは運が良かったとしか言いようがない。

頭部は余波で吹き飛び、右腕部は丸ごと無くなっている。

数値化されたAPは、一桁しか残っていなかった。

 

「生きているって素晴らしいなぁ…。」

『全くね。それじゃあ、迎えを寄越すからそこから帰投して。』

 

シーラからの通信を受け、俺はインターネサインから脱出するのだった。

 

 

 

 

 

「すっげぇ……。」

 

無事脱出した俺の前に広がっていたのは、なんとも美しい日の出であった。

 

「世界って、こんなに美しいものだったっけか。」

 

無意識のうちに声が漏れる。

激動の24時間の終わりと、新しい時代の幕開けを告げるかのような朝日が、大破した機体を照らしていた。

 

『迎えのヘリが到着したわ。』

 

通信が聞こえる。まるで、少し遠くから話しかけられたかのように。

朝日を見てからというもの、少しずつ意識が遠のき始めていた。

 

「ありがとう。とりあえず、少し休んでもいいかな?」

 

今のは自分の声だろうか。酷く弱弱しい声だった。

 

『っ…………! ええ、お疲れ様、レイヴン。』

 

どこか無理して絞り出したような声を聞きつつ、俺の意識は深い闇の中へと飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、バーテックスの宣戦布告に端を発する24時間は終わりを告げた。

その裏にあった全ての真相は歴史の裏へと葬られ、それを知る一握りの者たちも終生この一日について語ることは無かった。

そして、実際に終止符を打った二人のレイヴンの名も、時と共に歴史の波に飲み込まれていった。

 

 

しかし、神の気まぐれは彼らが安らかな眠りにつくのを許さなかった。

全く違う世界での、彼らの新たなる闘争が今、幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

インフィニット・ストラトス ――Last Ravens――

 

      ------Mission Start------




いかがだったでしょうか。
本格的に物語を書くのは初めてだったのですが、頭の中にあるイメージを文章にするのは本当に大変ですね。
特に戦闘描写は…。皆様が苦労するのも分かった気がします。


劇中に出てきたハンドレールガンの〈高出力砲撃モード〉は、ACLRのオープニングをイメージしていただければだいたい近い感じになります。
あれをただのフロムマジックにするのは、私のフロム脳が許さなかった。

次回は原稿が書け次第、投稿したいと思いますので
どうぞよろしくお願い致します。



〈12/19追記〉

ラスジナ・青パルの連戦を見事に戦い切ったこの時の主人公のアセン

頭部:CR-H97XS-EYE
コア:C01-GAEA
腕部:YA10-LORIS
脚部:CR-LH94A2
FCS:MF02-VOLUTE
ジェネレータ:CR-G91
ラジエーター:ANANDA
ブースター:CR-B83TP
右腕部兵装:CR-WH05BP
左腕部兵装:CR-WH01HP
右背部兵装:CR-WB69RO
左背部兵装:無し
インサイド:無し
エクステンション:無し

これは筆者がラスジナを倒した時のアセンそのもの。
確かAPが残り半分、残弾も十数発は残っていたと記憶しているので、今回は青パル戦まで頑張ってもらいました。
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