インフィニット・ストラトス ―Last Ravens―   作:白林

2 / 6
どうも、白林です。

今回から数話の間は原作開始時までの前日譚のような話となります。
原作開始まではもう少しお待ちください。


では、Last Ravens 第2話、始まります。


第1話 平和な日常、拭えぬ感情

厚い雲に覆われた灰色の空。

 

度重なる戦闘により後輩し、がれきのみが残された大地。

 

大気を満たすのは、血と硝煙の混ざり合った匂い。

 

俺はこの光景を知っている。

何故なら戦場ここが自分の居場所なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

«side:レアス»

 

 

「レアス君~、今どうしてるの?」

「え?あ、ゴメン。昼寝してたー。」

 

母さんに声をかけられたことで、俺は気がついた。

どうやら、いつの間にか昼寝してしまっていたらしい。

 

(久々にあの頃の夢を見たな。)

 

パルヴァライザーを破壊してインターネサインから脱出した後、激動の1日の終わりを告げるかのような朝日の中で目を閉じて以来の記憶が無いあたり、恐らくあそこで俺は死んだのだろう。

それが、気がついたら自分が全く知らない世界に居て、しかも赤ん坊になっていたというのだから、人生とは不思議なものだ。

 

勿論最初は酷く混乱したし、両親にもどう接したらいいか分からなかった。

あの頃の俺には親という存在に関する記憶が一切無く、シーラやエドに出会うまではほぼ独りで生きてきたと言っても過言ではない。

故に、両親の前でどう振る舞うべきなのか、実は生まれて数年経った今でも迷う時がある。

しかし、少なくともこの人たちは心の底から俺を愛してくれているのだろうことは、日々の生活からも感じ取れる。

 

“レアス・ハイネス”

 

それが今の俺の名前。

名前など特に意味を持たない戦場で生きるうちに、いつしか自分の名前すら忘れた俺に、両親が一生懸命考えてくれた名前。

それだけでも、彼らにとって俺が特別な存在なのだと教えてくれる。

この人たちなら、何があっても味方でいてくれると思える人と出会えたのは、自分の記憶の中で初めての経験だった。

 

(そういえば、今日は出かけるって言ってたっけか。)

 

時計を確認し、思っていたよりも時間が経っていたことを認識してため息をつく。

出かける準備だろうか、下の階からは両親がなにやら動いている気配を感じる。

 

思えば、今の世界にもずいぶん馴染んだものだと思う。

まず、この世界が「国家」というものに支配されていること事態、俺には衝撃的だった。

世界が変われば歴史や世界も変わる、というのは理解していたつもりだったが、認識が甘かったらしい。

国家などという枠組みが無く、企業こそが世界を動かす最大の力であるのが常識の世界で生きていた人間としては、今の世界には驚かされることが多い。

 

そして、生まれ変わった俺が今生きているのは「アメリカ」という国らしい。

ニュースを聞き、親の目を盗んで調べた歴史を見る限り、どうやらかつて世界中を巻き込む戦争に勝利し、現在の世界でも屈指の影響力を有する国のようで、アメリカの顔色をうかがって行動する国も多いらしい。

 

(まあ、力、特に強大な軍事力を持つ勢力を味方につけておきたい気持ちは分かるけどな。)

 

一口に“力”と言っても、例えば経済力や学力などの様々な“力”が存在する。

だが、どのような状況であっても確実に一定の効力を発揮する力となれば、それは暴力や軍事力といったモノしか無いだろう。

かつて戦場で生きたからこその考え方かもしれないが、俺にはそれらを超える力が思いつかない。実際、あの世界で俺がどの勢力にも属すことなく自由に生きることが出来たのは、ACアーマードコアという絶対的な力を有していたからだ。

それに、一見平和に見えるこの世界も結局の所、各国間の微妙な軍事バランスの均衡の上に保たれているのだから。

 

(……平和、か。)

 

今の生活に特に不満は無い。

そもそも、かつての自分だって別に好き好んで戦っていたわけではなかった。

“生き延びる為に戦う”

ただそれだけのこと。

もしあの頃戦わずに済んだのならば、ACを駆ることもなかっただろう。

 

そういう意味では、以前はどれだけ手を伸ばしても届かなかった平和を享受出来ている今の自分は幸せだと言えるはずだ。

しかし、いざ平和を手にしてみると、これからどのように生きれば良いか分からない。

まだ今の自分はガキなのだ、焦る必要は無い。

そう思いはするのだが、それでも何となく引っかかるものがある。

 

レイヴンであった頃は、未来のことなど考える余裕などは無く、ただ毎日を生きるのに精一杯であった。

そんな日常ではあったが……ある意味、充実した日々だったと思う。

無論、今の生活には基本的に満足しているし、再びあの世界に戻りたいとは思わない。「普通に」明日が来る幸福は、かつては絶対に味わえないものだ。

しかしながら時に、現在の日々の中で――――例えばちょうど今のように――――虚しさを感じるのはなぜだろうか。

 

(この世界で、俺は一体何を成していくのだろう?)

 

漠然とした疑問を抱えながら、両親が待つ1階へと下りて行った。

 

 

 

 

 

 

 

《side:ジナイーダ》

 

『デデデデストローイ・ナーインボー デデデデストローイ・ナーインボー デデデデストロ・・・・・・・・。』

(む、朝か。)

 

聞き慣れた目覚まし時計から流れる音声で、私は目覚めた。

目覚まし時計を止め、体を起こして体調をチェックする。

痛みを訴える部位やダルさ、疲労は感じられない。好調のようだ。

しかし、毎朝のことながらこの目覚まし時計には閉口させられる。

珍しく父さんが買ってきたものだから使っているが、そうでなければ絶対使うことは無いだろう。

この音声を聞くと、何故かかつて生死のかかった戦場で感じたのと同じ危機感を感じさせられる。

まあ、おかげで目覚めの効果は抜群なのだが。

 

軽く体を伸ばした後、顔を洗いに洗面所へ向かう。

目の前の鏡に、同年代の子供よりやや背の高い、短い黒髪の姿が映し出される。

 

(見慣れたとはいえ、我ながら笑ってしまうな。)

 

思わず微笑をこぼし、顔を洗いながら思う。

今でもはっきりと思い出せる、インターネサインでの戦いと自身の最期。

自分の人生は確実にあの時で終わったはずが、気づけば赤ん坊になっていた事実だけでも衝撃的だったというのに、ここが自分が居たのと全く異なる世界だと知った時は、気を失いそうになったほどだ。

最近になってやっと心の整理がついてきたが、未だに完全に割り切れてはいない。

 

「お早う、ジナイーダ。良く眠れた?」

「母さんお早う。大丈夫、ぐっすり眠れたよ。」

 

顔を洗い終えてリビングに行くと、こちらに気づいた母さんが声をかけてきた。

私が現状を未だに割り切れていない要因の一つ。それが、目の前にいる母さんと今は仕事で帰ってきていない父さんだ。

 

ジノーヴィーとアグラーヤ。

 

私がかつて誰よりも尊敬し、愛した人たち。

「レイヴンとは何か」という問いを抱くきっかけとなった存在。

彼らと同じ名前を持ち、ほぼ同じ外見をした人間がこの世界での両親だ。

これが果たして運命の悪戯による単なる偶然なのだとしたら、私は運命というやつを一生恨む。

ただでさえ、ある一件を境に私が彼らに対し抱く感情は大きく変わったのだ。

否が応でも彼らを思い起こさせる人々と、毎日顔を合わせなければならない。

別人だと分かっていても、そう簡単に割り切れと言う方が無理な話だ。

無論、家族としての付き合い方は出来ているが。

 

「父さんはまだ仕事だっけ?」

「ええ、でも今日帰ってくるんですって。」

 

父さんは外交官として働いており、家を空けている日が多い。

話を聞く限り、外交官になる前はロシア空軍のエースパイロットとして名を馳せたらしく、今でも当時の同僚とは懇意にしているという。

母さんも昔は空軍に所属しており、そこで出会ったのが全ての始まりだと、時折嬉しそうに語る姿を何度も見てきた。

 

それはさておき。

何の因果か二度目の人生を生きることになった私が今の世界に対して抱く感想は、「かつてと大きくは変わらない」だ。

自分がレイヴンとして生きたあの世界は企業を中心として回っていたが、今の世界も構造としてはそこまで変わりはしまい。「企業」をそっくり「国家」に入れ替えてやれば、結局同じようなものだ。

それに、表面上は平和が保たれているようで、少し目を転じてみれば内戦や紛争がくすぶっている所も多い。

世界の覇権を握っているのも過去の戦勝国であり、強大な軍事力を持っている国々によって経済なども動かされている。

もし繊細な現在の軍事バランスが崩されるようなことがあれば、今の世界などあっという間に瓦解してしまうだろう。

「仮初めの平和」

それが、今の世界に対しての感想だ。

 

(私が再び生きる意味とはなんだ?何故生まれ変わったのだ?)

 

それこそ神とでも呼ばれる存在が変な気まぐれを起こしたのでもない限り、自分が二度目の生を受けたのには何かしらの意味があるはずだ。

今は、それを見極めることを密かな目標としている。

 

(何にせよ、力は要るだろうな。)

 

これから何を成し、この世界がどう転ぶかも分かりはしないが、力を持っておいて損はない。

以前の世界であそこまで生きることが出来たのも、自分がレイヴンであったからだ。

 

(まずはどのようにして力を手にするか。そこからだな。)

 

人知れず決意を固め、変わり映えのしない日常を過ごし始めた。

 

 

 

 

 

一つの転機が訪れたのは、その日の夜のことだった。

 

「今帰った。ジナイーダ、元気にしてたか。」

「勿論。父さんも大丈夫そうだね。」

「ああ、この程度でへこたれる程衰えたつもりはない。」

 

久しぶりに父さんが仕事から帰り、家族3人で夕食の席についてからしばらく経った時、今まで柔らかい表情をしていた父さんが、急に真剣な顔つきで話し始めた。

 

「実は、仕事のことで皆に話しておかなくちゃならないことがある。」

「どうしたのジノーヴィー。急にかしこまって。」

「新しい仕事が入ってな。それだけならいつも通りなんだが、今回は海外に派遣、それも1年2年で済むような仕事じゃない。その間は多分、ロシアに帰ってこれるかどうか…。」

「そんな!じゃあどうするのよ!」

「まあ待て。どうやら仕事先のご好意で、向こうに家を用意してくれるらしい。そこで提案なんだが、いっそのこと皆でそっちに引っ越すのはどうだろう。」

「なるほど、そういう手も…。でもジナイーダはいいの?今の友達と離れなくちゃならないけど。」

「私は大丈夫。良いんじゃないかな。その方が皆楽だし。」

 

どうせここでの交友関係など表面的で薄っぺらなものだ。

離れた所で問題にはならない。

 

「決まりだな。異動の予定は2週間後だ。」

「分かった。なら早く準備しなきゃ。そうそう、まだどこに行くか聞いてないんだけど、どこなの?」

「ああ、言ってなかったか。派遣先は……」

 

 

「アメリカだ。」

 

 




いかがだったでしょうか。
転生したオリ主のレアス君とジナイーダのお話でした。

レアスは転生後割と早めに現状を受け入れ、家族にも信頼を寄せています。
そういう意味ではジナイーダより過去を引きずってはいませんが、今まで目の前を見つめた生き方しかしてこなかったので、未来に目を向けることに戸惑っている部分があります。

一方のジナイーダ。
ジノーヴィーとアグラーヤと時空を超えてまさかの再会。
厳密にはよく似た別人と分かってはいるものの、どうしても2人の前で素直になり切れません。
しかしながらレアスと違い、将来に関しては不安を抱いてはいません。
未来など関係ない、まずは今出来ることをする、という考え方を持っています。


次回もなるべく早めに投稿出来るよう頑張りますので、よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。