【サンダー】
☆4HG。重い設定があって表情は少なめ、感情は豊かだがすぐ発砲する危険な癖が治らないドライヤー型ハンドガン持ち。この前ドッグ待ちでぽつんと座っていたら皆がニコニコして上着を掛けまくり、最後は埋もれていた。音楽が聴ければそれでいいらしい。
【AUG】
☆5ARらしき何か。アンニュイな表情と喪服のような服装でいつも何処か寂しい感じの麗人。少々不思議ちゃんの疑惑が有り、乱射魔。この前庭の中央で立ったまま寝ていたら雨でびしょ濡れで「凹んでいる」と間違われた。誰も起こしてくれなくてちょっとだけ拗ねていたとか。
「AUG、何を飲んでいるんですか」
昼下がり、丸テーブルに座る女性にサンダーは尋ねた。
珍しく日の差したベランダにAUGは独り、静かに休憩を取っていた。元々集団行動はあまりしないので違和感はないが、彼女の飲む何かは見慣れないオレンジ色。
少し魔が差したサンダーの素朴な質問に、AUGはゆっくりと振り向く。
「何だと思いますか?」
質問に質問で返す愚行。意表を突かれたサンダーは少し小首を傾げると、口元に手を当てる。
「…………花の蜜?」
メルヘンチックな答え。普段AUGがどこか掴めないふわふわした言動を取ることと、彼女の髪飾りのシラユキゲシの大きな花弁が目についたからだろう。
内心絶対ありえないとは思いつつ返答を待っていたサンダーだが、ゆっくりとまたその何かを一口飲んでから、AUGはふふっと少しだけ笑う。
予想外の音程。
「まあ、そんなところかしら」※レモンスカッシュです。
「…………ッ!?」
どーん。
その瞬間。サンダーに電撃が走った。
「花の蜜…………花の蜜?」
サンダーは早歩きで執務室に向かいつつ、さっきのAUGの言葉をうわ言のように復唱していた。普段はあまり表情を見せない彼女だからこそ、真顔のまま俯いて早歩きになっているのが非常に目につく。
確かに吸える花の蜜は存在する。きっと経験のあるものも少なくあるまい。
だがアレを、水感覚でガブ飲みする馬鹿は居ない。というより毒性は一応有るので気分が悪くなると思われる。
AUGは明らかにがぶ飲みだった。しかも平然と、よく考えると結構怖い絵面なのだ。
「ミツバチ系人形…………」
「え、何よそれ」
すれちがったAR-15がギョッとして振り向く。サンダーは完璧にインマイワールドを決め込んでいたので思わずビクリとする、だが脅したのは君だ。
目と目が合えば会話が始まる。ポ○モンバトルは勿論始まらない。好きだと気づくわけでも無い。
「ああ、いちごさん」
「AR-15」
「AR15さん」
「はい。それで、ミツバチ要素はどこなのよ。ソイツ」
ミツバチ要素。ミツバチ要素とサンダーが考え込んでしまう、どうやら呟いていた自覚すら無いらしい。
AR15がまた考え込んでしまうサンダーに呆れて肩を竦める。
「いや、今言った言葉の意味を聞いてるのよ私…………?」
「サンダー、うわ言みたいだったし…………大丈夫?」
横で見ていたM4がひょっこりとサンダーに尋ねるが、コクコクと上の空で頷くだけだ。
長考と言うぐらいには長い沈黙の後、すっくと顔を上げた。
「AUGさんが花の蜜を飲んでいたので、もしかしてミツバチなのかと」
「は、花の――――――蜜?」
どーん!!!!!
AR15に電撃が走った。残念ながら横のM4には感電しないものの、とはいえちょっと首を傾げてはいる。
眉間に皺を寄せながらまくし立てるAR15。
「え? は、花の蜜?」
「はい」
「飲むって? ガブ飲みでもしてたの?」
「ガブ飲みですね」
「ホントに!?」
「”マジ”です」
「マジなの!?」
想像しただけで気分が悪くなりそうなのか、AR15はドン引きというか青ざめた顔で顔を覆う。M4は「いや流石に冗談では」と言いそうになっていたが、二人の深刻な様子を見て言い出せずその場で空気を決め込んだ。
AR15が困惑しながら口元に手を当てて類推を吐きかけていく。
「ええ……? バイオマス燃料で動くのかしら。もしくは――――」
(AR15の発想結構現実的!?)
「分かりません。でも凄く美味しそうに飲んでいました」
M4は唸るAR15を横目に、何故そこまで現実的な発想ができるのに「AUGが冗談を言った」という思考に落ち着かないのかが本気で分からず困惑したような引いているようなよく分からない視線を向ける。
つまり端的に言うと若干引いている。こわい。
サンダーが謎情報でナックルボール。
「もしかしたら過去に何らかのトラウマが有って、今は花の蜜しか飲まないのかもしれません」
「それは深刻ね…………! でも気になるわ。バイオマス燃料なんて今どき非効率、そんな人形を運用することのメリットの是非はAUGには悪いけど指揮官に問うべき事案よ。私達に命なんて無いけれど、情報内容ぐらいフェアにするべきじゃない、聞いてないのならおかしいもの」
キャッチャー不在の大暴投がAR15のメンタルモデルにクリーンヒット。余裕綽々でデッドボールだが審判も不在と来た。つまり元から人にボールを当てるだけのデスゲーム、参加者はたった二名だった。
手応えありのサンダーはAR15と輪になって考え込みだす。マトモな視野で「何だこれ」と思えるのはもうM4だけとなってしまう。
「指揮官に聞いてみようと思って今向かっていたところです」
「やっぱり指揮官よね…………すぐ行くのかしら? 私も同行するわ、M4も来なさい」
「総動員!? 嘘よねAR15、演習まで時間があんまり――――――――」
私が嘘なんて言うものですか、と何故かM4が怒られた。
「そんな訳無いよね。どうしたんだい、ぞろぞろと」
「ほら違うって言ったじゃない!」
うそーん。
困ったような顔であっけらかんと否定した指揮官を見て、腕を引っ張られてきたM4が泣き顔でこれ見よがしに指差す。
AR15とサンダーがあまりにあっさりとした電撃に痺れてる最中、メソメソしたM4が指揮官に頭を下げる。
「申し訳ありません指揮官、別の部隊との演習なのに間に合わなさそうです…………」
「あーいや。えむぽーちゃんは被害者っぽいから俺は怒らないけどさ…………お二人さん、なんで真に受けたの?」
「「分かりません」」
「分かんないかー! あははは! 笑えないからAR15は早く演習に行ってきなさい!」
案の定怒鳴られた。
今回は同じ基地の部隊だったので一命を取り留めたが、他の基地との合同演習だったら笑い話にもなっていなかったところである。
「……今回は何を飲んでるんですか」
「何だと思います?」
「……血」
「ふふっ、かもしれませんね」
「――――――じゃなくて、トマトジュース」
「………………当たり。残念」
またコメディ書いてますよコイツ。
実家のような安心感。失踪するまでお付き合いください。
サンダーはまた
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引っかかる
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もう大丈夫