団長達が餅つきするだけの話になります
「「「団長(さん、様)、新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」」」
「今年もよろしく、アブラナ、イチゴ、アイリス」
私達は騎士団の執務室で新年を迎えた
他の花騎士達には休暇を与え、当直の花騎士として副団長三人を指名した
エノテラは駄々を捏ねたが傭兵団からたまには顔を出すよう手紙を送られて来たので渋々傭兵団に帰省して行った
「では諸君!今年もこの時が来た!朝に来る花騎士達を迎える為に餅米を蒸して蒸して蒸しまくるぞ!」
「いやいやいや、去年とか知らないわよ!」
「私も去年は帰省してたからわからないですぅ」
「申し訳ありません団長様、私も去年は帰省中でした」
「あー・・・・・・とりあえず皆で食堂に移動だ」
四人で食堂に移動し、前日から用意した大量のもち米(水に浸し済み)から蒸し器2つ分取り出して水気を切る
「団長、これくらいでいい?」
「あぁ大丈夫だ、あとは濡らして絞ったタオル敷いて・・・・・・もち米入れてと」
「あれ?真ん中に穴を作るんですか?」
「あぁばあちゃんはこうやれば蒸気が通りやすいって言ってたな」
もち米を蒸している間にも作業は残っている
四人で手分けしながら米麹から作る甘酒やお汁粉用の小豆を洗い火にかけていく
「よし次は団子粉をこねて・・・」
「ただいま団長、神社のパトロール終わったの!」
「ウサギゴケちゃん、先に新年の挨拶をしようか。団長、明けましておめでとう」
「あ、明けましておめでとうございますなの!」
準備をしているとパトロールに行っていたウサギゴケとウメが戻ってくる
「明けましておめでとう、ウメ、ウサギゴケ。すまないな、まだ準備をしている途中で」
「構わないぞ、私も手伝おうか?」
「いや大丈夫だ、それよりもそちらの眠そうなお嬢様を寝かせて来て欲しいな」
深夜のパトロールという事で頑張っていたであろうウサギゴケはうつらうつらと眠たげにウメに掴まりながら船を漕いでいた
「ウサギゴケちゃん、まだお餅やお汁粉は出来そうに無いから向こうで一緒に寝ようか」
「ウーちゃん⋯⋯問題ないの⋯⋯まだ起きてられる⋯⋯の⋯⋯」
必死に起きようとするもウメに抱き抱えられると睡魔に負けて夢の世界へと旅立っていった
「フフ、まだまだ子供ね」
「可愛らしい寝顔ですね♪きゅんきゅんしちゃいますぅ♪」
「団長、仮眠室で一緒に休んでくる」
「あぁ、お休みなさい」
ウサギゴケを抱えたウメは仮眠室へと向かって行った
「よし、今のうちに仕込むぞ!餅つきする頃にはもう一人助っ人が来るだろうしもう一踏ん張りだ!」
そして四人は餅つきの準備を始めるのであった
「団長、何よあの仮面⋯⋯どう見てもトウ⋯⋯」
「違います!私は⋯⋯」
数時間後、蒸し終わったもち米を使ってお餅を作ろうとした頃に助っ人がやって来た⋯⋯変な仮面を被り⋯⋯
「お米の国からやって来た!お米の使者がやって来た!お米を食べれば元気が湧きます!元気モリモリ春庭米!⋯⋯お米の使者、トウ仮面です!お米食べましょう!」
よく見るとお米をモチーフに作られた仮面だと分かる怪しい仮面を被っり司聖官と思われる法衣を着た女性が居た
手に持った特徴的な杖や美しいエメラルドグリーンの瞳以上に目を引くのは胸元から覗く下乳である
「あぁアブラナ、彼女は不審者ではないぞ!手伝いを頼んだトウ仮面だ!」
「いやいやいや!どう見てもトウカよね!」
「私の変装を見破るなんて⋯⋯流石ですね」
トウカと呼ばれた女性は仮面を脱ぐと笑みを浮かべて新年の挨拶をする
「改めまして明けましておめでとうございます♪本年も眠り姫様のご加護が皆さまの元にも訪れますように⋯⋯」
「えぇ⋯⋯あけましておめでとう⋯⋯」
先程までの奇行に軽く引きつつも新年の挨拶を返すアブラナ
「よし、じゃあ早速だがトウカ!餅つき用のもち米の様子を確認してくれないか?」
「はい、喜んで」
団長に促されたトウカは蒸したもち米を少し摘まんで口に含む
「ふむ⋯⋯ふむ⋯⋯大丈夫です!これなら美味しいお餅になりますよ!」
「よし!なら後は杵と臼だな!」
「杵と臼ってあっちで暖めてるやつ?」
アブラナが指を指した先にはお湯に浸けた杵、窪みにお湯を注いで暖めていた臼があった
団長は臼の中のお湯を捨てると蒸し上がったもち米を持ち上げる為に一緒に入れていた布ごと臼の中に入れて布を引き抜く
「よし、トウカ先生!ご指示を」
「団長様に指示が必要には見えませんがわかりました。では杵でお米を潰して下さい」
団長は杵で押すようにもち米を潰していく
しばらくするともち米の粒がどんどんと押し潰され餅らしくなってきた
「そろそろ大丈夫そうですね。団長様、一度杵を濡らして来て下さい」
「ああ」
餅がくっ付けないようしっかりと杵を濡らして、臼の中の餅へと杵を振り下ろす
「ふっ!ふっ!ふっ!」
「はいっ」
団長が何度か餅に杵を振り下ろすとトウカがお湯で濡らした手で餅をこねて返して、手を引いた時に再び団長が杵を振り下ろす
ぺったんぺったんとリズム良く餅を突く団長とトウカ
しばらくするとお米の粒は無くなり、もちもちのお餅に仕上がる
「団長様、あと数回で止めておきましょう」
「分かった」
「団長、こっちもお汁粉煮えたわよ」
「そうか、助かる」
二人が餅を突いていた間にお汁粉に入れる団子を作っていたアブラナ達
鍋の蓋を開けると甘い香りが周りに広がっていく
「皆さん、突き立てのお餅を食べてみませんか?」
「頂くわ」
「わぁい♪楽しみですぅ♪」
「よろしいのですか?」
「問題ない、色々味も用意しておいたぞ」
団長はトウカの用意した小さな箱の中から様々な調味料を取り出す
「アタシは胡麻で」
「私は砂糖醤油にしまぁす♪」
「ではきな粉で頂きたいです⋯⋯黄緑のきな粉?」
「それはうぐいすきな粉って私のばあちゃんの住むウィンターローズの一部地域で食べてるきな粉だ。見た目以外普通のきな粉と変わらんぞ。さて私のじゅねは~♪」
団長はじゅねと呼ぶ何かを探すが見つからずトウカに訊ねる
「あの~トウカさん?私のじゅねは?」
「申し訳ありません団長様⋯⋯じゅね、エゴマは輸送中に害虫に襲われ紛失してしまったようで⋯⋯」
「⋯⋯」
団長は天を仰ぎ、静かに涙を流す
団長にとって祖母と突いた餅をじゅねを付けて食べるという行為はとても重要な行いであった
静かに害虫への怒りを燃やし、悲しみに嘆く姿は酷く寂しげであった
「ん⋯⋯いい匂いするの」
「おや、起きたかウサギゴケちゃん」
仮眠室で休んでいたウサギゴケは目を覚ますと同時に美味しそうな香りが部屋に流れて来ている事に気がついた
外はまだ薄暗いがもぞもぞとベッドから降りてウメの暖かな手を掴みながら匂いの元へと向かう
「すごい!すごいの!」
ウサギゴケはウサギノオやススキから聞いた月で餅つきをするウサギ達の話を聞いてから餅つきに対して強い憧れを抱いていた
そして目の前で餅つきが行われており、興奮したように手を振っていた
「ウサギゴケちゃん、私達も一緒に餅つきしようか」
「いいの!?ウーちゃんもやっていいの!?」
「ああ、手を洗って団長にたの⋯⋯初日の出か」
徐々に差し込んでくる初日の出の光に頬を緩めるウメ
ぽへ~とウメと一緒に初日の出を見つめるウサギゴケと視線を合わせるようにしゃがみ話し掛ける
「元旦の初日の出と言うのは縁起がいい事だ、今年はウサギゴケちゃんの元に沢山いい事が起きる筈だ」
「本当なの?」
「ああ、その証拠にほら⋯⋯」
ウメの視線の先を見ると子供向けの小さな杵と臼を用意している団長達の姿があった
「さぁ初めての餅つき体験と行こうか」
「分かったの♪」
仲良く手を繋いで団長の元へと向かう二人
人生初のつきたてお餅の味は温かくもちもちで幸せな味がすると頬っぺたを膨らませながら食べるウサギゴケを優しい笑みで見守る団長達の姿があった
活動報告の方に今年の抱負を書きましたので宜しければ見ていって下さい