花騎士秋桜劇場   作:インティライミ

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団長とアブラナが団長の地元の煮しめを作るだけの話


花騎士秋桜劇場:騎士団の煮しめ

「もうすぐ年が明けるのでうちの地元でよく作る煮しめを作りたいと思います!」

「⋯⋯唐突ね⋯⋯しかも大晦日は明日なんだけど⋯⋯」

 

いきなり大きな鍋を持ってきた団長の発言に呆れた顔を向けるアブラナ

騎士団は現在大掃除中であり、持ち場の掃除を終えた二人は既に掃除の終わっている食堂に来ていた

 

「毎年お雑煮やらお餅やらおせち料理ばっかだからたまにはね⋯⋯てか私がばあちゃんの作る煮しめ食べたくなった!あれがなきゃ正月迎えられん!」

「⋯⋯団長ってわりとおばあちゃんっ子よね」

「まぁな、両親は共働きだったからよくじいちゃん、ばあちゃんに世話して貰ってたからな」

 

団長は昔を懐かしむような表情を浮かべながら使う材料を並べていく

 

「だし用に昆布、煮干し⋯⋯具材はじゃがいも、ごぼう、人参、水煮にしたフキ・ワラビ・タケノコ、こんにゃく、しらたき、油揚げ、焼き豆腐でいいな⋯⋯味付けに八方じ⋯⋯は無いから醤油、みりん、料理酒辺りで味付けてだな⋯⋯明日も皆分作るから家から持ってくるか⋯⋯」

「明日も作るってこれは誰用なのよ」

 

材料が不足してないか確認しながら呟く団長の横で訊ねるアブラナに対してまな板と包丁を用意しながら答える

 

「自分用兼明日の当番の娘達用だな。明日も新年の挨拶に来た花騎士達に餅振る舞う予定だから仕込みが必要だし、巡回してる娘も腹が減ってるだろうしな⋯⋯アブラナ、干し椎茸を戻したのをそこに置いてるから取り出して水気絞ってから食べやすいサイズに切っててくれないか?」

「わかったわ」

 

アブラナに指示を出しながら鍋に水を入れ、昆布と煮干しを入れて火にかける

人参やごぼう、じゃがいもの皮を剥いていると干し椎茸を切り終えたアブラナも皮剥きに参加し、二人で黙々と作業していく

しばらくすると鍋の中の水が沸騰し始めたので団長は網杓子を取り出す

 

「煮汁の方はもういいかな⋯⋯。アブラナ、ごぼうを斜め切りにててくれ。⋯⋯煮干しは後でふりかけとかに使うか」

 

網杓子で煮干しを取り出し、椎茸と椎茸を戻した汁を鍋に入れていく

 

「団長、こんな感じでいい?」

「ああ、大丈夫だ。次は人参を適当なサイズで切ってくれ、こっちはじゃがいもを切るから」

 

そう言って皮を剥いたじゃがいもを感覚任せで大きめに切っていく

 

「ねぇ、ちょっと大き過ぎない?一口サイズで切ったりしないの?」

「いいんだよ適当で、逆に小さすぎると煮崩れて溶けてくんだよな~」

「ふ~ん」

 

切ったごぼう、人参、じゃがいもを鍋に入れ、次の準備に移る

 

「アブラナ、ワラビを食べやすいサイズに切ってくれ、根元は硬いから切り落としてくれ。さてこっちは水煮したフキをさっと洗って食べやすいサイズに切ってと⋯⋯」

「呼びましたか団長殿?」

 

フキの調理をしていたら丁度近くを通りかかった花騎士のフキが名を呼ばれたと勘違いし入って来た

 

「あっ、すまない。こっちの調理をしてたんだ」

「そうでしたか。何か私に出来る事が有ればいつでも声を掛けてください。私の剣はノヴァーリス様とあなたの為に振るいますので」

「そうだな⋯⋯他の場所を巡って人手が足りない場所の掃除を手伝って欲しい。その後は街の巡回を頼む、大掃除で忙しい中害虫が現れたら大変だからな」

「わかりました、では」

 

フキは団長に頭を下げ、食堂を出て行った

 

「⋯⋯随分と慕われてるようで」

「ははは⋯⋯」

 

ジトーと団長を横目で睨むアブラナと苦笑を浮かべる団長

切り終えたフキ・ワラビを鍋に入れ、タケノコも水洗いしてからそのまま鍋に入れる

 

「タケノコはそのまま入れるのね」

「大きいのは切ってたがうちは基本そのまま入れてたな」

 

団長はアブラナと話ながら焼き豆腐を取り出して四角く、時折四角以外にも切り始める

その間アブラナはしらたきを取り出し、水洗いをして豆腐と共に鍋に入れていく

 

「次はこんにゃくだな!煮しめ味の染みたこんにゃく好きなんだよな~。こんにゃくは真ん中に切れ込み入れてから穴を広げて、穴に角を入れて⋯⋯」

 

真ん中の穴を一回転し捻れたこんにゃくを二人で作っていき、鍋に入れる

 

「後は油揚げ入れてあく取りしながら味調整だな」

 

お玉を手に持ち、あくを取りながら少しずつ醤油、みりん、料理酒を入れて味を確かめていく

 

「うーんばあちゃんの味にはほど遠いがこんなもんだな、後は落し蓋して沸騰しない程度に煮込んでから一晩寝かせて完成だな」

「今すぐ食べないのね」

「今は味が染み込んでないからあまり美味しくはないんだよ。一晩掛けて具材に味が染み込んで完成、そして大掃除や正月の間母親が料理作る手間を省けるってね」

 

じっと鍋を見つめる団長の横顔を見つめていたアブラナがそっと側の寄って来て団長の手を握る

 

「ねぇ、団長。今度団長のおばあさんの味を教えて欲しいんだけど⋯⋯」

「ならお盆の時に帰省するからその時でもいいか?」

「うん⋯⋯」

 

団長の身体に自分の身体をくっ付けるアブラナ、二人の視線はじっくりと煮込まれていく煮しめへと注がれていくのであった

 




今年最後の投稿になります、皆様よいお年を
煮しめは年末年始とお盆の時に作りますね~味付けは基本八◯汁!家に有れば便利な万能調味料◯方汁とスタ◯ナ源たれ!
⋯⋯どうでもいい話ですが他の県の煮しめってうちの県のと全然違うんだな~と大人になってから知りました⋯⋯
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