三大勢力が各々の主張をめぐって戦争を続けていたころのことである。
冥界の神であるハデスは毎日の仕事にうんざりし始めていた。
《天使と悪魔と堕天使が起こしている戦争のほかに多くの者が冥界にやってきているために儂の仕事は最近増えておる。では、奴らが起こしている戦争以外にどうして多くの者がここにやってくるのだ?プルート》
聞いているだけでハデスの感情が滲み出てくるような声で彼は部下に問いかけた。
「それは……最近多くの者が亡くなるようなことが起こっているからです。」
基本的に地上に出ることはなく、情報は基本的にグリムリッパーを通して得ているプルートは手下から得た情報を淡々と答え、それ以外に何かあるのかと頭をひねった。
《そうだ。ここ50年の間に人間が冥界にくる数が増えている。やってくる者たちに聞いてみると人間たちも戦争の最中であることが分かった》
「そうでございましたか。ですがそれは仕方のないことではないでしょうか?ハデス様のようなお方が人間に干渉することは神たちが決めたルールに反します」
神様たちには人間に干渉するには厳格なルールが存在する。
一番大きなものは人間が神様の力を借りたいと思ったとき儀式を行うことで神のお力添えを得ることができるというものだ。それ以外では大きな干渉はしないという取り決めがあった。昔は、神が起こした喧嘩を人間たちに喧嘩をさせ決着をつけさせるといった例外はあった。
だが、神が生まれた当初はルールなど存在せずに好き勝手にやりたい放題だったが、それでは人が神の奴隷であることと変わらないと考えた半神が神たちに喧嘩を売り、勝利したためこのようなルールが創られたといわれている。
私はこの出来事が起こった後に創られたために伝聞として知っているだけで、きちんとしたことはわからないが神が守っていることを考えると本当のことのように思える。
話を戻すとハデス様はやらなくてはいけないことが増えていることによって鬱憤がたまっているのではないのかと考えているとハデス様が口を開いた。
《人間に干渉しないというルールは各神話体系の神の取り決めであるために儂も我慢をしている。
……しかしだ、なぜ三大勢力である天使、悪魔、堕天使はルールがないのだ。人間同士が殺し合いをし冥界に降りてくるのは許せるが、奴らが戦争の道具に使った人間が殺しあい降りてくるのは我慢がならん。奴らのせいで仕事が増えておる。しかも、悪魔や堕天使は冥界を我が領土とし好き勝手に使っておる。そのようなことを考えると腹立たしくて仕方ない。今までの我慢がすべて溢れ出てくるようだ》
先ほどよりは落ち着いた声でしゃべりだしたために、愚痴を言われるだけかと気を抜いていたプルートだったが、しゃべるにつれて怒りの口調が出てきたためにだんだん体に緊張が走ってくる。
「ハデス様、落ち着いてください。そのようなことをおっしゃられても私たちではどうしようもありません。最近では神器といったものが与えられた人間が現れ三大勢力の抗争に手を貸していることもあり、わたしたちが手を出すことが難しくなっていると聞いています。
その中でも神滅具というものは魔王を討ったといわれているためにハデス様であっても殺される可能性があります」
そう……神滅具は魔王を屠るほどの威力を有している。私たちが奴らに手を出したとしても、消されるのがおちだろう。
《私たちが不平を持っていたとしても奴らにはそれを黙らせるほどの力がある。ゼウスやポセイドンは仕事もほぼなく天界で遊んで暮らしているだろうから歯向かうことも理由ない……が儂には歯向かいたいと考える理由がある。しかし、冥界に降りてきたものを下僕として使いたくとも神器は死んだ時点で所有者から離れる。そして我が軍団であるグリムリッパーは魂を刈ることはできても、奴らを倒す決定打には欠ける。だから、我々は手出しができないのだ。》
ハデス様はそういって考え込むように腕を組ながら頭を垂らした。
「では、グリムリッパーの強化をするのはいかがでしょうか?三大勢力のせいで仕事に時間がかかるから奴等に負けないようにするために手伝ってくれと言えば快く助けてもらえると思いますが」
《……それでは時間がかかってもいいから仕事をしろといってくるだろうな。神は基本的に仕事熱心ではないためどうしようもないという状態にならない限りは手伝うことはない。創造神でもない限りはな……》
「では、同じ神話の神であるヘパイストスに頼んでみたらどうでしょうか?あの方ならグリムリッパーの武器を作ってくれるのでは……」
《確かに頼めば作ってはくれるだろう。しかし、作ってくれたところでグリムリッパーどもが弱いのではどうしようもない。いくら装備がよくても中身が弱いのでは話にならない。むしろやられて武器を取られておわり、さらに相手を強化してしまうだろう》
そういってまた頬に手をついて考えこんでしまった。
しばらく時間がたち、自分もやるべきことをやってしまうためにその場を離れようと思いハデス様に声をかける。
「ハデス様、お考えのところ大変申し訳ないのですが、少し私もやることがございますのでこの場を離れたいと思うのですがどうでしょうか?」
《……ヘパイストス……装備……》
ぶつぶつ物を言いながら物思いにふけっていたために聞こえなかったようなのでもう一度大きな声で同じことを言おうとしたとき急にハデス様が立ち上がった。
《よい案を思い浮かんだ。最近、冥界の魔物がここによく入り込んで来ていると前に言っていたな》
確かにここ最近冥界の魔物活動が活発になっているのかどうなのかはわからないが多くのグリムリッパーが対処に当たっているのとの知らせがきていた。
「はい。確かに多くの魔物がこの近辺にやって来ています」
《なら、その対処のために魔力の効かない金属で柵を造ることにする》
「柵を作ることが何か対処になるのでしょうか?」
柵を作っても三大勢力の問題は解決しない。何か変わることでもあるのだろうか?
《柵をつくることはおとりだ……本当の目的は魔力の効かない金属を手に入れることにある。それに冥界にいる者たちの魂を入れ込むのだ。そうすれば奴らが対処することが難しい
者たちができるだろう》
「お言葉ですが……ハデス様、それはさすがにリスクがありすぎではないでしょうか?」
考えていることはわかるが、そう簡単にうまくいくだろうか?
少しでも不審な動きを見せればすぐにでも三大勢力は邪魔をするか策自体を止めるように仕向けてくるだろう。最悪消される可能性もある。
もし、そのような存在ができたとしても、誰が創ったかは一目瞭然になる。もしそうなったら私たちは今よりもひどい状態になることは間違いない
《そこの対策はきちんと考えておる。それに関しては儂のいうことをきいていればいい、失敗したとしても何とかなるようにはするつもりだ。だから、今すぐにでもヘパイストスに連絡を取らなくてはならない。この策に一番必要なものは金属であるからな》
そういってハデス様は立ち上がった。
《だからここを少し開けるその間を頼んだぞプルート》
そして、私に後を任せる言葉を残して