多くの人は生きている中で自分にとって心惹かれるものをいつの間にか見つけているのではないだろうか?それは頭が好きだと感じているのか……それとも体が自分を釘付けにして離さないのか……それは、どうかはわからないが、俺にとっての心が惹かれたものは場所だった。
それが自分にとって魅力に思えているのは両方の理由なのかもしれない。
初めて見た時のきれいな景色……下を見れば地面があるが、顔をだんだん上げていくにつれて、地面がなくなっていき青い海が見える。大きな波の音が心地よく聞こえ、晴れた日には遠くに山が見えるこの場所が好きだ。
子供のころは親の事情によりよくこの場所に来て時間をつぶしていた。
木に寄りかかりながら景色を見ていると自然と眠りに誘われ、いつの間にか暗くなり家に帰る。これの繰り返しだった。
そうして過ごしていた毎日、いつからかそこで小さな友達ができた。
彼は物を創ることが好きで土いじりをしたり、木を削って何かを創ったりしていた。横で見ていた俺もまねをしたりときに教わったりしながら遊んだ。いつしか、彼は俺の相棒となりいつでも一緒にいるようになった。
「ねぇ、どうしては君は僕以外に姿が見えないの?」
彼と一緒にいるときにたまにこの場所で人に出会うときがある。その時の全員が俺の方を見るだけで、彼には目もくれないのだ。確かにこんな場所にいるという時点で奇妙な目は向けられるけど、僕よりも小さく手のひらサイズの小人が肩に乗っていたり、胸ポケットに入っていたりするのに目をやるのは僕だけということがとても変に思えた。
(そんなことは簡単だ……彼らには俺が見えないのさ。むしろ俺のことを見ることができるお前の方が珍しい)
そういって彼は、自分の作業に戻った。
「見えないってどういうこと? 僕が普通の人間とは違うから?」
僕に見えて他には見えないことというのは少なからずある。僕自身、人間であるがそうでないともいえるからだ。
(そういうわけじゃない。誰にでも適当ってもんがある。お前はそれに当てはまっただけで、他の奴には当てはまらなかった……ただそれだけだ)
「いまいちよくわかんないけど、君に選ばれたってこと?」
(それは、少し違うな。俺に選ばれたというよりかはお前が選ばれたといった方が正しいだろう。というか、俺も詳しいことはよくわからん。気が付いたらここにいてお前がいたから一緒にいる。一緒にいるのは馬が合うからだが……ただ一つ言えるのは俺が見えることは時が来るまで友人であれ家族にさえ、誰にも言ってはいけないということだ。言ったら最後、俺はお前のそばから消えなければいけない)
「それはなんで?」
(口では説明しづらいんだがな、つるの恩返しのようなものと思ってくれ。いることが知られてしまったら、俺はお前のそばにはいられなくなるのさ。
だから誰にも俺のことを口に出すことはなしだ。これは約束だ……ちょうど場所もいいしな。
「話しちゃいけないことはわかったけれど、場所がいいってどういうこと?」
(ここは人々が神様に願いを託す場所だ。いうなれば願う場所だからな。俺からお前への願いを聞き届けてくれ。代わりにお前の願いを聞いてやる)
「そうなの?じゃあ、しゃべらないからさ、これからも一緒にいてよ。君といると面白いんだ。僕の知らないことを教えてくれるし、話し相手にもなってくれるもん」
(わかったよ。ただし、約束が守れたらな)
「じゃあ、指切りをしよ?お母さんと約束をするときにするんだ」
(わかった)
そういって彼は僕の小指を自分の手で握った。
「これからもよろしくね」
(あぁ、お前に何があっても約束をたがわない限りはともにいるよ)
そういって、お互いにゆっくりと指を離した。