申し訳ないです。
また与太話いれようかとも思ったのですが本編6話しかないのに2つも入れるのはちょっと…とも考えたのでやめました。
───遡ること数分前。
「えっ、ウソ?!
…。回線が…切れた…?!」
そう驚く遠坂凛。
如何に優秀といえど、彼女でも予測の範囲外の出来事なようですね。
まぁ私からすると、その反応は予測範囲内ですけど。
「ラニ!原因は?!」
「ただいま調査中です。
…出ました。これは…?!」
「えっ、何が起こってるの?!」
「何者かが生徒会室の回線にクラッキングを仕掛けています!
いつから行われているかは不明ですが、現在回線の7割が使用不可。
ミスター白野への接続がほぼ不可能となっています!」
クラッキング…相手のコンピューターネットワークに侵入し、システムの破壊や改竄を行うこと。
生徒会室の
ですが、ここは月の裏側といえどSE.RA.PH。
基本演算をムーンセルが行う、クラウドコンピューター型の世界。
旧校舎がそこに存在し、ネットワークに依存している以上、如何に強固なファイアウォールを構築していても付け入る隙はあるのです。
ふふふ…。遊びで生徒会室のネットワークに侵入してみましたが、中々に面白いですね。
人間の慌てふためく姿を見るのは最高に楽しいです。
まぁこれも、以前の私が旧校舎の様子を探れるようにしていたお陰ですが。
それでもセンパイのマイルームだけ見れないのは本当に忌々しいです。
「回線の修復はできる?!最悪、音声だけでもモニターできるようにならない?!」
「今行っています。ですが…。
何らかの制限がかかっていて修復が非常に困難です。
音声だけのモニターができるまでも時間がかかります。」
「私も手伝うわ!一刻も早く修復しないと!」
ラニさんも凛さんも慌てちゃって。
私だって暇じゃないんですから、いつまでもクラッキングなんてしません。
…あら、お二人とも予想外に優秀ですね。
使えなくなった回線のうち、1割をもう修復しちゃいました。
もう少し時間がかかると踏んでいたんですけど…。侮れませんね。
では、次にいきましょうか。
回線が使えなくなるだけじゃ、貴女方にとって面白くないですよね?
なら、回線だけじゃなくて、
一体どうやってこの状況を打開するのでしょう。
サクラとプロテクトの同期を切るなんて、私には造作もありません。
もっとも、プロテクトを壊すには、サクラを消滅させるのが手っ取り早いんですけど…。
ここでサクラを消滅させてはセンパイも悲しむだろうし、それはしません。
消滅させるなら、もっと相応しい舞台があるはずです。
同期を切った後は、プロテクトにもクラッキングをしましょう。
プロテクトが薄くなったら、迷宮からエネミーたちが一斉に旧校舎へ押し寄せてくるでしょう。
いくら凛さんたちといえど、エネミーを相手取るのは不可能ですよね?
サーヴァントなしでは彼らを倒せませんよね?
「────!ラニ!簡易プロテクト構築の準備をして!」
「簡易プロテクト?何故そんなものが…。
──なるほど、了解しました。校舎周りに簡易プロテクトの構築を開始します。」
「ナイス。迅速な対応で助かったわ。
それにしてもヤバいわ、この状況。
サクラのプロテクトもクラッキングをされてるせいでそう長くはもたないし…。
ラニのプロテクト、20分が限度よね。」
「おそらく。
20分を超えるとエネミーがプロテクトを破壊し、校舎内に侵入してくるでしょう。」
「…。白野に帰還してもらうのが一番なんだろうけど…。」
「回線が通じていない以上、それも困難でしょう。
なので今は、プロテクトではなく回線の修復に時間をかけるべきです。」
「そうね。なら早いとこ終わらせちゃいましょ。
制限時間20分だけど、死ぬ気でやれば回線も開けてくるでしょ。」
なるほどぉ。そうきましたか。
プロテクトについてはラニさんの簡易的なものに任せて、自分たちは回線の修復に励むと。
実に良い判断をします。
おそらく私も、同じ立場に置かれたなら同様の判断をするでしょう。
でもぉ、ラニさんの簡易的なプロテクトじゃ貴女たちの言う通り、せいぜい時間稼ぎが関の山です。
ほら、そうこうしているうちに、ますますプロテクトが薄くなっていますよ?
「厳しいわね。どんどんプロテクトが薄くなってきてる。
サクラのもそうだけど、ラ二のも。」
「もう少し時間があれば、より強度があるものを構築できたのですが…。」
「こればかりはラニのせいじゃないわ。仕方ない。
今は回線の修復に集中しましょ。まだ希望がないって訳じゃないし、ね。」
「はい、そうですね。
────!ミス遠坂!」
「えっ、今度は何が起きたの?!」
「いえ、悪い知らせではありませんが…。
回線のクラッキングが停止しました。
それに伴って使用不可だった回線が修復されています。
今なら音声のみのモニターも可能です。」
「え、ウソ?!一体どういうこと?!」
あぁ、プロテクトが薄くなったみたいですし、回線へのクラッキングは止めてあげたんですよ。
なので、センパイの助けを得ることもできますよ。
センパイがそこから動けるのであれば、ね。
「現状、クラッキングの停止の理由について決定的な結論は下せません。
ですが、これは好機です。
モニターはできていませんが、状況確認はできます。
早くミスター白野へ連絡を。一刻を争います。」
「そ、そうね。
早く白野の状況も確認しなきゃね。
今のあいつはっと…。
えっ、交戦中?誰と?
はっ?パッションリップと?!
何がどうなってるのよ…!」
「パッションリップ…!
何故彼女がミスター白野と交戦しているかはわかりませんが、非常に危険です。」
「えぇ、そうね。
なんて言ったって、パッションリップはアルターエゴだもの…!」
サルベージした存在といえ、パッションリップもアルターエゴ。
存在するだけで力場を変えて、センパイの強制退出を困難にします。
「とりあえずプロテクトのことだけは伝えなきゃ…!
白野!そっちは大丈夫?!モニターできないけど、まだ生きてるわよね?!」
狂化を施したとはいえ、パッションリップがセンパイを殺せるはずはありません。
第一、殺そうとしたのなら私が止めますけど。
そもそも、今のパッションリップを相手にして、センパイが逃げ切れるはずがありません。
まぁ、アーチャーさんを捨て駒にするのなら話は別かもしれませんが。
でもそんなこと、センパイにできるはずありませんよねぇ?
ふふふ、楽しみですね。
さぁセンパイ?生徒会を助けたいならアーチャーさんを踏み台にするしかありませんよ?
貴方はどちらを取るのでしょうか。
思いっきり苦悩しちゃってください。
私はどちらを取ってもらっても構いません。
校舎が無くなったのなら、また新しい箱庭を作るだけです。
アーチャーさんがいなくなったのなら、私が貴方を守り続け、生かし続けるだけですから。
どちらにしても、貴方は私の手のひらの上なんです。
月の裏側からの脱出。このゲームは詰みです。もう永遠に進むことはできません。
ふっふふふふ、あっはははははは!!!
───この危機的状況。
これを覆すことなど不可能だ。
突如顕在化した、太陽の如き威圧。
その威圧をもって、『彼』は敵を圧する。
──太陽そのものとさえも、感じられるほど。
黄金の輝きはなくとも、その身は太陽神スーリヤの子。
『彼』は現れた。
幽鬼の如く痩せ細った身体とは対照的な、重く、静かな声と共に。
「我が主、ジナコ=カリギリの命に従い参上した。
──オレがこの校舎を守る槍となろう。」