Fate/EXTRA CCC、BB√   作:空飛ぶジャガバタ

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次からようやく本編です。長かったですね()
なのでサブタイトルがこの物語独自のものになります。



聖女の深層 -anima ataraxia- ④

───思えば、聖杯戦争(月の表側)でも、死の淵に立たされているという状況は日常茶飯事であった。

   例えるなら、何気なく踏み出した一歩が右足か左足かで生死が決まってしまう。

   そんな世界だった。

 

などと、ふと思ってしまった。

今から死にゆく人間には意味のない思考だ。

踏み出した一歩が右足でも左足でも、今はどちらでも良い。

どっちにしても、死の運命からは逃れられないのだから。

 

自身の心臓を終着点として走る凶手。

この凶手を払いのける力など、自分には到底ない。

しかし、タダでは殺されてやらないと思ったのか、はたまたこんな状況でもまだ諦めていないのか、最期の力を振り絞り、縛られている体を動かそうとする。

動かそうとしたところで───

 

 

 

その凶手が目的を果たしたのだと、自身の体が痛みをもって教えてくれた。

何とも親切な体だ。

 

 

「…!…?!」

 

声が聞こえた。

それは叫ぶような声でもあり、嘆くような声でもあった。

どこから聞こえているのかはわからない。

 

 

胸元からゆっくりと、凶手が抜かれていく。

心臓の痛みにようやく慣れたというのに、また新たな痛みが奔る。

体内は漏れ出た血液で暖かいのに、体外 ─主に皮膚感覚─ は寒ささえ感じるようだ。

 

自身の死に足を踏み入れたとき、自身を縛りつけていたものが全て消え去った。

自由になった体は、支えを無くしてただ前へ倒れていく。

パシャッと、水をまき散らす音がした。

大きさからして人間一人が倒れこんだ音だろう。

─と、自身のことのはずが他人事のように思えた。

 

 

女の笑い声が聞こえる。悦に満ちた笑い。

いつかの天女のような微笑とは程遠い、俗物的で人間性に(まみ)れている笑い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな笑いを打ち消すかのような慟哭が響いた。

聴覚に意識を割くことができない今、誰が発したのかはわからない。

だが、それでもわかったことがただ一つだけある。

 

 

その慟哭は、現実を反転させ、影の世界(悪性情報)呼び起こ(解放)したということ。

 

 

周りが黒い海に染まっていく。

何者かが制御していたモノが、その制御から外れて漏れ出している。

──悪性情報。ムーンセルが観測した人間のあらゆる負の感情。

  嫉妬、憎悪、怨恨、嫌悪。この世で最もおぞましいモノ。

  個人の欲望(願い)を叶える、尽きることのない第三堕天の聖杯織機(ヘブンズフィール・アートグラフ)

  

周りを侵すものが何なのか、頭によぎった。何故かその正体を知っている。いや、知らされたというべきか。まるで、脳に直接ねじ込まれたかのようだ。

自身の体にもそんなものが幾ばくか入ったからだろうか。

 

 

 

そんな中、自分の名を誰かが叫ぶ。

ふと体が軽くなる。

体が軽くなったまま自分は、筋肉質の腕に抱かれながらこの場から離れているようだ。

 

 

 

 

 

──岸波白野の意識はそこで途切れた。

虚ろな目で視た最後の景色は、悪性情報に包まれていく一人の少女の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 




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