アトラがほんの少しだけ、我慢出来なかった結果   作:止まるんじゃねぇぞ……

13 / 28
原作では絶対不可能であった者達同士の結託、始まるよー(払った代償から目を背けつつ)




雨降って地固まる

バエル宮殿へと帰還し、バエル……否、プルフラスを返却するとマクギリスは置いてきたグレイズ・リッターへ乗り込み再び戦場となった町へと乗り込んでいった。モビルスーツは大きい人形の機械である。普段ならエイハブリアクターの性質の関係上簡単に町には出せないが、この被害の大きさを考えればそれを無視してでも駆り出して消火活動に勤しまねばならなかったのだ。

 

消火用の特殊弾を装備した陸地の基地のグレイズを指揮しつつ、生存者を探す地元のレスキュー隊と協力して町の消火を行うこと数時間、ようやく応援を要請していた地球外縁軌道統制統合艦隊のMS隊が地球に降下して駆けつけ、それに少し遅れる形でアリアンロッド艦隊のMS隊もやって来るという形となった。

 

そうして足りなかった人手を得たことで数日かけてようやく鎮火に成功するも、それによって判明したあまりにも凄惨な被害者数と、失われた建物や施設の数に皆が沈痛な面持ちとなった。

 

 

ハシュマルの進行ルート上にあった街や施設はギャラルホルンにとって重要な要地ばかりであり、人も多く集まっていた。少なく見積っても死者、重軽傷者含む被害者数は百万人を越えている。

 

そしてギャラルホルンとして致命的であったのは、最高決定機関であるセブンスターズの七家の内2つがこの戦いで失われてしまったことと、ギャラルホルン内でもその場所は極秘であったエイハブリアクターの生産工場が完全に焼失してしまったことであった。

太陽近傍の軌道の工場から受け取った部品を組み上げる為の工場であり、ここでしか作られていない部品も多いため、実質的にエイハブリアクターの生産技術はかなり失われてしまったこととなる。

 

後に【厄祭の再演事件】と名付けられる事になるその災害は地球の治安を荒らす荒波を引き起こした。これにより、かねてから低調気味であったギャラルホルンの権威は更に低迷し、各経済領域は本格的に彼らの必要性に疑問視を抱くようになっていく……

 

 

 

 

「……まさか、七星会議の椅子が貴公と二人だけになってしまうとは、な……最早、セブンスターズという制度そのものにも限界が来ているとしか言いようがあるまい」

「貴方がそれを言いますか。エリオン公……ですが、そう言いたくなる気持ちも分かります。私も、このような事態に陥るとは想像もしていませんでしたから……」

 

 

あの事件から早くも一月が過ぎた。まるで嵐が過ぎ去るような多忙な日々を過ごした二人は、若干やつれているようにも見えた。

 

なにせ今まですら2つ席が空白になっていたセブンスターズの役職を二人でなんとか分け持ちながらこなしていたのだから無理もない。この二人がいくら有能であったとしても、身体は一つしかないのだ。それに加えて先の【人災】による被害の後始末もいくらでもあった。

 

エルク・ファルク公、そしてネモ・バクラザン公はモビルアーマーの被害をうけその家族ごと全滅し、イオク・クジャン公に至っては彼が管理していた蔵の座標からあのモビルアーマーのエイハブリアクターの反応が出ていた事が判明し、即時逮捕となった。

 

ギャラルホルンはかつてモビルアーマーを倒したことでその地位を認められた存在である。それ故にモビルアーマーの取得、修理等は禁じられており、例えセブンスターズであったとしても発見した場合は他のセブンスターズへの報告が義務付けられており、それを怠った者に対する処罰が法の下で決められていたのであった。

更に言えば今回のように明確な被害を出してしまった場合は特に厳しい刑罰が定められており、お家お取り潰しの上で死刑は免れない重罰が課されていた。本来ならこういった古い法は整備されているものだが、長らくセブンスターズによる統治が続いていた為か、それで問題無かった為か変わることなく放置され続け、三百年前と同じ刑罰が執行される事となってしまったのであった。

 

その為現在、イオク・クジャンはこの場には居ない。現在は塀の中で自分の犯した罪を悔いながら、死刑執行の日を一日一日数えながら待つ日々を過ごしている事であろう。

 

そして残るボードウィン家のガルス公は、現在心労で倒れ、入院中の為に七星会議には出てきておらず、代理としてその娘の婚約者であるマクギリスが出てきていたというわけであった。

 

尚、彼にあのモビルアーマーを売ったという圏外圏からきた商人は地球圏から火星圏までのギャラルホルンによって指名手配されており、現在目下捜索中である……そこより先はギャラルホルンでも元々手を出せない領域であり、弱体化しつつある今のギャラルホルンでは手の出しようのない場所でもあった。

 

 

モビルアーマーの被害の後始末やら仕事の引き継ぎやら各経済領域への対応に追われていたことで先延ばしになっていた七星会議……もはや二人しか居ないセブンスターズによる会談でしかないそれを今、行っている所であった。

流石にこの状況になってしまうとお互いがお互いのアキレス腱でありすぎるがためにスタンスの違いから敵対し合う事は出来なくなってしまったのは不幸中の幸いと言うべきであろうか。

 

マクギリスはあのモビルアーマーが出現した際にバエルを起動させモビルアーマーの討伐に成功した事により、モビルアーマーの討伐でのみ与えられるギャラルホルン最高位の勲章である七星勲章を与えられ現代のアグニカ・カイエルの後継者__ギャラルホルンの英雄として祭り上げられた。あまりにも失ったものが多すぎた為、ギャラルホルンの人気や志気を維持する為にもこれは必要な行為であった。

 

対してラスタルはギャラルホルンでも最高練度を誇る月外縁軌道統合艦隊アリアンロッドの司令官であり、その戦略家、戦術家としての能力は現在ギャラルホルン全体の方針や方向性を定める重要な役割を担っており、はっきり言って彼が倒れた時がギャラルホルンの最後と行ってもいいほどの生命線となりつつあった。

 

 

「貴方がそれを言い出すのであれば、私としても遠慮なく案を出させて頂きたい……セブンスターズによる合議制を徐々に緩和し、最終的には無くしていく方針を、ファリド家としては提案したい」

「エリオン家として、その方針に合意する……決定権を、決定権を持つ者が足りなすぎる……!」

「まさかここまで貴方と話が合う日が来ようとは思いもしませんでしたよ、エリオン公……!」

「私もだ。いずれ、雌雄を決しなければならないかと覚悟を決めていた時もあったが……最早そんなことも言ってられない状況だ。どうにか、組織の正常化と立て直しを図るためにお互い手を取り合おうではないか……!」

 

((これで何とか、週六徹が当たり前な状況から解放されればいいが……!!))

 

 

理由はそれぞれ色々とあるが、主に過労が過ぎる現状を改善したい。そんな思惑の元同じ組織の中で敵対しあっていた者達は手を組んだのであった。

 

指導者として、人の上に立つものとして有能であれば有るほど仕事量は当然増えるものである。そしてそういった人物ほど、ちゃんと真っ当に仕事はこなすものなのだ。もしくは、それを行えるものをちゃんと探し出す。

 

思想や思念は異なるものの、それぞれ優秀であったこの二人。そんな二人がセブンスターズ全ての仕事を任されてしまった結果、その仕事量は最早殺人的なものへと成り果てており、この一月という短い期間の間でこの二人が根を上げるという異常事態が発生していたのであった。

 

 

 

 

こうして、ギャラルホルンはその規模を縮小しつつも徐々に組織の立て直しを開始し始める事となる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幕間『叔父貴、親父に土下座しに行くってよ』

 

 

 

 

「あぁあぁあぁあぁぁあああ!?ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなぁぁぁ!!」

「あ、アニキ……気持ちは分かりやすが落ち着いてくだせぇ!!」

「これが落ち着いていられるかぁぁぁ!!クソ、クソクソクッソォォォオオ!!あのボンクラァァァ!!セブンスターズだったら、あんな危険物の処理くらいちゃんとやれよ!!なんのためにあんな苦労して、特注のコンテナまで用意して運んだと思ってやがるんだァァアア!!」

 

 

歳星についたジャスレイは荒れに荒れていた。

無理もない。掘り当ててしまった危険物を処理するために自分の持つコネクションを最大限活用してあれを暴走することなくギャラルホルン、それもセブンスターズに渡したというのに、恐ろしい災害が起きてしまったのだから。

流石に圏外圏の商人であり、一桁二桁の人間が自分の商売のせいで不幸になったとしてもジャスレイは気にしない。だが、百万人を超える人間が死に絶えたとなれば流石に恐怖で狼狽えるという物である。

 

「ジャスレイのアニキ……親父から、呼び出しが来ていやす……!ど、どうすれば……」

「駄目だ。ぜってぇ許されねえよ俺ら……指詰めるだけじゃ済まされねぇ!!確実にタマ持ってかれる……!!」

「……狼狽えるんじゃねぇ、オメェら!!ああ、最悪だ……最悪だが、ここで逃げるのは最悪手だ……親父に、会いに行ってくらぁ」

「あ、アニキ!?正気ですか?!」

「ああ、最悪命だけは何とかしてやるさ……どの道こうなったら圏外圏の奥地に逃げる他道はねぇ……そして、圏外圏で一番怖いもんはギャラルホルンでも海賊でもなく俺達の親父だ……!なんとか詫び入れて来なきゃ、そんな芽すらなくなっちまう……!!」

 

 

そうして、ジャスレイは一人マクマードの待つ屋敷へと、決死の覚悟で土下座しに向かうのであった……

 

 

つづく

 

 




筆が乗ったので今回の話の顛末まで書いておきます……オジキの運命やいかに()
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。