アトラがほんの少しだけ、我慢出来なかった結果   作:止まるんじゃねぇぞ……

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マッキーに追加された不幸の一端が開放されます。ご注意ください



※サブタイ変更。こっちのがしっくり来た


友よ

 

「今朝のニュース見たか?地球にとんでもねぇ危険物が持ち込まれた結果、町が丸々焼けてギャラルホルンのMS隊も壊滅的被害を受けたって話だ。んで、それを見事解決したのがあのマクギリスらしい」

「ふーん……流石チョコの人だね。爆弾でも持ち込まれたの?」

「いや、モビルアーマー?っていう厄祭戦時代の兵器だそうだ。なんでも圏外圏から持ち込まれたらしくてな……買い取ったのがセブンスターズの一人だそうで、その対処法を知らなかったのが原因で起きたって話だ。まあ、遠い火星まで流れてくるようなニュースだから、どこまで正確な情報なのかは分からねえけど。火星で流れてる地球圏のニュースってのは地球圏で散々流された後に下ってくるもんだしなぁ。もう一月も前の話だそうだ」

 

 

アトラ達が用意した朝食のコーンスープを飲みながら、オルガと三日月は落ち着いた時間を過ごしていた。

 

段々と他の団員達が数字の計算や書類の書き方等の経理の仕方を覚えてきた事によりオルガの仕事量が減った事で最近は朝食を時間をかけて食べる位の余裕はある為、交流がてら食堂で団員達と一緒に食事を取るのが新たな習慣となりつつあった。

 

 

「町一つ焼いちまう兵器っすか……なんか、規模が大き過ぎて全然想像が付きませんね……って暁、それは手に取らないでなー」

「うー……まんま、まんま!!」

「ちょっとまってなー暁。今暁のお母さんがお前のご飯用意してくれてる所だから」

 

自分の食事を食べながら、膝の上に暁を座らせて世話をするハッシュが慣れた手つきで食器を掴もうとした暁の手を阻む。

そろそろ暁も産まれて九ヶ月。好奇心旺盛に手で何かを掴もうとする事が多くなってきた為ますます目が離せないようになってきた。

 

 

「ごめんハッシュ。俺もうこのスープ以外食べ終わったから暁の相手代わるよ」

「団長と話してるのにすいません三日月さん。ほら、お父さんの所にお帰り」

「ぱーぱ♪」

「ん……やっぱ段々重くなってきてるね、暁」

「いい事じゃねぇか。ほんと、時間が過ぎるのはあっという間だな」

 

暁を受け取った三日月に、スープを飲み終えたオルガがタコスを食べながらそう言った。

火星の食文化は割と地球の様々な地域の料理が入り混じった物であり、これは惑星開拓時代に様々な人種の人間がやってきた名残である。しかしながら手に入りやすい穀物がトウモロコシである関係上、それらを活かす料理が多く残っていた。

手に入りやすい動物性タンパク質は主に鶏肉や卵であり、それ以外は輸入に頼る関係上滅多に食べる事が出来ないのが火星の食事情である。その上本物の肉や卵は高いので、普段は必要な栄養素が添加された植物性の合成肉や大豆でタンパク質を補う形となっている。なのでオルガが今食べているタコスも使われているひき肉は合成肉だったりする。

しかしこれに慣れ親しんだ火星暮らしの団員達は逆にたまに出る本物の鶏肉に不慣れな為、調理担当のアトラ達はどう調理するか毎回頭を悩ませているらしい。

 

 

「さて、今日は歳星に発注してたMSを受け取りに行く訳だが、久しぶりに兄貴達と予定が合ったんでタービンズと会えそうって話だ。あの時世話になった姉さん方に礼を言いに行かねぇとな、ミカ」

「そうだね。大きくなった暁が元気にしてるって顔見せに行かなきゃ」

「ぱーぱ?」

「お父さんとお母さんがね、凄くお世話になった人達に会いに行くんだよ、暁。だから、一緒に会いに行こうね」

「あうー」

 

 

三日月は暁を両手で抱っこして、優しく微笑んでそう言った。

 

この通り、【厄祭の再演事件】により地球は大混乱に陥っていたものの遠く離れた火星は平和そのものであった。

 

現在のギャラルホルン火星支部の隊員は前回の事件を踏まえてそれなりに素行の良い者達に入れ替えられている。それにより火星の治安維持をキチンと行っている事や、定期的に鉄華団と提携してパトロール活動を行っている事もあり、火星の治安は圏外圏基準ではあるものの良くなりつつあるのが現状だ。

 

少しずつではあるものの火星は資源を粗方採取されつくされた価値の薄い土地から、ハーフメタルを中心としたとした経済が回りつつある発展の萌芽がある土地へと変化しつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃の地球。

 

 

 

 

「ふう……カフェインを無理に摂取しなくても良い日というのは素晴らしいと思わないか?ヴィダール」

『同意するよ……ここ一月、酷い有様だったからな』

 

何せ町一つ燃えてしまったのだ。あのモビルアーマー『ハシュマル』を討伐してそれで終わりだなんて都合の良い話はない。

 

マクギリスはあの後七星勲章を授与されたものの、その後は地獄のような事後処理に追われていた。破壊された施設やMSの処分。被害者の身元確認。被害者達のための救命活動。家を無くしたものに対する仮設住宅の設置。etc.etc.……限りなく多岐にわたるその作業に追われた上で、彼はラスタルと2つに分けたセブンスターズとしての仕事も熟していた。 それを出来てしまった事が、彼とラスタルにとっての不幸であったのかもしれない。

 

仕事が、全く終わらないのだ。

 

いや、正確には終わらせてはいるのだが次から次へと雪崩のように新たな仕事が押し寄せてくるのである。加えてあの事件によって元々そんなに体調のよろしくなかった義父……ガルス・ボードウィンが倒れてしまい、その分の仕事もマクギリスがやらなければならなくなったという多忙に多忙を重ねていたのがこの一月の日々であった。

 

 

「まあ、エリオン公も流石に折れたからな。セブンスターズの名もこれで、あくまで名誉的な物へと変わっていく事だろう。これからは、誰の手にもチャンスは与えられる時代が来るはずだ……」

『……マクギリス』

「ああ、これでやっと……私は彼に、『モンターク』に……俺たちのような人間を減らして行けると……伝えられるのか……!」

『……俺は、何も見ていない。ここに来る人間も暫くいないはずだ。だから、思う存分吐き出すといい』

 

マクギリスは、その言葉を聞いて目に手を当てた。

 

かつて彼が孤児であった頃。人買いに囚われ、顔立ちのいい少年だけを集める館に売られてしまった頃の話。

その館は少年達を高値で売るために勉学や戦闘を覚えさせ、その能力の差によって扱いを変えられる、そんな場所であった。

自身の力のみが頼りになっていたその頃に、自分と同等の才覚を持つ少年と彼は出会った。

彼と少年は己を競い合う度に徐々にお互いを認め合うようになり、彼とその少年、モンタークはいつしか友人となった。

 

首に逃げ出せば爆発する首輪を付けられた自由のない状態ではあったが、それでも彼は幸せであった。生まれて初めて、心の底から信頼出来る友人が出来たからであった。

 

しかし、そんな幸せも長くは続かなかった。

 

ある日、館の少年十数人が大人達に集められ、一人一人ナイフを持たされ無機質な建物の中に閉じ込められた。

 

そして、そこで行わされたのは……たった一人になるまで行われる殺し合いだった。

 

彼は優秀だった。息を潜め、他の少年達の息の根を止めることに、戸惑いを覚えなかった。戸惑えば死ぬのは、館につれてこられる前から同じだったのだから。

 

しかし、それが最後の一人になった時、彼は唖然となった。その、最後の一人はモンタークであったのだから。

 

しかし、殺し合わなければ首輪の爆弾は起動すると伝えられた二人は、苦悩の果てにナイフを向けあい……結果、彼は最後の一人となった。

 

モンタークは直前でナイフを止め、自分から刺されに行ったのだ。

 

どうしてと、彼は問いただすと、モンタークは今際の言葉に、こう言った。

 

友達だから……殺したく無かったと。

 

 

友を殺してしまった罪悪感に押しつぶされ、彼は意識を失い、気がつくと普段から囚われていた部屋に閉じ込められていた。そうしてすぐに、買い主が決まったと、彼に通達された。

 

彼は過酷な現実に耐える非常に頑丈な精神を持っていた。故に心が折れることは無かった。しかし、致命的なその傷は彼に一つのトラウマを与える結果となった。

 

自分が友人と思う相手を、殺そうとするとモンタークの顔が浮かんでしまうのだ。結果的に、彼は友人を殺すような選択肢を取れなくなってしまった。

 

後に、この殺し合いがその買い主の意向によって行われた事であると知った彼は、いつか必ず復讐する事を被った優秀で従順な後継者という仮面の下に誓い、後にそれは果たされたのだった。

 

彼がマクギリス・ファリドの名を得る前の、原点。

 

誰もがチャンスは掴めるような世界を……自由を求めるようになった理由は、初めての友人のような存在を増やしたくなかったからだった。そうなる前から、彼らには選択の余地などなかったのだから。

 

だからこそ、マクギリスは鉄華団の少年達に憧憬を持たざるを得なかったのだ。

 

一歩違えば、『自分たち』もああなれたのではないか、と……

 

 

「やったよ、モンターク、俺は……」

 

 

ヴィダールは、沈黙を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幕間『叔父貴、涙の事情聴取〜そして落とし前へ〜』

 

 

 

 

 

 

「おうジャスレイ。一人でここまでやってきた事に関しては褒めてやるよ。大した度胸じゃねぇか……えぇ!?」

 

その声に本気の怒りが混じっている事をジャスレイは見逃さなかった。即座に足を畳み、床に頭を着けてジャスレイは土下座した。

 

「申し訳ありません、親父……!!ですが、これには深い訳が……!!」

「つまらねぇ理由だったら承知しねぇぞ。おいお前、自分が何をしたってのか分かってんのか?!」

「百も承知でございやす!!ですが、どうか話を……どうか話を聞いてください、親父……」

「……ハァー、良いだろう。おい、面を上げろ。全部話せ、どうしてこうなったのか、全てだ……!!」

 

そうしてジャスレイは正座したまま今回の事件における自身の行動を包み隠さず話していった。

 

任された鉱山からモビルアーマーが発掘された事。

 

それに慌てて処理方法を探すべく自身のコネを全力で動員して何とかかつてのコネから確実に対処方法を知っているであろうギャラルホルン、それもセブンスターズに話を付けた事。

 

自力で対処方法を見つけた事からマクマードの手を煩わせる事なくなんとかする方針で事態に対処した事。

 

万一がないように特注のコンテナを用意して自分で地球まで行って、自分で地球に降りてそのコンテナをセブンスターズのクジャン家に渡してきた事。

 

そして、いざ一仕事終えて歳星まで帰ってきたら無事に引き渡した筈のモビルアーマーが大事件を引き起こしており、そのことを帰ってきて今ようやく知ったという事。これら全てを話し終えた頃には、怒り心頭であったマクマードも流石に憐れみの目が隠せなくなっていた。

 

 

 

「なんともまあ……運が無かったな。ジャスレイ。だが、これだけ事が大きくなっちまった以上、落とし前はつけなきゃならねぇ」

「お、親父!!ど、どうか命だけは……いや、せめて、部下の命だけは、どうか……!!」

 

パリン、と何かが割れた音がした。それはジャスレイがマクマードと交わした盃であった。

マクマードは机から拳銃を取り出し、ジャスレイの頭にそれを向けた。

 

「残念だよ、ジャスレイ」

「おやっ……」

 

乾いた銃声が、部屋に響いた。

 

 

 

つづく……

 

 




鉄華団が光だとすればマクギリスは影。というわけでこういう過去が追加されました。
簡単に言えばオルガに出会えたけど、自分の手で殺さなくいけなくなった三日月と言った具合。モンターク商会は、せめてその名前を覚えてる彼自身が何処かに残したいという欲求で名付けられた感じ。つまりクーデリアと同じ理由の同じ行動だな!!()
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