アトラがほんの少しだけ、我慢出来なかった結果   作:止まるんじゃねぇぞ……

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やったね暁!ママが増えるよ!!()

三日月の右手と右目の障害からの回復はすぐさま鉄華団全体に広がった。阿頼耶識に繋げれば動くものの日常生活には支障が出て不便であった事をよく知っていた団員達は三日月の回復に歓喜の声を上げた。特に暇な時は三日月と一緒によく暁の面倒をみていたシノやダンテ、三日月の弟子であり直属の部下となりつつあるハッシュは反応の仕方はそれぞれであるが三日月が暁の事を抱っこ出来るようになることを我が事のように喜んだ。

 

その吉報を聞いたアトラは慌てて三日月の元に暁を抱えて駆けつけ、阿頼耶識に繋げていないのに自由に両手を動かしている三日月を見て喜びのあまり泣き出してしまった。それに釣られて暁まで泣き出してしまった為に二人を泣きやませる為に三日月が二人を両手で優しく抱きしめて落ち着かせた。そうしてアトラが落ち着いた後、メネリクに対して何度も何度も頭を下げてお礼を言ったという。

 

その結果メネリクの団員からの信用が強まり、医務室に気兼ねなく向かう団員の数が増えたという。彼は数少ない新参の大人のメンバーであるが為に警戒していた者もいた為、この事に関してメネリクは『同じ団員として認められたようで嬉しかったよ。皆、体調がよろしくなかったら気軽に医務室に来てね』と後に語った。

 

そうして騒ぎは広がっていき、それを聞きつけた団長ことオルガは今晩の食事はお祝いにする事を決め、調理担当のメンバーにそれを伝えるとそれに参加する為に今日出来る仕事を通常の三倍の速度で完遂仕切ってユージンを戦慄させたという。曰く、『嬉しい気持ちで動いてたらいつもより早く仕事が終わってしまった』との事。それを聞いたユージンは敵わないなぁと思いつつも、そのオルガの動きに秘書役としてついて行けている自身も他の団員からはそう思われていることに気がつけていなかった。

 

そうして希望参加であったものの基地の警備など外せない用事がある面子以外ほぼ全員が参加した三日月回復の祝いにはその吉報をアトラから聞いたクーデリアも駆けつけ、非常に和気藹々とした宴会となった。流石に急な話だったのでアルコールまでは解禁されなかったものの、古参のメンバーから新参のメンバーまで楽しく過ごし、三日月の右手と右目の回復を皆で祝った。参加できなかった面々にもいつもより豪華な食事が差し入れされ、その日は賑やかな祝いの日となった。

 

 

そうして宴会も終わり時刻は深夜となっていた頃、三日月はバルバトスの居る格納庫に居た。

 

 

「やっぱここにいたかミカ。団員達がまだ部屋に戻ってきてないって言うのに見当たらないって聞いたから、ここに来てるって分かったぞ」

「オルガ」

 

 

そう言ってオルガは三日月の隣に立った。火星の夜は冷える為、オルガはいつものスーツの上から鉄華団のジャケットを羽織っていた。

 

 

「しかし珍しいな。ミカが用事もないのに夜ふかしてるなんて。なんかあったのか?」

「うん……ちょっとね。あの後どうしようかって思った事があってさ。想定外だったから頭整理してたんだ」

「へぇ、何があったんだ?」

 

そう言って、オルガは持ち込んだ温かい缶コーヒーを三日月に一本手渡すと、タブを引いて一口飲んだ。

 

「クーデリアに私も奥さんにしてくれって、頼まれた」

「……っ!?ブブッ、ゲッホゲホッ!!」

 

 

そしてその衝撃的な一言に驚いたオルガは口にしたコーヒーを吹き出し、咳き込んだ。

 

 

 

「しかも、俺より先にアトラとは相談済みでアトラは承諾してたんだよね。本人から聞いたから、確かな事だった……うーん、良いのかな、コレ。俺、アトラと暁は養える自信あるけど、クーデリアもってなると……まだ足りないよね。クーデリアはお嬢様だし」

「ゲホッ……いやそこかよ!? というかアトラは認めてたのか……ああそうだった。俺達に合う前までは娼館の手伝いでそこが出身だったから、年上のお姉さんが纏めて娶られて出て行くなんて事が無くはない環境だったもんな。奥さんが複数いる事に違和感なんて持たないよなそりゃ……」

 

 

オルガは片手で取り出したハンカチで口元を拭った後、再び残ったコーヒーをぐびりと飲み干した。気付けに苦い味が欲しかった。

 

 

「……クーデリアが問題ねぇって言うなら問題ねぇんじゃ……ねぇか?経済的な所は。俺達はMSの整備費やら導入費にかなり消えてくからそれだけじゃやっていけねぇけど、アドモス商会はハーフメタル採掘の許可の契約料でかなり儲けてるしな……いや、そもそも元々の財産もあるか。というよりよ、正直自転車操業からなんとか脱した俺らよりはっきり言ってしっかりしてるぞクーデリアは……まあ、今ごちゃごちゃ言ったが、結局はミカはどうしたいかだな」

「そっか。なら、俺はクーデリアをお嫁さんにするよ」

「ま、ミカならそうするよな。ほんと、色々器用なのに不器用だよな。生き方が」

「オルガには敵わないよ」

 

 

オルガ・イツカは知っている。今隣にいる自分の相棒がどれだけ懐に入れた相手に対して情の深い男かを。そっけないように見えて、大切な相手の為に必要な事ならどんな事でもやってみせるし、自分で出来る事なら受け入れてしまう。アトラを受け入れたのも、それがアトラにとって必要だと三日月が感じたからだろう。

不思議と三日月が必要と感じた事が、無駄になった事は無かった。だから、今回のクーデリアを受け入れた事に関しても、そう感じたからかもしれない。

 

三日月はそういう男だ。大切な相手の為なら自分が率先して泥を被りに行く。あの時、自分が引けなかった引き金を引いて自分たちを殺そうとしてきた大人を殺したあの時から、ずっとそうだった。それで辛くない訳がないだろうに。それでもその苦しみを抱えたまま歩き続けられる強さを彼は持っていた。だがそれはその分、自分自身を切り詰めてしまう危うさも兼ね揃えていた事を俺は暁が産まれたあの日まで忘れかけていた。

 

ビスケットが死んで、多くの団員達が倒れてようやく掴んだ皆で火星で食っていけるだけの仕事と、鉄華団を大きくするチャンス。

全力で走り抜けようとしていたあの頃は、思い返せば無理をしていたんだと今なら分かる。もしもあのまま進んでいたら、きっと今隣で軽く微笑む三日月は居なかっただろう。無表情になりつつあった三日月は、昔のように戻りつつあった。

 

 

「そうか?俺は、お前ほど我慢強くねーぞ?」

「俺は、オルガ程皆を抱えられないし、皆を引っ張っていけない。オルガが団長だから、皆安心してついて行ける。俺達みたいなのを、家族だって言ってくれて受け入れてくれるのはオルガ位だもの」

 

 

生き方が不器用なのはお互い様だと、言外に三日月は言った。

 

三日月・オーガスは知っている。横に立つ自分の相棒がどれだけ懐が大きいかを。

お互いの身を守る為とはいえ、人殺しをした自分の手を握って引っ張って行ってくれたのは、後にも先にもオルガだけだ。

行く宛も場所もない自分に、一緒に行こうとオルガの隣という居場所を作ってくれた。そうして一緒に進んでいく内に、アトラを拾って、CGSに来て、皆と出会って……行く宛もない筈だった俺達に居場所をオルガは作った。その為に必死に走り続けて、オルガは今でも人一倍働き続けている。自分一人ならもっと器用に生きられる筈なのに、それもしないで。

 

そんなオルガだからこそ、皆こうして鉄華団の為に必死になっている。ようやく掴めたこの居場所を、もっといい場所にする為に。

 

 

 

「お互い昔から変わらねぇな、俺達」

「だよね。それでいいと思うんだ。俺達は」

「……だな。これからもよろしく頼むぜ、ミカ」

 

そう言ってオルガは三日月に対して拳を向けると、三日月はその拳に自分の拳を軽く当てた。いつもやっている、約束の証だ。

 

 

 

「改めて、よろしくな。俺は約束の場所に皆連れてくまで止まらず働き続けるからよ……」

「いやそれは休み入れた方がいいと思うよ。団員よりも働く時間長い現状は正直どうかと思うし」

「!?だ、だが最近働くの楽しくてな……正直休んでも何するか悩んじまって……」

「……うーん、重症だなこりゃ。今度、暁とアトラと一緒にゆっくり過ごそう?」

「お、おう……」

 

 

 

すっかりワーカーホリックに染まってしまった親友をどうしてくれようかと苦笑いしながら、三日月は缶コーヒーを飲み終えたオルガを連れて格納庫から出ていった。

 

明日、クーデリアに告白を受け入れる事を伝えよう。そう考えながら。

 

 

 

 

 

 

 

幕間『ジャスレイと鉄華組』

 

 

 

 

ジャスレイが火星のハーフメタル鉱山を得て早一月が過ぎた。遠路遥々火星に着いたらすぐにアドモス商会へ許可証を申請し、土地の大きさに比例した料金を支払って採掘許可証を取得したジャスレイは連れてきた作業員達に鉱山の埋蔵量を調べさせ始めた。

調べた結果、かなりの量が期待できるとの事で本腰を入れて暫く掘り続ける事を決めたジャスレイは作業員用の設備を建てる為に火星の建築業者を探し始めたがこれがどうもよろしくない。

 

火星の街から外れてる場所で建築作業を行える企業があまり無かったのである。火星の治安は悪いが、街は基本的にそれなりの秩序が(火星基準で)保たれている為その外に出ようとする企業は少ないのである。

これなら資材を自ら持ってきて自分たちで建てたほうがよかったと後悔するももう遅い。木星圏から遠く離れた火星まで来てしまった以上、一回戻ってそれらを取ってくるのは大幅なロスである為だ。可能ならそれは避けたかった。

 

そうしてどうしたものかと途方に暮れていると、一通のメールが黄金のジャスレイ号の情報端末に入った。

 

それは、アドモス商会からの建築業者紹介のお知らせであった。名前を『鉄華組』と言うそうだ。

プランを見てみると従業員の住む仮屋の組み立て。トイレや生活用水用のタンクの設置等、今必要としている物をそれなりの価格が掛かるもののたとえ街から遠く離れた場所でも工事を行うという魅力的なプランが書かれていたのである。

 

ジャスレイはそれを見て一瞬悩んだがすぐにその工事を受けることに決めた。どの道これ以外選択肢が無かった為である。

『鉄華組』の親会社の名は鉄華団。つまり名瀬の弟分が経営する会社であった為だ。

 

(まあ、アイツらは一度頭下げて菓子折り持ってきては居るしな。火星出身で名瀬の弟分とはいえ礼儀は弁えてる方だろ。仕事をちゃんとしてくれるならとやかく言う必要はねぇか。そんなことよりここで掘れるものの利益が優先だ……!!)

 

 

あまり顔を合わせては居ないが一度新入りとしての義務は果たしていた為か、名瀬の弟分とはいえところ構わず噛み付くのも面倒だと思ったジャスレイは鉄華組に工事をなるべく早くと注文して依頼した。資料から見るに建物としての質は少し豪華なプレハブ小屋といった所だそうだが、所詮は鉱山の為の施設。その程度でまったく問題無かった。

 

そうして更に数週間後、MSが建築に使われていることには驚いたものの思ったより早くしっかりとした施設が出来上がった事にジャスレイは喜んだ。MSが使われた事によりどんどん土地がきれいに整地され、必要な箱物の施設はほぼ整ったのである。あとは必要な設備と作業員を用意して採掘を開始するだけである。

 

 

「さあ、オメェら!ここからが本番よぉ!!掘って掘って掘りまくるぞ!!」

「「「了解でさ、ジャスレイのアニキィ!!」」」

 

 

 

こうして、JPTトラストのハーフメタル採掘事業は開始された。失った業績トップの座を奪い返す為に、ジャスレイとその部下たちは火星の地面を掘って掘って掘り続けた。

 

その時の鉄華組の仕事が好評であった事が周囲にも知れ渡り、鉄華組は火星の建設業者として名を上げていくのだが、それはまた別の話である。

 

 

 

 

 

 




ぶっちゃけタイトルがネタ切れ気味である……どうしようかなぁ()

鉄華組は昭弘を中心にした建築作業チーム。MSのパワーとナノマシンユニットを追加することによって更に繊細な作業ができるようになった阿頼耶識の力で作業を行う夢の建設チームだぞ!まだまだ勉強中の為今はまだテイワズ経由で輸入したプレハブ小屋を組み立てて設置したりしか出来んがハーフメタル採掘場の為の簡易施設としては十分だった為暫く需要がある模様。

名瀬とは相変わらず仲悪いが今回の件で世話になったので鉄華団に関してはそんなに敵視してないジャスレイくん。いいもん掘れるといいな……()
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