鬼喰の血刃   作:九咲

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外伝的なお話。お雪視点。


閑話【血霞邸の1日】

【血霞邸】

 

【血柱】で【血霞童子】たる彼女【血霞麟】様が住まうお屋敷。

 

産屋敷家の支援を受け【血霞麟】の剣士としての働きで建てられた屋敷。

 

彼女の領土たるあの【深い森】のほぼ中心に建てられていた。

 

深い森。つまり基本来客はいない。【隠】の人すら迷う深い森だ。

 

鬼にして剣士の彼女は日光をも遮るこの森でなければ生活は出来ない。屋敷から出なければ普通の場所でも良いのだろうがそういう性分ではなかった。

 

基本的には、寂しがりで他人との繋がりを求める性格のあの人。

 

屋敷にいる際は基本的に【血怪】として確立した個体は彼女のお力のもと実体化している。

 

【血怪】には二種類いる。意思のある【血怪】と意思のない形だけの【血怪】

 

意思のあるのが私たち【血怪百鬼夜行】なのだ。

 

一人でお住まいになられるには広すぎる邸宅。そもそも寂しがり以前に生活能力皆無なのだ。

 

サポートをするため我々がいる。…戦闘だけではなく彼女を手助けするためにこの【血霞邸】で生活していた。

 

 

私こと【雪娘】の【お雪】は麟様の割と古めの【百鬼夜行】だ。江戸の頃よりお供をしてきた。だからか基本的毎日顕在化している。…………いや私が顕在化していないと洗濯物やらがたまるわけでして。数少ない女性の【百鬼夜行】の玉藻さんは「は、なんでわたくしが家事なんかしなきゃならないんですか」ときょとん顔でしたし。えーえー生前は良いところのお嬢様だったんでしょうけど。

 

麟様の食事を作るため朝早く起きるのだ。

 

そう朝早く(・・・)。夜行性であるはずの鬼の麟様の食事をだ。【人間好き】の麟様の絶対の生活習慣。規則正しい生活に人間の食事をとる。まぁ【百鬼夜行】は取りませんし麟様の分だけですが。

 

…その癖朝弱いのはどうなんだろう?こちらも起こすのは習慣化しているし諦めはついている。

 

基本的に栄養素は【鬼喰らい】で賄うためこの食事は嗜好の趣がつよい。まぁ米に味噌汁。朝はそれであの人も満足する。  

 

 

「相変わらず早いな。お雪」

 

燃える偉丈夫こと【火車】さんが庭先で薪割りをしていた。

人柄的には問題はないが私は氷で彼は火。相性の問題で避けがちである。

 

「おはようございます。」

 

軽く会釈してそそくさ歩いて行く。彼は若干悲しそうにするが溶けるんです。

 

 

お米を炊き味噌汁を作る。最初は冷えたものを体質上出していたが最近は慣れたものである。

 

 

「……ようやるのぅ。姫の習慣にようつきあうわ。意味ないことやのに」

 

【鵺】さんが呆れたように言ってくる。

 

合成獣のような鵺さんは自由気ままだ。気が赴くままに屋敷内で生活している。

 

こう絡んできたのも気紛れだろう。

 

「皆さん自由気ままですから。他にやる人いないでしょうに」

 

「せやな。まぁ頑張り」

軽く欠伸をして歩き始める。どうせ夜の散歩とかいって夜更かししてたんでしょ。まぁ鬼ではないのですが性質的には酷似しているので【百鬼夜行】としては正しいんでしょうけどと嘆息する。

 

朝食の準備を済ませ麟様の寝室へ行く。

 

寝ずの番の【八咫烏】さん(分身)が扉の上の止まり木から此方をチラ見するがいつもの事なのですぐに興味を無くしたよう。通常の鴉より大きいから地味にビビります。慣れましたけど。

 

「麟様朝食出来ましたよ。」

 

当然一度目で起きるなら苦労はしない。

 

失礼といい入室。あーあー寝相悪いですよ。はだけてますよ。……だから嫁の貰い手がいないのです。

 

錆兎君あたり貰ってくれませんかねぇ。あの子は麟様尊敬してますし。…………幻滅しそうですが。

 

「うー…ぁー……」

 

「おや、今日はご自分で起きれたみたいですね」

 

 

「……………お雪さんや。なんですかぃその氷柱。」

 

「気にしないでください。ご飯ですよ」

 

「うぃ…」

 

眠そうな目をこすり身支度を整える麟様。

 

真っ赤な鮮血のような長い長髪を櫛でとかす。

傷みや癖毛も枝毛もない。羨ましいと思います。

 

「ありがと。お雪。」

 

用意した簡易的な和装に羽織を羽織って軽く微笑む麟様。

 

「いえ。」

 

麟様は女性にしては長身。小柄な私は並んで歩くとより小さく見える。なんかムカつくのでスネを蹴ります。

 

「いたっ!!?お雪さんやなんで!!?」

 

知りません。

 

 

食事を済ませ片付け。麟様お一人分なのですぐ終わります。

 

掃除。それは群体型の【百鬼夜行】である【管狐】さんに手伝って貰います。

 

【管狐】さんは動物くらいの知性なんで言うこと聞いてくれます。中には個性的な子もいますが玉藻さん達に比べて友好的で協力的です。

 

午前中で終わります。

洗濯も同時進行といっても麟様と私の分位しかしません。他の人は各々でどうぞ。

 

お昼。珍しく来客。

 

と言っても錆兎くんと真菰ちゃんです。

 

彼等が子供の頃からの付き合いなので鬼殺隊の多忙の間を縫って最低でも月一顔を出してくれている。こんな陰鬱とした真っ暗な深い森までよく来てくれます。麟様の人徳も馬鹿には出来ません。まぁ無表情ですしカリスマ性は多少なりあるようです。私からしたらズボラ駄目女にしか見えませんが。

 

麟様は子供が実家に帰ってきた母親が如く歓迎します。

 

まぁ麟様からしたら曾孫以上なんですけどねープークスクス。

 

さて錆兎くんと真菰ちゃんの分まで作らねばなりません。

 

かといってバリエーションはありません。

 

 

うどん。最近はまっているのです浅草で屋台をやっているのを食べて以来麟様含めはまっています。

あそこまでの域には至れませんがまぁまぁの出来です。錆兎くんも真菰ちゃんも美味しいって言ってくれました。

あの人にも食べて欲しいなぁ……。はて?あの人とは……?

 

午後。錆兎君たちは忙しいようで麟様は泊まって行きなよと名残惜しげでしたが帰って行きました。夜では絶対迷いますよここ。

 

【犬神】さんが周囲の警戒から帰ってくる。

 

犬顔のイケメン。数少ない【百鬼夜行】の良心。

 

麟様に対する忠誠心は【百鬼夜行】の中でも随一だが本人はそれを否定している。つんでれってやつかな?

 

「【犬神】さんお疲れ様。」

 

「ありがとう。……今日も変わりないぜ。……姫は?」

 

「…………鍛錬中ですよ。今行ったら鍛錬の相手させられますよ。まぁ今は父の【鴉天狗】が相手してます」

 

「げ」

と顔を顰める【犬神】さん。【血霞】邸には鍛錬場として道場がある。この時間になると麟様はいつも鍛錬なされていた。

物ぐさで面倒臭がりの彼女でも必ずやっている習慣。

 

「…………あれか」

 

「あれです」

 

かつての敗北と圧倒的格上への領域への研鑽。

 

「…報告は後にしとくわ。……特に何かあったわけじゃ無いし」

【犬神】さんは頭をかきながら歩き始める。

 

夕方。

【土蜘蛛】さんが珍しく顕在化していた。大型で大食らいの彼が顕在化するには必要血液量が多いため滅多に実体化しない。

麟様の口の役割を持っているため鬼を喰らうときが主な仕事だ。

 

「珍しいですね」

 

「オデだってたまには外の空気を吸いたいのだ。雪チャン」

 

「そですか。お腹空きますよ。」

 

「…最近姫は鬼を食べてない。お姫様は平気でもオデはキツい。……だから今日は出掛けてくる。」

麟様の許可を得て野良の鬼を食べに行くと豪語している。

そう気合を入れていた【土蜘蛛】さんを見送る。

 

 

夕食の下準備。夕食は【鴉天狗】が手伝ってくれました。

生前は親子の間柄であったらしいですがそこの記憶は曖昧です。

けど彼に対して何か申し訳ない気持ちと感謝の気持ちと気の置けない感情はありました。きっと家族だったからでしょう。

 

彼の作る料理は精進料理っぽくなるため麟様にはやや不評だったりしますがそれはまぁ良いでしょう。麟様もお料理を覚えるべきでしょう。

 

まぁこうして私自身誰かのために動ける事は嬉しく感じている。

生前あんなに看病してくれた大事な人がいた気がする。

 

靄の掛かった記憶は私の胸をきゅっと締め付ける。

 

 

夜。

麟様は食事を終え私のやることもほぼ終えていた。

 

麟様は相変わらず無表情で外からはクールでカリスマ性あるように見えるが内心は寂しがり屋の残念美人だ。

 

寝る前【百鬼夜行】の皆に構いにいく。煩わしそうにする者から悪くない面持ちでいるものと様々だ。

 

【百鬼夜行】は皆は皆麟様を信頼している。

 

…………だからこの人には幸せにはなって欲しかった。

 

この百年以上いくら人に裏切られただろう。罵倒されただろう。

 

それでも麟様は人間好きだと負けずに言う。時には巫山戯て時には真面目に。

 

 

我らはそれをサポートし続ければいけないだろう。

 

 

「………お雪さんや。お休み。」

 

麟様は寝室の前で振り返り言ってくる

 

「はい、お休みなさいまた明日です」

 

 

血霞邸の夜はまた更ける。

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