鬼喰の血刃   作:九咲

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原作前・血霞譚
壱【鬼喰いの血姫と鬼狩り】


【鬼殺隊】

 

鬼を殺す非公式組織。鬼狩り【鬼殺の剣士】達が切磋琢磨する人間のための人間による鬼殺しの組織。

 

つまり私は狩りの対象。

 

まぁ、是非もないよね。悲しいけれど。

 

 

「麟様、どうします?」

 

「敵対するつもりはないのだぜ?雪ん子。……私様は人を喰った事がねぇ。むしろ鬼が主食。最近丸焼きがマイブーム。ミディアムレアで頼むんぜ」

 

「あたしは氷漬けオンリーですよ。麟様。火車にいってください」

 

「んー。辛辣。だけど可愛いから許す。可愛いは世界を救うのだ。」

 

「麟様おちゃらけるなら表情筋を動かして下さい。」

 

「えー、表情変わってない?こんなにも感情豊かなのに!!?」

 

「怖えです。台詞と顔が大分あってねーです。」

 

うそん。

 

もはや、呪いの域だ。私の呪いを解いてくれる王子様募集中。あ、お姫様も可。

 

私の隣を歩く美少女は【雪娘】。私の【血鬼術】の産物。

座敷童に似たような風貌だが歴とした雪女の少女バージョン。死体を私の【血鬼術】で仮初めの命を宿している。軽くチート。鬼になって幾星霜。鬼はいずれも鬼舞辻産。襲いかかる一方で会話もままならない。正直寂しいのだ。独り言も増えたし。この子を創り出せた時は狂喜乱舞したものよ。我が百鬼夜行は形作るだけだしね。

 

 

 

「………………。撒いた?」

 

「ようですね。」

 

対立するつもりはないのにまぁあっちも仕事やし鬼は脅威っちゃ脅威だしねぇ。

 

仲良くしたいよねぇ。せめて不可侵条約的なのを結びたい。

 

うるうる悪い鬼じゃないよぅ。

 

「きも」

 

ご褒美頂きましたー。

 

 

 

何故君はそう辛辣なのだ。その身体の性格に依存しているのかね?性格設定なんかはしていないし出来ない。元々の性格なのかなー。お姉さんは心配だなー。よそ様と仲良く出来るのかなー。

 

「…………」

 

鬼化して幾星霜。いくら経ったかは正確には分からない。

 

【雪娘】お雪を創り出したのも最近の話ではない。もう江戸の頃だ。惨殺事件のあった道場の近くの道場で毒殺されていた親子の死体。悲しい匂いがしたのでつい。

 

寂しさを紛らわす為に【鬼喰らい】の際助けられなかった命を糧に【血怪百鬼夜行】を創り出して居る。

 

妖怪を模したような姿をした彼らは私の力で家族だ。

 

つくづく人間離れしてきている。ま、鬼なんですけどね。

 

【鬼舞辻無惨】の配下の【十二鬼月】からは裏切りの鬼として疎まれ【鬼殺隊】からは狩りの対象。

 

そうした立場をうん十年続けたらそらストレスたまりますわ。

と考えながら歩いていると後ろに気配。迂闊。お雪も居て何をしてるんだがと我ながら反省し即座に振り向く。敵意のなさに反応が遅れたのか。

 

「……………そう逃げないで欲しいな。君と話がしたいだけなんだ。」

 

柔和な声音に振り返る。反射的に刀に手をかけるが敵意のなさに眉をひそめる。

 

「誰かな。」

 

「噂はかねがね聞いてるよ【血霞】の姫」

 

気品が溢れた柔和な男性だった。こんな日光をも遮る深い森には似つかわしくはないような男だった。

 

側には【鬼殺の剣士】が控えているが彼からも敵意はない。よく教育されてるね。

 

「どの噂かな?」

 

「【鬼喰】だよ。鬼舞辻無惨と対立する鬼がいると聞いてね。私の剣士()たちも助けられたようで」

 

「その割には狙われますけど?」

 

「そこは申し訳ないと思うよ。灸寿郎。」

 

炎のような髪型をした青年が頭を垂れる。

 

「俺も貴女に助けられた身で。…こうして話す機会を窺って居たのですが貴女が逃げる故。」

 

逃げましたけど。だって狩られると思いますやん。

 

「………まぁ敵意がないことわかったけれど何用かな?私は【血霞麟】」

 

「…………お雪」

私の後ろに隠れる。人見知りかよ。可愛い。

 

 

「私は産屋敷暉哉(うぶやしきかぐや)。彼は【炎柱】煉獄灸寿郎(きゅうじゅろう)

 

「鬼殺隊のお館様御自らとはアグレッシブですな。……危なくないですか?」

 

「柱を3人連れてるから大丈夫だよ。」

 

「確かに残り3人(・・)の殺意は凄いですね。……私様も敵愾心出ちゃいますよ。」

【柱】【鬼殺隊】最高戦力を4人を連れている様子。1人隠したのはなんでかなー?

足元の血溜まりから天狗の面を付けた赤い翼の男性が現れる。

 

「【鴉天狗】もしもの時よろ」

後ろに配置させ手をヒラヒラさせる。

「無いとは思うがなぁ。姫は気楽だなぁ」

のんびりした声で反応する。

 

「ははっ。まぁ此方の対応は君に対する警戒じゃないよ。【鬼舞辻無惨】さ。君に対する接触があるやもしれないから」

 

「こんな深い森にはおもてなし出来ず申し訳ないですが。座るとこもなく。」

お館様は構わないよと薄く笑いながら立ったままお互い対峙する。

 

「最近は【下弦】ばかりですよ。…【上弦】すら差し向けて来なくなりましたね。」

 

「下手な鬼を向けて君の力にされては困るんじゃないかい?」

 

「全く慧眼で。私様のファンですか?」

ふふんと鼻をならす。

 

「ファンだからこうして会いに来たわけだよ。麟。…見た目麗しい女性だって聞いたしね」

薄く笑いながら憶せず言ってくる。大物だわ。

 

「…口説きに来たんですか?部下を引き連れて」

 

「…在る意味そうだね。……停戦協定を結ばないかい?」

 

願ったり叶ったりだ。…此方からお願いしたいんだが。

 

「あら、それは願ったり叶ったりだけど。男女として口説きに来たわけではないのかしら。」

 

「麟様………」

じと目で見ないで。私様も女なのだ。

 

 

「お館様は既婚者だ。」

 

がっくし。期待させてんじゃねぇよ!(血涙)

 

 

「面白い人だ。人間より喜怒哀楽を持っているようだ。」

クスリと笑うお館様。

お雪が目を丸くする。私の無表情から喜怒哀楽の機微を分かるようだ。やはり上に立つお人は違うんだなぁ。

 

「…やっぱり王子様なのでは?寝取るしか……いだっ!!」

私の美尻を抓るなお雪!!痕になったら初めての時恥ずかしいでしょう!!?

 

 

「………………お客様だぞ。姫」

 

【鴉天狗】が呟く。

 

「私かな?君らかな?……まぁ上弦相当の私と柱4人いるこの場に来るなんて相当なおばからしい。」

クスリと笑う。鬼らしい嗜虐的な笑いをする。

 

「…私達が狩ろうか?」

【炎柱】君が聞いてくる。

 

「いやいや、お客様にやらせるなんて出来ないよ?私というのがどんなものか見ていただいてからどうするか決めたら如何かな?お館様?」

 

薄く挑戦的に笑う。

 

「そうさせて貰おうかな」

 

「…そう。行くよ【お雪】【鴉天狗】」

 

「はい麟様」

 

「合点。」

 

鼻腔には血臭がくすぐる。纏うは烈風と冷気。

 

後ろの2人の【血鬼術】

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

「数は?」

 

 

「…20だね」

 

 

「少なっ」

 

 

私達は深い森を進む。霧に紛れて進軍してくる20の鬼の気配を索敵する。

 

この深い森は私の領土。

 

索敵用の【血怪】が深い森全域に撒かれている。

 

私及び【百鬼夜行】たちはそれとリンクしている。

 

「下弦相当の鬼はいる?」

 

「……1体。…これは多分鬼舞辻の指示ではないと思う麟様…」

 

「功を逸った愚か者のようだ。」

 

「まぁすべての鬼の場所を把握している鬼舞辻が止めないならば鬼舞辻の指示みたいなものだよ。」

 

血の呼吸・弐の型【血車】

 

刀を抜き回転させ背後より襲いかかる鬼を斬り捨てる。

 

私の攻撃に合わせてお雪も上空の鬼に氷柱で顔面を貫く。

 

【鴉天狗】も風を纏わせた拳で2体の鬼を貫く。

 

「脆い。」

 

 

「私を殺して私を喰らって上弦に【入れ替わりの血戦】挑むんでしょう!!?隠れてちゃ三下も三下だよ!!?」

 

 

「言わせる…【血霞】ぃ…!!」

 

「あら、割とイケメンじゃない。まぁ私の好みじゃないけど」

 

上空より降りてきたのは20前半くらい見た目のホストのような見た目をした青年が現れる。

 

片眼には【下壱】と刻まれていた。【下弦の壱】か。何人目の【下弦の壱】だったか忘れちゃったわ。

私のせいで【下弦】の入れ替わりは激しい模様。まぁよく品切れしないものだ。

 

「異能の鬼である事を祈るわ。喰らう意義がなくなるもの。今はお腹空いてないし。」

 

いつの間にか周囲に気配。お館様もいる。気配は【柱】のようだ。

 

「【鴉天狗】【お雪】、あちらの雑魚の掃除はお願いね。コイツが親玉だから私がもてなしてあげる」

 

返事をした2人は即座に行動。うん優秀優秀。お気にの2人だしね。

 

「お姫様ぁ…オデも…」

 

「こら、自分から出て来るんじゃない。」

 

足元の血溜まりから大きな血の蜘蛛を形成する。

 

「…あれ、喰らうンダロウ?オデお腹空いて…」

 

【土蜘蛛】が【下弦の壱】の鬼を狙いを定める。

 

「まぁよし…食べちゃえ。悪いね名前も知らない【下弦の壱】。私に喧嘩売ったのが運の尽きってね?今更後悔した顔しないでよっ悲しくなるからさ。」

私は困った顔を見せる。

 

「【土蜘蛛】、行儀よく食べなよ。お客様も見てるからさ。」

 

「わがっだ」

 

「ひぃっ…!!?」

【下弦の壱】の鬼は何も見せ場もなく【土蜘蛛】に噛み砕かれ咀嚼される。

 

「…なぁんも【血鬼術】ないじゃないか。スカだね。」

 

「……見てくれましたか?お館様。」

 

 

視線の先には先程のお館様に【炎柱】を含む黒い隊服を身に纏う男女の4人の剣士。

【柱】の男女には恐怖と嫌悪感が目に見えた。悲しいなぁ。

けれどお館様は先程と表情は変わらない。

 

「悲しい顔をするんだね君は。」

 

「いつも通り無表情ですよ。おぞましいでしょう。きっと貴方たちは私を持て余すよ?」

 

私の後ろに鬼を殲滅した【鴉天狗】【お雪】が戻る。そして食事を終えた【土蜘蛛】が聳え立つ。

 

異形。我が【百鬼夜行】。私の家族。

 

「君は寂しい顔をしているんだね。」

 

 

「君は『人間』が好きなんだ。だから寂しさを感じる。だから、そうして『家族』をつくりだす」

 

 

「…」

図星のような気がする。自覚はなかった。

ほんとこの人初対面の私を見て本質見るなんて見る目あり過ぎるでしょう。

 

「さっきの話は本気だし変わりはないよ。……君を【鬼殺隊】にむかえたい。」

 

「………正気?【鬼殺隊】だぜ?文字に書いて読んで見てよ。」

 

「本気さ。君を【柱】にむかえたい。君は【呼吸】を使うだろう?」

 

本気のことばに本気の眼差しに言葉を失う。

 

 

【鬼】にして【剣士】という歪の存在となる。

 

これは原作より前。【鬼殺隊】先々代【産屋敷暉哉】と血柱【血霞麟】の邂逅の話。




今回の百鬼夜行

【雪娘】……お雪。麟のお気に入り。血鬼術は【冷気】
生前とは性格は変わっているが根幹は泣き虫。生前はあの子。

【鴉天狗】→お雪の父親の百鬼夜行。血鬼術は【烈風】だけど基本戦闘力は高め。

【土蜘蛛】→蜘蛛型の百鬼夜行。累君とは関係ない。
異能のないが巨大な血の蜘蛛なのでそれなりに強い。常に空腹。
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