鬼喰の血刃   作:九咲

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裏の肆【朧の朱夢と燃え上がる炎と傷だらけの風】

朧気な夢を見る。

 

まるで他人の夢を追体験するような実感のない夢。

 

記憶のない私には過去が何たるかは分からない。

 

鬼になってからの意味を持たない道程のみで。

 

【人間】の時の記憶なんて一切合切ない。私は【人間】だったなんて実感すらもない。それでも魂が覚えていたのかどうか?私の夢かも分からない。

 

 

「華。君は………強情だな。」

 

「貴方も大概よ。」

 

軒先に立つ目の前の花札の耳飾りを付けた青年は嘆息する。

 

「共に鬼を狩ろう華。君には才能がある」

 

「………あの時は必死だっただけよ?元々剣の覚えがあっただけ。私達は子ども達を守らないといけないのだから」

 

黒髪の【私】は目の前の剣士の誘いをきっぱり断る。

 

「力は必要だと思うぞ華。……鬼という存在を知った以上子ども達の安寧を守るのも力ある者の義務だ」

 

「買い被りすぎよ剣士様。昔やんちゃしていた程度の孤児院を営むただの女よ?」

 

「ただの腕に覚えがある程度で狩れるほど鬼は甘くない。君の強さは守る強さだ。燻っているのは勿体ない」

 

「しつこいよ。……その【鬼殺隊】だっけ?には入りません!私さんは此処で子ども達を守るだけで手がいっぱいです。お引き取りを。」

 

ぴしゃりと戸を閉め耳飾りをした剣士を追い出す。

 

 

「…華姉?どうしたの?」

 

一番上の少女が後ろから来て首を傾げる。

 

「なんでもないよ。なんでも」

 

「もしかして口説かれた?華姉にもようやく春が…」

ニヤニヤと笑う少女。

 

「なにー華さんがモテないともうすかーウリィィィ」

 

「きゃー」

少女にじゃれつきごまかす。

 

「あーお姉ちゃん達遊んでる混ぜてー」

遊んでると思っている下の子達が集まってくる。

 

この子たちは私の宝で全てだった。この子たちを守ることが私の全てで私の精一杯だ。私は全てを守れるほど器用じゃないし強くは無いよ。××。

 

場面が変わる。

 

 

燃える燃える燃える燃える燃える燃える燃える燃える燃える。

 

食い荒らされた惨状。愛した子ども達。積み重なる死体達。吐き気を催す血の臭い。逆巻く負の感情を抑えきれず暴発し瓦解する。憎悪と怨嗟は咆哮となる。

 

 

ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

「すまない。華。…間に合わなかった。まだ俺達は数が少ない。……手が回らないんだ。だから俺は君を…」

私には背後に立つのはかつて誘ってきたあの耳飾りの剣士だ。

 

守れなかった。

 

「いいよ」

 

守れなかった。

 

「…………なってあげる。剣士に」

 

 

私が弱いからだ。逆巻き渦巻く感情のまま振り向く。

 

「殺し尽くしてやる」

 

【私】が抱えるのは燃え盛る劫火が如く鮮血のように真っ赤な憎悪と怨嗟だった。

 

私の全てを奪った奴は許せない。許されない。

 

 

殺し尽くすまで私は死なない。

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

「姫をお守りしろ!!」

 

【鴉天狗】は先頭に立ち気絶した主の前に構える。

 

「でも、姫様が気絶したならば戦闘領域は制限されます!」

 

「だからといってみすみすやられるわけにはいかぬ!!【お雪】と変われ玉藻!!私とお雪は特別製だ!!」

 

「はい!!」

 

玉藻が血溜まりとなりお雪に変わる。雪のような髪の毛に真っ赤な和装。

 

「…………【新月】って何が狙い?」

 

「分からぬ。……姫の【色彩ノ鬼】を作ることやもしれぬ。」

 

「【鬼舞辻】への対抗手段の為かな」

 

「あの小娘ならば自分でやれば良かろうに。自分の手を汚したくないのか」

 

蜘蛛の巣が至るところに侵略してくる。

 

「…血鬼術…」

 

「蜘蛛の巣の血鬼術のようだ。」

 

「火車さん呼ぶ?」

 

「奴は燃費がわるい。……我らで相対しよう。姫の残存血液量は無駄に出来ぬ。」

 

「最初の2体だから特別製だからね…全く麟様のお馬鹿。」

 

 

「…………鬼じゃないね…?」

 

「我らは百鬼夜行。我が姫君の産物よ。」

 

「ふーん。似たようなものだね僕達。僕はうちのお嬢の作品だよ。所謂鬼の色彩を用いた生きた絵画さ。」

 

白い少年は薄ら笑う。

 

「うちのお嬢は制作意欲が異常でね。……まぁそれはいいや。君らのお姫様も作品にしたいとさ。なに死ぬわけじゃないよ」

 

「断る。小娘の危険思想は重々承知している。去れもしくは死ね。」

 

「……まぁ予定通り強行突破といこうじゃないか。僕は【新月ノ伍】を与えられた【累ノ色彩】だ」

 

 

いきなりで悪いけどと呟く。

 

 

【領域展開・縛鎖獄蜘蛛巣(ばくさごくくもす)糸呪(しじゅ)

 

 

領域展開がなされる。色彩が展開する。白と黒の単一な色彩が周りを侵す。

 

白と黒が蜘蛛の巣状に展開する。

 

「これが僕の世界だ!!妖共!!餌になるか!!血霞を引き渡すか選ぶがいいよ!!」

 

 

「行くぞお雪。」

 

「うん」

 

 

簡易領域展開【破戒刹(はかいさつ)雪式(ゆきしき)

 

お雪は消え【鴉天狗】の足元に雪の結晶の陣が展開する。

 

「行くぞ【色彩ノ鬼】」

 

「君も【領域展開】使うんだね!!」

 

「お雪と二人でなければ展開出来ない拙いものだがな。威力は保証しよう。」

 

「それは楽しみだ。」

 

空間が蜘蛛の巣状にひび割れていく。

 

「【破戒刹・雪空式】」

 

霜を撒き散らす風を纏いながら手刀で蜘蛛の巣を切り払う。空を舞う。朱の翼を羽ばたかせ空を蹴る。

 

「…はは!!やるね!!」

 

【糸呪ノ繭】

 

繭状の蜘蛛の糸を展開する。

 

「なっ!!?」

 

「ふふふ。捕らえて蜘蛛共の餌にしてあげる。」

 

薄ら笑う【累ノ色彩】

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

「ふむ。蜘蛛の糸の【異能】か」

 

「報告にあった那田蜘蛛山と同じようだなぁ…胡蝶と錆兎の奴が任務にいっているはずだが」

 

「…ここから割と蜘蛛山は距離があるぞ。鬼の根城にしては範囲が広すぎる。」

むぅと首を捻る杏寿郎に皮肉げにわらう。

 

「悪鬼滅殺。討ち滅ぼすだけだ。煉獄。殺してから考えろぉ」

 

「いやはや短絡的過ぎるぞ。不死川。まぁ悪くない。」

 

蜘蛛の糸の巣や繭だらけの森を見て不敵に笑う二人。

 

「足を引っ張るなよ不死川。」

 

「てめぇこそなぁ!!」

 

地を蹴り散開する二人。蜘蛛の鬼が複数二人を取り囲む。

 

腐臭。それに構わず二人は抜刀。

 

 

炎と風。炎が風を生み出し風がより炎を強くする。

 

二人は相性はよい。お互いにお互いを焚き付けている。

 

 

悪鬼滅殺。討ち滅ぼすのみ。




【参ノ壱】に錆兎真菰成長イメージ挿絵追加しました。
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