鬼喰の血刃   作:九咲

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下弦ノ肆・零余子色々捏造。
ファンブックでも名前のみ判明。


閑話ノ弐【元下弦ノ肆・零余子ちゃんの憂鬱】

私は元【下弦ノ肆】名前を零余子(むかご)といいます。血のような鬼たる彼女【血霞童子】には感謝している。

 

 

何よりあの方……いや、鬼舞辻から解放してくれた事は大いに感謝している。

 

そもそも鬼になったのも不本意で死にたくない一心で生き残っていたら何故か【十二鬼月】になっていた。

 

柱に遭遇したら真っ先に逃げていた私が下弦とは言え【十二鬼月】に数えられていたのだろうか。

 

身体能力自体累以下であるのも自負している。

 

 

私は【血鬼術】を二個持っている。これは上弦ですら単一のはず(…はず)

 

膂力が並の鬼の私が下弦たらしめた特異性。

 

「……二個…かぁ」

 

「様々な【百鬼夜行】に奪った【血鬼術】を与える麟様からしたらたいしたこと無いかも知れませんが」

 

「……ううん、私も根幹は【血液操作】だもん。副産物よん、それは」

 

「……………並の【血鬼術】より【血鬼術】してますよ。」

 

「そう?」

 

「…………麟様は普段はその恰好で?」

 

麟様の着崩した普段着に軽く目を逸らす。……見た目は若々しいし肌を晒すのはいかがなものか。

 

お綺麗なものだ。羨ましい。こちらとら成長止まって寸胴体型だというに。ギリギリ。

 

 

「どうしたの?…楽だからついね」

 

「いえなんでも……」

 

溜息をつく。……あの【血霞麟】がこうも女子力の低いお方だったとは。

 

「………なんだいその目は」

 

「イエナンデモナイレフ…」

 

 

こうして私は【鬼】ではなく彼女の【血怪百鬼夜行】の一員【血怪ノ鬼】零余子となった。

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

【雪娘】ことお雪の場合。

 

氷結の力を持つ【血怪】が壱。私とそうは変わらない見た目にも関わらず【血怪百鬼夜行】では古株らしい。

まぁ、鬼も見た目は止まるし【百鬼夜行】は基本的に死体だからなんとも言えないのだが。

 

それでも見た目年齢が近い私が入ってきて嬉しいらしい。

 

まぁ男性型ましてや異形の多い【百鬼夜行】では仕方ないのかもしれない。

 

「零余子さん、家事経験はありますか?」

 

「……家事経験…?」

 

それ聞く?……【鬼】になって下弦までなったのだ。若輩の【鬼】ではなくそれなりの年月を重ねていた。

 

つまり家事など必要としていた生活とは程遠い。文明的とは言えない【鬼】の生活。中には人間社会にうまく混ざる鬼も居たのだろうが。

 

…つまり。

 

「…ない。」

 

記憶の限りしたことは無い。人食いはしたがグルメな方ではなかったし。人間の時の記憶なんて忘却の彼方だ。

 

「……久しぶりの【百鬼夜行】しかも女の子。…………【百鬼夜行】は【血霞】邸の日常生活でもそれぞれ役割あります。私は基本的家事担当です。しかしこの血霞邸。麟様始め横着な方々が多いです」

 

はぁ。

 

呆然と彼女の言葉を聞く。逃がさないという確固たる意思を感じた。あかんやつでは?

 

 

家事の基本とは?

炊事、洗濯、掃除。生活を営む上でどれかを疎かにすれば他も疎かになると彼女は語る。

 

どれかを疎かしていいという考えが浮かぶこと自体不適格だと彼女は語る。

 

「さぁ、やってみましょう」

 

ニコニコと笑う彼女に二の句が継げなくなる。やるよやるけどさ!

 

 

小一時間後。

 

炊事。

米を洗うと何故か粉々になった。

 

御味噌汁は何故か濃すぎる味になった。

 

「力加減と分量が雑ですよ!零余子さん!!」

 

あっれぇ……?

首を傾げる。巫山戯てなど勿論居ない。

 

「麟様と同じ大雑把なんですね」

 

ガーン。

私は女子力なかったのか…のか……。

 

 

掃除。

 

掃くだけだろ。それ位出来る。うん。

 

あ。

 

躓く。物を倒してしまう。しまいには壊してしまう。

 

ごめん…。

 

「注意力散漫ですね」

 

冷ややかな視線やめて。

 

 

洗濯。

 

まだやるんですか?とお雪からはもう諦観を感じる。

 

 

意地があるんだよぅ!!女の子にも!!

 

 

あ。

 

せっかく洗って干す洗濯物達を転んで泥塗れにしてしまった。

 

 

追い出されました。ちくせう。

 

 

 

【犬神】の場合。

 

 

家事に関して無能の烙印を押された私はとぼとぼと次へ向かう。

お雪に言われて来たのは私を捕まえた赤い毛並みの犬人間【犬神】が居る場所。血霞邸から離れた深い森の広場。

 

【犬神憑き】達血の狼の長。この【血霞邸】の警護が主な仕事らしい。

 

まぁ私も元【下弦】こと戦闘においては膂力に自信は無いもそれなりなはずだ。

 

…………いや【上弦】相当の麟様の力の顕現だよねこの人達。怖い。

 

【犬神】の周りには20体程の【犬神憑き】

 

それは憑いた下級の鬼達を狼の形へしているらしい。

麟様が食べるに値しない血鬼術を持たぬ下級の鬼の成れの果て。元鬼からしたら怖い。

 

「…………」

 

いや、何か話して下さい。怖い。

 

何が【百鬼夜行】の良心だよぉ…怖いって。

 

他の【百鬼夜行】がやばいってこと?

 

 

 

小一時間後。

 

意外と【犬神】さんは優しかった。ただ、女子の少ない【百鬼夜行】では接し方が分からなかったらしい。

 

うんいい人だったが私が彼の挙動に一々ビビった為仕事にはならなかった。小心者ものですいません。

 

 

だって彼、強面ですもん。

 

私、犬苦手だったわ。

 

【百眼鬼と玉藻】の場合。

 

【玉藻の前】さんのという数少ない女性型百鬼夜行の人はどうかと彼に勧められた。

 

血霞邸へ戻る道中髪の長い腕に包帯を巻いた陰鬱な女性に前を遮られた。え、どこから来たのこの人。

 

「【犬神】様に媚び売ってんじゃないわよ淫売」

 

盛大な舌打ちと共に恫喝されました。怖い。しかも呪われそう。

 

逃げる。

 

 

 

「あ~【百眼鬼】さんですわねぇ。彼女面倒ですわよ。【犬神】さんに絡むと絡んで来ますわよ。え?わたし?あははは、最初絡まれましたけど覗き見しか出来ない雑魚ぼこしましたとも。覗き見なら弱味握られそう?……狡猾さで私に勝てますかってものです。ちなみに雪ちゃんにも負けてますから彼女。」

 

意味深な笑みを浮かべる【玉藻の前】さん。

 

ちなみに彼氏といちゃつくとかですぐに追い出されました。

 

 

【鵺】の場合。

 

 

「わいの仕事?遊ぶことやで~」

 

羨ましいけど真似たら怒られそう。

 

 

【土蜘蛛】の場合。

 

「食べる」

 

以下同文。

 

 

【火車】の場合。

 

「力仕事全般だからいくら鬼とはいえ任せたら男が廃るから勘弁な。」

 

鬼でも膂力には自信無かった。

 

 

 

 

自身の無能さにちょっと泣きそう。

ここでも、失望されたら行く当て無いんだよなぁ。

 

縁側で膝を抱える。

私の私だけの唯一性は二個の【血鬼術】くらい。

 

 

名前の元になった【零にする力】と【余らす力】減少と増加の力を操る【血鬼術】

 

自身にはまだ持て余した力であると自覚はしていた。

 

使い方によっては上弦へと迫ると考えていた時期はあったが私自身は貧弱だった。故に下弦の肆で収まっていた。

 

その立場は今や無い。執着など無く呪いのような物であったが。今になっては解放されたとしてどう生きていけばいいか正直分からない。

 

故に見捨てられたら正直困る。

 

そういえば【血霞麟】とは【鬼喰らい】で【鬼嫌い】だ。【鬼】ではなくなった筈だから喰われないだろうが【鬼嫌い】ではあり私が人食いしていた事実は消えない筈だから……。あれ?なんで私は生かされているんだろう?

 

 

「どうした?新入り?」

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

【烏天狗】の場合。

 

 

【烏天狗】、天狗の面に胴着に赤い翼を纏う壮年の男性型百鬼夜行。

 

ここ数日中みてて分かったがお雪同様古株でこの百鬼夜行のとりまとめ役の麟様の腹心。

 

上弦に匹敵するであろう実力はあるかも多分下弦じゃ相手にならない。

 

……媚び売っておいたほうが良いかな?

 

「あ、えっと………」

 

「…大方、役割探しに奔走していたのだろう。気にしなくて良い。そのうち見付かるわ。」

 

「……はぃ」

 

「………お雪の奴が浮かれていた。友達が出来る。とな。百鬼夜行は自由気ままな奴が多くお雪の精神年齢が近い奴がおらなんだ。相手してやってくれ…生前は病でな友達は居なかった」

 

「…生前…?」

 

「お雪の奴はもう、あやふやだ。…婿のことしかもう覚えてはいまい。……私もまばらだ。……けど忘れる訳にはいかない」

 

「お雪は」

 

「私の娘さ。…………」

 

「そう、………友達になれるなら良いけど私は【人食い】だ。今はもう大丈夫だけど………罪は消えない。麟様は何故私を生かした?」

 

「……………麟様は【鬼】を嫌うが根幹は【略奪者】を嫌う。人でも鬼でもな。…………お前に罪の意識を自覚出来るなら……姫がお前を鬼から【百鬼夜行】にした意味がある。……あの人はそこまで考えているとは思えんがな」

 

「……………そっか」

 

私に意味が在るなら………嬉しかった。

 

今までの生きるだけの奪うだけの亡霊の罪を贖えるなら………私は頑張ろうと思う。

 

「ありがとうございます。……よろしくお願いします」

 

「お雪と仲良くな」

 

「はい」

 

意味を見つけるために。

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