鬼喰の血刃   作:九咲

26 / 53
肆の壱から続いてます


色奪ノ弐【柱合会議裁判・裏】

「………………産屋敷邸も私の時とは別の隠し方していたから迷ってしまったわ。」

 

「私のお陰なんだから感謝してよね。きゃは♪」

 

長身の女と年端もいかない少女の奇妙な組み合わせ。え、くそ。小娘と同じ雰囲気を持っていた。

長身の女は男性が着る背広で羽織を着て長い黒髪で鋭い目付きに涙のマークが目元に。

少女は最近ようやく都会で見るようになった空色の洋装。

 

しかし旧知だ。その死んだはずの旧知はかつてと変わらない年頃で変容した姿。しかもこの産屋敷邸に現れた。

 

「誰だてめぇら…」

 

「此処がどこかわかって……」

 

柱達は臨戦態勢。各々は刀に手を掛ける。

 

「………鎖天川瑠偉、上臥原天なんで君たちが生きてるのかな?君たちは戦死したはずだ」

 

私は日光が当たるぎりぎりまで前に出る。

 

 

「そんなの決まっている。あんたを鬼殺するために地獄から蘇ったとでもいってあげるわ。つくづく今代の【柱】は間抜け面揃いらしい。この女に我が物顔で居座られてるのだから。鬼を殺してこその鬼殺隊でしょうが。間抜け共」

 

嘲笑。口角をつり上げ愉快そうに嘲笑する。

 

殺意を一身に受けなお怯まず嘲笑を続ける。

 

最高戦力【柱】達の殺意を受け流す。

 

「……ひゃは♪♪♪この子達貰って良い?瑠偉ちゃん!!」

 

幼き化生は目を見開き歓喜に溺れる。獲物を見つけた肉食獣が如く舌なめずりする。

 

「………今日は挨拶だけって言ったのはどこのどいつよ。天」

 

 

「…………上臥原天…だね」

静観していたお館様が声を上げる。

 

「お?は~いは~いは~いは~い。そぉでぇす。」

 

当てられた生徒みたいに元気よく返事する。

 

 

「上臥原家最期の君が鬼になっているなんて残念だよ。歴代最強の剣士であった【(そら)の呼吸】使う君を失ったのは損失だと先々代の手記に残っていたよ」

 

 

「………それは、光栄だなぁ。でもー今だから言うんだけど。上臥原家。アタシ以外鬼に殺されちゃったって言ったンだけど……殺したのアタシなんですよね!きゃは♪」

 

「上臥原家に相応しい振る舞い振る舞い振る舞いって五月蠅くてさぁ。【怪物】のアタシに無理言うなって感じなんですよね?にゃは!」

 

歪に狂い曲がった笑みを浮かべる幼き風貌には似つかわしくない狂笑。親兄弟を殺して躊躇いや後悔は微塵に感じない。

 

 

…かつての【柱】時代には片鱗すら感じ得なかった少女の本性に怖気が走る。

 

「あんた、鬼より鬼らしくない?」

 

「にゃははは褒めるなって。まぁいまは鬼みたいなもんだけど」

 

「そりゃそうね」

 

 

 

「………………私が狙いなら相手になるけど?」

 

私はかつての同胞がもう敵であると確信した。

人間でもうないなら斬り捨て無ければならない。

 

 

「……【人間】じゃないなら容赦なく殺せるってわけね。上等だわ。まぁ宣戦布告だけにするつもりだったけれどどうしようかしら」

 

「お預けなんて、アタシ我慢できないよ!」

 

猛禽類のような眼を見開き口角をつり上げる。

まるで鷲や鷹のような空を闊歩する略奪者のように獲物を見定める。

 

二刀の【日輪刀】を構える。

 

そう、上臥原天は二刀流の剣士だった。

 

「瑠偉ちゃん、先帰っててよ。そろそろ時間切れさね」

 

「……満足したなら帰って来なよ。あんたの【血鬼術(それ)】昼間活動するのに必要なんだから死ぬんじゃないわよ」

 

「逃がすかよ!」

 

宇髄くんが逃がすまいと追いかけるが上臥原天に蹴りを入れられ地面に叩き付けられる。

 

まるで獲物を足で捕まえる大鷲が如く。初動が見えなかった。皆一同に瞠目する。

 

 

「にゃははは!!!!アタシちゃんが相手だよ!!今代の【柱】の力味見させてよ!!麟ちゃんは陽光下で活動出来ないでしょう!指くわえてみてなよ!!」

 

 

「…君は……何故陽光下でも活動出来るのかしら?」

 

陽光は【色彩ノ鬼】も変わらず弱点の筈。

 

 

「内緒。まぁ【天】を関するアタシちゃんが空の下にでれないのはおかしな話でしょー?ね?」

 

 

おかしいねとクスクスと笑う。

 

 

「笑ってんじゃねぇよ!!糞餓鬼!!」

 

 

    風の呼吸・肆ノ型【昇上砂塵嵐】

 

「…胡蝶!!甘露寺!!お館様をお守りしろ!!」

伊黒くんの言葉にカナエちゃんと蜜璃ちゃんはお館様の前に立ち遮る。

 

   蛇の呼吸!!炎の呼吸!!岩の呼吸!!

 

 

と実弥ちゃんに続き伊黒くん煉獄くん悲鳴嶼くんが攻撃を重ねる。

 

 

     天の呼吸・壱ノ型【蒼穹纏(あおまとい)斬重(ぎりがさね)】  

 

 

上段から右手の日輪刀、下段からの左手のを振り払い全攻撃を弾く。

 

「にゃははは!!」

 

    天の呼吸・参ノ型【陽紅永遠契り(ひぐれないとわちぎり)

 

蒼き双刃が蒼き軌跡を残し打ち払い薙ぎ払い吹き飛ばす。

悲鳴嶼くんの巨体まで彼女の矮躯から想像出来ない鬼の膂力により吹き飛ばす。

 

    天の呼吸・㯃ノ型【天崩蒼ノ嘴(そらくずしあおばし)

 

 

上空からの鋭いいや鋭すぎる突きで時透くんを吹き飛ばす。

 

 

「それで柱かなぁ!!?アタシちゃんを愉しませてよ!!アタシちゃんの餓えを!!渇望を埋めて頂戴!アタシを天へ至る礎になって!!」

 

 

咆哮する。彼女は高揚し鬼として特徴がより強く濃く身体が変容した。

 

白い紋様が全身へ至る。こめかみより伸びる一本角。より鋭く伸びる犬歯。

 

そして背中より広がる猛禽類の空色の【色彩】の両翼。

 

 

「……空はアタシのものだ!!」

 

ビリビリと感じる威圧。風圧。

 

 

「…アタシは【新月の空色】上臥原天。喰らい尽くしてあげるよ!!!!」 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。