どうか、覚えていて欲しい。
君は愛されていた。
どうか、忘れないで欲しい。
君は許されていた。
どうか、許して欲しい。
君に呪いを、架してしまったことに。
【愛してるよりん】
だからどうか君は幸せになってほしい。
それだけが私の願いでした。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽
覚醒。直ぐさま反転し立ち上がる。
陽光に晒された筈の我が身。それは確かに晒されいるはずだ。
「何故…?」
気が動転する。鬼化して百余年即死を意味するそれを忌避してきたはずだ。久方振りの陽光への感想よりも先に浮き出る疑問。
「【陽光反転】我が【領域展開】の【永遠に蒼き天・天獄ノ無常】の効果だにぇ」
亀裂の笑みを浮かべにししと嗤う。
「【陽光】からのダメージを回復・膂力増強へ裏返す【血鬼術】……擬似的に【日光克服】を成す【真白】ちゃんの最高傑作になるのがアタシさ!!」
「…なら何故私にそれをかけた?」
「つまらないじゃん。遊びたいのヨ。アタシちゃんはさぁ!!死んでから百余年眠って溜まったこの鬱憤晴らさせて頂戴!!」
領域展開【血怪百鬼夜行・大犬神ノ陣】
巨大な血の狼を作り出し威嚇。獣の迫撃で天を殴り飛ばす。
「なら全力で【血霞麟】が相手にしてやる。…剣士としては君のが上だよ天。【領域展開】の使い方ならこっちが上だ。【領域変生】?いい発想だ。参考にさせて貰うよ【浸域】は強力だけど使い勝手悪いからね」
「麟さん」
「錆兎。皆離れて。……いや私達が離れるか。…………【犬神】」
「御意」
【犬神】は口を開け天を噛み掴み跳躍。産屋敷邸を離れる。私は【犬神】の背中に乗り突き進む。
広い荒野に移動する。
「…此処でしようぜ。…………ここならなんの憂いもないわ」
「きひ。ひゃは♪きゃは♪いいねぇ!!」
二刀を、構える。追随してきた2羽も彼女の後ろに舞い降りた。
その2羽は練度が違う。だが。
「【犬神】いけるよね?」
「姫。当然。」
好戦的笑みを浮かべる。獣人形態ではなく四足獣形態の彼はやる気に満ち満ちている。
私も【神血】を引き抜く。【犬神憑き】の一匹が持ってくる。遠吠え。
日輪刀【神血】やっぱり馴染む。
私の血を、啜り続けた【禍刀】
【全集中・深層】
構えるは【正眼】。集中。集中。集中。集中。
隙の在りすぎてどれが本当の隙か分からない。
術理も【本能】と重ねてきた【経験則】から。
奔放に見えて愚直に重ねてきた【反復】が所作から見える。
慢心する【天才】なら幾許かマシなんだが。
愉しむ為に彼女は油断も慢心する事も無い。
血の呼吸・拾ノ型
更に深く神経を研ぎ澄ませる。より清廉により精錬させる。他の五感を置き去りに鋭利に鋭くなお深く。
1㎜の誤りも許さない許されない術理。精密な剣技を求められる。
この………
血の呼吸の絶技にて術理を収束させたもの。壱ノ型から玖ノ型まで総てを合わせたもの。
故に絶妙な匙加減を要する。
【全集中・深層】
天の呼吸・拾ノ型秘奥
亀裂のような笑みを浮かべる。目を見開き極限まで集中していた。
互いに構え【深層】まで、集中しにらみ合う。
朱と蒼。高まり合う殺意は互いに否定する。
絶殺。絶えず殺す。
虐殺。虐めて殺す。
我等が、専心は互いの否定にのみ準ずる。
【深紅紅蓮】!!
【果てなき天】!!
赤き刀より放たれるは極極大の深紅の放流が如き斬撃。
蒼き双刀より放たれるは極限の2重の斬撃。
ぶつかり合う否定と否定。
「きゃは♪剣技じゃアタシに勝てないンじゃなかったっけぇ!!?」
「君に負けるようじゃあの【
「そもそも【柱】時代から不可解なんだよねぇ!!【鬼】のくせに人間の味方するのかなぁ!!?」
「…好きに理由がいるのかよ!!」
本心。紛れもなく本心。
私は人間が好きだ。けれどそれが出ずる気持ちの
先程の死の刹那の失ったはずの記憶の残滓。微かな綻びは【あの人】を思い出した。
私はあの人に救われた。なら報わなければならない。
理由を思い出せた。
だから私はそれを否定させるべきではないと確信する。
領域変生【血怪百鬼統合・氷狼ノ陣】
「行きますよ【犬神】さん」
「ああ、お雪」
雪が降る。雪原を走る狼のように駆ける。
狙いはもちろん2羽の空色の大鷲。空を蹴り跳ぶ。
牙と爪が奴らの飛翔の根幹たる翼を傷付ける。さらに咆哮。衝撃波となりもう1羽が攻撃してこようとするのを迎撃し叩き付ける。
「姫の邪魔をさせぬ!!」
「それが私達の使命!!」
凍てつかせる咆哮が2羽の翼を凍てつかせる。機動力を失い落下した2羽を【犬神憑き】の群れが咀嚼し食い尽くす。
食い尽くした【犬神憑き】達は遠吠えをする。
「ひゃは!!あの2羽をやるなんてねぇ!!それなりなんだけどなぁ!!!」
2羽が、やられても動揺はせずなお嗤う。
拮抗する濁流が如き斬撃と色彩の2重斬撃は此方が押され始める。
「くっ!!」
「姫!!」
領域変生【血怪百鬼夜行・大蛇ノ陣】
2人を霧散させ新たに形成する。
大蛇となった血液が天へ食らいつく。
「!!?」
【果てなき天】の指向がぶれるその隙で【深紅紅蓮】を大蛇ごと叩き付ける。意思を持たない血液の塊であるため気にしないで巻き込む。
「ぎひっ!!」
天を横斜めに両断する。吹き飛ばされ崖に叩き付けられる。
「ひゃは♪首きれなかったのは残念だねぇ♪いひ♪あはっ♪あれれ~残念。時間切れだ。【陽光反転】の効力が切れるから早く日陰に行ったほうがいいよん」
不快な音を立てながら再生していく天の躰。
【陽光反転】の効力なのか再生力は普通の鬼とは段違い。直ぐさま接合され動かしている。
「今回は満足にゃぁ。……くふっ。死んじゃったら真白ちゃんに怒られるし殺しちゃったら瑠偉ちゃんに怒られるし。……また遊ぼうね。【十二鬼月】とやらともに遊べそうだし。生き返ってよかったぁ」
空色のツインテールを揺らし恍惚そうな笑みを浮かべ二刀を鞘へ収める。
「………逃げる気?」
「だから時間切れだってばぁ…そっちも満身創痍っしょ。…………無駄口聞いてる暇在るかなぁ……本当切れるよ効力。」
陽光が微かに肌を焼きじゅっと焼いた。切れかかっている。
「んふ。また遊ぼうね。麟ちゃん」
どこからともなく聞こえた琴の音が聞こえると、彼女は消えた。
私は直ぐさま産屋敷邸へ戻る。【陽光反転】の効力は切れ元の体質へ戻る。
有耶無耶になってしまった柱合会議。
炭治郎と禰豆子は一応は剣士として認められた。満身創痍のためカナエちゃんの蝶屋敷で預かってくれるという。
カナエちゃんなら安心だ。【常中】のことについてもお願いしようかな。
私は【新月】たる彼女達の抹殺を公式に受けることになる。
【柱】の彼等には【鬼舞辻】側に集中して欲しいから私の単独の使命だ。
「……構わないんだね麟さん」
「もちろん。私への恨みあるものもいますし【真白】という【見えざる月】の中核の鬼には因縁あるしね」
私は使命を理由に存命を許される。
こうして解散となる。錆兎は何か言いたそうだったけれど私は帰宅する。
「…麟様?」
「………………ごめんもう休むね」
「はい、お休みなさい」
自室へ入り寝転ぶ。
「………華姉……………」
記憶の綻びからの【あの人】を思い出した。
それがたまらず嬉しかった。
ああ、私は………少し取り戻せた気がした。
どうか、また忘れないことを祈る。
次回新章【夢幻列車】編突入。