鬼喰の血刃   作:九咲

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夢幻ノ伍【死せるべく夢ノ足音】

夢という言葉がある。

 

将来設計の話ではなく睡眠時に見る夢の話。

 

夢にも種類がある。

 

こう在りたいという願望夢。今のままではいけない事を警告する警告夢。未来で起きることを示唆する予知夢。現状をそのまま夢となる現状夢。不安やストレスが反映される不安夢・ストレス夢。

 

 

悪夢、明晰夢、正夢、逆夢等様々だ。

 

 

それらの中でも特筆して取り上げたいとは回帰型と分類される夢。

 

過去のことを夢として見る過去夢。

前世のことを夢として見る前世夢。

他人からのメッセージが紛れ込む夢、魂の共鳴。

 

私が見る夢は多分過去の夢。失われた筈の夢。

 

紐解かれ始めた私の記憶。そう思いたかった。

 

優しい笑顔が事実であったと信じたかった。

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

架純華は優しい女性だった。いつも子供達に重きを置く優しい女性。自身を省みずただ直向きに。その時の私は彼女の澱のような憤怒を知らなかったがそれでも。

 

私の理想の女性だった。

 

 

数居る【鬼殺の剣士】の中でも数少ない女性の剣士で2つの呼吸を扱う天才でもあった。

 

私を拾い育てくれている彼女は私にとって全てでありそれ以外はいらなかった。

 

りんとして生まれ意味を持たず捨てられ彼女に拾われ【架純りん】として生まれ変わった。

 

私には記憶が無かった。外的要因か心的外傷かは分からない。私には自身が誰なのか分からなかった。

 

それでも華姉が私を愛してくれているからそれは私にとって些末な事だった。

 

私は【架純りん】それ以上でも以下でもない。

 

それが私にとって世界だった。

 

料理が苦手な華姉の為に料理を覚えて洗濯や掃除をして、帰りを待つ。

 

それが私の幸せだった。

 

 

だったのだ。

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

「麟様!!?」

 

敵の術中にはまったのか幾ら声をかけても覚醒をしない主に動揺する。

 

 

「お雪、落ち着いて!」

 

「でも!」

 

車内は異様な雰囲気だった。私達二人以外眠りに陥っていた。周囲の乗客は幾ら声をかけても覚醒をしない深い眠りに集団は陥っていた。

 

襲撃にしては搦め手に過ぎた。 

 

「……【八咫烏】さん!!」

 

「………無事か!!」

 

汽車の窓より深紅の鴉【八咫烏】が舞い降りる。

 

「異常は!!」

 

「…侵入者はなしだ。雪。汽車に最初から乗っていたやもしれぬ!!不覚!気付けぬとな!」

 

「………麟様が深い眠りに陥ってしまったわ。上弦相当の麟様が搦め手に足元を掬われてしまいました……多分並の鬼では無いわ。」

 

「………零余子。催眠の【血鬼術】を持つ鬼はいたか?…」

 

「…………【鬼月】同士は手の内を晒さないわ。基本的に協力はしないし…蹴落とす相手だもの。……あの人の命令で言われる以外の時は行動を共にはしないもの。…現【下弦】の手の内は知らないし【上弦】には会ったことないわ。」

 

「そうか。致し方あるまいに。…何故かは分からぬがお前ら二人が催眠に掛からなかっただけで僥倖。……姫が寝ている以上新たな【百鬼夜行】を出せまい。我等で原因を絶つのだ」

 

【八咫烏】の言葉に私達二人には緊張が走る。

 

 

「…雪、お前の日輪刀持ってきてるか?…」

 

「はい」

 

いつの間にか手に持つ鞘に雪結晶が刻まれた真っ白な刀。

 

「………………【日輪刀】?」

 

零余子さんは目を見開き此方を見る。

 

「…麟様や柱の皆さんほどではないけど【呼吸】が使えるんですよ。実は。弐ノ型までしかありませんけど。………江戸から仕える身。時間はありましたから。……【百鬼夜行】で使えるのは私だけですよ。時間がありません…零余子さん。ありがとうございます落ち着きました」

 

「う、うん」

 

「無理はするなよ雪。」

 

「はい。麟様は殺させはしません。【百鬼夜行】たる私の責務ですから。…行きますよ【八咫烏】さんは麟様の護衛を。……此方に現れるならば【八咫烏】さんの【血鬼術】で呼んで下さい。」

 

 

私達二人は駆ける。

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

別車両。麟が眠りに陥ってしまった時とほぼ同時刻。

 

かまぼこ隊。竈門炭治郎、我妻善逸、嘴平伊之助は【炎柱】煉獄杏寿郎と合流していた。

 

炭治郎は蝶屋敷を出てから確認したかったこと【ヒノカミ神楽】について彼に問うた。

 

彼も【ヒノカミ神楽】については知らなかったが煉獄家に所蔵された【炎の呼吸】に関する書物に関連されたことが記述されているやもしれぬと提言した。

 

また面倒見の良い彼の性根から面倒を見てやろうと笑う。

 

それから煉獄の任務のことを説明受ける。鬼が出る場所に移動しているのではなくこの汽車自体が鬼の被害の場所だと聞き三者三様の反応を示す。特に善逸は「おりるぅぅぅ!!」と騒ぎ始めた。

 

車掌が現れ切符に、切り込みを入れて貰った直後巨躯の鬼が車内に現れる。

 

「車掌さん、危険なので下がっていてくれ!!火急のこと故帯刀は不問にして頂きたい!!」

 

「その巨躯を隠していたのは血鬼術か、気配もさぐりづらかったしかし!!罪なき人に牙を剥こうなら!」

 

煉獄杏寿郎は燃えるような赫刀を抜刀する。

 

「この煉獄の赫き炎刀がお前を骨の髄まで焼き尽くす!!」

 

 

    炎の呼吸壱ノ型【不知火】

 

 

燃える一閃が鬼を両断する。

 

「すげえや兄貴!!見事な剣術だぜ!!おいらを弟子にしてくだせぇ!!」

 

「いいとも!!立派な剣士にしてやろう!!」

 

「おいらも!!」「おいどんも!!」

 

「みんな纏めて面倒見てやる!!」

 

 

「煉獄の兄貴ィ!!」「兄貴ィ!!」

 

 

 

現は夢に浸食される。

ガタン、ガタンと汽車の音のみが響く。

 

鬼の襲撃などなく鬼殺の剣士たちは夢へと沈む。

 

 

「夢見ながら死ねるなんて幸せだよね」

 

 

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