鬼喰の血刃   作:九咲

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無限列車編劇場映画だと…(驚愕)


夢幻ノ玖【淡く冷たく朧気な恋心(ゆきこいがたり)・弐】

無限列車7両目。

 

【雪娘】対【雨獄衆】雨円はお雪の劣勢へ傾いている。

 

「はぁ…はぁ…」

 

肩で息をし始め呼吸はとうに乱れている。

 

場数を踏んでいる差は埋めがたい。生前から辻斬りと名を馳せた殺人鬼と病弱の小娘では自明の理。

 

凍てついた車内は乗客の体温をも奪う。くそ。

 

 

「それで終わりか、某は次の狩りに向かう訳だな?」

 

「逃がしません…よ!!」

 

    血鬼術【氷柱唄(つららうた)連弾(れんだん)

 

 

    我流剣【雨蜂突(うほうどつ)

 

降り注ぐ氷柱の雨をまるで串焼きのように貫き振り払う雨円。

 

侍のような鬼は挑発的な笑みを浮かべる。

 

    血鬼術【氷柱波・臥壁】!!

 

 

私は大きく床を踏み付けると氷柱が生え波のように彼を覆い被さる。

 

「……笑止」

 

 

    我流剣【雨月斬り】

 

ぱんけーきのようにスライスされてしまいます。くそ。

 

 

「視野が狭くなっているぞ少女。戦闘は如何に視野を広く持ち相手の隙をつくものだ」

 

「何ですか、敵の癖に説教ですか」

 

 

「勿体ないのだ。貴殿のように見た目麗しい少女と死闘を演じられるなどそうそう無い。…女子供等いつの時代も喰われるものにすぎぬからな」

 

「…【見えざる月】は、女性ばかりみたいですが」

 

 

「あれは化生、化け物。理の上の存在よ。………【血霞麟】も同じ。鬼の癖に人間が好きだと?…反吐が出る。人間とは喰らう程度のモノに過ぎん。【血霞麟】は相当の、いかれよ………だが貴殿のように食らえるならば愉しまねば」

 

「気色悪い上に馬鹿にされたようですね。それ以上我が主への冒涜度し難いです」

 

雨円という変態の言葉にカチンときました。私を知らない癖に。麟様を知らない癖に。

 

「事実であろう?貴殿は某より弱いし【血怪百鬼夜行】とやらはいかれを心酔する無能の集団だ」

 

「………怒りました。麟様に使用を禁止されてましたが知りません。……………貴方程度の鬼に侮辱されては【血怪百鬼夜行】の名折れ」

 

 

    術式展開(・・・・)羽怪雪(はかいせつ)・恋羅針】

 

 

私、お雪のみが使用出来る術式。背中に羅針盤のような雪結晶の羽根を生やす。

 

「…………ほう。」

 

「今更謝っても許しません。死をもって償って下さい」

 

「真逆、真逆だ。少女に畏怖するとはな!!だから死闘はやめられぬ!!鬼となって幾星霜。恐怖と忘れていたわ!!」

 

「だから私程度でそんなこと言っている貴方は小物なんです」

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

      無限列車7両目屋根上。

 

   零余子対【雨獄衆】波浄。

 

「……やるじゃねぇか」

 

強風に晒される屋上。車内から屋根上へと移る。お雪の戦闘もあり二つの戦闘には狭すぎる。

 

空気の増減を行い弾いた。空気の急激の増減による作用において発火。冷やされていた空間により反発された。

科学等程遠い『鬼』が分かってやってはいない。偶然の産物ではあったが場所を変える。お雪のサポートを期待出来ない正真正銘のタイマン。まぁお雪もギリギリだ。むしろサポートしなくては。

 

巨漢の破戒僧から侮蔑が消える。

 

理解しているはずだ。この強風。うまく熱湯を纏えない筈だ

 

賭けではあった。この強風に晒される屋上でも関係なく熱湯を拳に纏えてれるなら意味は無い。が予想通り流動的な熱湯をうまく纏えない様子だ。

 

 

「まぁ、だからなんだって話だけど」

 

私もこんな高速で動く鉄の塊の上での戦闘なんて慣れてるはずないじゃん。しかも相手は巨漢のパワータイプだし!この汽車から叩き落とした勝ちだが非力な私にあの巨体を叩き落とすなんて土台無理な話。

 

 

けどやるしか無いよね…!! 

 

 

    血鬼術【増減操作・風】

 

風の負荷を最低値にして駆ける。頭部目掛け蹴りつける。当然ふせがれる。知ってる。

 

 

「…はっ!!捕まえたっぜ!!お嬢ちゃんよぉ!!」

 

「わざと捕まったの間違い。」

精一杯の皮肉な笑みを浮かべる。触るな。気持ち悪い。

 

    血鬼術【増減操作・体重】

 

自身の体重の増加。100貫。重さにして小柄な私の約拾倍。375㎏。負荷を与える。筋肉の塊のような奴だが鬼の膂力を持ってもきついはずだ。

 

 

「!!?」

 

「かりぃなぁ!!」

 

「筋肉馬鹿め!!なら倍!!」

 

200貫!!750㎏!!

 

さらに倍の重量が波浄へと襲いかかる。波浄より先に天板が悲鳴を上げる。

 

「潰れろ!!」

 

「お前がな!!嬢ちゃん!!うちのボスが【領域展開】を使った。俺ら【雨獄衆】は液体化の特性が付与される。」

 

 

 

「俺という水に溺れな!!」

 

波浄の躰は水へと変形して球形の水の塊になり私を包み込む。強風をモノともしない強力な水の檻。

 

「んぐっ!!?」

 

息が出来ない。呼吸をしようともがこうとしようも意思がある水の塊は私を逃さない。浮力で増加した体重が意味を成さずそもそも私の集中力が途切れ解除されている。く、苦しい。

 

「がはははは!!溺れろ!!弱り切った所を可愛がってやるよ!!」

 

く、くそ……!!私は【百鬼夜行】としてこんな奴に負けるわけには…!!

 

 

     術式展開【破壊殺・羅針】

 

      

圧倒的な殺意が炸裂し水の塊が爆ぜる。

 

 

「げほ!!げほ!!な、なに…?」

 

私は水の塊が爆ぜて解放され嘔吐く。強風に晒され飛ばされないので必死。

 

無限列車の屋上戦は風雲急を告げる。

 

圧倒的強者が殺意を向けていた。

 

桃色の短髪に鍛えられた全身に刻まれた咎人の証の刺青。

 

そして、元【下弦の月】からしたら明確な圧倒的恐怖を感じた。

 

瞳に刻まれた上弦の文字と序列の数字。

 

 

三番目の強さを意味する【参】

 

 

「お前が、あの方が危惧する【新月】の手のものか」

 

「てめぇ!!…【十二鬼月】か!!」

 

「雑魚に名乗る名前など無い。同じ鬼として唾棄すべき弱さだ。恥だ。至高の領域まで彼方の末端だ。才能のない弱者がはこびる世界など吐き気がする」

 

「うるせぇ!!てめぇを喰らえば!!俺は色を与えて下さるだろうよ!!!!」

 

傲慢無礼に構える吐き捨てる破戒僧。不遜に笑う。

 

    「現実を見ろ塵芥め」

 

流れるような流麗な動きで拳を握り構える。清廉で研ぎ澄まされた殺意が全身より放たれる。全身が凍てつき震え上がるような殺意の檻。

震え動けず我が身を抱き締める。

 

     

    術式展開【破壊殺・羅針】

 

 

足元に展開される羅針盤のような雪結晶の紋様。

 

向かってくる波浄の躰を吹き飛ばし跳躍する。

 

 

    【破壊殺・空式】

 

 

宙に飛ばされた波浄の真上に跳躍し無限列車の屋上へ叩き付ける。頸に直接かかと落としを叩き付け頸がねじ切れる。

 

鬼の躰は陽光と日輪刀による斬首のみが死因たり得るため鬼同士の争いは無意味。

 

けど【上弦の月】と破戒僧は圧倒的格差があった。けして埋める事の出来ない存在の差。

 

繰り返される破壊と破壊。殴打と蹴り。ただ繰り返す一方的な虐殺。再生と瓦解。ただただ無意味に繰り返す。これはただの蹂躙だった。

 

 

折れたのは躰より破戒僧の心が先だった。

 

「こ、殺してぐれぇ…」

 

「…望み通り殺してやる。」

 

通り過ぎた枯れ木に投げつけ突き刺す。

 

 

「そこで太陽を待つが良い。せめて弱者に対する慈悲だ。」

 

桃色の短髪の【上弦の鬼】はつまらなげに吐き捨てる。

 

 

ただの蹂躙劇だった。圧倒的強者の常。私が苦戦した相手のつまらない幕切れだった。上弦()は此方を一瞥すらしない。私は羽虫だった。

 

 

不意に私と彼の間の屋上が瓦解する。

 

瓦解し出来た無限列車の屋上の穴より現れたのは先程の侍のような鬼と雪結晶の羅針盤のような翼を生やして雪の刀を振るうお雪だった。

 

 

「お雪!!?」 

 

私は目を見開く。

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

雨円という鬼が浮かべるのは愉悦の笑みだった。

 

 

辻斬りとは所詮戦狂い。偏執的な嗜好を持って生きている。理解しがたいものであった。お雪にとっては首を傾げる領域のものではあった。

 

付き合うつもりはない。日輪刀【雪白狗】は氷柱を作り出す。

 

    

    雪の呼吸・参ノ型(・・・)氷柱剣(つららけん)鮮華(あざばな)

 

 

弐ノ型までしか扱えない筈のお雪は参ノ型を編み出す。

 

単一での実戦は今まで数少ない。基本的に【血霞麟】の補佐が多い。【血霞麟】なしの戦闘はほぼ無い。

 

神経が研ぎ澄まされなお鋭くなる。

 

 

冷気を吸収しさらに羅針盤のような羽が指向性を与える。

 

冷気に耐性があるとはいえ完全に効かないわけじゃない。

 

【百鬼夜行】は鬼程の再生力は持たない。元死体の為に致命的な破損は再死に繋がる。

 

 

けれどその刹那の為に力を発することもある。

 

付随する水流の刹那を断つ為の幾多の剣閃を放つ。

 

幾多の剣閃は冷気を纏う。氷柱を作り出す。

 

 

まるで鮮やか氷の華を咲かせるように。

 

   参ノ型【氷柱剣・鮮華】

 

「なにぃ!!?」

 

 

無数の氷柱が雨円を、貫く。四方八方から剣閃より生えた氷柱が幾重に侍の鬼の躰を貫く。まるで円形の華のように添えられた血の赤。

 

「はぁ…!!はぁ…!!」

 

【全集中・常中】より深い集中力は解け肩で息をする。

 

致命的な体力の無さは呼吸を整えるのを阻害する。

 

【羽怪雪・恋羅針】の羽根は瓦解し霧散する。

過ぎた力の代償に体が凍てつく。

 

左腕が軽く麻痺をする。戦闘継続には致命的。終わって下さい。この攻撃で。

 

 

「……素晴らしい一撃だった!!少女!!貴殿の覚悟に敬意を評して!!介錯を仕ろう!!」

 

氷柱まみれで尚戦闘を続ける人斬り鬼。血だらけで尚動く。これだから戦狂いは……。ふらっと軽く立ちくらみしながら握れる右手で日輪刀を構える。

 

 

「……………少女ながら至高の領域に至らずとも素晴らしい在り方だった。それに比べ見苦しいな。【雨獄衆】とやら」

 

ぞわっとする殺意が全身に走り緊張する。けしてお雪に向けられたモノでなくても身を強張らせる。

 

雨円からすれば死の鎌を頸に添えられたモノであろう。顔から余裕は消え反転。振り返った刹那。

回避する暇すらなく貫かれる。

 

「…よくも…邪魔を…!!至福の時を…!!某は…まだ!!」

 

「知らないな。元よりお前らは殲滅を命令されている。ただちに逝け」

 

 

……上弦………の参……?

 

 

【十二鬼月】に助けられたのでしょうか……まぁ、双方も敵対しているでしょうけど。

 

「……」

 

上弦の参は此方を一瞥する。目が合う。

 

え…?…………え……?え…?

 

桃色の短髪に全身に入った罪人の証の刺青。

見覚えはない。まばらな記憶はあてにはならないけれど。

 

彼を見た瞬間。敵対する警戒心や恐怖心より前に……………………ぽっかり空いていた喪失感が埋まった気がした。懐かしさと愛しさ。

 

「………狛治さん………?」

 

止められない涙と共に問うていた。霞む視界に彼の姿が歪む。

 

「…………知らないなお前など。…」

 

敵意はない上弦の参は踵を返す。待って!!行かないで!!思い出すから思い出して下さい!!

 

縋るような声かけを無視して跳躍する上弦の参。

 

 

あ……。

 

遠くなる彼の背中に呆けて見ているしか出来なかった。

 

膝をつきただ呆然と。

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

強く。より強く。よりさらに強く。誰よりも。

 

 

至高の領域まで至るためと鬼となり直向きに戦い続けた。

 

 

何のため?あの方の為?

 

 

守るため…?誰を……?

 

 

「…………………あの女は誰なんだ…」

 

修羅を生きる鬼はどうしようもなく大切な何かを忘れていた事を思い出すがそれが何かまでには至らない。

 

虚しさを内包して。座した負け犬にならないために。

 




先に2人邂逅。原作初登場では顔合わせしにくいかなぁっと悩んだ末。
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