鬼喰の血刃   作:九咲

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夢幻ノ終劇【九十九血神ノ白兎(てつのはて)

「あぁぁあ!!」

 

咆哮。咆哮。咆哮。魂からの。

 

誰よりも幸せになって欲しかった。けれど病の人生を負わせてしまった。

 

桐夜白兎は後悔ばかりの人生だった。

 

弱いことはこんなにも罪なのか?奪われるだけの人生はいやだ。

 

   人間をやめてでも尊厳だけは取り返す。

 

妹の死体は俺が弔わなければならない!!

 

「かぇっせぇえ!!」

 

   領域展開【血怪百鬼夜行・九十九血神ノ陣】

 

 

桐夜白兎の死体は深い悔恨を残し新たな百鬼夜行へと変貌する。血液を纏う鉄を繋ぎ合わせた体をその悔恨だけが突き動かす。血怪【九十九神】器物が九十九年経つと自我が宿る妖の総称。九十九年分に相当する悔恨だけが鉄の体を突き動かす。

 

「君如きに用はないんだよ!!」

 

浸域纏開【縊殺(くびりごろし)夢獄纏骸(むごくてんがい)ノ獄彩】

 

 

血液を纏う刃金の巨大な縦長の異形に立ち向かうは悪夢を纏う異形。姿形は虚ろで朧気に霞む異形。故に無形。

 

想像力が創造力となる。悪夢を操作し実体化し纏う。

 

【浸域】とは侵す為に自身の領域を纏う領域。【纏域】とも呼称する。

 

【新月の純白】神代真白の恩恵。彼女の創作物故の最後の篝火。注射器の中身の【色ノ麻薬】

 

果ては死神の鎌を振り下ろされるのは必定。それでも生まれ落ちたならば意味が欲する。意義を。愉悦を感じるならあまりにも足りないまだ足りない。足りないんだよ!!

 

 

僕はまだ足りない!!

 

 

払拭されない悔恨と満たされない愉悦がぶつかり合う。

 

周りの列車を喰らい肥大化する【九十九神】の桐夜白兎は一本の巨大な鉄骨を刀として構える。

 

自分に叩き込んだ呼吸法を鉄の体にて使役する。

 

    鉄の呼吸・肆ノ型【鉄鳴奏多(てつめいかなた)撃ち】

 

大きな音を立て撃ち込んだ一撃は震動を与え中身を破壊する。

 

内側から破壊する鉄鳴の一撃は【夢ノ色彩】に痛みを与える。

 

巨体から与えられた一撃は破砕するには十二分。ただし夢は無形。再びつなぎ合わさる。

 

「はっははははは!!そんな一撃じゃ僕を殺しきれないよ!!」

 

   【悪夢纏・共生】

 

悪夢の鬼達がわらわらと沸いてくる。【夢ノ色彩】に纏わり付いて融合して巨体となっていく。無数の鬼が無造作につなぎ合わさった歪な巨体な異形となっている。

 

 

「「「僕を殺せると思うなよ!!これはこの列車の人間共の悪夢への恐怖心を鬼化させたものだ!!僕への畏怖が恐怖が力となるのさ!!」」」

 

「「「その、鉄の異形と共に色彩に死ね!!血霞麟!!」」」

    

 

 

     血鬼術【増減操作・血液量】

 

 

「これでいいんですか?麟様」

 

「……うん、これは彼に譲った彼の戦いだ。精一杯のサポートさ」

 

零余子の言葉に首肯する。ただ見届ける。彼を【百鬼夜行】にした責任もある。

 

    血鬼術【鉄操・血盟】

 

 

咆哮。自身に繋ぎ合わせた鉄骨を射出する。貫く。容赦なく加減なく憂いなく。ただ悔恨のままに。

 

五つ射出した鉄骨は巨体を貫く。膨張した悪夢はただただ貫かれる。

 

「がぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

狂化。自我もなく九十九神は駆ける。暴走する【夢幻列車】の車両を吹き飛ばしながら突き進む。

 

鉤爪状になっている両手でつかみ食い込ませる。

 

 

咆哮。咆哮。咆哮。逃がすまいと鉄の顎が食らいつく。

 

鉄の獣。鉄の巨獣。ただ血を纏う鉄の塊のはずのそれは明確な殺意を持って攻撃を繰り出す。

 

 

「……化け物め!!血霞の力は!!だが僕を舐めるなど!!」

 

    【悪夢纏・酸廻界】

 

 

酸の海という悪夢が再現される。鉄の躰を錆びさせる。

 

ただの鉄ならばここで終わる。だが。

 

血怪【九十九血神】桐夜白兎は血を纏う鉄の躰を持つ。

 

   血鬼術【鉄鬼招来・鉄砲杓】

 

鉄を砲弾へ練成。左腕を巨大な鉄砲へと変形させる。

 

爆音と共に発射。動きが鈍くなろうが関係はない。射出された砲弾は零距離で悪夢の鬼の塊を吹き飛ばす。

 

 

《白梅をかぇせぇぇえ!!!!》

 

さらに咆哮。ただの瓦解した鉄の心は剥き出しの心のまま咆哮する。

 

暴走する悔恨はそのまま飛びかかり悪夢の塊と化した鬼を撲殺しようと殴打を繰り返す。

 

《いい加減目障りなんだよ!!弱者の分際で!!》

 

 

    【悪夢纏・蠱毒地獄】

 

 

【夢ノ色彩】が纏っていた悪夢の靄が【九十九血神】にも纏っていた。むしろ餌を取り込むような捕食者のように悪夢の靄が纏わり付く。

 

《悪夢の詰め込みを受けるがいいさ!!》

 

《ぐ……が……》

 

 

▽▽▽▽▽

 

 

桐夜白兎は、悪夢に囚われている。

 

妹に恨まれているのだと。そう思っている。

 

姿形は見えなくても彼女はきっと俺を恨んでいるだろう。

 

妹は楽になりたがっていた。けど俺は一人になるのを拒んでいた。俺のエゴで彼女を生かしていた。綺麗事を翳してただ彼女を生かしていたんだ。

 

 

俺の現実は既に悪夢なんだ。家族と妹を無意味に喪う。

 

あの鬼が見せる悪夢など紛い物でしか無い。あらゆる苦痛もあらゆる煩悩も全てあの子のために何も出来なかった悔恨に劣る。

 

だから彼女の顔して罵倒する悪夢は……悲しい顔をしている現実に劣る。

 

目の前の鬼が作り出した【桐夜白梅】はただただ俺を罵倒する。

 

恨み言。あらゆる罵詈雑言が白梅の虚像の口から発せられる。

 

ああ、分かってる。俺は物語の主人公にはなれない。

 

 

【兄ちゃんなんで、殺してくれなかったの】

 

ただ現実の彼女の言葉のみが俺の心を抉る。

 

心を鉄に出来なかった男の末路。躰だけを鉄にして悔恨だけでその鉄を動かす。

 

だからせめて彼女の尊厳だけは取り戻す。

 

人外へと身を落としたとしても。

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

血怪【九十九血神】は幾度の幾多の【夢ノ色彩】の悪夢の攻撃を喰らい鉄を繋ぎ合わせただけのガラクタになっていた。 

 

《血霞麟っ!!!!!!君の【血怪】はこのざまだ!!!!いい加減ぼくの手に下りなよ!!》

 

 

「麟様…………」

 

「今のお前、確かに上弦に匹敵するね。……使い捨てのお前でそのレベル。小娘は末恐ろしいよ……」

 

桐夜白兎へ目を向ける。ガラクタの山と化した鉄の巨人。ボロボロの巨体は意気をも感じない。

 

《それでいいの》

 

《……ち、がすみ……さん……》

 

《いいの?君の妹……奪い返したくないの?あの悪夢の渦巻く靄の一部になってしまうよ》

 

《……うばい……かえす……けど力が……足りない》

 

《…………意地の悪い質問だけど君を血怪にした私がいうのもあれだけど……私に魂を売る気ある?》

 

《……売ります。売りますから力を……白梅を……取り返して下さい》

 

《…………人間好きな癖に人外を作る私は赦されないかもね。ここに誓約を。ここに悪逆を。君の力を私に上乗せ出来る。……あの鬼を喰らうよ白兎》

 

《……はい、姫》

 

 

 

    浸域纏開【血纏装束・九十九血鎧ノ柄】

 

【陣】形成。領域展開の一段階目。【血怪】の力を領域へとただ展開するもの。

 

【図】形成。領域展開の二段階目。【血怪】の特性をより具体的に形成し更なるチカラを展開する。

 

【柄】形成。領域展開の三段階にて【浸域】の一段階目。【血怪】の領域展開の力を纏い【血纏装束】の柄として発現し領域を纏い力を発現する。他者を侵すの力。

 

 

鉄の【柄】を展開する。女武将な見た目の装束を纏う。赤い装束に赤い籠手に赤い具足に鎧に赤い兜。全身真っ赤な真紅の姿だった。

 

まるで地獄を駆る鬼。

 

「【浸域】というものを見せてやる」

 

抜刀。上段に構える。

 

  血の呼吸・拾ノ型崩し【真紅ノ太刀(あかきたち)

 

濁流如き【真紅紅蓮】を収束させ【神血】に鉄の塊が付随する。巨大な赤き太刀へと変換。

 

彼の悔恨を祓うべく構える。

 

《血霞麟!!!!色を寄こせぇえええ!!!!》

 

 

「あげないよ。私は私の役目を終えるまでは死ねない。鬼舞辻も真白も喰らって人間が安心して生きていける世界で最後の鬼として死ぬために。私の咎を贖うために」

 

華姉。私を赦さないで。貴女になってしまった私

を。   

 

拾ノ型崩し【真紅ノ太刀】を振るう。赤い閃光は悪夢の集合体の実体を核に捕らえ両断する。

 

【夢ノ色彩】を両断する。喰らった人間達は瓦解する。

 

一人の少女の死体を拾う。

 

《血霞ぃ……!!》

 

怨念がましく未練たらしく瓦解する躰のままこちらを睨めつける。

 

「ふん、……私の色を奪ってどうするのかしら?意味を喪うだけではないんでしょうけど」

 

《お嬢様の最高傑作の礎のためさ……殺されるがいいよ》

 

《【イリス】にね》

 

瓦解し粉々の色彩と戻る時もただただ愉快そうに笑う。

 

【イリス】……ね。よからぬことでしょどうせ。

 

▽▽▽▽▽

 

「白梅……」

 

夢幻列車は消えどこかは分からない野原で彼の妹を寝かしている。

 

既に事切れあんな状況だったにも関わらず穏やかな死に顔だった。本当死にたがっていたのかもしれない。

 

痩せ細った顔をしていても穏やかな死に顔だった。

 

あらゆる苦悶からも煩悩からも苦痛からも解放されたんだ。

 

「……おやすみ。白梅。ごめんな駄目な兄ちゃんで」

 

対して兄は死後も【怪】として咎を背負い続ける。

 

 

「……脅しておいてなんだけど、……【血怪】契約解いてあげてもいいよ。無理矢理ってのも好きじゃないし」

 

「…………大丈夫ですよ恩義位は感じてます。付き合いますよ。……聞いた話だとさっきみたいな鬼もいるんでしょう。…………鬼殺出来るならしたいです」

 

「私も鬼だよ?」

 

「……なら既に俺も鬼みたいなものですし。悪いな錆兎。……お前の忠告聞かなかったせいで迷惑かけた」

 

苦笑しながら鉄になった躰を見せてくる。

 

「……馬鹿野郎」

 

「……すまん」

 

 

「はいはい暗くなっても任務は続くよ。杏くんの方手伝いにいくよ。決着はついてるみたいだし」

 

「はい」

 

「……はい」

 

「もう、暗いなぁ。……生きてないけど生きてるし錆兎もゆるしてあげなよー」

 

「分かってる」

 

真菰の言葉に渋々頷く。多分義勇のこと思い出して居るんだろうけど。

 

 

前を向いてっと。

 

 

気を抜いていた所に濃厚な殺気のような鬼の気配が杏くん達の居るところへ現れる。

 

 

瞬間察する。…………【上弦】と。




次回、煉獄杏寿郎の物語。
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